糖尿病だと感染症になりやすい? ~理由と対処法をシンプルに解説~

昨今、たくさんのニュースや情報番組で取り上げられている感染症。
「糖尿病などの持病がある人は感染症が重症化しやすい」というのを聞いたことがある人も多いでしょう。
「どうして糖尿病だと感染症になりやすいの?」
当記事では、その理由と対処法について、わかりやすく説明していきます。
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目次
糖尿病だと感染症になりやすい理由
糖尿病の方は免疫機能低下、血流障害、神経障害などが起こり、体の中で感染を防ぐ力が低下してしまうことも。
とはいえ免疫機能低下、血流障害、神経障害と言われても、よく分からない方も多いと思うので簡単に説明していきます。
免疫機能の低下について
私たちの体には、白血球という血液の成分があります。白血球の働きは、体内に入ってきた菌と戦うことです。
その白血球の中に、好中球という成分が含まれていて細菌に感染すると集合して、菌を食べてくれます。
しかし糖尿病の方は好中球の機能が低下してしまうことがあるため、免疫機能低下が起こりやすくなるケースもあります。
参考記事:糖尿病と歯周病には関係があるの? 対応法をまじえてポイントを解説
血流障害について
糖尿病になると血糖値が上がるのは何となくご存じでしょうか?血糖値は、血液に含まれるブドウ糖の濃度のことです。
では血液の中で、ブドウ糖の濃度が上がっていったらどうなるでしょうか?血液がドロドロになってしまい、流れが悪くなってしまいます。
これが血流障害で、高血糖が続くと起こりやすくなります。
血流障害が起こると、さらに血管が詰まりやすくなるのとあわせ、血液に含まれる白血球が体の中で回りづらくなってしまうのです。
神経障害について
神経障害は、血流障害や代謝機能の異常などが原因で起こります。
初期症状は「しびれ」が多いと言われており、進行すると感覚が低下していき、気付かず壁で腕を擦ったり熱い鍋に触れたりなどし、ケガや火傷が増えてくるという人もいます。
また、立ちくらみ(起立性低血圧)や発汗異常などが起こるケースもあります。
糖尿病と神経障害について詳しく知りたい方はこちら
免疫機能低下、血流障害、神経障害の関わり
例えば神経障害で感覚がなくなって、ケガが増えたとしましょう。ですが血流障害があると、体の中で回っている血液は少なくなるため傷口に白血球が届きづらくなります。
そして免疫機能低下があれば、傷口から入ってきた菌と戦っても負けてしまうことが多くなってしまいます。すると、菌はどんどん体の中に入ってきてしまうので、感染症にもなりやすくなってしまうのです。
かかりやすい感染症と予防法
かかりやすい感染症の代表的なものをご紹介します。
代表的なものを挙げてみました。聞いたことのある感染症も多かったのではないでしょうか?これ以外にも感染症はたくさんあります。
感染症にかかると症状も辛いし、治療も辛いし、大変なことがたくさんあります。
ですので大事なのは、感染症にかからない工夫をすることです。
全くかからないというのは難しいかもしれませんが、少しでも感染症にかからないようにするために大切なのは感染症を予防することです。
それでは、感染症の予防方法をお伝えしていきます。
①血糖のコントロールをすること
まずは良好な血糖コントロールを維持することが大切です。血糖値が高いと感染症になりやすいのは、すでに説明しました。
適切な血糖値でいられるように血糖のコントロールをすることは、感染症を予防することに繋がります。
②自分自身の体調に注意をすること
感染症を全く起こさないのは難しいことです。ですが糖尿病だと重症化になりやすいので、それも困ります。
だからこそ、早期発見と適切な治療が必要になります。そのためには、日頃から自分自身の体調と向き合うことが大切です。
また、神経障害が起こるとケガが増えることもお伝えしました。ふと思い立ったらケガをしていないか、体を見てあげてください。
③予防接種を受けること
感染症の中には予防接種をすることで、感染を防いだり、感染したとしても症状を軽くすることができるものがあります。
インフルエンザや肺炎球菌ワクチンは、耳にしたこともあるかと思います。受けられる時期や年齢が決まっていたりすることもあるので、一度確認してみると良いかもしれません。
感染症にかかった際に気をつけること
感染症に気をつけていたけど、かかってしまった…ということも実際あります。
そんな時に気をつけてほしいことをお伝えしていきますね。
①適切な治療を受けること
感染症にはたくさんの種類があり、それぞれ治療が違います。そして、糖尿病の方は重症になりやすいです。だからこそ、ご自身の判断で様子を見るのは危険な状態になることも。
体調に異変を感じたら早めに病院を受診し、医師の指示に従い、適切な治療を受けましょう。
②シックデイに注意すること
糖尿病の方が、感染症などで体調を崩して食事が摂れないことをシックデイと言います。(感染症に限らず、体調を崩した時や食欲不振がある時も同様です。)
シックデイになると、血糖が乱れやすくなります。また、ご飯が食べられていないから…と自己判断でインスリン注射をやめてしまうと、一気に血糖値が上がってしまうことも。
そんなシックデイの時に注意するポイントをお伝えします。
1)主治医に連絡する・医療機関を受診する
体調不良が強かったり続いたりする時は、自己判断で行動せず、主治医の指示を受けましょう。
2)適度な食事摂取と十分な水分補給をする
医師から絶食の指示を受けていなければ、少しずつでも食事を摂ってみてください。また、脱水にも注意が必要です。
3)血糖値をこまめに確認する
血糖値が乱れやすいシックデイの間は、血糖値の変動にも注意が必要です。普段よりもこまめな血糖測定をおすすめします。
まとめ
では糖尿病と感染症についておさらいしますと、
◎感染症を予防するために、『血糖のコントロールをすること』『自分自身の体調に注意をすること』『予防接種を受けること』が重要
◎感染症にかかったら、『適切な治療を受けること』『シックデイに注意すること』が大切
今回の内容を参考に、感染症には注意して、糖尿病と上手く向き合いながら健康に過ごしてもらえると嬉しいです。
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参考文献
医療情報科学研究所編(2016),病気がみえるvol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第4版,P61-80
国立国際医療研究センター糖尿病情報センター(2018),糖尿病と感染症のはなし(参照2020年8月28日)