脂質異常症になったら食べてはいけないものってあるの?~コンビニ食の活用方法の解説付き~

当記事を監修した専門家:管理栄養士 大熊麻未、編集長 宮田亘造(詳しいプロフィールはこちらをご覧ください)
「脂質異常症と言われたけど何を食べたらよいんだろう?」と不安を感じている方がいるかもしれません。それもそのはず、巷では「あの食品はダメ」「この食品はイイ」など、いろいろな情報が飛び交っている状態です。
さて、脂質異常症の方にとって食事は治療の一環であるため食事療法と呼ばれています。食事療法は一時的なものではなく長期に渡って取り組む必要があるものです。
当記事では、食事療法に対して苦手意識を持たずに取り組んでいただくために、注意が必要な食品とその理由について解説します。後半にコンビニ食の活用方法についても書きましたので最後までお付き合いください。
目次
脂質異常症になったら、食べてはいけないものはあるの?
脂質異常症になったからと言っても、食べてはいけない食品は特段ありません。
しかし、食べる頻度と量に注意が必要な食品はあります。
脂質異常症の方にとって食事は治療の一環なのは確かですが、一方で生活の中で活力や楽しみを与えてくれる大切な存在でもあります。
食事療法は一時的なものではなく長く続ける必要があるため、極端な食事制限はオススメできません。なぜ注意が必要なのか、理由を理解し前向きな気持ちで取り組みましょう。
【脂質異常症】控えたほうが良い食品
脂質異常症だからと言って、やみくもに脂質を制限すればいいわけではありません。
その理由は、体にとって脂質は重要な成分だからです。
さて、脂質異常症にはいくつかのタイプに分かれますが食事療法の基本は同じです。基本となる食事療法を実践しつつ、異常が出ている脂質によって控えたほうが良い食品に注意していきましょう。
まず、食事療法の基本はこちらです。
・栄養バランスの良い食事を3食規則正しく食べる(とくに朝食欠食は血圧上昇につながる)
・脂肪の質と量に注意
・食物繊維をたっぷりと摂る(糖質や脂質の吸収を抑えてくれる)
・お酒は控える(アルコールの摂取量に比例して中性脂肪が合成が促進され、脂肪肝の原因にもなる)
・塩分を控える(塩分の摂りすぎは高血圧を引き起こし動脈硬化を悪化させる)
続いて、タイプ別に控えた方が良い食品についても解説します。
悪玉コレステロールが高いと言われた方(高LDLコレステロール血症)
1:コレステロールを多く含む食品の摂りすぎ注意
血液中のコレステロールは「肝臓で作られるもの」と「食品由来のもの」があり、個人差はありますが肝臓で作られるもののほうが圧倒的に多いです。さらに、食事からのコレステロールは血中コレステロール値に直接的な影響は与えないとして、コレステロールの摂取量には基準は定められていません。
ですが、これは健康な人に対しての指標です。脂質異常症の人は重症化予防を目的として、1日あたりのコレステロール摂取量は200mg以内が望ましいとされています。
下の表はコレステロールが高いと言われている食品一覧ですので、食品を選ぶ際の参考にしてください。
※可食部100gあたり
2:飽和脂肪酸の摂りすぎに注意
バター、ラード、生クリーム、肉の脂身など
飽和脂肪酸とは肉や乳製品などの動物性脂肪に含まれている成分です。
飽和脂肪酸は体にとってエネルギー源となる重要な成分ですが、一方で摂りすぎると血中総コレステロールの増加につながり、心筋梗塞などのリスクが高くなることがわかっています。
3:トランス脂肪酸の摂りすぎに注意
マーガリン、ショートニングなど
トランス脂肪酸は、植物油などからマーガリンやショートニング等を作る過程でできる、脂質を構成する成分です。
トランス脂肪酸を摂ると悪玉コレステロールを増加させることがわかっており、WHO(世界保健機関)では心血管系疾患予防を目的として、トランス脂肪酸の摂取量は総カロリー量の1%未満に抑えた方が良いと発表しました。
とはいうものの、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は大多数の人が1%未満に抑えられていることが分かっているので、過剰な心配をする必要はありません。しかし脂質異常症の人は重症化予防の観点から、マーガリンやショートニングが使われている食品の摂取は控えましょう。
中性脂肪が高いと言われた方(高トリグリセライド血症)
脂質異常症という名前から油脂類の摂取ばかりに気を取られがちです。
しかし体の中にある中性脂肪は、食事から摂取したエネルギーが使われずに貯蔵されたもので、脂質だけではなく糖質の摂りすぎも考えられます。
1:糖質を多く含む食品をやめる
菓子類、菓子パン、加糖飲料など
食事から摂った糖質はエネルギーとして使われないと中性脂肪として蓄えられます。そのため、糖質を多く含む食品を食べると中性脂肪値の上昇につながるのです。
2:果物や穀類の摂取量を適切に
果物、ごはん、パン、うどん、パスタなど
果物や穀類は適量を摂るぶんには体にとって有益ですが、摂りすぎると中性脂肪の増加につながります。なかには太ることを気にして穀類をまったく摂らない方も見かけますが、重要なエネルギー源となるため極端な制限はオススメしません。穀類を食べる場合は、精製度合の低いものを選ぶと食物繊維やミネラル類の摂取にもつながりますよ。
3:お酒をやめる
お酒に含まれているアルコールには「空っぽなカロリー」という別名が付いているほど、体のために使える成分は入っていません。なによりも、アルコールの摂取量に比例して体内で中性脂肪が作られるため、中性脂肪値が高い人はお酒を控えましょう。
4:魚を食べる回数を増やす
魚に含まれている魚油(EPAやDHAなど)には中性脂肪を低下させる働きがあります。
善玉コレステロールが低いと言われた方(低HDLコレステロール血症)
1:トランス脂肪酸の摂りすぎに注意
トランス脂肪酸を摂ると悪玉コレステロールが増加すると説明しましたが、実は善玉コレステロールを減少させることも分かっています。
そのため、マーガリンやショートニングの摂取は控えめにしましょう。
2:サフラワー(ベニバナ)油やコーン油の摂りすぎに注意
サフラワー油やコーン油に含まれているリノール酸という成分は、血中コレステロールを下げる働きがあります。しかし悪玉コレステロールを下げると、同時に善玉も下げてしまうため摂取量には注意が必要です。
参考記事:脂質異常症と言われたら~日常生活の改善点や食事の摂り方までサクッと解説~
自炊できない人必見!コンビニ食の活用方法
自炊できない人がよく使うお店はスーパーよりもコンビニではないでしょうか。
コンビニで売っている食品だけでバランスの良い食事をしようと思うと、どうしても高額になりがちです。
参考例1
・カップラーメン(ノンフライ麺)
・グリーンサラダ
・低脂肪乳(200ml)
【ポイント】
サラダは単品で食べるとドレッシングが必要になりますが、ラーメンに入れて食べると味付けが不要になるだけでなく、ラーメンの食べ応えが増すのでオススメです。なお、高血圧予防のためにスープは残すことを心がけると良いですよ。
シーフード味のインスタントラーメンを作る時に、お湯の代わりとして牛乳を入れて食べる方法が流行っていますがオススメできません。その理由はスープを飲み干すと塩分の摂りすぎとなり、一方でスープを残すと牛乳のたんぱく質が摂取できなくなるからです。
参考例2
・パック入りのもち麦ごはん(150g)
・カップのわかめスープ
・冷奴
・カットフルーツまたは冷凍のフルーツ
【ポイント】
わかめスープに豆腐を入れると、食べ応えのあるスープになりますよ。
また食べきりサイズで売られているフルーツを付けると、ビタミンやミネラルが摂れるのでオススメです。
まとめ
以上、脂質異常症の方が注意すべき食品についてお伝えしました。
ご説明してきた通り、病態ごとに摂取量を注意したほうが良い食品はありますが、一般的に食べてはいけない食品はありません。
この記事を参考に、無理のない食事療法に取り組んでいただければと思います。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重・カロリー&糖質を含む、食事・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてください。
参考文献
メディカ出版 ニュートリションケア第14巻12号
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策研究所予防関連プロジェクト 朝食の欠食と脳卒中との関連について
健康長寿ネット 脂質異常症治療の食事レシピ