糖尿病と腸内環境の乱れに関係はあるのか~おならのにおいについても解説~

当記事の執筆はライター 松原知香(管理栄養士)が担当しました。
*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
巷では、腸活ブームなどからその重要性が再認識されている「腸内環境」。
「腸は最大の免疫機関」といわれるほど重要な役割を持ち、それは糖尿病の方にも当てはまります。なぜなら、糖尿病の改善や予防に腸内環境が関わっていると、世界各国の研究で明らかになったからです。
そこで今回は、腸内環境の改善が糖尿病とどのように関わっているのか、最新の研究結果から紐解いていきます。
また、腸内環境を整えたいときに役立つ食べものや、気になるおならの話もご紹介しますので、ぜひ最後までお付き合いください。
目次
腸内環境と糖尿病を結ぶカギは「短鎖脂肪酸」

腸内環境と糖尿病、一見するとつながりのない2つを結びつけるのは短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸は、宿主(ヒト)が持つ酵素では完全に分解することが困難な食物繊維を分解した際に作られる副産物で、分解する時に必要なのが腸内細菌です。
短鎖脂肪酸には脂肪の蓄積を抑えたり、満腹中枢を刺激するホルモンの分泌に関わり食欲を抑える働きがあります。
一方で短鎖脂肪酸自身が宿主のエネルギー源であり、その割合は全体の5-10%にも上るとされています。また、腸管収縮を促進する作用もあり消化管からのエネルギー吸収の効率を高めると推測できるのです。
腸内細菌の数や種類の減少、特定の菌種の異常増殖といった腸内細菌叢のバランスの破綻があると短鎖脂肪酸が脂肪の貯蓄を誘導するシグナルとなり、肥満を引き起こすと考えられています。
肥満は微小炎症(※)やインスリン抵抗性の増大を引き起こし、2型糖尿病の一因となります。
(※)症状に乏しい微小な炎症が慢性的に持続することで、アルツハイマー病や免疫疾患、脳血管疾患や心血管疾患の一因になると考えられている
関連記事
【医師監修】肥満と糖尿病の関係〜治療と予防における2つの基本をカンタン解説〜
なぜ肥満は糖尿病になりやすいのか

腸内環境の乱れが一因となって肥満になると、インスリンの効きが悪くなります。そのため血糖値の下がりにくい状態が続き、2型糖尿病になってしまうのです。
私たちの体は食べ物をたべ、血糖値が上がると、インスリンが分泌されて血糖値が元の値まで下がります。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。
ところが、肥満になるとインスリンの効きが悪い「インスリン抵抗性」がうまれるため、分泌されたインスリンが十分に効果を発揮できず、高血糖状態が続いてしまうのです。
肥満の解消は、インスリン抵抗性の改善につながるため、血糖管理も良好になります。つまり、腸内環境を整ることで肥満を軽減でき、ひいては糖尿病の予防にもつながる可能性があります。
関連記事
【医師監修】インスリンとは〜糖尿病との関係・治療・注射についてわかりやすく解説〜
炎症反応が糖尿病の一因になることも

海外では肥満以外にも、腸内環境の悪化による炎症反応が糖尿病に関わっているという研究結果が発表されています。
腸内細菌から作られる短鎖脂肪酸には先ほどご紹介した働きの他に、炎症を抑えたり腸管バリアを維持して細菌の侵入を防ぐ役割もあります。
そのため、腸内環境が乱れて短鎖脂肪酸の量が減ると、腸管バリアが弱くなって細菌が侵入しやすくなり、体全体に軽い炎症反応がおこるのです。
慢性微小炎症があると、肝臓や骨格筋に対するインスリンの効きが悪く、血糖値も下がりにくくなってしまいます。
このように、肥満かどうかを抜きにしても、腸内環境の改善が糖尿病の改善につながる可能性があります。
糖尿病につながる腸内細菌はあるのか

糖尿病との関連が疑われる腸内細菌を特定する研究が進んでおり、中国やヨーロッパなど複数の国から発表されています。
それらを比較すると、糖尿病の方の腸内に多く存在する細菌は国によって異なるとわかりました。そのため、人種や年齢によってどの腸内細菌が糖尿病のリスク因子になっているのか、情報を集めて分析することが必要とされています。
日本人の糖尿病に有効な腸内細菌とは
日本においても、糖尿病のリスク要因となる腸内細菌を特定する研究が進められています。しかし、すべてを解明するにはいたっていません。
もともと、インスリン抵抗性よりもインスリン分泌能の低下が、糖尿病発症の要因として大きいとされています。
ただ肥満の軽減やインスリン抵抗性の改善が得られることは、糖尿病の改善に大きく寄与します。
これまでは、研究機関ごとなど小規模のものが大半でした。現在は国が先頭に立ち糖尿病につながる腸内細菌の特定や、それを活用した新しい治療方法について研究が進められているので、今後の発表に期待が膨らみますね。
糖尿病になるとおならが臭くなるってホント?

糖尿病の方に多くみられる腸内細菌によって、おならが臭くなることがあるようです。
おならの正体は腸内細菌が食べものを分解する際に出るガスですが、腸内環境が乱れて悪玉菌が増えていると、臭いおならになります。一方で、善玉菌によって出されるガスはさほどにおいません。
中国の研究では、糖尿病の方に多くみられる腸内細菌として、悪玉菌であるクロストリジウム属の細菌をあげています。
また硫黄分が多い食べ物(玉ねぎ、ニラ、にんにくなど)や、動物性たんぱく質が多い食べ物(魚・肉・卵など)を多く食べると、においの原因である硫化水素が発生しやすくなります。
関連記事
ニラの栄養と効能効果~食べすぎの注意点やオススメの食べ方も紹介~
ヨーグルトは糖尿病の人にもオススメできるのか

腸内環境を整える食べ物として多くの方が思いつくヨーグルト。もちろん糖尿病の方にもオススメです。
ただし、オススメできるのは砂糖や甘味料の入っていない、無糖ヨーグルトに限ります。なぜなら、食べやすく加工されたヨーグルトには、砂糖や人工甘味料が含まれているからです。
どうしても甘みが欲しい場合は、ラカントなどの天然甘味料を使うとよいですよ。
関連記事
糖尿病の方におすすめなヨーグルトの食べ方~上手に食べれば効果的~
人工甘味料は血糖値を上げないって本当?~デメリットも解説~
腸が喜ぶ食べものをご紹介
腸内環境を整えるには食物繊維を豊富に含む野菜類、根菜類、豆類、海藻類をバランスよく摂取することが大切です。
動物性食品中心の食事は、腸内細菌叢からの短鎖脂肪酸の生成を減少させます。
さらに炭水化物の過剰摂取が特定の腸内細菌を増やすとの報告も。
一方で、消化管で吸収されない食物繊維やオリゴ糖は腸内細菌の栄養となり、その結果腸内細菌叢のバランス維持や改善に役立つとされています。ただすでにバランスの崩れた腸内細菌叢に対して、食事療法で十分効果を引き出すことは難しいです。
そのため特定の食材を食べすぎるのではなく、食物繊維を豊富に含む食材をバランスよく摂ることが大切といえるのです。
関連記事
腸活に良い食べ物ランキングを大公開!~続けられる簡単レシピもご紹介~
まとめ
腸内環境の乱れは肥満、さらに血糖管理へ影響を及ぼし糖尿病につながる可能性があります。
また、海外の研究から腸内環境を整えることで、インスリン抵抗性の改善に役立つとわかりました。
日本でも、国をあげて糖尿病と腸内環境の研究が行われているので、今後さらに新たな発見があるかもしれませんね。
腸内環境を整える食べものについても、普段の食事に無理のない範囲で取り入れてみてはいかがでしょうか。
それでは、当記事の情報があなたの健康に役立つことを願っています。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重・カロリー&糖質を含む、食事・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてください。
【アプリのダウンロードはこちら】
ダウンロード:無料
App Store / Google Play

参考文献
坊内良太郎他(2015),肥満・糖尿病と腸内細菌,日本内科学会誌,104巻,1号,p.57‐65
厚生労働省 糖尿病個別化予防を加速する マイクロバイオーム解析AIの開発
Gotaro Toda et al (2020), Insulin and lipopolysaccharide mediated signaling in adipose tissue macrophages regulates postprandial glycemia through Akt-mTOR activation,vol.79,No.1,p.43‐53
京都大学 腸内細菌による宿主のエネルギー恒常性維持機構の解明-短鎖脂肪酸受容体GPR43活性化は脂肪の蓄積を抑制し肥満を防ぐ
糖尿病の病因としての消化管~腸管免疫と1型糖尿病~ 糖尿病61(3):96~99,2018
生活習慣病と腸内細菌叢 生物工学会誌 第99巻 第11号 573–576.2021



