糖尿病のコンビニ活用術〜選び方や組み合わせを管理栄養士が直伝〜
当記事の執筆は、管理栄養士 白石香代子が担当しました。
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忙しい現代人にとって、パッと買えてサッと食べられるものが多く並ぶコンビニは、なくてはならない存在ですよね。それは食事管理が必要な糖尿病の方にとっても同じです。
一方で、「コンビニで売っているご飯は栄養バランスが整ってなさそう」という考えから、何をどう選んだらよいか迷ったり、考えるのが面倒で適当に選んだりしている方も多いのではないでしょうか?
実際、コンビニのご飯は糖質が多く糖尿病の方は食べる量や選び方に工夫が必要です。
そこで今回は、糖尿病の方の指導にあたる管理栄養士が、コンビニ食を糖尿病食に近づけるポイントをわかりやすくお伝えします。
シーン別の選び方からコンビニ別のおすすめ商品までご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
理想の食事メニューとは
最初に、糖尿病患者さんにはどのような食事メニューが理想的なのか、みていきましょう。
糖尿病食は、栄養素の配分を理想的なバランスにする必要があります。
1日の摂取エネルギー(1日に食べ物から摂り入れるカロリー)は、三大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質の比率を意識して摂取します。これは、血糖コントロールを良好にし、網膜症や神経障害といった糖尿病の合併症予防のために必要な栄養素配分の基本的な考え方です。
そして、このバランスを作り上げるメニューが、「一汁三菜」を基本とした和食です。
一汁三菜 : ご飯、汁物、主菜1品、副菜2品
理想の食事メニューを考える際は、一汁三菜をイメージすることをおすすめします。
三大栄養素は私たちの生命維持や身体活動に欠かせないエネルギー源です。炭水化物は主食であるご飯や麺、パンなどの炭水化物に多く含まれる栄養素です。またたんぱく質は肉や魚、大豆製品や乳製品、脂質は食物油やバターなどに含まれます。
コンビニ食は糖質が多い傾向にある
唐揚げや肉まんなどのファストフードからお弁当やカップ麺まで、コンビニでは様々な商品が展開されていますよね。お惣菜やスイーツも多種多様な商品が並び、私たちの目を楽しませてくれます。
最近は、糖質をオフしたものやカロリーを低めにしたものなど健康的な商品も見かけますが、コンビニ食では全体的に炭水化物が多くなる傾向がありますので注意が必要です。
例えば、コンビニ弁当はご飯や揚げ物などが多く野菜が少ないものが目立ちます。これでは炭水化物が6〜7割、たんぱく質が1割、脂質が3割のようなバランス組成になる可能性が高いです。
またパスタやおにぎり、サンドイッチなどの主食には炭水化物が多く含まれています。種類や商品にもよりますが、炭水化物が7〜8割、たんぱく質が1割、脂質が1〜2割程度でしょう。
炭水化物を多く摂る(≒糖質を多く摂る)と血糖値が上がります。そして血糖値が高いと血管や血液の状態が悪化し、動脈硬化のリスクも上がってしまうのです。
たんぱく質が少ないと血糖管理に影響する
一方で、たんぱく質が少なく脂質が多いと、どのような問題があるのでしょうか。
まず、筋肉を作る材料であるたんぱく質は「糖の貯蔵庫」ともいわれます。食事で摂った糖分はインスリン(血糖値を下げるホルモン)によって筋肉などに取り込まれます。
つまり、「筋肉量が少ない=糖をうまく取り込むことができない→血糖値を下げることができない」となり、食後血糖値の上昇につながる要因となるのです。(食後高血糖のリスクは下記でお教えします)
次に脂質です。脂質を多く摂ることでカロリーオーバーになる可能性が高くなります。余分なカロリーは内臓脂肪として私たちの身体に蓄積していきます。内臓脂肪はインスリンの効きをよくするホルモン(アディポネクチン)の分泌を邪魔し、食後血糖値の上昇を促してしまうのです。
炭水化物、たんぱく質、脂質のバランスが崩れると、血糖値を上昇させる要因となり、神経障害や腎症といった合併症のリスクが高まります。
コンビニ食においても、摂取エネルギーの配分を理想のバランスに近づける工夫が大切です。
食後高血糖に注意
食後の血糖値が異常に高くなることを、食後高血糖と言います。
食事をすると血糖値は上昇しますが、2-3時間以内に正常値(110mg/dl未満)に戻るのが一般的です。しかし血糖値が下がらず、長時間に渡って140mg/dl以上の値が続くと、食後高血糖を起こしていると判断されます。
高血糖状態の血液は砂糖水のようにネバネバしています。そのため血管の中をスムーズに流れることができず、血管に圧力をかけ詰まらせてしまうのです。
食後高血糖状態が続くと様々な病気を引き起こし進行させる可能性が高くなりますので、注意が必要です。
参考記事:【医師監修】食後に注意!血糖値スパイクとは?原因と予防を初心者でもわかるよう解説
商品の選び方を紹介
コンビニでよく利用するメニューとしてあげられる、4つの商品をご紹介しましょう。
おすすめのお弁当は?
白いご飯に数種類のおかずを彩りよく詰め合わせている 「幕の内弁当」 であれば、一汁三菜をイメージしやすく、比較的栄養バランスを整えやすいでしょう。
おにぎりは何を選ぶ?
おにぎりの具は、どれを選んでもOKです。しいて言えば、雑穀やもち麦を使用しているものを選ぶと食物繊維が摂れるのでオススメですよ。
食物繊維は腸の中に長時間居座って、糖の吸収を邪魔してくれる働きがあります。血糖値の上昇を緩やかにしてくれる、糖尿病の強い味方です。
サンドイッチなら何でもOK?
健康的なイメージのあるサンドイッチ。チキンサンドやカツサンドでは、栄養素としてはたんぱく質を摂ることが出来ますが、脂質も増えることになります。
サンドイッチは、【野菜+たんぱく質】が入ったものを選ぶようにしましょう。例えば、【ブロッコリー+えび】【レタス+たまご】などが具材に入るものが良いですね。
安心なスイーツはあるの?
コンビニでご飯を買って食べる際、食後のデザートを一緒に選ぶ方も多くいらっしゃいますよね。
もし仮に昼食と一緒に買った場合は、食後に食べるのをグッとこらえて3時のおやつまで取っておくことをオススメします。せっかくカロリーや糖質を気にしてご飯を選んでも、デザートによってすべてオーバーしてしまうからです。
また、選ぶときには血糖値に安心な低糖質なスイーツがよいでしょう。クッキーやプリンなど、血糖管理に役立つ商品がたくさん出ています。糖質10g以下のスイーツを選ぶとよいです。
【簡単】食事バランスを整える方法
それでは、手軽なコンビニ食をバランスの良い食事に変える方法を、シーン別にご紹介します。
朝食には乳製品を添えよう
「朝食はオフィスに着いてから、さっと食べる」というあなたには、まず乳製品を選ぶことをおすすめします。
なぜ、最初に乳製品を選ぶのか。その理由はたんぱく質の補給です。
デスクで手軽に食べられる商品として朝食時に選ばれやすいおにぎりやサンドイッチ、健康補助食品のシリアルバーには炭水化物が多く、たんぱく質が不足しやすい傾向にあります。
また朝食後の血糖値を良好に保つには、乳製品に含まれる乳清タンパク質が効果的という報告もあります。
そこで、牛乳やヨーグルトを朝食時に取り入れていただきたいのです。
おすすめは牛乳ですが、牛乳が苦手な場合はヨーグルトでもOKです。しかし、ヨーグルトには甘味料が多く含まれているものもありますので、無糖のヨーグルトがベスト、低糖がベターといえます。
食事の前に牛乳やヨーグルトを摂り入れる「プロテインファースト」で食べると、炭水化物を先に食べるより血糖値の上昇を抑えることができます。
昼食と夕食でひと工夫
中食(※)としてコンビニ利用率の高い昼食と夕食には、野菜をプラスするような心がけが大切です。
(※)中食とはすでに調理された食品を購入して持ち帰り、家庭内で食べる食事スタイルのことをいいます。
野菜を摂取することで、主に 「血糖値の上昇を緩やかにする、ボリュームが増えることで満足感が得られる、噛む回数を増やして早食い防止できる」 といった効果が期待できます。
【カット野菜の活用】
袋に入ったカット野菜を利用しましょう。電子レンジで加熱(袋を少し開けて温める)したカット野菜を麺類に加えるだけで、具沢山の麺に変わります。
【冷凍野菜の活用】
ブロッコリーやほうれん草といった冷凍野菜の活用もおすすめです。パスタやグラタンなどにそのまま冷凍野菜をのせて、レンジで温めるだけで美味しく食べることが出来ます。
参考記事:冷凍野菜に栄養はあるの?~オススメレシピとともに管理栄養士が解説~
お酒のお供も選び方次第
晩酌では「たんぱく質+野菜」を意識すると、バランスのとれた一品になります。おすすめは、おでんです。
参考記事:糖尿病の人必見!おでんを食べる際の注意点~具材の糖質量も紹介~
次に、手軽に食べられる焼き鳥をご紹介しましょう。鶏肉は高たんぱく質で低カロリーな肉で、糖質も少なめです。
焼き鳥を食べる時に、袋野菜を付け合わせにして食べると野菜も摂れます。
参考記事:焼き鳥のカロリー・糖質は高い?~部位別一覧やダイエット中の注意点も解説~
参考記事:糖尿病と飲酒の関係~アルコールの影響や飲み過ぎないための秘訣を紹介~
コンビニ別のおすすめは?
オリジナル商品も様々ですよね。糖尿病患者さんにはどのような商品がおすすめか、コンビニ別に見てみましょう。
セブン–イレブン
ドーナツが食べたい…そんな時におすすめなのが、セブン–イレブンの 「糖質50%オフのロカボドーナツ」 です。
1個あたりの糖質は17.1gで、通常のドーナツ(糖質は約32g)より半分程度少なくなっています。しかし、糖尿病患者さんのおやつの糖質量は10g以下が推奨されます。ロカボのドーナツは1/2個にしましょう。
ローソン
ローソンでは、ブランを使用したパンや糖質を抑えたパンがおすすめです。
一般的なパンは糖質量が多いものが目立ちます。糖質の摂りすぎは血糖値を上げる要因ですので、注意が必要です。
ブラン(=ふすま)には血糖値の上昇を抑える食物繊維が豊富に含まれます。ブランパンを日常にうまく取り入れると、血糖管理に役立ちます。
参考記事:糖尿病には低糖質なパンがオススメ~市販のパンやレシピを紹介~
ファミリーマート
ファミリーマートでは「めんつゆで食べるとうふそうめん風」がオススメですよ。
めんつゆとあわせてもカロリーが101kcal、糖質10.9gです。通常のそうめんは100gあたり114kcal、糖質は25.6gあるので、とうふそうめんに置き換えると糖質は1/2以上カットできます。
参考記事:そうめんのカロリーと糖質量は高い?〜ダイエットに向いているか解説〜
まとめ
糖尿病患者さんがコンビニ食を利用する際、炭水化物:たんぱく質:脂質=6:2:2の比率を心がけることが大切だとお分かりいただけたと思います。
コンビニ食は炭水化物に偏りがちな傾向がありますので、【+たんぱく質+野菜】を意識するようにするとバランスが整い、食後高血糖を予防できるでしょう。
また各コンビニには低糖質なスイーツやパン、1品でたんぱく質と野菜が取れるお惣菜など、糖尿病に優しい商品があります。日々の食事にうまく取り入れると良いですね。
以上、今回は糖尿病とコンビニ食についてご紹介しました。
当記事を参考に、コンビニ食とうまく付き合いながら、毎日の血糖コントロールを行っていただけると嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値やお薬の記録がカンタンにできます。日々の血糖コントロールにてぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
・カゴメ株式会社「夕食女性のコンビニランチ事情」調査結果概要
・厚生労働省 e-ヘルスネット アディポネクチン
・Incretin, insulinotropic and glucose-lowering effects of whey protein pre-load in type 2 diabetes: a randomised clinical trial, Diabetologia. 2014 Sep;57(9);1807-11. doi: 10.1007/s00125-014-3305-x, Daniela Jakubowicz, Oren Froy, Bo Ahrén, Mona Boaz, Zohar Landau, Yosefa Bar-Dayan, Tali Ganz, Maayan Barnea, Julio Wainstein