ウェルビーイングの意味とは?~定義や自分でできることを知ろう~
当記事の執筆は、臨床心理士・公認心理師 石倉美希が担当しました。
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今注目されているウェルビーイングという概念をご存じでしょうか?
「言葉は聞いたことがあるけれど、説明はできないな」と感じる方も多いことでしょう。
ウェルビーイングが実現されると、状況に応じて自分をコントロールする力が高まり、その結果、ストレスへの対処力や生産性が向上します。
そんな自分でいられたら、人生への満足度もより高まるのではないでしょうか。自分らしいウェルビーイングとは何か、ぜひ考えてみませんか?
ウェルビーイングという言葉を初めて聞いたという方にもわかりやすく解説します。本記事をお読みいただければ、ウェルビーイングであるために今日からできることもきっと見つかりますよ。
ぜひ最後までお付き合いください。
目次
ウェルビーイングは「よい状態」
ウェルビーイングとはwell(よい)+being(状態)のことを指します。
「よい状態」というと、抽象的で広い概念で少しイメージしにくいかもしれません。
ウェルビーイングという概念を初めて提唱した、世界保健機関(WHO)では、以下のように示されています。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
~健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。~(日本WHO協会より引用)
ウェルビーイングはある一部、ある瞬間だけが充実していればよいわけではなく、バランスよくすべてが満たされ続けている必要があります。さらにウェルビーイングの形も1人ひとりが違っており、自分らしさを持った概念なのです。
ウェルビーイングであるかどうかを評価するには、主観的な視点や客観的な視点、幸福度などさまざまな視点があります。
主観的ウェルビーイング
主観的ウェルビーイングとは、個々人が自分の状態を「よい状態」と感じているかどうかです。
ウェルビーイングを構成する要因についてはさまざまな研究が進んでいますが、幸せや充実感などと言い換えるとイメージしやすいかもしれません。
日本において、幸福学の第一人者である前野隆司教授のチームの研究では、主観的ウェルビーイングを構成する心理的な要因を
・自己受容と楽観(なんとかなる因子)
・自己実現と成長(やってみよう因子)
・自信と自分らしさ(ありのままに因子)
の4つの因子に定義しています。
とくに「なんとかなる」「やってみよう」というポジティブな考えや主体的なチャレンジは、主観的ウェルビーイングに直接的に影響する要因と考えられています。
前向きな気持ちで新しいことにもどんどん挑戦し、行動変容し続けていくのはウェルビーイングを実現するヒントと言えますね。
客観的ウェルビーイング
客観的ウェルビーイングは国内総生産(GDP)や平均健康寿命など、数値で示せる基準も含めて評価されます。
こうした客観的ウェルビーイングの指標が含まれる、世界幸福度ランキング2024では7年連続でフィンランドが1位、日本は51位という結果でした。まだまだ日本にはウェルビーイングになる伸びしろがあると言えますね。
まずは1人ひとりが幸せや充実をより感じることが、社会全体がウェルビーイングになる近道かもしれません。
幸福度を高める要素
アメリカの心理学者であるマーティン・セリグマン博士らは「PERMA(パーマ)理論」を提唱し、以下の5つの要素を満たしていると、幸福度が高いといわれています。
P(Positive Emotion):ポジティブな感情を持つ
E(Engagement):時間を忘れて何かに没頭する
R(Relationship):人とのよい関係を作る
M(Meaning):人生の意義や目的を見つける
A(Accomplishment)・何かを達成したり、成し遂げるために頑張る
これらの要素を満たすために、私たちがすぐできることを具体的にご紹介していきます。
よりウェルビーイングであるためにできること
私たちがウェルビーイングに過ごす工夫を、今回はPERMA理論をベースに挙げてみました。
ポジティブな感情を持つ
ポジティブな感情というと、具体的には喜び、希望、感謝、誇りなどがあります。そうした感情を意識する工夫として、以下のような取り組みはいかがでしょうか。
・好きな食べ物をじっくり時間をかけて味わう
・やってみたいことや行ってみたい場所をリスト化する
・頑張ったことを家族に話し、褒めてもらう
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時間を忘れて何かに没頭する
時間を忘れるほど集中できるものがあると、充実感が味わえ、ウェルビーイングにつながります。
マインドフルネス(今ここに意識を向けること)を体験している人は、ウェルビーイングが高く、その結果マイナスな思考を上手くコントロールできるという研究結果もあります。
忙しく、なかなか時間が取れない方はタイマーをかけて、短時間だけでも何かに没頭するのもよいですね。
・ヘッドホンで音楽を聴く
・プラモデル、ハンドメイド、絵などの創作活動をする
・部屋のカーテンを閉めて映画館のような雰囲気を作って映画やドラマを見る
・時計やスマートフォンを持たずに出かけてみる
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人とのよい関係を作る
ウェルビーイングは自分自身の中で満たされるものではなく、周りの人々との関係性がよいのも重要な要素といわれています。
コミュニケーションは自分だけでなく相手がいて成立するものですが、よい関係性を作るために自分からできることもたくさんありますよ。
・いつもより丁寧な言葉遣いを意識する
・感謝の言葉に一言付け加える(例:ありがとう、アドバイスがとても役に立ったよ)
・相手の話を聴くときに、うなずきや相づちを少し大きめにする
人生の意義や目的を見つける
あなたの人生において大切にしたいことは何でしょうか?どんな自分でありたいでしょうか?
明確な答えをすぐに出す必要はありませんが、ぜひ一度考える機会を持ってみましょう。意義や目的といわれてもピンとこないという方は、以下の質問の答えを用意してみると、ヒントになるかもしれません。
・仕事などの社会的役割に対してどんなやりがいを感じていますか?
・楽しい、嬉しい、充実していると感じるのは何をしているときですか?
・もしどんな願いでも叶えてもらえるとしたら、何を願いますか?
何かを達成したり、成し遂げるために頑張る
目標を達成するのはとても充実感を味わえるものです。人生の意義や目的のように長期的な目標だけでなく、小さな目標をクリアしていくと自信を持てます。
・できるだけ小さく、簡単に達成できる目標を設定する
・どんなに小さくてもよいので、新しいチャレンジを毎日する(例:昨日よりも5分だけ長く歩く)
・目標達成したときのご褒美を考えてみる
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あなたの生活に取り入れられそうな方法はありましたか?
ウェルビーイングは一朝一夕に実現するものではありません。毎日少しずつでも意識していくと、いつの間にか大きな変化となるでしょう。
ウェルビーイングは次の国際目標
現在の国際目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)。SDGsという言葉や概念は生活にも身近なものになってきましたが、実は2030年までの目標なのです。
次の目標は、2024年9月の国連未来サミットで検討される予定となっています。その目標案の1つにウェルビーイングが有力視されているのです。
SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」にも、ウェルビーイングの概念は含まれていますが、主に身体的健康や福祉を想定した内容です。
ウェルビーイングはすべてがバランスよく満ち足りた状態を指しますので、今後さらに本質的なウェルビーイングについて議論されていくことでしょう。
注目される背景
ウェルビーイングが注目される背景の1つに、「モノ」よりも「心の豊かさ」に価値がおかれるようになったことが挙げられています。
必要なモノがいつでも手軽に手に入るような便利な環境が整うほど、あえて手間のかかることをしたり、プロセスを楽しみたいという気持ちが高まるのかもしれませんね。
まとめ
ウェルビーイングとは肉体的・精神的・社会的にもすべてが満たされている「よい状態」のことです。
どれか1つが満たされていればよいものではなく、バランスが取れており、持続的に実現するのが望まれます。
ウェルビーイングには主観的視点、客観的視点がありますが、自分自身が「よい状態」であると自覚する主観的ウェルビーイングが今後さらに重要視されていくでしょう。
ウェルビーイングを実現するために、以下の5つの視点からすぐ取り組める工夫をご紹介しました。
・時間を忘れて何かに没頭する
・人とのよい関係を作る
・人生の意義や目的を見つける
・何かを達成したり、成し遂げるために頑張る
本記事が自分らしいウェルビーイングの形を探し、実現させるヒントになれば幸いです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や血圧の記録だけでなく、メモで出来事や考えたことを自由に記録できます。日々の健康管理でぜひ活用してみてくださいね。
参考文献:
喜多島他(2021). 主観的ウェルビーイングの分析と構造化ー因子分析と偏相関関係分析を用いた心理的要因間の関係解析ー 日本感性工学会論文誌 20(2). 129-139.
西山(2022). こころのウェルビーイングのためにいますぐ、できること 株式会社BOW&PARTNERS
小島他(2023). マインドフルネス特性と反復思考の関連に対する 心理的ウェルビーイングの媒介効果 パーソナリティ研究 32(2). 79-81.
日本ユニセフ協会 SDGs CLUB
日本WHO協会
世界幸福度報告(World Happiness Report)