糖尿病にお茶が効果的って本当?~血糖値を下げるには何がいいか解説~
当記事の執筆は、管理栄養士 前間弘美が担当しました。
*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
「糖尿病にお茶が効く」
「糖尿病に効果のあるお茶がある」
血糖値の気になる方や糖尿病の方は、たびたびこのような話に耳を傾けるのではないでしょうか?
残念ながら、今のところ糖尿病を治す効果の期待できるお茶はありません。糖尿病は医師の指導のもと、食事や運動、服薬によって血糖値を管理するのが基本です。そのため、特定のお茶を飲んで治るものではないのです。
しかし、お茶は血糖値の管理によい効果をもたらします。さらに、2型糖尿病の発症リスクを低減させる効果が期待されているものも。
そこで今回は、糖尿病にお茶がよいといわれる理由について解説いたします。血糖値を下げる効果の期待できるお茶もお伝えするので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
糖尿病にお茶がよいといわれる理由
糖尿病にはお茶がよい、といわれるのは、
・2型糖尿病の発症リスクを低下させる可能性があるから
以上の2つが主な理由です。
それでは、詳しくみていきましょう。
血糖値を上げない
砂糖などを加えていないお茶は、糖質ゼロなので血糖値を上げません。
そもそも血糖値とは、血液中のブドウ糖のことです。つまり、ブドウ糖をはじめとした糖質を含まないお茶は血糖値を上げないため、糖尿病や血糖値の気になる方にとって安心な飲み物といえます。
関連記事
糖尿病に効果のある飲み物はあるの?トクホ飲料やコーヒーの効果も解説
2型糖尿病の発症リスクを低下させる可能性がある
成人を対象とした研究の分析結果によると、1日4杯以上の緑茶・紅茶・ウーロン茶を飲んでいる人は、2型糖尿病の発症リスクが17%低下する可能性が示唆された、という報告があります。分析されたのは8ヶ国100万人以上の成人を対象とした、19種類の研究です。
また別の研究によると、毎日お茶を飲む人は飲まない人と比べて糖尿病予備群のリスクが15%、2型糖尿病のリスクが28%低下した、と報告されています。
この研究によると、毎日お茶を飲む人は飲まない人に比べて尿中ブドウ糖排泄量の増加とインスリン抵抗性(※)の低下がみられたそうです。糖尿病の方は腎臓のブドウ糖再吸収能力が強化されていることが多く、そのため腎臓がより多くのブドウ糖を回収し、尿中に排出されるのを防ぎ、血糖値の上昇につながるといわれています。
(※)インスリンの効き具合
抗酸化作用
断言はできませんが、お茶に含まれる成分には抗酸化作用があるため、2型糖尿病の発症リスクを軽減する可能性がある、といわれています。
抗酸化作用とは、活性酸素による酸化を防ぐ働きのことです。活性酸素は微量であれば、私たちの体に有用に働きます。しかし増えすぎると過酸化脂質を作り出し、動脈硬化や老化、免疫機能の低下を引き起こすのです。
濃いお茶がより効果的なの?
濃いお茶の方がより効果的、と一概にはいえません。
たしかに濃いお茶には、抗酸化物質が多く含まれるでしょう。しかし、濃いお茶はカフェインやタンニンも多く含みます。
カフェインは摂りすぎると、めまいや興奮、不眠を引き起こす可能性があります。さらに、消化管を刺激することで、下痢や吐き気、嘔吐することも。なお、タンニンは鉄分の吸収を抑えるため貧血の方は注意が必要、といわれています。
無理に濃いお茶を飲むのではなく、適度な濃さのお茶を飲む方が健康によいといえます。
血糖値を下げるお茶8選
血糖値を下げる働きの期待できるお茶は、
・ウーロン茶
・紅茶
・プーアール茶
・桑の葉茶
・あずき茶
・黒豆茶
・ルイボスティー
が挙げられます。
これらのお茶がなぜ血糖値を下げる働きが期待できるのか、詳しくみていきましょう。
緑茶・ウーロン茶・紅茶
くり返しになりますが、1日4杯以上の緑茶・紅茶・ウーロン茶を飲んでいる人は、2型糖尿病の発症リスクが17%低下する可能性が示唆されています。
また健康な40~64歳の男女を対象とした5年の追跡調査によると、緑茶1日6杯以上飲む人は週に1杯以下しか飲まない人と比べて、明らかに糖尿病の発症リスクが低いと報告されています。
断言はできませんが、緑茶に含まれるカフェインやエピロカテキンガレートの働きによって、糖尿病の発症リスクを低下させるのではないかと考えられているのです。
関連記事
【医師監修】血糖値を下げる飲み物&食べ物ランキング〜注目の食材とは?〜
プーアール茶
糖尿病とお茶に関する研究結果によると、ダークティー(黒茶)を毎日飲むと血糖コントロールが改善され、2型糖尿病のリスクと進行を軽減できる可能性があると示唆されたそうです。
なお黒茶は、プーアール茶のことと考えられます。
そして研究結果から、黒茶に含まれる生理活性化合物の作用が腎臓でのブドウ糖の排泄を調整するSGLT2阻害剤の効果と似ている、との報告も。
黒茶を毎日飲む習慣のある人は、尿中ブドウ糖排泄量の増加とインスリン抵抗性の低下がみられたため、血糖値を下げる働きがあるといわれています。
関連記事
【医師監修】SGLT2阻害薬とは 〜種類一覧・副作用・市販薬についても解説〜
桑の葉茶
桑の葉に含まれる1-デオキシリノジリマイシンには、食後の糖吸収抑制・血糖上昇抑制作用があると知られています。なぜなら1-デオキシリノジリマイシンの構造は、ブドウ糖と似ているからです。
本来私たちの体内ではα‐グルコシダーゼという酵素が、糖質をブドウ糖に分解し血糖値を上昇させます。ところが、ブドウ糖と似た構造である1-デオキシリノジリマイシンが存在することで、α‐グルコシダーゼの働きを阻害し食後の糖吸収や血糖値の上昇を抑えると考えられます。
桑の葉に関する試験によると、2型糖尿病の方に葉の粉末1日3gを30日間摂取してもらうことで、空腹時血糖値の改善効果がみられたそうです。
あまり飲む機会のない桑の葉茶ですが、茶葉だけでなくティーバックや粉末でも販売されているので気になる方はぜひお試しくださいね。
あずき茶・黒豆茶
あずき茶や黒豆茶に含まれるアントシアニンは強い抗酸化作用をもちますが、糖尿病や血糖値を下げる効果はまだ研究段階のようです。
過去の研究によると、アントシアニンは糖尿病に対して効果があるとされる論文と、効果がないとされる論文の両方があります。
現段階では、アントシアニンは血管を健康に保つ効果によって、糖尿病の合併症を抑える可能性が期待されています。今後の研究結果が楽しみですね。
関連記事
小豆の栄養で健康をサポート~糖質量やダイエット効果も解説~
知らないと損!黒豆の栄養と効能~黒豆茶・黒枝豆の栄養価も解説~
ルイボスティー
ルイボスティーに含まれるアスパラチンというポリフェノールは、空腹時血糖値の上昇を抑える働きをもつ可能性があります。
研究によると、2型糖尿病モデルのラットにアスパラチンを与えたところ、インスリン(※)分泌量と筋肉へのブドウ糖を取り込む量の増加がみられたそうです。
(※)血糖値を下げるホルモン
血糖値とは血液中のブドウ糖濃度なので、筋肉へのグルコースの取り込みが増えると血糖値が下がるとわかりますね。
関連記事
ルイボスティーとはどんなお茶?~健康に良い成分や効果もカンタン解説~
お茶は糖尿病の方の水分補給にぴったり
無糖のお茶は血糖値を上げないため、糖尿病の方の水分補給に最適です。
糖尿病の方は脱水になりやすいので、普段からこまめな水分補給が必要です。その際にジュースやスポーツドリンクを飲むと、血糖値は急上昇する可能性があります。そこで、血糖値を上げない無糖のお茶や水がおすすめなのです。
参考記事:【医師監修】糖尿病の人は熱中症になりやすいの?~原因や水分補給法も紹介~
毎日緑茶を飲んでも大丈夫?
毎日緑茶を飲むのは、血糖値の管理によい可能性が高いので問題ないでしょう。
ただし医師から指示がある場合は、そちらを優先してください。
薬をお茶で服用してもいいのか
糖尿病の薬に限らず、一般的な薬は水での服用を想定して開発されているため、お茶で服用することはすすめられません。
薬によってはお茶で服用すると効果が薄れるものもあるので、水で服用しましょう。
関連記事
【医師監修】GLP-1受容体作動薬とは〜飲み薬・副作用についても解説〜
トクホのお茶を紹介
トクホのお茶には、食後血糖値の上昇を緩やかにするものがあります。
ここでは、ペットボトルで販売されているトクホのお茶を3種類紹介いたします。どのお茶を選ぶかよりも、続けることが大切なので自分にとって飲みやすいものを選ぶとよいでしょう。
関連記事
トクホのお茶はどんな効果があるの?~おすすめをランキングで紹介~
綾鷹 特選茶(コカ・コーラ)
綾鷹 特選茶は、緑茶のトクホです。
食物繊維である難消化性デキストリンの働きによって、食事由来の糖質の吸収をおだやかにします。そのため、食後血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できます。
からだすこやか茶W+(コカ・コーラ)
からだすこやか茶W+は、ブレンド茶のトクホです。
綾鷹 特選茶と同じく、難消化性デキストリンの働きで食後血糖値の急上昇を防ぐといわれています。
からだすこやか茶W+はブレンド茶なので、緑茶の苦味が苦手な方におすすめです。
蕃爽麗茶(ヤクルト)
蕃爽麗茶はグァバ葉ポリフェノールの働きで、食事に含まれる糖質の吸収を抑え、食後血糖値の低下が期待されています。
研究結果によると白湯と食事を摂った場合と比べて、蕃爽麗茶と食事を摂った場合の食後血糖値が明らかに低かった、と報告されています。
グァバ茶はノンカフェインなので、カフェインが苦手な方や夜に飲む場合におすすめです。
まとめ
以上、お茶は
・血糖値を上昇させない
・2型糖尿病の発症リスクを低下させる可能性がある
ため、糖尿病によいといわれているとわかりました。
現在、糖尿病を治す効果が期待できるお茶はありません。しかし、お茶は血糖値の管理によいほか、2型糖尿病の発症リスクの低下効果が期待できます。
日々の生活にお茶を上手に取り入れて、血糖値の管理によい効果をもたらせるとよいですね。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは、食事や飲み物、血糖値の記録がカンタンにできます。ご自身の記録でお茶と血糖値の関係も見える化できるので、ぜひお試しくださいね。
参考文献
農林水産省 カフェインの過剰摂取について
厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~
Drinking plenty of tea may reduce the risk of developing type 2 diabetes, finds study in over a million adults
Drinking dark tea every day may help control blood sugar to reduce diabetes risk
J-STAGE カテキン摂取による肥満 2 型糖尿病モデルラットの 酸化ストレスと腎臓組織への影響 2.緑茶・コーヒーの糖尿病予防効果 2 型糖尿病モデルマウスのアディポカインに対するアントシアニンの作用 報 告 発酵および非発酵ルイボスティーの 抽出条件がポリフェノール含量および 抗酸化活性へ Hypoglycemic effect of aspalathin, a rooibos tea component from Aspalathus linearis, in type 2 diabetic model db/db mice
蚕糸・昆虫バイオテック80(1)、19-27(2011) クワの健康機能性研究の最前線
一般社団法人愛知県薬剤師会 薬に関するQ&A
コカ・コーラ 綾鷹 特選茶 からだすこやか茶W
ヤクルト 蕃爽麗茶