【医師監修】メトホルミンは糖尿病の薬〜効果や副作用をわかりやすく解説〜
当記事はまさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院 の代表理事・院長 小林 正敬先生にご監修いただきました。
執筆はライター 前間弘美(管理栄養士)が担当しました。
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メトホルミンは2型糖尿病の治療に使われる薬です。簡単にいうと、血糖値を下げる効果があります。
とはいえ、自分が飲む薬はどのようなものか、くわしく知りたいですよね。
そこで今回は、メトホルミンの効果や副作用について、わかりやすくお伝えいたします。注意点についても解説しますので、ぜひ最後までお付き合いください。
目次
メトホルミンとは
メトホルミンは、古くから使われている経口薬です。肝臓で糖が新たにつくられるのを防ぐ効果などによって、血糖値を下げます。
主に2型糖尿病で肥満の方によく使われますが、肥満でない方にも有効です。
メトホルミンは一般名で、正式名称はメトホルミン塩酸塩です。なお、メトホルミン塩酸塩を含む薬には250mgと500mgの2種類ありますが、メトホルミン塩酸塩の含有量が違うだけで成分は変わりません。
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メトホルミンの効果
メトホルミンはビグアナイド薬(※1)という種類で、
・腸管での糖の吸収を抑える
・細胞のインスリン抵抗性(※2)を改善する
といった幅広い効果があります。
(※1)メトホルミンとブホルミンがある
(※2)インスリンの作用が十分に発揮できない状態
なおメトホルミンは単独で使用した場合、他の糖尿病の薬に比べて低血糖を起こしにくいほか、体重増加しにくい特徴があります。
複数の作用によって血糖値を下げる
メトホルミンは3つの作用によって血糖値を下げるといわれています。
まずメトホルミンは肝臓において、糖の放出や新たに糖をつくる働きを抑えます。そして、腸管では糖の吸収を抑える働きも。糖が血液中に増えないことから、血糖値の低下につながるのです。
さらにインスリン抵抗性を改善すると、血液中の糖が筋肉などの細胞に取り込まれるため血糖値が下がります。
そもそも私たちの体は、食事によって糖質を摂ると血液中に糖が移動し血糖値を上げます。健康な方であれば、血糖値が上がるとインスリンの働きによって細胞に糖を取り込み血糖値が下がります。
ところが、糖尿病の方はインスリンの量が少ないほか、効きが悪いので血糖値が下がりにくいです。そこで、メトホルミンのような薬の働きによって血糖値を下げる必要があります。
メトホルミンの副作用
メトホルミンの主な副作用は
・胃腸症状:吐き気や下痢、腹痛
・低血糖:動悸や吐き気、ふるえ
・その他:発疹や頭痛
などです。ここでは、乳酸アシドーシスと胃腸症状についてくわしくお話しいたします。
乳酸アシドーシス
乳酸アシドーシスが起こることはまれですが、重大な副作用なので注意が必要です。
メトホルミンを服用していると、糖新生が抑えられます。糖新生とは、糖質以外の物質から糖を作ることです。そして、この糖質以外の物質の1つが乳酸です。
実は、糖新生が抑えられると乳酸が体の中に溜まり、血液中に増えすぎることがあります。血液中の乳酸が以上に増えると血液が酸性になり、乳酸アシドーシスを起こすのです。
乳酸アシドーシスになると吐き気や下痢、腹痛などの胃腸症状や倦怠感、筋肉痛といった症状が起きます。重度の場合には、昏睡状態になる可能性もあるため、異常を感じたらすぐに医療機関にかかりましょう。
胃腸症状
メトホルミンの副作用である胃腸症状は、乳酸アシドーシスの症状と見分けがつきにくいですが別物です。
副作用の胃腸症状は多くの人に起こり、一時的なものだといわれています。
とはいえ、胃腸症状が乳酸アシドーシスによるものなのか、薬の副作用なのかわからず不安に感じることもあるでしょう。その場合は、自己判断で薬を減らしたりせず、主治医に相談してくださいね。
知っておきたい禁忌事項と注意点
・腎臓、心臓、肺、肝臓に機能障害のある方
・アルコールを多量に飲む方
・高齢者
上記のいずれかに当てはまる方は乳酸アシドーシスを起こしやすいため、メトホルミンの服用は禁忌とされています。
また、造影剤を使う検査や病気の際にも注意が必要です。
造影剤を使う検査に注意
検査でヨード造影剤を使用すると、腎機能が低下し乳酸アシドーシスを引き起こすおそれがあります。
そのため、造影剤を使った検査を受ける場合は、前後2日程度メトホルミンの内服を中止するのが一般的です。
ただし、自己判断での減薬や休薬は禁物です。検査前に、医師にメトホルミンを服用していることを伝えて、指示を仰いでください。
病気の時の注意点
メトホルミンは血糖値を下げる薬なので、風邪などで食事が食べられない時に服用すると、血糖値は下がり過ぎる可能性があります。もし風邪などにより、食事が取れない際は、主治医に薬の量を相談してください。
ご飯が食べられない場合に服薬をどうするか、あらかじめ主治医と相談しておくと安心ですね。
その他
メトホルミンは、多嚢胞卵巣候群の方の排卵誘発にも使用されます。
なお、最近ではメトホルミンに抗老化作用(アンチエイジング)がある、という報告も。現在も研究が進められているため、今後の結果に期待したいですね。
まとめ
メトホルミンは血糖値を下げる薬で主に2型糖尿病の治療に使われます。
メトホルミンは単独で内服すると低血糖を起こしにくく、体重が増加しにくいという特徴があります。
なお、主な副作用は乳酸アシドーシスや胃腸症状です。倦怠感や筋肉痛がある場合は、乳酸アシドーシスを起こしている可能性があります。すぐに医師に相談しましょう。
また、メトホルミンは造影剤を使用する場合や病気の時は、薬の中止や薬の量を減らす必要があります。あらかじめ医師にどのように対応すればよいか相談しておくと安心ですね。
それでは当記事を参考に、メトホルミンの効果や注意点を知っていただければ嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値やお薬の記録がカンタンにできます。日々の血糖コントロールにてぜひ活用してみてくださいね。
まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院 代表理事・院長
小林正敬先生
【HP】https://masabo-clinic.com/
詳細のプロフィールはこちら
参考文献
国立国際医療研究センター(糖尿病情報センター)血糖値を下げる飲み薬 ビグアナイド薬を服用している方へ
医学情報科学研究所(2016)薬がみえるvol.2 第1版 メディックメディア 26-27
中山書店 看護のための最新医学講座8 糖尿病と合併症
一般財団法人日本医薬情報センター メトホルミン塩酸塩錠250mgMT「日医工」
J-STAGE 老化制御シグナルを標的としたアンチエイジング物質開発の可能性 見た目とアンチエイジングの考え方