マグネシウムは不足しがち?~健康効果や多く含む食品についてご紹介~
当記事の執筆は、管理栄養士 白石香代子が担当しました。*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
「マグネシウムって健康にいいらしいけど、そもそもマグネシウムってなに?」
理科の授業を思い出す「マグネシウム」という言葉。最近、テレビ番組や雑誌などで目にする方も多いのではないでしょうか。
一方でマグネシウムは、私たちに不足しがちな栄養素でもあります。
そこで今回はマグネシウムについて、どのくらい食べたらよいのか、どのような健康効果があるのかなどわかりやすくご紹介します。
マグネシウムが豊富な食べ物やレシピやもお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
そもそもマグネシウムとは
マグネシウムは私たちの体に必要なミネラル(※)で、主に骨や歯を作るのに役立つ栄養素です。
(※)ミネラルとは、私たちの臓器や組織をスムーズに動かすもの。体の機能維持や調整に不可欠な物質。
私たちの体の中には、約25gのマグネシウムがあるといわれています。そして、実はその半分以上が骨の中に存在するのです。
つまりマグネシウムは骨の健康を考える上で、とくに欠かせない栄養素といえます。
ちなみに、マグネシウムは体内で作られない栄養素ですから食べ物から摂る必要があります。
参考記事:【医師監修】骨粗しょう症は糖尿病の合併症?〜血糖との関係・検査・対策をポイント解説〜
マグネシウムは不足しやすい?
令和元年に行われた国民健康栄養調査によると、男女ともにマグネシウム摂取量が不足気味であるとわかりました。
なおマグネシウムが長期的に不足すると、生活習慣病のリスクを高めると考えられています。
一方で通常の食事を摂っている分には、マグネシウム不足による急性の症状は出にくいです。
ゆえにマグネシウム不足は自覚しにくいため、注意が必要なのです。
マグネシウム不足の原因
マグネシウム不足の原因は、次の通りです。
・慢性アルコール依存症
・利尿剤など医薬品の影響
マグネシウム不足をチェックしてみよう
マグネシウムが不足した状態、つまりマグネシウム血症の症状をご紹介します。
・嘔吐
・眠気
・脱力感
・筋肉のけいれん
・ふるえ
・食欲不振
これらの症状があるからといって必ずしもマグネシウム不足とはいえませんが、気になる方はチェックしてみてくださいね。
マグネシウムの健康効果
マグネシウムを適正に摂取すると骨の健康維持だけでなく、糖尿病、高血圧、ダイエットなどに良好な結果を及ぼすと報告されています。
さっそく順に見ていきましょう。
血糖コントロールの改善
マグネシウムを摂り入れると、インスリン抵抗性(血糖値を下げるインスリンの効きが悪い状態)と血糖コントロールが改善されたという報告があります。
またマグネシウムの摂取量が多いと、2型糖尿病の発症リスクが10~35%も低くなるといわれています。
参考記事:【医師監修】インスリンとは〜糖尿病との関係・治療・注射についてわかりやすく解説〜
血圧の改善
マグネシウムを摂ると血流がスムーズになり、血圧を下げる効果が期待できるでしょう。
なぜならマグネシウムには、血管を拡張させる働きがあるからです。
海外の研究では、マグネシウムの摂取量を1日100mg増やすと、下記の降圧が見られました。
・拡張期血圧(下の血圧):1.1mmHg
参考記事:【医師監修】血圧をすぐに下げる方法はあるのか〜食事や運動が大切〜
ダイエットに役立つ
マグネシウムは単なるダイエットによいというより、病気のリスクが高いメタボリック症候群(※)の肥満改善、つまり減量に効果的といえるでしょう。
(※)通称メタボ。おへそ周りの腹囲が男性85cm・女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れた状態のこと。
メタボリック症候群は、お腹の内面や内臓の周りに脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」の状態ですが、マグネシウムの摂取量が多いと発症リスクが31%も低くなるという研究結果があります。
お腹周りが気になる方の減量サポートに、マグネシウムが一役買うかもしれませんね。
参考記事:脂質異常症と高脂血症は違うもの?~メタボとの関係についても詳しく解説します~
1日の摂取量はどのくらい?
厚生労働省が推奨する1日あたりのマグネシウム摂取量は、年齢や性別によって違います。
下記の表を参考にしてください。
年齢 | 男性 | 女性 |
18-29歳 | 340mg | 270mg |
30-49歳 | 370mg | 290mg |
50-64歳 | 370mg | 290mg |
65-74歳 | 350mg | 280mg |
75歳以上 | 320mg | 260mg |
サプリメントは過剰摂取に要注意
マグネシウム不足をサプリメントで補おうとする際には、摂りすぎに注意しましょう。
なぜならサプリメントなど通常の食品以外からマグネシウムをたくさん摂取すると、下痢を引き起こす可能性があるからです。
なおマグネシウムの摂取量がさほど多くない場合にも、軽い一過性の下痢が生じるケースもあるようです。
そのためサプリメントなど通常の食品以外からのマグネシウム摂取は、成人で1日350mgが上限とされています。
一方で通常の食品からマグネシウムを過剰に摂取しても、健康に悪い影響が発生したとの報告は見当たりません。
そのため通常の食品からのマグネシウム摂取量に、上限は定められていません。
マグネシウムを多く含む食品
マグネシウムは野菜、豆類、海藻、魚介、種実、果物など身近な食べ物に含まれます。
東京慈恵会医科大学の横田邦信先生が提案している「そばのひ孫と孫(は)優しい子かい?納得!」がとても覚えやすいので、ご紹介しますね。
参考までに、次のように食べれば30~64歳の男性が1日に推奨されている量(370mg)を超えるマグネシウムが摂れるでしょう。
・ほうれん草1/2束(100g)
・あじ1匹(70g)
・じゃがいも1個(200g)
・納豆1パック(50g)
オススメは和定食スタイル
上記でご紹介した、マグネシウムを多く含む食べ物を摂取しやすいのは和食スタイルです。
汁物に3種類のおかずを組み合わせた「一汁三菜」を意識すると、無理なくマグネシウムが補えます。
また、献立を考える際のポイントもお伝えしますね。
主食のご飯には五穀(ごこく/米・麦・アワ・ヒエ・豆)を入れるとよいのですが、難しく考えず、雑穀を混ぜたり大麦ご飯にしたりするだけでOKです。
②味噌汁は具たくさんに
マグネシウムが豊富なワカメや野菜、豆腐をたっぷり入れるようにしましょう。
③主菜はなるべく魚を選ぶ
海水にはマグネシウムが豊富で、その海で生きる魚にも当然マグネシウムは肉より多いです。
④副菜を多くする
ひじき、野菜やしいたけなどは副菜メニューに合わせやすい食材です。いつもより副菜を1品多くするとよいですね。
チョコレートやコーヒーはどうか
チョコレートには、マグネシウムが多く含まれます。
とくにアーモンドチョコレートやミルクチョコレートに多く含まれ、ホワイトチョコレートにはやや少なめです。
ただし、チョコレートの食べすぎはカロリーや糖質、脂質の摂りすぎにつながります。
その結果、血糖コントロールが悪くなったり、高血圧や肥満の原因となったりしますので、食べすぎないようにしましょう。
またチョコレートと相性のよいコーヒーに多く含まれるカフェインには、マグネシウムの排出を促す働きがあります。
ゆえにマグネシウム不足が気になる方は、カフェインを多く含むコーヒーや栄養ドリンクなどは控えめにするとよいでしょう。
カフェインレスのコーヒーを楽しむのもよいですね。
とっておき&簡単レシピを紹介
それでは、1日のマグネシウム推奨量の1/4〜1/3が1品で摂れるレシピをご紹介します。
【そばとひじきのサラダ〜柚子こしょう風味〜】
・そば(茹で) 1袋
・ひじき(乾燥) 10g
・しいたけ 5個
・水菜 1株
〜調味料〜
・ごま油 大さじ1
・ぽん酢 大さじ3
・ゆず胡椒 適宜
【作り方】
①鍋に水とひじきを入れて火にかけ、沸騰する前にスライスした椎茸を入れ茹でる。ザルにあげて水気を切り、冷ます。
②そばは1分ほど軽く茹で、ザルにあげて冷ます。水菜は4cm程度の長さに切る。
③ボウルにひじきと椎茸を入れ、調味料を加えて和える。そばと水菜を加えて軽く混ぜ合わせる。
まとめ
以上、マグネシウムは主に骨や歯を作るのに役立つ栄養素で、食べ物からの摂取が必要なことがおわかりいただけたと思います。
またマグネシウムは骨の健康維持だけではなく糖尿病、高血圧、ダイエットなど、私たちの健康に広く関わっています。意識して取り入れることが大切ですね。
そしてマグネシウムは、豆類や海藻など身近な食べ物に含まれています。「そばのひ孫と孫(は)優しい子かい?納得!」は、どのような食品を食べるとマグネシウムが摂れるのかがわかりますので、覚えておくと便利です。
それでは当記事を参考に、マグネシウムへの理解が深まり、健康作りに活かしていただけると嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や食事の記録がカンタンにできます。日々の食事管理でぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット 日本人の食事摂取基準(2020 年版) 「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書 eJIMマグネシウム カフェイン・アルコールの影響について
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報 マグネシウム
公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
日本糖尿病療養指導士認定機構 マグネシウム(Mg)と糖尿病の関係について
日本チョコレート・ココア協会 マグネシウム給源としての チョコレート・ココアの可能性