栗の栄養と効果~渋皮やむき栗の成分・効能についても詳しく解説~
当記事の執筆は、管理栄養士 前間弘美が担当しました。
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秋の味覚を代表する、栗。
栗ご飯やモンブランなど、料理にもお菓子にも使える人気の食材である栗ですが、実は野菜ではなく木に実る「果物」なのです。
そんな栗はおいしいだけでなく、栄養がたっぷり。
ということで今回は栗に含まれる栄養と健康効果、渋皮や甘栗の栄養価についても解説していきます。食べる際の注意点も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
栗の栄養成分と効果効能
栗は主にカリウム、葉酸、ビタミンC、食物繊維といった栄養素が含まれています。それぞれの栄養素がどのような働きをしているのか、見ていきましょう。
血圧を調整するカリウム
栗には、体内の水分量を調整し血圧を正常に保つカリウムが豊富に含まれています。摂りすぎたナトリウム(塩分)を体の外に排出する働きがあるので、塩分の過剰摂取による高血圧予防やむくみの解消が期待できます。
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新しい赤血球を作る葉酸
葉酸は、新しい赤血球を作ったりDNAの合成に必要なビタミンです。胎児の成長に大切な栄養素なので、特に妊婦さんや妊娠を計画している女性は意識して摂取しましょう。
また最近では、葉酸に動脈硬化の予防効果を期待した研究が進められています。妊婦さんに限らず、葉酸は健康効果の高い栄養素です。
栗をおやつに取り入れて、葉酸を摂取すると良いですね。
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コラーゲンの合成を助けるビタミンC
ビタミンCは、強い抗酸化作用で体内の酸化を防ぎ、老化や生活習慣病予防に役立ちます。
また、ビタミンCはコラーゲンの合成に関わる栄養素です。コラーゲンは体のたんぱく質全体の約30%を占める重要な成分で、皮膚や骨を構成しています。そこでビタミンCを摂取しコラーゲンを合成すると、体を健康な状態に保つことができるのです。
なおビタミンCは熱に弱い栄養素ですが、栗のビタミンCはでんぷんに包まれているため加熱しても損失が少ないのが特徴です。
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腸内環境を整える食物繊維
栗に含まれる不溶性食物繊維は、水分を吸収し便を増やすことで大腸を刺激し排便を促す働きがあります。
食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分けられ、栗に多く含まれているのは水に溶けない不溶性食物繊維です。
一方、水溶性食物繊維は栄養素の吸収を緩やかにし、食後血糖値の急上昇を抑えてくれる効果も。
さらに不溶性、水溶性共に食物繊維は腸内環境を整えてくれるため、便秘予防や免疫機能の向上に役立ちます。
食物繊維は人の体で消化吸収できない栄養素ですが、私たちの健康を保つために有用な働きがあるため「第6の栄養素」とも呼ばれていますよ。
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【意外】実は渋皮にも栄養がある!
栗をむく際に捨ててしまいがちな渋皮ですが、実は渋皮は食べられるだけでなく、捨てるのがもったいないと思えるほど健康に良い成分が含まれているのです。
美容にうれしいタンニンが豊富
渋皮には、抗酸化作用のあるポリフェノールの一種、タンニンが豊富に含まれています。
タンニンには、強い抗酸化作用があり体を酸化から守ります。そのため、老化を防いだり動脈硬化の予防が期待できます。
ただし、タンニンは苦味や渋み成分でもあるので、渋皮は食べにくいと感じる方が多いでしょう。そこで栗を渋皮ごと食べるときは、砂糖と煮て渋皮煮にするとおいしくいただくことができますよ。
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栗と甘栗の栄養成分の違い
そもそも、栗と甘栗は品種が異なります。
スーパーなどでよく見かける一般的な栗は「和栗」と呼ばれ日本が原産です。対して「甘栗」は中国が原産です。ちなみによく耳にする天津甘栗は、中国にある天津港から日本へ向けて出荷される栗の総称を指します。
さらに、原産地の違いだけでなく栄養成分も異なるので比較してみましょう。
栗(ゆで) | 甘栗 | |
カロリー | 152kcal | 207kcal |
カリウム | 460mg | 560mg |
葉酸 | 76μg | 100μg |
ビタミンC | 26mg | 2mg |
食物繊維 | 6.6g | 8.5g |
*100gあたり
上記の表より、栗は甘栗よりもカロリーが低くビタミンCが豊富です。一方で甘栗はカリウム、葉酸、食物繊維が多く含まれています。
カロリーを気にしている人はゆで栗、便秘がちな人は甘栗というようにご自身の体調に合わせて選ぶのも良いかもしれません。
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むき栗(甘栗)は体に悪いって本当?
市販のむき栗は甘栗のことを指しますが、甘栗にはカリウム・葉酸・食物繊維といった栄養素が含まれているため体に良い食品だと言えます。
名前の通り、渋皮もむいた状態ですぐに食べられる「むき栗」。いろいろ人の手が加えられていると、体に悪いものも入っているのでは?と思いますよね。
実際、商品の原材料は甘栗のみとなっており、多くの方が気にしている食品添加物は使用されていないようです。栗の変色を防ぐために窒素を入れるメーカーもありますが、食べても体に害のない程度の量なので、安心して食べられますよ。
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ダイエット中に栗を食べても大丈夫?
栄養が豊富な栗ですが、食べ過ぎには注意してください。
栗は小粒で食べやすいので、ついつい食べ過ぎてしまうと、カロリーや糖質を過剰に摂取する可能性があるからです。特に甘栗の食べ過ぎには要注意。
参考までにカロリー・糖質を甘栗やご飯と比較してみましょう。
カロリー | 糖質 | |
栗(ゆで) | 152kcal | 32.8g |
甘栗 | 207kcal | 40.6g |
ご飯 | 156kcal | 38.1g |
*100gあたり(甘栗の糖質量は差引法による利用可能炭水化物)
上記の表より、カロリー・糖質ともに甘栗が一番高いことがわかります。
甘栗は1個当たり約5gなので、間食で食べるときは5〜10個(25~50g)を目安にするとよいでしょう。また、栗も同様にカロリー・糖質が低いわけではありません。目安を設けて食べ過ぎないようにしましょう。
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まとめ
以上、栗の栄養成分と効能効果について解説しました。
最後にまとめますと、
・渋皮には抗酸化作用のあるタンニンがたっぷり
・甘栗はカロリーは高いが、カリウム、葉酸、食物繊維が多い
・栗も甘栗もカロリー・糖質が高めなため、食べ過ぎ注意
となります。
それでは当記事を参考に、あなたの食生活に栗を取り入れていただければと思います。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重・カロリー&糖質を含む、食事・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてください。
参考文献
文部科学省 食品成分データベース
農林水産省 栗の魅力を探ってみよう
厚生労働省 e-ヘルスネット
高知大学医学部教授 田口博國 4、動脈硬化と葉酸
飯田薫子 寺本あい「一生役立つきちんとわかる栄養学」
三輪正幸監修「からだおいしいフルーツの便利帳」(高橋書店)