糖尿病を予防する食事とは~レシピや大切なことを管理栄養士が解説~
当記事の執筆は、管理栄養士 前間弘美が担当しました。
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糖尿病を予防したい理由はひとそれぞれです。
たとえば
・家族に糖尿病の方がいる
・血糖値が高めである
・食後に血糖値スパイクが起こっているように感じる
などをよく耳にします。
そして糖尿病を予防する食事というと
・甘いものを食べてはいけない
・糖質の多いご飯やパン、麺類は食べない方が良い
と考えている方も多いのではないでしょうか?
でも甘いものやご飯、パン、麺類を食べない生活は続けるのが辛いですよね。そもそも糖尿病を予防するには、さまざまな食材を組み合わせたバランスのよい食事を適量摂ることが大切です。
そこで今回は、管理栄養士が糖尿病を予防する食事についてわかりやすくお伝えします。すぐ実践できるレシピもあるので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
糖尿病を予防する食事の基本
糖尿病を予防する食事の基本は、適量のバランス良い食事を続けることです。
無理なカロリー・糖質制限は体に良くない上に、長い間続けられるものではありません。つまり大切なのは自分にとって必要なカロリーや糖質量を知り、さまざまな食材を無理なく食べることなのです。
糖尿病を予防する食事のポイント
糖尿病を予防する食事の大切なポイントを5つお伝えします。
②食材をバランス良く
③間食や飲み物は量を決めて
④できるだけ同じ時間で1日3食
⑤食べる順番で食後高血糖の予防に
それでは1つずつ詳しくみていきましょう。
①適切なカロリー
適切なカロリーは、厳密にいうと一人ひとりの身長・体重・活動量・年齢・性別によって異なります。ただし、かんたんに標準体重×身体活動量の計算式を用いると、ある程度の目安量を計算することができます。
標準体重は、身長(m)²×22です。
身体活動量は下記のように、3段階に分けられます。
身体活動量 | 生活 |
25~30 | 軽い(デスクワーク中心) |
30~35 | 普通(立ち仕事が多い) |
35~ | 重い(力仕事が多い) |
たとえば身長170cmでデスクワーク中心の方は、[(1.7)²×22]×25~30=1590~1907で、おおよそ1600~1900kcalが1日の適正カロリーだとわかります。
同じ身長170cmの方でも、立ち仕事の多い方であれば1900~2200kcalと適切なカロリーが違うので、ご自身の身長や生活に合わせて計算してみるとよいですね。
②食材をバランス良く
糖尿病を予防する食事は、さまざまな食品を組み合わせると良いです。というのもさまざまな食品を組み合わせた食事は、自然とバランス良くなりやすいからです。
とはいえ、ご飯とパンと麺を組み合わせたからといってバランスの良い食事にはなりません。
基本的な組み合わせは、主食・主菜・副菜です。副菜は1食あたり2品が理想です。
主な栄養素 | 食品例 | 食事例 | |
主食 | 糖質 | 米・小麦 | ご飯・パン・麺類 |
主菜 | たんぱく質 | 魚・肉・卵・大豆製品 | 焼き魚・ハンバーグ・卵焼き・麻婆豆腐 |
副菜 | 食物繊維・ビタミン・ミネラル | 野菜・海藻 | サラダ・ひじき煮・みそ汁・スープ |
さらに、乳製品・果物を1日に1~2回取り入れます。
主な栄養素 | |
乳製品 | カルシウム |
果物 | ビタミン・ミネラル・食物繊維 |
たとえば、1日に必要なカロリーが1600kcalの方であれば、
昼:ご飯(普通盛り)・麻婆豆腐・きゅうりの酢の物・わかめスープ
夜:ご飯(普通盛り)・鮭のホイル焼き・ほうれん草のおひたし・具沢山みそ汁
間食:バナナ
このぐらいが適量といえます。
とはいえ、毎回食事のカロリーを計算するのは大変なので、続けられなくなることも多いです。そこで、食事記録できるアプリを利用するのもオススメですよ。
③間食や甘い飲み物は量を決めて
糖尿病を予防するには、間食や甘い飲み物の量を意識するとよいでしょう。
間食にお菓子や甘い飲み物を摂りすぎると、当然カロリー・糖質の摂りすぎにつながります。
とはいえ、お菓子や甘い飲み物でリラックスしたり、職場や友人とのコミュニケーションツールの1つとして使うのは悪いことではありません。
そこでカロリー・糖質の摂りすぎを防ぐために、あらかじめお菓子や甘い飲み物の量を決めて食べ始めるのです。
一般的に間食は200kcalまでといわれています。そこで、カロリーごとにお菓子や甘い飲み物をまとめてみました。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット
たまには、カロリーの高いケーキやクレープを食べたい日もあるでしょう。その場合は他の日のお菓子を少し減らしたり、果物にするとよいですよ。
果物は野菜に比べると、カロリー・糖質の高いものが多いです。そのため、副菜の代わりにはなりません。
ところが、お菓子や甘い飲み物と比べると、果物には食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富です。つまり間食に果物を食べると、お菓子や甘い飲み物では摂れない栄養が補給できるのです。
1週間単位で組み合わせても
たとえば1週間単位でお菓子や甘い飲み物、果物、間食をしない日を組み合わせる方法もありますよ。
【間食組み合わせ例】
・月曜 みかん(40kcal)
・火曜 ヨーグルト(100kcal)
・水曜 炭酸飲料(220kcal)
・木曜 間食なし(0kcal)
・金曜 カットりんご(46kcal)
・土曜 ケーキ(354kcal)
上記の間食だと、1週間の平均で1日109kcalになります。
このように1日平均100~200kcalを間食で摂る方法なら、無理なく調整できてオススメですよ。
参考記事:糖尿病に間食&おやつはダメ?現役管理栄養士が徹底指導
④できるだけ同じ時間で1日3食
1日3食同じ時間に食事を摂ると、血糖値の急上昇を防げます。なぜなら食事の間隔が空きすぎると、血糖値が急上昇しやすくなるからです。
さらに、夕食は早めに食べると血糖値変動が緩やかになるといわれています。というのも21時に夕食を食べると、18時に食べた場合と比べて血糖値が上がりやすく、朝方まで血糖値が下がらないという研究結果があるからです。
もしも仕事の都合で夕食の時間が遅くなる場合などは、夕食を2回に分けて食べる方法があります。
まず18時ごろに主食を食べ、仕事後に主菜と副菜を食べる方法です。この方法だと仕事後に夕食を食べるよりも、血糖値の急上昇が防げ、夜の血糖値も下がりやすいですよ。
参考記事:血糖値を上げない食べ方について管理栄養士が解説~順番や糖質量も~
⑤食べる順番で食後高血糖の予防に
ベジファーストといって、食事の最初に野菜を食べると血糖値が上がりにくくなり、食後高血糖の予防につながります。つまり、副菜から食べることがオススメです。
なお、たんぱく質にも血糖値の急上昇を抑える効果があるため、副菜→主菜→主食の順に食べるのが理想です。
ただし副菜の野菜が少なすぎたり、早く食べすぎると効果はうすくなる可能性があります。たっぷりの野菜をゆっくりよく噛んで食べましょう。
参考記事:【医師監修】食後高血糖になるとどんな症状が起こる?〜改善方法を紹介〜
食べてはいけないものはあるの?
糖尿病予防のために食べてはいけないものは、ありません。
実は糖尿病になっても、医師の指示がなければ禁止される食品はないのです。
くりかえしになりますが、糖尿病の予防で大切なのは適量でバランスのよい食事を続けることです。
甘いものや高カロリーの食べ物はどうか
ケーキやスイーツのように甘いものや揚げ物などの高カロリーな食べ物でも、食べられます。
ただし、先ほど間食のとり方でもお伝えしたように、甘いものや高カロリーのものを食べるときは、他の日の間食やその日の他の食事で調整する必要があります。
カロリーと糖質どちらを優先するの?
糖尿病予防のための食事では、カロリーと糖質量のどちらも気をつける必要があります。
そのためには自分にとって必要なカロリー・糖質量を把握し、さまざまな食品を組み合わせて食事を摂るのです。
とはいえ、毎食カロリー・糖質量の両方を計算し続けるのは負担ですよね。基本的には必要なカロリーの中で、主食・主菜・副菜・乳製品・果物・間食を摂れば、極端に糖質量が多くなることはないと考えられます。
【管理栄養士考案】糖尿病予防に良いレシピを紹介
糖尿病予防で大切なのはさまざまな食材をバランスよく摂ることですが、毎食副菜を2品作るのはハードルが高いと感じる方も多いかもしれません。
そこで、比較的用意しやすい野菜のおかずと汁物の2品を紹介いたします。和食・洋食の副菜を載せたので、毎日の食事に組み合わせてみてくださいね。
和食の副菜
和食の副菜は、小松菜の煮びたしと具沢山みそ汁です。煮びたしは電子レンジで、みそ汁は冷凍の根菜を利用するのでかんたんに作れますよ。
【小松菜の煮びたし】
・小松菜 1/2把
・人参 1/3本
・油揚げ 1/4枚
・水 200ml
・醤油 大さじ1
・酒 大さじ1
・ラカント 小さじ1
【作り方】
①小松菜は3cmに切り、人参は3cmのせん切り、油揚げは2cmのたんざく切りにする
②耐熱容器に人参・小松菜・水150mlを入れ、ラップで落し蓋をしたあと、ふんわりとラップをかけ、電子レンジ600wで10分加熱する
③油揚げと水50mlを加えて混ぜたら、さらに2分加熱
④調味料を加えて混ぜたのち、3分加熱したらできあがり
【具沢山みそ汁】
・根菜(冷凍) 1袋
・水 200ml
・和風だし 小さじ1
・みそ 大さじ1/2
【作り方】
①水と和風だしを入れた鍋に根菜の水煮を入れ、火にかける
②沸騰したら、15分ほど弱火で加熱する
③根菜がやわらかくなれば、みそを加えてできあがり
※お好みでネギを添えます
洋食の副菜
洋食の副菜はきのこのマリネと野菜たっぷりコーンスープです。マリネはカットきのこと丸ごと使えるえのき(※)、コーンスープは粉末のコーンスープを使って、手軽に用意できます。
(※)あらかじめ根元をカットした状態で販売されているもののこと
【きのこのマリネ】
・カットしめじ 50g
・カットエリンギ 50g
・丸ごと使えるえのき 50g
・おろしにんにく 小さじ1/2
・オリーブオイル 大さじ1/2
・酒 大さじ1/2
・酢 大さじ1/2
・醤油 大さじ1/2
・塩こしょう 少々
【作り方】
①えのきは3cmの長さに切っておく
②フライパンにきのことおろしにんにく、調味料を全て入れて混ぜ合わせる
③中火で加熱し、煮立ったらふたをして弱火で5分ほど加熱したら、できあがり
【野菜たっぷりコーンスープ】
・人参 1/2本
・玉ねぎ 1個
・コーン(冷凍) 10g
・ほうれん草(冷凍) 20g
・コーンスープ(粉末)2袋
・水 150ml
・牛乳 150ml
【作り方】
①人参・玉ねぎは、2cmの角切りにし、水50mlと耐熱用容器に入れてふんわりとラップをしたら電子レンジ600wで8分加熱する
②①を鍋に移しコーンスープを入れ、ダマにならないようよく混ぜる
③水100mlを加えて火にかけたら、焦げないように混ぜながら弱火で加熱する
④沸騰したらコーンとほうれん草を加え、牛乳150mlを加えて火が通ればできあがり
糖尿病の予防で大切なこと
糖尿病の予防において大切なのは、自分にとって必要なカロリー・糖質量の中でさまざまな食品から栄養を摂ることです。
さらに、糖尿病に良いといわれる食品や塩分、運動について意識することも大切です。
特定の食材に頼らない
糖尿病に良い、といわれる食品はたくさんあります。糖尿病になりたくないという気持ちから、TVや雑誌、インターネット、SNSで情報収集されている方も多いのではないでしょうか?
もちろん糖尿病に良いといわれる食品を摂るのは、糖尿病予防に役立つでしょう。しかし糖尿病は、特定の食品を摂ったからといって予防できるものではありません。
糖尿病に良いといわれる食品を取り入れつつ、適量でバランスの良い食事を続けることが大切ですよ。
参考記事:【医師監修】糖尿病に良い食べ物は?食材やメニューをわかりやすく紹介
適量の塩分
糖尿病の方は高血圧を合併することが多いといわれています。また、塩分の多いおかずはご飯が進みやすく、食べすぎにつながる可能性も。
そこで、塩分量も適量を心がけるとよいでしょう。
参考記事:血圧が上がる原因は塩分?運動不足?~高血圧を防ぐ具体策もご紹介~
運動も効果的
食後に運動すると
・血糖値の急上昇が抑えられる
・糖質をエネルギー源として利用できる
ため、糖尿病の予防には運動も効果的といえます。
さらに継続して運動すると筋肉がつきインスリン(※)の効きがよくなるため、血糖値の下がりやすい体づくりにつながります。
(※)血糖値を一定に保つホルモン
血糖値の急上昇を防ぐには、食後の運動が効果的です。しかし、食後に限らず運動を継続することは、糖尿病の予防に有効といえます。
参考記事:食後の運動は血糖値の改善につながる〜オススメの運動を動画で紹介〜
まとめ
糖尿病を予防するには、自分に必要なカロリー・糖質量の中でバランスの良い食事を摂ることが大切です。
さらに、1日3食同じ時間に主食・主菜・副菜のそろった食事をすると良いでしょう。乳製品や果物、間食は調整しながら、適宜取り入れてくださいね。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは、食事の記録やカロリー計算がかんたんにできます。あなたの糖尿病を予防する食事のサポートとして、お役立ていただけるとうれしいです。
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【医師監修】高齢者に多い糖尿病と認知症の関係〜日々の生活で血糖値に気をつけよう〜
【参考文献】
文部科学省 日本食品標準成分表2020年版
厚生労働省 食事摂取基準2020
国立国際医療研究センター(糖尿病情報センター)糖尿病の食事のはなし(基本編) 糖尿病の食事のはなし(実践編) 糖尿病の食事のはなし(献立編)
日本農芸化学会 化学と生物 食べ方と食べる時間が血糖変動に影響を与える
J-STAGE 糖尿病と運動 食後血糖に及ぼす様々な身体活動の影響