【医師監修】骨粗しょう症は糖尿病の合併症?〜血糖との関係・検査・対策をポイント解説〜
当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。執筆はライター 松原知香(管理栄養士)が担当しました。*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
「糖尿病の人は骨粗しょう症になりやすいって聞いたのですが本当ですか?」
骨粗しょう症とは骨強度の低下により、骨折をしやすくなる病気です。年齢を重ねるにつれて増加傾向にありますが、じつは糖尿病の方は骨質が劣化しやすいため、よりリスクが高いと言われています。
骨強度は骨密度と骨質の2つの要因からなり、骨密度が70 %、骨質が 30 %の骨強度を説明すると定義されています。
糖尿病と同じく骨粗しょう症も症状はないため、知らないうちになっている場合があるのです。
今回は、糖尿病と骨粗しょう症の関係についてわかりやすく説明していきます。
具体的な対策法もご紹介するので、骨粗しょう症に対して何に気をつければ良いのかわかるようになるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
目次
糖尿病と骨粗しょう症の関係
骨粗しょう症は、骨質(骨の構造や骨を作る材料の質)の劣化や骨密度(骨の強さ)が低下することで起こるのですが、2型糖尿病の方は骨質の劣化が、1型糖尿病の方は骨密度の低下と骨質の劣化が特徴的に起こると言われています。
その原因は、高血糖による酸化ストレス(酸素が活性化して体の細胞を傷つけること)やインスリン抵抗性(インスリンが作られても効果を発揮できていない状態)が影響していると考えられています。
また糖尿病薬の中でチアゾリジン薬は、機序は分かっていないものの骨密度低下を伴うことなく骨折リスクを高めるとされています。
高血糖では骨が減るのか
高血糖の場合、骨が減るというよりは、骨質が劣化して骨がもろくなってしまうと考えていただけると良いと思います。
ですから血糖コントロールをしっかり行って、あなたの骨の質を高めていただくことがオススメです。
治りにくいってホント?
骨粗しょう症の方もそうではない方も、基本的に治るスピードに差はありません。ただし、先ほどもお話した通り骨粗しょう症の方は骨折しやすい傾向にあります。
とくに高齢者の場合、骨折箇所によっては寝たきりとなる可能性もあるのです。
生活の質(QOL)を維持するためにも、年齢を重ねたら日頃から骨折をしないようにより一層注意することが大切です。
骨粗しょう症の検査について
骨粗しょう症は、レントゲン検査でも診断することが可能な場合がありますし、骨密度検査やCTを使って検査を行うこともあります。
ただし、糖尿病患者では骨密度検査で正常もしくは正常より高値でも、骨質低下により骨折リスクは高くなっていることとされています。骨質の評価方法についてはまだ定まっておらず、計測は困難です。
先ほども触れた通り、骨粗しょう症は骨折そのものよりも、それにより寝たきりとなることがQOLにおける障害が問題となります。
・食事療法によるサルコペニア
・合併症である神経障害や網膜症の影響(足趾の感覚低下、視力障碍、起立性低血圧など)
・低血糖
など、糖尿病の方は転倒を引き起こす要因を多々有しており、糖尿病ではない方より1.5-3倍転倒リスクも高いと言われています。
骨密度検査によるも骨粗鬆症の評価ももちろん必要ですが、運動療法による筋力維持や環境整備(家具や履物など)での転倒予防が大切です。
病院では何科に行けば良い?
骨粗しょう症の受診に関しては、色々な選択肢がありますが「骨が痛い」「骨折していそう」というあなたは、整形外科を受診するのが良いかもしれません。
糖尿病でかかりつけ医がいて骨粗しょう症が気になるというあなたは、日頃お世話になっている主治医の先生に相談してみると良いでしょう。
また女性の場合は閉経後に起こる場合も多いので、婦人科で診てもらえることもあります。
骨粗しょう症の治療薬を紹介
骨粗しょう症の治療薬は
②骨の形成を促進する薬
③骨の吸収を抑える薬
の大きく3種類です。
いずれも内服薬か注射での治療が中心となります。代表的なものを紹介します。
①カルシウムの薬
・薬剤名:アスパラCa錠(内服薬)
②骨の形成を促進する薬
・薬剤名:ワンアルファ、カルシトリオール、エディロール(内服薬)
・薬剤名:テリボン、フォルテオ(皮下注射薬)
③骨の吸収を抑える薬
・薬剤名:エルカトニン(筋肉注射薬)
・薬剤名:アレンドロン酸錠(内服薬)
色々な種類がありますが、医師の指示に従って処方されたお薬を使用してくださいね。
骨粗しょう症対策には食事が大切
骨粗しょう症を予防するためには、食事と運動が大切です。
食事:カルシウムとビタミンDを意識する
骨粗しょう症を予防する上で意識して摂りたいのは、カルシウムもビタミンDです。
カルシウムは骨の材料となり、ビタミンDは骨を作る際に必要です。
それでは、カルシウムが多く含まれる食品とビタミンDを多く含む食品の一例をご紹介します。
カルシウムが多く含まれる食品 | ビタミンDが多く含まれる食品 |
魚介類(ワカサギやしじみなど) | 魚類(イワシ、サンマ、サケなど) |
大豆製品(納豆、木綿豆腐など) | きのこ類(しいたけ、きくらげなど) |
乳製品(牛乳・ヨーグルトなど) | |
野菜や海藻類(ひじきやわかめ・小松菜など) |
この他に、ビタミンK、リン、マグネシウムを含む食材も良いですし、適度にタンパク質を摂ることもおススメです。
糖尿病のあなたの場合は血糖コントロールも大切なので、これに加えてカロリーも考えながらバランスの良い食事を摂ってみてくださいね。
運動:適度な負荷をかける
適度な運動は骨の強化に欠かせません。骨は、刺激を加えることで強度が増すことがわかっています。そのため、ジョギングやウォーキングなど、骨に刺激を加える運動は骨粗しょう症の予防に有効なのです。
また、これらの運動は良好な血糖管理にも良いとされているため、糖尿病の方は積極的に取り入れるとよいでしょう。
さらに、ジョギングやウォーキングではあまり使うことのない上半身に対しては、筋肉トレーニングがオススメです。
参考記事:ウォーキングは糖尿病の治療に効果的〜正しい方法で血糖値を改善〜
参考記事:筋トレのメニューを大公開〜自宅で運動動画を見ながら鍛えよう〜
その他:日常生活での注意点
食事や運動の他には、※1程よく日光を浴びること・※2禁煙をすること・アルコールは控え目にすることも、骨粗しょう症を予防するポイントです。
※1 ビタミンDはカルシウムの吸収率を高める働きがありますが、食事による摂取以外に、太陽の光(紫外線)に当たることで皮膚でも生成されます。
※2 喫煙は骨密度の低下を進めると言われ、骨粗鬆症に関係します。
また日常生活で注意したいのは、『転ばないように気を付ける』ということです。
高齢者の場合、骨折が寝たきりの原因となる可能性もあります。
脱げやすい・滑りやすい履物は避けたり段差などに気を付けましょう。
参考記事:糖尿病とタバコの関係〜血糖値への影響から電子タバコまで幅広く解説〜
まとめ
それでは本日のまとめです。
・検査はレントゲン・治療は内服薬や注射薬
・骨粗しょう症の予防には食事と運動が大切
・日光浴や禁煙、禁酒も有効
骨折してしまうと日常生活も大変になってしまいます。
本記事があなたにとって、骨粗しょう症や骨折に気を付けるきっかけになると嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や運動の記録がカンタンにできます。ヨガの記録もできますので、日々の血糖コントロールにてぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
・国立国際医療研究センター糖尿病情報センター(2018):骨粗鬆症
・公益社団法人日本整形外科学会
・大阪府医師会 骨粗鬆症
・e-ヘルスネット 喫煙によるその他の健康影響
・骨粗鬆症予防のための運動 -骨に刺激が加わる運動を
・日本転倒予防学会誌 Vol.7 No.1:11-16 2020