【医師監修】脂質異常症とヨーグルトの関係をコレステロール値ごとに解説
当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。執筆はライター 松原知香(管理栄養士)が担当しました。
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「健康診断で“脂質異常症の疑いあり”といわれたけど、健康にいいヨーグルトは食べられるの?」
LDLコレステロールや中性脂肪など、血中脂質の値が基準を外れることで診断される脂質異常症。以前は「高脂血症」と呼ばれていました。
脂質異常症の方は「乳製品の摂り過ぎに注意しましょう」と言われることもありますが、ヨーグルトは身体に良さそうだから食べてもいいのかな?思う方も多いはず。
そこで今回は、脂質異常症とヨーグルトの関係について詳しく解説していきます。
脂質異常症のタイプを3つに分類し、それぞれに合ったヨーグルトの選び方や食べ方についてもご紹介しますよ。
皆さんが安心してヨーグルトを楽しめるよう分かりやすくお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
脂質異常症の方はヨーグルトを食べてもいいのか
「脂質異常症の方はヨーグルトを食べてはいけない」といった決まりはありません。
ただし、脂質異常症の方は医師から「肉の脂身や乳製品の摂取を控えましょう」と言われることがあるように、食べ方や食べる量などには注意が必要です。
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脂質異常症とは
脂質異常症とは、血液中の脂肪分であるコレステロールや中性脂肪が基準値から外れた状態のことです。
なお、脂質異常症と診断されてもすぐに薬物療法を開始するわけではありませんが、動脈硬化のリスクが高いので注意が必要です。
参考までに、動脈硬化が原因の疾患(※)による死亡は総死亡の22.5%と高い割合を占めます。
(※)動脈硬化が原因の疾患・・・心筋梗塞や脳梗塞など
また、脂質異常症の治療の基本は生活習慣の改善ですので、ここでは食事、主にヨーグルトについて解説をしていきます。
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タイプ別の注意点を解説
それでは、脂質異常症のタイプ別に注意点を解説いたします。
ただし、一般的な注意点なので、現在通院中の方は主治医の指示に従ってくださいね。
LDLコレステロール値が高い人
脂質異常症の中でも特にヨーグルトに注意が必要なのは、LDLコレステロール値が高い人です。
なぜならLDLコレステロール値が高い一番の原因が、飽和脂肪酸(※)の過剰摂取だからです。
(※)飽和脂肪酸・・・肉の脂身や乳製品に多く含まれる脂肪酸のこと
ちなみに、飽和脂肪酸の摂取は18歳以上の男女でエネルギー比率7%以下が望ましいとされています。
20歳以上の日本人が1日に摂るエネルギー量の平均は約1900kcalですので、この7%に相当する飽和脂肪酸は約14.8gです。
なお、無糖のヨーグルト100gあたりには、飽和脂肪酸が1.83g含まれます。
小分けのパックは1個約100gのものが多いので、1日に1個無糖ヨーグルトを食べたからといって基準を大きく超えるわけではありません。
ただし、肉類を多く食べた日はヨーグルトを控える、牛乳とヨーグルトを同じ日に食べないようにするなど、他の食事とのバランスに注意しましょう。
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HDLコレステロール値が低い人
HDLコレステロール値とヨーグルトの摂取に大きな関係はないでしょう。
なぜならHDLコレステロール値は、トランス脂肪酸の摂取と関連性が大きいからです。
トランス脂肪酸とは牛肉や乳製品にも微量に含まれますが、多くはマーガリンやファットスプレッド、ショートニングから摂取されます。
しかし、一般的に中性脂肪が高くなるとHDLコレステロールは低くなる傾向があるので、気になる方は次の「中性脂肪値が高い人」も参考にしてくださいね。
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中性脂肪値が高い人
中性脂肪値が高い人は、加糖やドリンクタイプなど糖分の多いヨーグルトに注意が必要です。
なぜなら中性脂肪値が上がる要因として糖質を多く含む菓子、砂糖の入った飲料の過剰摂取が挙げられるからです。
特にドリンクタイプのヨーグルトは固形のものより
・酸味を感じやすいので、飲みやすくするためにも加糖のものが主流
・1回に飲む量が多くなりがち
なので注意が必要です。
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脂質異常症の方にオススメのヨーグルトの選び方
スーパーやコンビニへ行くと様々な種類のヨーグルトを目にしますが、脂質異常症の方はどのようなヨーグルトを選べば良いのでしょうか?
さっそくヨーグルトの選び方のポイントをご紹介します。
LDLコレステロール値が高い人
LDLコレステロール値が高い人にオススメのヨーグルトは、無脂肪ヨーグルトや低脂肪ヨーグルトです。
先ほど無糖のヨーグルト100gあたりには、飽和脂肪酸が1.83g含まれるとお伝えしましたが、無脂肪・低脂肪ヨーグルトの場合は以下の通りです。
(100gあたり) | カロリー | 飽和脂肪酸 |
全脂ヨーグルト | 56kcal | 1.83g |
無脂肪ヨーグルト | 37kcal | 0.16g |
低脂肪ヨーグルト | 40 kcal | 0.58g |
普段のヨーグルトを無脂肪・低脂肪に変えるだけで、飽和脂肪酸の摂取量を大幅にカットできることが分かりますね。
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HDLコレステロール値が低い人
すでにお伝えしているように、HDLコレステロール値とヨーグルトの摂取に大きな関係はありません。
一方で、HDLコレステロール値は肥満や中性脂肪値との関連性が高いです。
したがって摂取カロリーを減らすよう低カロリーのヨーグルトにしたり、次の中性脂肪値が高い人にオススメのヨーグルトを参考にしてください。
中性脂肪値が高い人
中性脂肪値が高い人にオススメのヨーグルトは、無糖ヨーグルトです。
なぜなら100gあたりの糖質量は、加糖ヨーグルトが11.7gに対して無糖では3.9gと大きな差があるからです。
つまりヨーグルトを加糖から無糖に変えるだけで、糖質を2/3カットすることができます。
またドリンクタイプのヨーグルト100gあたりの糖質量は10.5gと、固形の加糖と大差ありません。
しかし、先ほどお伝えしたようにドリンクタイプのヨーグルトは、1回に飲む量が多くなりがちです。
その分、糖質の摂取量も増えやすいので、ドリンクタイプのヨーグルトを飲む時には糖分が少ない物を選んだり、お楽しみの間食として摂取頻度を少なくすると良いでしょう。
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脂質異常症の方がヨーグルトを食べるタイミングはいつ?
脂質異常症の中でも中性脂肪値が高い方とHDLコレステロール値が低い方は、食前にヨーグルトを食べるのがオススメします。
なぜなら、ヨーグルトを食前に食べることで血糖値の上昇が穏やかになり、肥満の予防・改善効果が期待できるからです。
なお、中性脂肪値が高い方やHDLコレステロール値が低い方は、一般的に肥満を有している場合が多く、体重を減らすことによりこれらの数値の改善が期待できます。
また、LDLコレステロール値が高い方はいつヨーグルトを食べても構いません。
例えば、便秘の改善を目的とするのであれば生きたままの乳酸菌やビフィズス菌を腸に届きやすくするため、夕食後に食べるのがオススメです。
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まとめ
以上、脂質異常症とヨーグルトについて解説しました。
脂質異常症は大きく分けて3つのパターン「LDLコレステロール値が高い」「HDLコレステロール値が低い」「中性脂肪値が高い」に分けられます。
それぞれに当てはまる方がヨーグルトを食べる際に注意すべき点は、以下の通りです。
:無脂肪や低脂肪ヨーグルトがオススメ。飽和脂肪酸の過剰摂取を防ぐため、肉類や他の乳製品との食べ合わせに注意。
・HDLコレステロール値が低い方
:低カロリーのヨーグルトがオススメ。中性脂肪値との関連性が高いので、中性脂肪値が高い方も要参照。
・中性脂肪値が高い方
:無糖のヨーグルトがオススメ。糖質の過剰摂取を避けるため、固形のものに比べて1回に飲む量が多くなりがちなドリンクタイプには注意が必要。
それでは当記事が参考となり、脂質異常症の方も安心してヨーグルトを楽しんでいただけたら嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重・カロリー&糖質を含む、食事・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてください。
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット 令和2年(2020) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 日本人の食事摂取基準(2020 年版)
一般社団法人 日本動脈硬化学会 脂質異常症診療のQ&A
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究 特定保健指導の対象とならない 非肥満を含む心血管疾患危険因子保有者に対する 生活習慣改善指導ガイドライン
文部科学省 食品成分データベース
日本医師会 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス
八木 他(2018).ヨーグルトと米飯の摂取が食後血糖値に及ぼす影響.Glycative Stress Research.5(1).p68-74