糖尿病の方が外食する際の注意点は?食事のコツやポイントを伝授
当記事の執筆は、管理栄養士 白石香代子が担当しました。
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「糖尿病治療中だけど、1日1回〜2回は外食してるよ。仕事で忙しいし、食事は簡単に済ませたいんだよね」
多忙なビジネスマンにとって、今や外食は日常生活の一部とも言えます。
食事療法は糖尿病の治療の柱です。しかし、「適正エネルギー量を守り、規則正しくバランスの良い食事をしましょう」と言われても、毎日実践するのはなかなか難しいことでしょう。
ですが、外食でも糖尿病に適した食べ方があるのです。
今回は、「糖尿病と外食」について詳しくお教えしていきます。
焼肉や寿司などジャンル別に食べ方のポイントやコツもご紹介していますので、最後までお読みいただければと思います。
目次
外食は糖尿病に影響するのか
一般的な外食で見られるような食事には、糖尿病にマイナスの影響があります。なぜなら外食で使用される食材やメニューの傾向には、血糖値を上げる要素があるからです。
②野菜・海藻・きのこ類が少ない
③油の多い料理で脂質が多くなりがち
④塩分の多いものが目立つ
主な傾向は以上の3つです。それぞれについて、くわしく見てみましょう。
ごはんや麺の量が多い
丼ものや麺類はご飯や麺の量が普段よりも多く、糖質を摂り過ぎてしまいます。カレーライスだと、ご飯の量は普通盛りでも250gです。茶碗1杯分のご飯が150gなので、いつもより100gも多く食べることになります。
ではなぜ糖質の摂りすぎが良くないのかについて、お伝えしましょう。
糖質はインスリン(血糖値を下げるホルモン)の働きにより、筋肉や肝臓などに取り込まれて血液中の糖度(血糖値)が下がります。
しかし糖質の摂りすぎにより糖が過剰になると取り込みが追いつかず、血糖値は異常に高くなってしまうのです(食後高血糖)。
食後高血糖は血管に圧力をかける要因で、合併症の一つである動脈硬化のリスクを高めます。だから、糖質の摂りすぎには注意が必要なのです。
参考記事:【医師監修】食後に注意!血糖値スパイクとは?原因と予防を初心者でもわかるよう解説
野菜、海藻、きのこ類が少ない
牛丼やカレー、ラーメンなど1品料理が多い外食では、野菜・海藻・きのこ類といった食物繊維の豊富な食材が少ない傾向にあります。
食物繊維は腸の中に長時間も居座り、糖質の吸収を邪魔して血糖値の上昇を緩やかにします。あまり摂れないとなると、血糖値は急激に上昇して血管に負担がかかり、動脈硬化などの合併症リスクが上がります。
油の多い料理で脂質が多くなりがち
唐揚げやとんかつ、ハンバーグや炒め物など外食では油を多く使った料理が並びますよね。
脂質の摂り過ぎで注意したいのは、内臓脂肪の増加です。内臓脂肪から分泌されるTNF-αという物質がインスリンの働きを妨げ、間接的に血糖値をあげる要因になります。
また、脂質は少なくとも7時間以上に渡って緩やかに血糖値の上昇に関わると言われています。
そのため脂質に偏った食事をすると、長時間血糖値の高い状態が続くことになるのです。結果としてHbA1c(1-2ヶ月の血糖値平均)が上がり、網膜症や神経障害などを引き起こす可能性が生じます。
塩分の多いものが目立つ
ラーメンやうどんなどの麺類は、スープまで飲み干すとなると相当な塩分量になります。塩分の摂り過ぎでおこるのは高血圧です。
糖尿病は高血圧を併発しやすい疾患といわれています。塩分を控えることは高血圧のリスクを減らすことになりますので、糖尿病では減塩も意識する必要があります。
食事療法を成功させるポイント
外食の際、どのようなことに気をつけたら糖尿病の食事療法が上手くいくのか、ポイントをお教えします。
POINT①サラダや小鉢などを1品プラス
野菜や海藻、きのこが入ったサラダや小鉢を1品、付け加えましょう。特に、ブロッコリーやほうれん草、アスパラガスなどの緑黄色野菜には、糖質を効率よく代謝させる葉酸も豊富です。
そして主食など糖質の前に食べるベジファースト(※)を行うと、効率よく血糖値を下げることが出来ます。
(※)食物繊維の多いものを最初に食べることをベジファーストと言い、よく噛んでゆっくり食べることで効果が発揮できる、糖尿病におすすめな食べ方です。野菜や海藻、きのこに含まれている食物繊維には糖の消化や吸収のスピードを遅らせ、血糖値の急激な上昇を抑える働きがあります。
POINT②できるだけ青魚を選び、肉ならひき肉より元の形があるものを
糖尿病の方には青魚を使ったメニューをおすすめします。
なぜなら、イワシやさんま、サバなどの青魚には、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の分泌を改善する働きのある脂質が含まれているからです。
血糖値の上がる要因は「インスリンが充分に分泌されない」または「インスリンの効きが悪い」ことがあげられます。ですから、青魚の活用は糖尿病の食事に有益と言えるでしょう。
また、ハンバーグに使われているひき肉には脂質が多く含まれています。長時間に渡る血糖値の上昇を防ぐためにも、肉の形が目に見えるものを選び、鶏肉の皮やステーキの脂身は外すようにすると安心です。
POINT③メインの調理法は茹でる・煮る・蒸してあるものを選ぶ
メインの調理法は揚げ物や焼き物ではなく、「茹でる・煮る・蒸す」の調理法を選びましょう。そうすると、糖化を防ぎ合併症の予防につながるのです。
肉や魚などに含まれるたんぱく質が、糖質とくっついて劣化することを「糖化」と言います。糖化が起きると大量のAGE(終末糖化産物)が発生し、血管の老化を起こします。
糖尿病は実際の年齢以上に血管の老化が起こりやすい疾患です。そのため糖化が重なると、さらに動脈硬化などの合併症を進行させるリスクが高くなってしまうのです。
AGEは西京焼きの焦げた部分、とんかつや天ぷらの衣の焦げなど、糖質が焦げたところに大量に発生します。
(生→煮る→焼く→揚げるの順に、0→1.5倍→7倍→10倍と増加)
揚げ物はたまのお楽しみ程度にしましょう。
POINT④漬け物は控え、調味料は「かける」のではなく「つける」
塩分量を抑えるために、付け合わせの漬物を食べないことや、調味料は小皿に出してつけながら食べるとよいでしょう。高血圧予防のために推奨される塩分量は1日6g未満。1食に換算すると2g未満です。
漬け物や調味料の塩分は高めです。なるべく控えるようにしましょう。
しょうゆやソースは「かける」から「つける」で調整すると、量を減らすことができます。
ケチャップの食塩量は少なめですが、大さじ1杯中の糖質は4.7gと高めです。
摂りすぎには気をつけましょう。
おすすめの外食メニューを紹介
外食では、主食の量が調整できる定食がおすすめです。
先ほどもお伝えしたように、麺類や丼ものは手軽にさっと食べられるのですが、麺やご飯の量がわかりにくく、糖質を摂りすぎる可能性がありますのであまりおすすめできません。
主食の量は、定食メニューでご飯を少し減らすという方法で調整するのが良いですね。
おすすめは刺身定食です。刺身のカロリーは調理したもの(揚げ魚や煮魚)より低く、またしょうゆを付けて食べることで食塩量の調整も出来ます。
さらに、アジやブリと言った青魚を選ぶと、インスリン分泌の改善効果も期待出来ます。
マグロやカツオも青魚です。カツオのたたき定食なども良いですね。
漬け物はなるべく残すようにし、しょうゆはつけて。
刺身に付け合わせてある大根やシソも食べましょう。
ひじきの煮物や青菜のお浸しなど、プラス1品もお忘れなく。
メインで肉を選ぶ場合は、生姜焼き定食だと野菜が添えてあるものが多く、プラス1品でほうれん草の胡麻和えなどを頼むと食物繊維も補うことができます。
妊娠糖尿病の場合はどうする?
基本の考え方は同じで、定食メニューを選ぶようにします。
ただし、妊娠中は刺身のような生魚は避けた方が良いでしょう。妊娠中は免疫力が低下しやすいので、生魚にある細菌やウイルスがそのまま体内に入ると食中毒を引き起こす確率が高くなるからです。
刺身定食ではなく、焼き魚定食や煮魚定食にすると良いですね。
メニュー別、食べ方の工夫やコツ
それでは、外食でよく利用するメニューを見ていきましょう。
ラーメンは食べて良いのか
ラーメンは食べても良いのですが、日常的に食べることはあまりおすすめ出来ません。
一般的にラーメン店で提供される麺の量は、茹でる前の状態で120〜150gほどと言われています。麺のみで糖質は約65〜80g、糖尿病の方が食べる量としては多めです。
さらに麺には糖の吸収を抑える食物繊維がほとんど含まれていないので、ラーメンを食べた後の血糖値は大幅に上がってしまいます。
ラーメンを食べる時は、具材の多い五目ラーメンを選んだり、もやしやほうれん草、わかめなどを積極的にトッピングしたりし、野菜や海藻の食物繊維を活用するようにしましょう。
また、卵などたんぱく質も一緒に取り入れると良いですね。(たんぱく質は筋肉を作る栄養素で糖の貯蔵庫です)
ラーメンのスープに塩分は多く含まれています。
飲み干すと、1日の塩分量となってしまうことも。
スープは残すことが望ましいですが、せめて半分は残しましょう。
寿司は何皿まで?
寿司は1皿2貫で約100kcal(1貫50kcal)、寿司飯の糖質は1貫あたり約7gです。
例えば、1日あたり1800kcal、糖質200g(1食あたり600kcal、糖質は65-70g程度)の場合、1皿2貫の寿司は5皿程度となります。
寿司飯と魚にはほとんど食物繊維が含まれません。
海藻入りの味噌汁やサラダなどを取り入れ、血糖値の急上昇を防ぎましょう。
焼肉はどうする?
焼肉はボリュームがあり、高カロリーになりがちな食事です。
血糖値をあげるのは糖質ですが、焼肉の食べ過ぎで摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、内臓脂肪の増加につながります。
内臓脂肪はインスリンの効きを低下させ高血糖を引き起こす生理活性物質を分泌しますので、増やさないよう注意が必要です。
まず焼き野菜やナムル等を注文し、「ベジファースト」でゆっくり食べましょう。
次に肉はカルビなど脂質の多い部位の注文は控え、ハラミやロースなどたんぱく質が豊富な赤身の部位を頼むようにします。
食べる時には味の濃いタレはなるべく使わず、レモン汁や一味唐辛子を活用しましょう。一般的な焼肉のタレは、大さじ1杯で約32kcalと高めです。
ご飯や冷麺などの主食はハーフサイズにして最後に食べるにすると、カロリーを抑えることも出来ますし、ベジファーストの効果も得られます。
そばは安心なのか
健康的なイメージのあるそばですが、「そば=安心」とは言えません。
なぜなら、そばは麺の中では血糖値が上がる速度(GI値※)はやや遅めですが、糖質量は多いからです。
(GI値※)GI値とは糖質の吸収度合いを表したもので、GI値が低いほど、血糖値の急激な上昇を抑えることが出来ます。高値はブドウ糖の100です。
下の表のとおり、そばはうどんやそうめんと比べて、GI値(※)は低めです。
※余談ですが、麺類はゆでると糖質量が半分くらいになることもあります。
そのため麺類の中では血糖値を上げにくいと言えますが、糖質量が多い食品ですので、たくさん食べると血糖値は上がります。
そばを食べる時も、わかめや山菜などの食物繊維を含む食品の活用で、血糖値の上昇を抑える工夫が必要です。
参考記事:そばは糖尿病にいい食べ物?~糖質量・血糖値の上がり方を徹底検証~
ファミレスでの楽しみ方
気軽に楽しめ、価格も魅力なファミレス。食後にドリンクバーを利用しながら仕事…という方もいらっしゃると思います。
多種多様なメニューのあるファミレスですが、おすすめはセットメニュー(メインデッシュ+ライス)です。
食事療法を成功させるポイント②でお伝えしましたが、ハンバーグなどひき肉の料理よりチキンなど肉の形が目に見えるものを選ぶようにします。
そして前菜のピクルスやサラダなどを注文し、ベジファーストで食べましょう。
ポテトサラダやマカロニサラダは野菜サラダではありません。
糖質の多いサラダとなりますので、気をつけてください。
その他の外食チェーン店はどうか
丼ものやカレーを提供している外食チェーン店を利用する機会も多いでしょう。
牛丼やカレーには食物繊維が少なくご飯も多いため、さっと食べ終えたり食べ過ぎたりする傾向があります。すると血糖値は急上昇し、血管に負担をかけてしまいます。
外食チェーン店でも野菜サラダや味噌汁を注文し、できるだけ定食スタイルで食べるよう心がてください。
まとめ
以上、糖尿病患者さんが外食する場合、定食メニューを選ぶと良いことがお分かりいただけたと思います。
外食で食事療法を成功させるポイントは、次の4つです。
②インスリン分泌をサポートする青魚を選ぶようにし、肉の場合は形が見えるものを選ぶ
③糖化で血管の老化を進行させないために、揚げ物より煮物や蒸し物を
④高血圧を予防するために、漬け物や調味料の塩分は控えめに
おすすめは刺身定食です。妊娠糖尿病の方は生魚は控えていただきたいので、焼き魚や煮魚定食などを選ぶと安心です。
以上、今回は糖尿病と外食についてご紹介しました。
当記事を参考に、外食をうまく活用しながら、日々の血糖コントロールに役立てていただけると幸いです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や食事の記録がカンタンにできます。外食など日々の食事管理でぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット
日本糖尿病療養指導士認定機構編・著 糖尿病療養指導ガイドブック2018 P58 図1 1型糖尿病患者における主要な栄養素による血糖上昇のダメージ
株式会社学研パブリッシング 目で見る食品カロリー辞典
Slims カロリー