【医師監修】睡眠時無呼吸症候群の症状〜原因や治し方をポイント解説〜
当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。
執筆はライター 前間弘美(管理栄養士)が担当しました。
*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
家族から、
「いびきがひどい」
「寝ている時に呼吸が止まっている」
と言われたことのあるあなた。
その症状は、睡眠時無呼吸症候群かもしれません。
そこで今回は、睡眠時無呼吸症候群の症状や原因について解説いたします。治し方もお伝えするので、ぜひ最後までお付き合いください。
目次
睡眠時無呼吸症候群の症状とは
睡眠時無呼吸症候群の症状は、夜間と日中の症状にわけられます。
なお、睡眠時無呼吸症候群は厳密にいうと次の3つの種類にわけられます。
・中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
・混合性睡眠時無呼吸症候群(MSA)
今回は睡眠時無呼吸症候群に含まれる3つの疾患の中でも、9割近くを占めるとされている閉塞性睡眠時無呼吸症候群について解説いたします。以下、睡眠時無呼吸症候群は閉塞性睡眠時無呼吸症候群を指します。
夜間の症状
睡眠時無呼吸において夜間の症状は、
・呼吸が止まる(無呼吸)
・呼吸が弱くなる(低呼吸)
・不眠
・夜中に窒息感とともに目が覚める
・周囲の人から睡眠中のいびきや呼吸の中断の報告
・睡眠中のあえぎ呼吸
などです。
なお、睡眠1時間あたり10秒以上の無呼吸や低呼吸が15回以上みられた場合、あるいは上記夜間の症状に加えて1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数が5回以上の場合、に睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
自覚症状がなくても、高血圧や気分障害、認知機能障害、冠動脈疾患、脳卒中、うっ血性心不全、心房細動、2型糖尿病と診断されている場合には、低呼吸+無呼吸が1時間あたり5回以上認められることで診断に至ります。
日中の症状
日中の症状は、
・日中の著しい眠気
・集中力の低下
・慢性的な疲労感
などが挙げられます。
睡眠時無呼吸症候群の病態・原因について
睡眠時無呼吸症候群が起こる病態は、空気の通り道である上気道が塞がることです。
どんな人がなるの?
睡眠時無呼吸症候群は、肥満の方がなりやすいといわれています。他には男性(女性は閉経後に多い)や加齢、頭蓋顎顔面の形態、扁桃肥大なども原因とされています。
睡眠時無呼吸症候群の最大の危険因子は肥満であり、10%の体重増加で中等度(※)閉そく性無呼吸症候群発症リスクが6倍になるといわれています。なぜなら、上気道の周りに脂肪がつくことで上気道が塞がりやすくなるからです。
(※)1時間あたりの無呼吸・低呼吸が15回以上30回未満を中等度とする
実際に睡眠時無呼吸症候群の方の60%以上は、肥満がみられます。
痩せ型の人にも起こるのか
結論からいいますと、瘦せ型の人でも睡眠時無呼吸症候群になることはあります。
というのも、痩せ型であっても下あごが小さい・後退している、舌肥大、扁桃肥大などがあると上気道が塞がりやすくなるからです。飲酒、疲労、睡眠薬服用、加齢による筋緊張低下も発症要因となります。
子供も要注意
子供の場合、扁桃の肥大が原因で睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことがあります。
睡眠時無呼吸症候群セルフチェックリスト
睡眠時無呼吸症候群の症状がないか気になる方のために、自分で確認できるセルフチェックリストをご用意しました。
▢ 夜中によく目が覚める
▢ 起きた時によく頭痛が起こる
▢ 日中に眠くなることが多い
▢ 集中力の低下を感じる
▢ 全身に倦怠感がある
チェックが付いたからといって、必ずしも睡眠時無呼吸症候群だというわけではありません。しかし、気になる方は医療機関を受診するとよいでしょう。特に周囲の方にいびきや睡眠中の呼吸の停止を指摘された場合は要注意です。
何科を受診したらよいの?
もしかして睡眠時無呼吸症候群かも、と不安に感じた場合は呼吸器内科のある病院やクリニックを受診するとよいでしょう。
命の危険はあるのか
睡眠時無呼吸症候群を治療をせず放置していると、睡眠時無呼吸症候群でない人に比べて3.8倍死亡率があるという研究結果があります。
これは睡眠時無呼吸症候群が心不全と深い関連があり、発症因子でも増悪因子でもあることも一因となっています。
また短期的な影響としても、男性運転者の起こす全交通事故のうち、7%に睡眠時無呼吸症候群が関与していたという報告もある程です。
ただし治療を受ければ、睡眠時無呼吸症候群の人の心血管疾患危険因子を改善する可能性があると言われています。
睡眠時無呼吸症候群の検査について
睡眠時無呼吸症候群の検査は、終夜睡眠ポリソムノグラフィという睡眠時の呼吸状態や睡眠の状況、覚醒の状況などを評価するものです。脳波、眼球運動、顎の筋肉のモニターで睡眠の評価を行い、鼻口の気流、胸の動き、指の酸素濃度のモニターで呼吸の評価を行います。
この検査は一晩入院し、モニターを装着して行われます。
簡易検査も
入院しての検査ができない場合、簡易検査が行われます。簡易検査は、器械を借りて自宅で指や鼻にセンサーを一晩装着して行います。呼吸の評価が出来る一方、睡眠の評価はできないため、これだけでは診断が出来ない場合もあります。
費用は病院やクリニックによりますが、3000円~5000円程度で実施できるところが多いようです。
簡易検査の結果によっては、入院してポリソムノグラフィで詳しく検査をすることもあります。
睡眠時無呼吸症候群の治し方
睡眠時無呼吸症候群の治療で代表的なものは、経鼻的持続陽圧呼吸法(CPAP)です。
CPAPは鼻の部分に器械を装着し、気道に常に圧をかけることで気道を広げるというもので、気道の閉塞を防ぐ有効で安全な治療法です。
CPAPを使用することで、熟眠感も得られて日中の傾眠も改善されます。高血圧を合併している場合、降圧効果も期待できます。
マウスピースを使う場合もあるのか
軽度な睡眠時無呼吸症候群に対しては、マウスピースを使う場合があります。
これは、下あごが上あごよりも前方に出るように固定することで上気道を広くなるように保ち、いびきや無呼吸を防ぐという方法です。
睡眠時無呼吸症候群にならないための対策は
睡眠時無呼吸症候群にならないための対策として有効なのは、食事や普段の生活習慣を見直すことです。
まず睡眠時無呼吸症候群の原因の1つは肥満なので、該当する方は減量に努めましょう。健康的な減量には、適量のバランスよい食事と適度な運動を続けることが大切です。
またお酒・睡眠薬・仰向けや頸部(首)の屈曲は、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる原因だといわれています。
就寝前のお酒や必要以上の睡眠薬を控えるほか、寝る姿勢は横向きで枕は高すぎないものを選ぶといった、生活習慣の見直しも効果的と考えられます。
その他の疾患との関係
睡眠時無呼吸症候群削除は、高血圧症、糖尿病、心血管障害を発症するリスク因子となるといわれています。
原因としては、無呼吸や低呼吸によって寝ている間に低酸素、高二酸化炭素を繰り返すこと、頻回な中途覚醒などによって交感神経活性亢進を来すこと、一過性低酸素による酸化ストレス、全身性炎症などの関与が考えられています。また肥満自体がこれらの疾患の原因でもあります。生活習慣を見直すことで、睡眠時無呼吸症候群だけでなくその他生活習慣病の発症を予防できるかもしれませんよ。
参考記事:【医師監修】糖尿病とストレスの関係~適度にリラックスして生活しよう~
まとめ
以上、睡眠時無呼吸症候群の症状は夜のいびきや無呼吸、起床時の頭痛、日中の居眠りや倦怠感などだとわかりました。
睡眠時無呼吸症候群の原因は、肥満や顎の形、扁桃の肥大が考えられます。気になる方は呼吸器内科のある病院を受診し、検査を受けて適切な治療を受けましょう。
それでは当記事を参考に、あなたが快適な睡眠をとることができるようになると嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や食事の記録がカンタンにできます。日々の血糖コントロールにてぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
・睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドライン2020
・睡眠時無呼吸症候群の診断と治療 日医大医会誌 2007 3(2)
・医療情報科学研究所 病気がみえるvol.4 呼吸器 第3版 メディックメディア 283-287
・厚生労働省 e-ヘルスネット