ストレス耐性が低いと感じる方にオススメ~耐性を高める方法をご紹介~
当記事の執筆は、臨床心理士・公認心理師 石倉美希が担当しました。
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日々の生活でストレスは避けられないものです。しかし、同じ環境で過ごしているのに、なぜかいつもはハツラツとしていて、ストレスの影響を感じさせない人もいますよね。「自分にはストレス耐性がないんだ」と比べてしまうこともあるかもしれません。
ストレス耐性は元々持っている素質もありますが、意識して高めることもできますよ。
無理なく、取り組みやすい方法をまとめましたので、ぜひ最後までお付き合いください。
目次
ストレス耐性とは
ストレス耐性はストレスに対する抵抗力です。外部からの刺激に立ち向かい、自分自身を守るための力ともいえます。生来から持っている素質もありますが、置かれている環境や経験の積み重ねで強くなったり弱くなったりすることもあります。
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レジリエンスとどう違うの?
ストレス耐性と似た言葉としてレジリエンスがあります。これはストレスからの回復力です。ストレスによって受けたダメージから早く回復できるとレジリエンスが高いといえます。心身の健康を考える上では、ストレス耐性が高いかどうかだけでなく、ストレスを受けたあとにスムーズに回復できることも重要です。
ストレス耐性が低いからといって、すぐにメンタル不調に陥ってしまうわけではないので安心してくださいね。
6つの構成要素
ストレス耐性を構成する要素は以下の6つに分類できます。
①容量
ストレスをどの程度抱えていられるかという要素です。大きなストレスが生じたときもそのストレスを溜め込んでおける量が多ければ、心身への不調は生じにくいといえます。
ただし、どんなストレスでも溜められる人はおらず、そのときの状況や心身の状態によっても容量は変化する場合があります。
②処理
ストレッサー(ストレスの原因)を適切に処理できるとストレス耐性が高いといえます。問題が生じたとしても適切に処理ができれば、ストレスの影響は小さくなり、心身への負荷が軽減されますね。
③感知
ストレッサーは身の回りに常に存在していますが、それを感知する力が低いほど、ストレスを感じにくいでしょう。一方、ストレスの感知能力が高いと、それだけストレスを意識する場面が多くなってしまうともいえますね。
④経験
初めて経験することにうまく対処するのは難しいことですよね。ストレッサーに対処した経験値が多いほど、次にまたストレッサーに直面した際に適切に対処できるでしょう。
⑤回避
ストレスをそもそもストレスとして受け止めず、回避できればストレスに悩まされるリスクは減ります。ストレスをうまく避けられるのはストレス耐性が高いといってよいでしょう。
⑥転換
ストレスの多い状態にあるとき、それを良い意味に捉え直すことを転換といいます。転換ができると、気持ちが切り替わるだけでなく伴う行動も変わります。捉え方ひとつでもストレス耐性は高まりますね。
耐性が高い・低い人の特徴
ストレス耐性を構成する要素をふまえて、耐性が高い人・低い人はどんな人なのか見てみましょう。
高い人
ストレス耐性が高い人は
・経験から得た学びを活かせる
・気持ちをうまく切り替えられる
という特徴があるといえるでしょう。
よい意味で周りを気にせず、他人に振り回されにくいとそもそもストレスを感じにくいでしょう。また、ストレスを感じる場面を経験したあと、その経験から「次はこう対処しよう」と気づき、役立てられるとストレス対処の経験値が高まりますね。
たとえ失敗してしまっても、引きずられることなく次に意識を向けられる人はストレスにも強いでしょう。
低い人
ストレス耐性が低い人は
・ネガティブな思いをいつまでも引きずってしまう
・ストレスを抱えていられる余裕がない
という特徴があると考えられます。
いつも周りの反応や様子が気になるのは、他者への気配りという点ではよい側面です。しかし、いつも周囲へのアンテナを張っていると心身共に疲れてしまう場合も。
また、ネガティブな思いにとらわれ、繰り返し考えてしまうことを反すうといいます。反すうはうつの発症や増悪に影響するといわれており、メンタル不調への影響が大きいのです。
さらに、いつもはうまく対処できていたのに、最近うまくいかないという方は頑張りすぎて疲れがたまっているのも影響しているかもしれません。
ストレス耐性を高める方法
「自分はストレス耐性が低いから、何をしてもうまくいかない」と悲観する必要はありません。ストレス耐性を後天的に高める方法はあります。取り組みやすい方法を以下にご紹介します。
自分の特徴を知る
すべてのストレスに完璧に対処できる人はいません。まずはよく経験するストレスを把握して、その対応案だけでも準備してみましょう。
例:ストレッサー 上司Aさんの淡々とした口調に緊張してしまい、スムーズに業務の報告ができない
対応案 内容をメモにして読み上げながら報告する
Aさんの質問を予想して、回答を準備しておく
報告が終わったら、自販機で温かい飲み物を買い一息入れる
こうした準備をすると、ご自身にとってストレスになりやすいものは何かが見えてきたり、ストレスにも対応しやすくなりますね。自分の特徴を知ると、新しいストレッサーに出会ったときにも応用しやすいですよ。
効果的なコーピングを持つ
コーピングとはストレスへの対処法です。コーピングをたくさん用意しておくことも、ストレス耐性を高めるのに役立ちます。また、コーピングを準備したあとに大切なのは、準備したコーピングが効果があるのかを検証することです。
ストレスは毎回同じものとは限りませんし、心身の状態によっては、いつもは楽しめていたはずの趣味に取り掛かることすら難しいときもあります。
「ストレスにはこれが1番!」と絞りすぎず、場面や状態に応じて使い分けてみるとよいですよ。
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睡眠をしっかり取る
睡眠は脳や体を回復させるのに重要な役割を担っています。睡眠時間が不足していたり、睡眠の質が悪いと元々持っているストレス耐性を十分に発揮できなくなる場合があるのです。
睡眠の質を高めるコツは
・軽い運動を継続して行う
・寝る前のアルコールや喫煙を控える
などがあります。
忙しくて睡眠時間を長く確保するのが難しい場合は、短時間でも質の高い睡眠を取りましょう。
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自分を褒める
周りからの評価が気になったり、ネガティブな気持ちを引きずりやすい方は、自分が今日一日の中で頑張ったことを見つけて褒めてみましょう。どんなに小さいことでもよいので、まずは頑張ったことを3つ挙げてみませんか?
・目覚まし時計を1度で止められた
・通勤中、駅で階段を使うようにした
・集中して作業し、予定よりも早く書類を完成させた
頑張ったことをメモやアプリに記録しておくと、読み返したときにさらに自信や充実感も得られますよ。
まとめ
ストレス耐性には容量・処理・感知・経験・回避・転換という6つの構成要素があります。
耐性の高い人は
・塩分量
・周りの雑音を気にせず、自分のことに集中できる
・経験から得た学びを活かせる
・気持ちをうまく切り替えられる
という特徴があるといえます。
ストレス耐性が低くても、どんなことがストレスになりやすいかなどの自分の特徴を理解したり、自分にとって効果のあるストレス対処法を準備しておくと、ストレス耐性の向上が期待できますよ。
質の高い睡眠や自分で自分を褒めてあげることも、ストレスに負けにくい心と体をキープするポイントです。
本記事がさまざまなストレスと向き合いながら頑張る皆様にとって、ストレスとうまく付き合うヒントになれば幸いです。
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参考文献
厚生労働省 こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
平野 (2012). 心理的敏感さに対するレジリエンスの緩衝効果の検討 教育心理学研究 60. 343-345.
東邦大学医療センター大森病院 メンタルへルスセンター イル ボスコ 精神科の病気とストレスの関係 | こころの病について