サバ缶の栄養成分~体に良いと言われる理由についても徹底解説~
当記事の執筆は、管理栄養士 前間弘美が担当しました。
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長年、缶詰市場の王様として君臨してきたツナ缶をとうとう抜いたサバ缶。生の魚では摂り切れなかった【あの成分】は、缶詰にすることで摂取が数倍にも。
缶詰界に革命をおこしつつあるサバ缶の魅力や栄養成分について、缶詰だからこそのメリットと合わせてその健康効果を解説します。ぜひ最後までご覧ください。
目次
サバ缶の栄養と効能
サバ缶はその名の通り、サバを缶詰にしたもの。
サバの頭、内臓、しっぽとせびれを取り除くのみで、その他はすべて缶詰に入り、サバをほとんど丸ごと食べることが出来るようになっています。
それでは生では食べられなかった部分を含んだ、缶詰ならではの栄養成分を確認してみましょう。
気になるサバ缶のカロリーは?
サバの缶詰(水煮)は100gあたり174kalです。生の水煮では、253kcalなので、缶詰のほうが少ないですね。
174kcalというと、ごはん約100g(茶碗軽く一杯分)に近いカロリーです。ちなみにカロリーは、炭水化物、たんぱく質、脂質から構成されています。ごはんのカロリーは主に炭水化物で構成されるのに対して、サバ缶ではその内訳がたんぱく質と脂質です。魚を加工したものなので、炭水化物はほぼ含みません。
カロリーとひとことで言っても、その内訳によっては身体に入る栄養素も変わります。そこで下記にサバ缶に含まれる栄養素を記載していきます。
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身体の構成成分となるたんぱく質
水煮缶詰に含まれるたんぱく質は100gあたり20.9gです。
一方、生のサバのたんぱく質量は20.6gと、生と缶詰ではほぼ変わらず、缶詰に加工しても生の状態から減っていないことがわかります。
そしてたんぱく質は身体の20%を占め、髪の毛、皮膚や筋肉などの身体のほとんどを構成している栄養素です。
そこで一般成人の方では、体重1kgあたり1gのたんぱく質摂取が求められます。例えば体重60㎏の方は60gが必要となり、つまりさば缶100g程度で一回の食事に摂りたい量の約1/3をまかなうことが可能です。
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良質なものが多いサバ缶の脂質
サバ缶の脂質は100gあたり10.7gですが、脂質を考える際は、その内容が非常に重要です。
そこで少し深堀りしますと、脂質は肉の脂身などに代表される飽和脂肪酸と、魚やオリーブオイルなどに代表される不飽和脂肪酸に分類できます。サバに含まれる脂質は不飽和脂肪酸が多く、広く生活習慣病の原因となる中性脂肪を下げる効果や、動脈硬化を抑制する効果が期待される成分(※)が含まれているのです。
(※)n-3系脂肪酸を指します。不飽和脂肪酸はn-3系とn-6系に分けることができ、サバに含まれる脂質には、n-3系脂肪酸が多いです。
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骨に欠かせないカルシウム
冒頭に申し上げた【あの成分】とは、実はカルシウムのことです。
サバ水煮の場合のカルシウム量は100g中7mgに対し、缶詰にした場合はその差37倍!缶詰にすることで、骨も一緒に食べられるようになるため、カルシウム量は100g中260mgになります。カルシウムの必要量は年代によって異なりますが650~800mgとなります。
対して、厚生労働省の国民健康・栄養調査の結果における日本人のカルシウム摂取量は、30歳代が最も少なく400mg付近の摂取と不足傾向が見られるため、不足しやすいカルシウムを補う救世主となるかもしれません。
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カルシウム吸収を助けるビタミンD
サバ水煮缶100gに含まれるビタミンDは11μg、生のサバを水煮したもの100gは4.3μgと缶詰のほうが多く含まれています。なぜなら生のサバだと廃棄される内臓や骨なども、缶詰では丸ごと食べられるからです。
また、ビタミンDにはカルシウムの吸収を助ける働きを持ちます。缶詰にすることで多く確保できるカルシウムの効果をさらに引き出すことができます。
余談ですが、数字をあいまいにすることの表現として「サバを読む」という、ということばがあります。これは、サバは傷みやすいため、早く出荷をするために数を目分量で数えることが多く、実際の数値と異なることがあった、ということからきているようです(諸説あります)。
もともと落ちやすいサバの鮮度を保ち、栄養をぎゅっと詰め込んだ缶詰を利用しない手はないですね。
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いわし缶との栄養面での比較
最近では、ブームとなっているサバ缶に連動して、同じ青魚であるいわしにも注目が集まっています。
サバ缶といわし缶の栄養素の比較を下記に記します。
サバ缶 | いわし缶 | |
カロリー | 174kcal | 168kcal |
たんぱく質 | 20.9g | 20.7g |
脂質 | 10.7g | 10.6g |
炭水化物 | 0.2g | 0.1g |
カルシウム | 260mg | 320mg |
鉄 | 1.6mg | 2.6mg |
ビタミンD | 11.0μg | 6.0μg |
n-3系脂肪酸 | 2.73mg | 2.92mg |
EPA | 930mg | 1200mg |
*100gあたり
サバ缶・いわし缶で比較してみると、それほど大差はなく、どの栄養成分においても多く含んでいることがわかります。これらは青魚特有の成分といえますね。
サバ缶は1缶あたり200g程度のものが多いのに対し、いわし缶は1缶100g程度と小さいタイプが多いです。使用量などによって、それぞれ使いわけてみてください。
毎日食べ続けた結果どうなるのか?
健康に良い効果が期待されるサバ缶。しかし、毎日食べ続けても問題はないのか、健康効果との関連について確認してみましょう
血圧は下がるの?
『サバ缶に含まれる脂質(※)を摂取することにより、血圧が低下した』という報告に代表されるよう、サバ缶には血圧を低下させる作用が期待されています。
(※)n-3系脂肪酸を指す
この量は、1日あたり2g以上の摂取で効果が高いとされ、サバ缶100gに含まれる当該脂質の量は2.73gですので、サバ缶には血圧にも効果が期待できるでしょう。
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血糖値は変化するのか
魚油は体内にあるGLP-1というホルモンの上昇をもたらし、その結果、血糖値を緩やかにすると言われています。GLP-1自体は糖尿病の治療薬として注目されているほどで、血糖値が気になる方はサバ缶を摂取することによる、血糖値の抑制効果が期待できるでしょう。
また、サバ缶自体には糖質はほとんど含まれていませんので、単品での摂取においてもそれほど糖質を気にする必要はないと言えます。
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食べ過ぎると危険って本当?
サバ缶の油は、通常の食事から摂る量を摂取する場合、1日1缶程度であれば、毎日食べてもその危険性はないと考えられています。しかし、摂り過ぎは血液を固まりにくくする作用も持ち合わせているため、魚油として3g/日を超えないように摂取することが、過剰摂取からの副作用を抑えるために推奨されています。
食べる際には、量に配慮しましょう。
さらに、缶詰に含まれるカロリーの半分以上は、魚油に代表される脂質が占めています。たとえ良質の脂質といえでも、その他の食事を含めて食事中の脂質の割合が増えることは、エネルギー過多にもつながりますので、注意してください。
なお、缶詰の味付けによっては、塩分が高いものもあります。どの食材においても毎日過剰に摂取することは控えたほうが、身体にとって良い効果として発揮してくれるようになるでしょう。
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サバ缶に髪の毛を増やす効果はあるのか
サバ缶を食べると髪の毛が増える、という噂があるようですが、真偽のほどは分かりません。
おそらく、サバ缶に含まれるn-3系脂肪酸の「血液をサラサラにする効果」が、「頭皮の血流を良くして発毛を促進する」イメージに繋がったのではないかと考えられます。
現在、サバ缶を食べると髪の毛が増える、という研究結果はありませんが、サバに含まれるたんぱく質は髪の毛の構成成分です。サバ缶を食事に取り入れると、髪の毛をきれいにする効果を得られる可能性があると言えますね。
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栄養を無駄なく摂る方法
サバ缶の栄養を無駄なく摂るためには、加熱しすぎない、ということが大切です。
サバ缶に代表される脂質は、熱に弱く酸化しやすいことがその理由です。また、缶詰の汁に栄養素が溶けだしていますので、汁ごと摂ると栄養を無駄なく摂取することができるでしょう。
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まとめ
サバ缶には、缶詰だからこそ摂取できるカルシウムを筆頭に、ビタミンDや良質の脂質を含むとわかりましたね。
サバに代表される青魚からとれるn-3系脂肪酸は、生活習慣病予防にも効果が期待されています。脂質からのカロリーコントロールを実施しながら、缶詰として手軽に摂れるサバ缶をぜひ日々の食事に利用してみてください。
なお、弊社の開発する無料の人気アプリ・シンクヘルスでは食事、体重、運動、血糖値の記録がとてもカンタンにできます。日々の健康管理・維持にぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
文部科学省 食品成分データベース
厚生労働省 国民健康・栄養調査
Long-chain omega-3 fatty acids eicosapentaenoic acid and docosahexaenoic acid and blood pressure: a meta-analysis of randomized controlled trials;Am J Hypertens.2014.Jul;27(7):885-96.
J-STAGE 魚油の健康機能
日薬理誌(Felia Pharmacol.Jpn)151.34-40(2018)