【医師監修】糖尿病と下痢には関係がある?〜特徴・原因・治療をシンプルに解説〜
当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。執筆はライター 松原知香(管理栄養士)が担当しました。*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
糖尿病と診断されて何年も治療をしてきたあなた。「最近、下痢になることが増えたな」と感じていませんか?下痢が続くといつもトイレの心配がついて回るので、日常生活に支障が出てしまいますよね。
もしかしたら、その下痢は糖尿病の合併症が原因かもしれません。
そこで今回は、糖尿病と下痢の関係や対処法について、わかりやすく解説していきます。
目次
糖尿病で下痢が生じるのはなぜか
糖尿病の方の約 20%程度に下痢が発症するとの報告もあり、下痢は糖尿病と関連が深い症状です。
ではなぜ、糖尿病の方に下痢が合併しやすいのでしょうか?
その原因は、糖尿病の合併症である神経障害や膵外分泌機能障害、糖尿病治療薬による薬剤性、セリアック病(※)合併など多種の要因が考えられます。
(※)セリアック病とは、小麦などに含まれているグルテンを摂取することにより発症する、遺伝的な自己免疫疾患のこと。1型糖尿病と共に発症する可能性が高いとされている。
消化管への合併症が原因
糖尿病の三大合併症は「腎症」、「網膜症」そして「神経障害」の3つです。
神経障害の中でも、消化管の機能や運動を調整している自律神経に障害が起こると、腸管の動きや消化吸収の調整が狂い下痢を引き起こす原因となります。
便秘も消化管への合併症で起こるため、下痢と便秘を繰り返すことに繋がるのです。
また、糖尿病の方の30-40%は膵外分泌機能障害を合併しているとされています。膵臓の機能が障害されて消化酵素の分泌が低下してしまうため、うまく脂肪の分解吸収ができずに下痢を生じます。
参考記事:【医師監修】糖尿病性神経障害とは?~症状や治療法もわかりやすく解説~
薬の副作用
血糖値を下げるために飲んでいる薬の副作用でも、下痢になることがあるのです。
血糖値を下げる薬にも色々な種類がありますが、その中でα-グルコシダーゼ阻害薬(※1)やビグアナイド薬(※2)、イメグリミン薬という薬は下痢を生じることがあります。
※1…糖の吸収を遅らせる働きをする薬
※2…肝臓での糖産生を抑制する薬
その他どの薬にも頻度に差はありますが、下痢が副作用として多く挙げられています。
下痢など胃腸障害の副作用は新しく薬を始めた時や、用量を増やしたタイミングで生じることが多いです。
内服を続けていると症状が改善することも多くありますが、持続する際には主治医に用量や他の薬剤への変更が可能か相談してみましょう。
糖尿病以外の下痢の原因
糖尿病以外でも、下痢が起こる理由はたくさんあります。
例えばお酒やストレスの影響で起こることもありますし、感染性胃腸炎(ノロウイルスなど)や消化管の病気が原因で起こることもあります。
なお原因が分からない下痢が続く時は、近くの病院で検査をしてもらうことがオススメです。
参考記事:糖尿病とストレスの関係~適度にリラックスして生活しよう~
症状の特徴
糖尿病と関係して起こる下痢の特徴は、主に以下の2つです。
「下痢はしているけれど、お腹は別に痛くないし熱もない」
「常に下痢が続くわけではなく、正常な排便や便秘とを交互に繰り返したり、一時的に症状が起きたりすることが多い」
全員が当てはまる訳ではないのですが、感染性や腸の器質的疾患による下痢と異なり、このような特徴を示すことが多いです。
下痢による低血糖に注意
下痢の症状が辛くてあまりご飯が食べられない…となったあなた。そのような時は、低血糖に注意です。
ご飯が食べられない時に、いつも通り血糖値を下げる薬を飲んだりインスリンを打ったりすると、血糖値が下がりすぎてしまうことがあります。
食事をできない時のインスリン投与の行い方や内服の仕方については、日頃から主治医と確認しておきましょう。とくにインスリン投与中の方で食事をとれない状態が持続するときには、早期に受診してください。
逆に下痢が続いて脱水の状態になると、血糖値が上がることもあるので注意が必要です。
参考記事:【医師監修】シックデイで糖尿病の方が注意すべきこととは?原因や3つの対策法を解説
糖尿病による下痢の治療や対策を紹介
糖尿病が原因で下痢が続くときは、下痢を止める薬を使ったり腸の働きを整える薬を使ったりすることがあります。
また、先ほどお伝えしたように下痢によって脱水になりやすいので、対策としてはこまめに水分補給をすることが必要です。
下痢が止まらない時はすぐに医療機関に連絡
下痢が止まらないので、ドラックストアで売っている下痢止めを飲もうとしているあなた。
自分で判断して薬を飲む前に、一度医療機関に連絡してみてください。
もし糖尿病が原因で下痢が起こっているのであれば、これ以上症状が悪化しないように血糖管理を行い、膵外分泌酵素を補充することで症状の改善が得られる可能性もあります。
また、血糖値を下げる薬の副作用で下痢が起こっているのであれば、薬の調整が必要かもしれません。
いずれにせよ、下痢が止まらないなと感じたら、まずは主治医に相談するのがおすすめです。
まとめ
それでは本日のまとめです。
・下痢の時は脱水に注意が必要
・下痢が止まらない時は自己判断せずに病院を受診する
下痢が続くと外出先でトイレの心配が付きまとい、仕事やお出かけに支障がでますよね。本記事が、あなたの症状が1日でも早く治るためのきっかけになれば嬉しいです。
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【参考文献】
医療情報科学研究所(2021):病気がみえるvol.3 糖尿病・代謝・内分泌第5版,メディックメディア.