【医師監修】糖尿病で吐き気が起こるのはなぜ?~食事などの対処法も解説~
当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。執筆はライター 松原知香(管理栄養士)が担当しました。*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
糖尿病の治療をしているなかで、急に気分が悪くなったり吐き気を感じたりしたことはありませんか?
考えられる原因は高血糖や低血糖、薬による副作用や急性合併症などさまざまです。なかにはすぐに受診をする必要がある場合も。
そこで今回は、糖尿病によって起こる吐き気の原因と対処法をわかりやすく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
目次
糖尿病の症状が進むと吐き気が起こることも
糖尿病の症状が進むことによって起こる吐き気の原因として考えられるのは、『血糖値を下げる薬の副作用』と『糖尿病の合併症で胃の動きが悪くなること』です。
糖尿病の症状が進むと、治療として血糖値を下げる薬を飲みます。
血糖値を下げる薬にはたくさんの種類がありますが、このうち『GLP-1受容体作動薬』には副作用として吐き気があります。
また『メトグルコ』や『ツイミーグ』も内服開始時や増量時に、吐き気などの消化器症状が出やすいと言われているのです。
さらに、α-GI阻害薬であるセイブル、ベイスン、グルコバイは5%程度に腹部膨満感が生じます。稀に腸閉塞を生じることもあり、嘔気・嘔吐も生じます。医師と相談のもと、注意するとよいでしょう。
しかしこれら薬の副作用に関しては、体も慣れて段々症状は良くなることが多いです。
また、糖尿病の合併症で胃の働きが悪くなる場合があります。胃の働きが悪くなると、食後の満腹感が強かったり胃がむかつく感じがしたりしますし、食欲低下・吐き気も起こりやすくなります。
参考記事:GLP-1受容体作動薬とは〜飲み薬・副作用についても解説〜
その他よく生じる症状
糖尿病で生じる自覚症状は、尿が増える・喉が渇く・水分をたくさん飲んでしまう・心当たりがないのに体重が減っている、などです。
また、糖尿病が更に進んでいくと、糖尿病合併症(動脈硬化や神経障害・網膜症・腎臓の障害など)が起こることもあります。
参考記事:【医師監修】糖尿病の前兆とは〜初期症状やサインを把握し早めに対応しよう〜
糖尿病の急性合併症でも吐き気が見られる
糖尿病の急性合併症でも吐き気や嘔吐が起こることがあります。それは『糖尿病ケトアシドーシス』です。
自覚できる症状としては、吐き気や嘔吐の他に、意識障害・腹痛などがあります。
参考記事:糖尿病性ケトアシドーシスとは〜症状・原因・治療をわかりやすく解説〜
主な原因について
糖尿病ケトアシドーシスを起こす方の多くは1型糖尿病です。インスリン治療の中断や感染・ストレスなどが原因で起こります。
なお、糖尿病性ケトアシドーシスが進行すると昏睡に陥るなど命に関わることもありますので、すぐに病院を受診してくださいね。
参考記事:【医師監修】1型糖尿病とは〜原因・症状から治療と生活の注意点をわかりやすく解説〜
低血糖による吐き気・めまい・頭痛にも注意
低血糖の時にも吐き気は起こります。
血糖値が下がってくると、まずは冷や汗をかいたり指先が震えたり、動悸がしたり顔面が蒼白になったりします。さらに血糖値が下がってくると、吐き気・めまい・頭痛などのといった症状も起こってくるのです。
これらの症状が出るようでしたら、まずは血糖値を測定して低血糖になっていないかどうかを確認しましょう。
参考記事:低血糖とはどのような症状?~原因や高血糖についてもわかりやすく解説~
対処法を紹介
では、もし低血糖になっていたらどうしたら良いのでしょうか?
まず、口から飲んだり食べたりできる状態であれば、ブドウ糖を5~10gかブドウ糖を含む飲み物を150ml~200ml程度飲んでください。低血糖に備えて、ブドウ糖は常に持ち歩くことがオススメです。
もし口から飲んだり食べたりできない状態であれば、すぐに病院を受診しましょう。
参考記事:糖尿病の方にとってぶどう糖とは~オススメの摂り方も紹介~
糖尿病で吐き気がある場合に気をつけること
吐き気があると食事や水分もなかなか摂取できないですよね。
このようなシックデイの時は血糖値が乱れやすいので、対応にはいつも以上に気を付けてください。
シックデイだと思ったら、まずは主治医に連絡してどうしたらよいのかを確認してください。自己判断で血糖値を下げる薬をやめたり調整したりするのは危険です。
参考記事:【医師監修】シックデイで糖尿病の方が注意すべきこととは?原因や3つの対策法を解説
食事はどうしたらいい?
吐き気があると食事をとる気にならないですが、まったく食べないことはできるだけ避けてください。
食欲がないときは、糖質を含む消化に良いものがオススメで、おかゆや果物(すりおろしたリンゴ等)が良いでしょう。また、食欲が出てきても急にたくさん食べると血糖値が一気に上がってしまうので、腹八分目を目安にしてみてくださいね。
また、水分はしっかりとるように心がけてください。このとき、ジュースで水分補給するのは血糖値が高くなりすぎてしまうので、お水やお茶で水分をとりましょう。
参考記事:消化に良い食べ物ってなに?~コンビニや外食もランキング形式で発表~
まとめ
それでは本日のまとめです。
・急性合併症である糖尿病ケトアシドーシスでも吐き気が起こる
・低血糖が原因で起こる吐き気にも注意が必要
・吐き気がある時は、シックデイの対応にも気を付ける
以上です。
もし、あなたが吐き気を感じた時に本記事を思い出して落ち着いて対応していただけると嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値・体重・血圧などの記録がカンタンにできます。日々の血糖コントロールにぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
医療情報科学研究所(2021):病気がみえるvol.3 糖尿病・代謝・内分泌第5版,メディックメディア