【医師監修】食後のふらつきは血圧低下が原因?病気の可能性や対策法もご紹介
当記事は、Dクリニック東京ウェルネス 医師・医学博士の相良 郁子先生にご監修いただきました。執筆はライター 松原知香(管理栄養士)が担当しました。*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
食事を終えた後、突然クラッとしたことしたことはありませんか?
さらに「ふらついた瞬間にテーブルの角へ頭をぶつけそうになった」など、あわや大怪我になっていたかもしれない、ヒヤッとした経験がある方もいらっしゃいますよね。
じつは、食後のふらつきは血圧の低下による可能性が高いのです。
今後ふらつきによる転倒やケガを防ぐためにも、原因と対策法を確認したいところ。
そこで今回は、食後のふらつきの原因から血圧が下がった時の対処法、さらに食後の血圧低下を防ぐ方法について解説します。
ぜひご覧ください。
目次
食後の血圧低下は病気のサインなのか
急に血圧の低下がみられるとなにか病気のサインなのでは?と不安になる方もいらっしゃいますよね。
そもそも、食後に起こる血圧の低下(以下、食事性低血圧)とは、食事開始後2時間以内に収縮期血圧(上の血圧)が20mmHg低下した場合と定義されています。
食事性低血圧の発症にはさまざまな理由があり、病気が隠れている可能性もあります。その一つが自律神経障害です。
自律神経障害とは
自律神経障害とは、体の臓器を支配している自律神経が、不規則な生活リズムや過度のストレスによりその働きを障害されることを指します。
血圧も自律神経によって調整されており、自律神経の乱れを整えることも食事性低血圧の改善には大切です。
また、自律神経に関わる疾患については以下の場合が考えられます。簡単に解説しましょう。
・高血圧
高血圧により動脈硬化がかなり進行した状態の場合、血圧の調整がうまくできなくなり、食事性低血圧が起こりやすくなります。
・自律神経障害を起こす神経変性症候群
パーキンソン病やレビー小体型認知症などの神経変性症候群による自律神経障害から起こります。
・糖尿病による合併症の神経障害
糖尿病の合併症である神経障害により起こります。
いずれの場合も、高い確率で食事性低血圧の症状がみられるのです。
自律神経障害は糖尿病の合併症
糖尿病の方は合併症である自律神経障害が起こり、食事性低血圧を引き起こします。その割合は、糖尿病の方のじつに40-50%と高い確率でみられます。
糖尿病の方で、食後にふらつきを感じる方は血糖管理がうまくいっていないかもしれません。症状を感じたら主治医に相談をして、良好な血糖管理ができるよう対策をとりましょう。
参考記事:【医師監修】糖尿病性神経障害とは?~症状や治療法もわかりやすく解説~
その他の原因
食後低血圧の原因には、自律神経以外にも以下の3つが関与しています。
・炭水化物の摂り過ぎ
・薬の影響
それぞれについて、わかりやすく解説しましょう。
循環血液量の低下
食後、私たちの体では食べたものを消化するため腸管へ血流が集中します。そのため、心臓へ戻ってくる血流が減ってしまい、体をめぐる血液量が低下し、血圧低下の原因となるのです。
炭水化物の摂り過ぎ
食事性低血圧の原因2つ目は、炭水化物の摂り過ぎです。
食事を摂ると、私たちの体は消化管ペプチドホルモンを分泌して食欲などをコントロールします。
その1つであるニューロテンシンというホルモンは、末梢血管を広げる作用が強く血圧を低下させる作用があります。そして、ニューロテンシンはブドウ糖(炭水化物が分解されてできるもの)の摂取量に比例して分泌量も増えるのです。
つまり炭水化物の摂り過ぎにより、強力な血圧低下作用をもつホルモンが分泌されて、食事性低血圧が起こるといえます。
高血圧の人は薬の影響も
高血圧の場合、血圧を下げる作用のある降圧薬を服用している方もいらっしゃいますが、薬が効き過ぎて食事性低血圧を起こすこともあります。
とくに高齢者の場合、腎機能の低下により薬剤を排出するスピードが遅くなり、通常よりも長い時間薬の成分がとどまりやすくなります。そのため、血圧を下げる作用が持続して食事性低血圧が起こるのです。
高齢者に起こりやすい
低血圧と聞くと若者に多いイメージですが、じつは高齢者にも多くみられます。
とくに食事性低血圧の場合、高齢者の3人に1人と高い確率で起こることがわかっているのです。
どうなる?血圧が下がった時の症状
血圧が下がった際にみられる症状としては、
・頭から血の気が引く
・立ちくらみ
・めまい
などがあります。
一方で、転倒や失神などケガや命に関わる症状も現れるため、軽くみてはいけません。
参考記事:高血圧よりも怖い!?急に血圧が下がった時の対処法~症状から予防法までご紹介~
血圧が下がった時の対処法
自分自身、あるいは家族や友人など周りの方に血圧が低下した時の症状がみられた場合、どのような対応をとったらよいのかご紹介します。
楽な姿勢になる(横になる)
血圧を安定させる方法としては、楽な姿勢になることが大切です。
楽な姿勢は人それぞれ違いますが、可能であれば足を高くし、心臓や脳に血液が戻りやすい姿勢を意識しましょう。
意識がない時はすぐに救急へ連絡を
じつのところ、急な血圧低下は高血圧よりも深刻な側面があり、重度の場合は意識がなくなることもあります。その際は、すぐに救急搬送の手配をしましょう。
【対策】食後の血圧低下を起こさないために
血圧が下がった時の対処法を覚えておくのもよいですが、食事性低血圧をおこさない一番の方法は、食後の血圧低下を防ぐ対策をとって症状が出ないようにすることです。
そのための対策法を、今回は5つご紹介します。
水分をしっかりとる
十分な水分摂取は、食事性低血圧の予防になることがわかっています。
過去の研究では、食事前に350ml、または480mlの水を飲んだところ、1時間以上にわたり血圧の上昇がみられました。
1日約1.2L以上を目安に、食前の水分補給を心がけましょう。
とくに高齢者の場合は喉の渇きを感じにくいので、喉の渇きを感じる前にこまめな水分補給をするとよいですよ。
立ち上がる時はゆっくりと
食事性低血圧がおきている状態で急に立ち上がると、足元がふらつき転倒やケガにつながってしまいます。
また、急に立ち上がることで起立性低血圧(※)を併発する可能性もあります。
食後に立ち上がる際は、急いで立つのではなくゆっくりと立ちましょう。
※起立性低血圧とは、急に立ち上がったり体を動かしたりなど体位の変化により、心臓に戻ってくる血液量が減少することで起こる血圧低下のこと。
炭水化物を摂り過ぎない
先ほど原因の1つとしてお伝えした通り、過剰な炭水化物の摂取は食事性低血圧の発症を引き起こす要因とされています。
とくに夜よりも朝の方が起こりやすいため、朝食時の炭水化物を少なめにし、昼や夜に分配するとよいでしょう。一度に食べるよりも、少量を数回に分けてゆっくり食べるのも効果的です。
また、高齢者の場合は食事の温度が高いと血圧低下につながるため、温め過ぎないことも対策法としてあげられます。
アルコールに注意する
アルコールの摂取は、末梢血管の拡張につながり血圧を低下させます。またアルコールには利尿作用もあるため、過剰に水分が尿として排出されて脱水状態を引き起こし、食事性低血圧のリスクを高める可能性もあります。
以上のことから、食事性低血圧の方はアルコールを控える(できれば禁酒する)ことが望ましいです。
カフェインは摂ってもOK?
カフェインに関しては、一過性ではあるものの血圧を上げる効果が期待できるため、むしろコーヒーや紅茶は飲むようにすすめられています。
ただし、カフェインは覚醒作用もあるため飲みすぎには注意し、マグカップ2~3杯程度までにしましょう。
内服薬の見直し
食事性低血圧が疑われる方は、医師に相談して、薬の量や種類を見直す場合があります。
とくに、薬に関しては自己判断で服用をやめるのではなく、かかりつけ医と相談したうえで行いましょう。
参考記事:高血圧の薬「降圧剤」とは〜効果・種類・副作用を分かりやすく解説〜
まとめ
食後にめまいや立ち眩みを感じた時は、食事性低血圧の可能性があります。
そして、原因の1つとして自律神経障害が考えられます。
自律神経障害が絡んだ疾患としては、高血圧や糖尿病、パーキンソン病やレビー小体型認知症も上げられるため、食事性低血圧を単なるふらつきと軽く捉えると、病気の発見が遅れる可能性もあるのです。
加えて、食後の血圧低下の要因としてあげられるのは、
・炭水化物の摂り過ぎ
・薬の影響
以上の3点です。
めまいや立ち眩みが起こって、ふらついた際に転倒してケガをする危険があるため、症状が出ないように対策を打つとよいでしょう。
具体的な対策法は、以下の5つがあります。
・立ち上がる時はゆっくりと
・炭水化物を摂り過ぎない
・アルコールに注意する
・内服薬の見直し
食後の低血圧は、重大な疾患が隠れている可能性もあるため、自己判断で放置せずに、一度かかりつけ医に相談するとよいです。
今回お伝えした内容から、食後も快適に過ごせるようになるヒントを得ていただければ幸いです。
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参考文献
Jansen, RW. et al. Postprandial hypotension:epidemiology, pathophysiology, and clinical management. Ann. Intern. Med. 122(4), 1995,286-95.
3.自律神経障害
標準的神経治療: 自律神経症候に対する治療
The influence of food temperature on postprandial blood pressure reduction and its relation to substance-P in healthy elderly subjects
自律神経障害はこう診断し治療する*