【医師監修】糖尿病とストレスの関係~適度にリラックスして生活しよう~
当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。
執筆はライター 前間弘美(管理栄養士)が担当しました。
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「イライラすると食べる量も増えてしまう」
「嫌なことがあるとついついお酒の量が多くなる」
「明日の仕事が気になって寝つきが悪い」
「仕事の休憩中に吸うタバコが辞められない」
これらはストレスを感じると引き起こされる行動です。
そして、糖尿病とストレスにはつながりがあるといわれています。
そこで今回は、糖尿病とストレスの関係について、わかりやすく解説いたします。ぜひ、最後までお付き合いください。
目次
糖尿病とストレスのつながり
ストレスを感じることの多い生活を送っていると、血糖値が上がりやすくなることが知られています。うつ症状は2型糖尿病の発症リスクを1.32倍増加させるという報告もあります。
ストレスが血糖値に与える影響
私たちがストレスを感じると
・睡眠
・喫煙
・飲酒
といった生活習慣が乱れやすくなります。生活習慣が乱れると、血糖値も上がるでしょう。
またストレスによって血糖値が上がる要因としては、カテコールアミンというホルモンが増えるためやインスリン抵抗性が上がるためといった報告があります。
ストレスが原因で糖尿病に影響を与える行動
ストレスによって引き起こされる生活習慣が、血糖値や糖尿病にどのような影響を与えるのか詳しく解説いたします。
食べすぎ
ストレスによって食事量の制御ができなくなったり、ストレスによって生じる感情の変化を食べることでコントロールしようとしたりするため、食事摂取量が増加します。
このような時は、とくに糖分や脂肪分の多い食品を摂取しがちに。カロリーの摂りすぎは体重増加につながるため、肥満になる可能性があります。
肥満は糖尿病のリスクの1つです。なぜなら内臓に脂肪が付くと、インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性が上がる)からです。
なお摂取する糖質量が増えると、血糖値は上がりやすくなります。ストレスを感じると糖質を多く含む甘い物を食べたくなることもあるでしょう。適量の糖質は私たちの体に必要ですが、摂りすぎると糖尿病に大きな影響を与えます。
参考記事:糖尿病に間食&おやつはダメ?現役管理栄養士が徹底指導
睡眠不足
ストレスを感じて寝つきが悪くなると、睡眠不足につながることがあります。そして、睡眠不足が続くとさらにストレスが溜まるでしょう。
慢性的に睡眠不足の方は充分な睡眠をとっている方と比べて、糖尿病になるリスクが1.5~2倍高いといわれています。また一時的な睡眠不足であっても、インスリンの効き具合が悪くなり血糖値が上がりやすくなります。
また、睡眠不足によって食欲が増すことも。食欲が増加すると摂取カロリー・糖質も増えるので、糖尿病のリスクが高まると考えられます。
参考記事:不眠は糖尿病のリスクを高めるって本当?睡眠不足解消のポイントも紹介
喫煙
仕事中のストレスを、休憩中のタバコで解消する方もいらっしゃるでしょう。
しかしタバコは血糖値を上昇させたり、インスリンの働きを妨げたりします。さらに喫煙者は非喫煙者と比べて、約2倍も2型糖尿病になりやすいという報告もあります。
参考記事:糖尿病とタバコの関係〜血糖値への影響から電子タバコまで幅広く解説〜
飲酒
適量のアルコールは、ストレス解消になるでしょう。しかし多量の飲酒は、血糖値の上昇やカロリー・糖質の摂りすぎにつながります。
アルコールを摂取すると、肝臓に貯蔵されているグリコーゲン(※)の分解を促進します。すると血液中のブドウ糖が増えるため、血糖値が上昇するのです。
(※)多数のブドウ糖がくっついたもの
さらにアルコールを摂取すると、食欲が増します。おつまみは脂っこいものや味の濃いものが多いため、カロリー・糖質だけでなく塩分の摂取量も増えます。糖尿病だけでなく高血圧などの生活習慣病のリスクも高まるので、飲酒は適量にしてくださいね。
参考記事:糖尿病とアルコールの付き合い方~適量や飲み過ぎ対策を紹介~
ストレスだけで糖尿病になるの?
ストレスだけで糖尿病になるとは考えにくいですが、原因の1つとはいえます。
実はストレスによりカテコールアミンやコルチゾールというホルモンが増え、血糖値が上昇します。つまり、ストレスを感じると血糖値が上がることがあるのです。ただし、急性ストレスか慢性ストレスかや、その人の性格によってもストレスによる血糖上昇の程度は大きく異なります。
そのためストレスだけでなく、生活習慣などのさまざまな要因が積み重なって糖尿病になることが多いといえるでしょう。
参考記事:ストレスで起こる体や心の異変~生活習慣病への影響も解説~
ストレスを解消したら糖尿病は治るのか
ストレスを解消しても、糖尿病が治るとは言えません。
ただし、ストレスによる食べすぎなどの生活習慣の乱れが解消されたり、コルチゾールの分泌が減ったりすれば、血糖値が改善されるでしょう。
つまり、ストレスを解消すれば血糖値が改善する可能性はあります。糖尿病を悪化させないためには、ストレスをため込まないということも大切なのです。
ストレスを解消するには
日々の生活におけるストレスを解消するには、
・規則正しい生活習慣
・リラックス
が大切です。
日々の仕事や生活の中でストレスを感じることは、自然なことかもしれません。ただし、ストレスを溜め込むのでなく解消していくことが、糖尿病を悪化させないために重要といえます。
規則正しい生活習慣
規則正しい生活習慣とは、
・十分な睡眠
・適度な運動習慣
のような生活習慣のことです。一度に全ての生活を改善するのは負担かもしれないので、少しずつ変えていきましょう。
日々の生活にリラクゼーションを
リラクゼーションはイライラの要因となるストレス解消に効果的です。
・アロマの香りに癒される
・美味しいお茶を飲む
など自分がリラックスできる状況を把握し、ストレスを解消する習慣をつけるとよいでしょう。
ストレス対処に有効なコーピングリストを作るのもおすすめです。コーピングリストの作り方はこちら
糖尿病の治療をストレスに感じる場合
糖尿病の治療をしていると、好きなものを好きなだけ食べることができなかったり、運動が好きじゃなくても運動を勧められたりとストレスに感じることも。
また、インスリン注射の治療をしていると外出時などにも気遣いが必要になり、ストレスを抱えることが多くなるでしょう。
ただし糖尿病治療のストレスが原因で、糖尿病が悪化してはもったいないです。また治療の負担が原因で治療を中断したいと感じる方も、少なくありません。
そこで糖尿病治療がストレスだと感じたら、かかりつけの医師に相談してみてください。治療方法を、ご自身のライフスタイルに合ったものに近づけることもできます。
参考記事:糖尿病の治療を中断したい理由とは?~理由に応じた解決法もご紹介~
まとめ
ストレスを感じると血糖値が上がりやすくなる可能性があるため、糖尿病とストレスには関連があるとわかりました。
ストレスを感じたときに、食べすぎ・睡眠不足・喫煙・飲酒をおこなうと血糖値が上がりやすくなります。またストレスを感じると、血糖値を上げるコルチゾールというホルモンが増えることもあります。
ストレスだけで糖尿病になるわけではありませんが、糖尿病を悪化させないためにはストレスをため込まないことが大切です。もし糖尿病の治療をストレスに感じている場合は、主治医に相談してくださいね。
それでは当記事を参考に、糖尿病とストレスの関係を知っていただければうれしいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値・体重・血圧などの記録がカンタンにできます。日々の血糖コントロールにぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット
医療情報科学研究所:病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第5版,メディックメディア,東京都
糖尿病 39巻2号(1996)
JOURNAL OF THE JAPAN DIETETIC ASSOCIATION Vol. 53 No. 4, 2010
血糖変動と精神症状に関する国内外の研究の動向 Comprehensive Medicine Vol.20 No.1(2021)