もち麦に含まれる栄養・効果とは?~ほかの穀類との比較もサクッと紹介~
当記事の執筆は、管理栄養士 佐藤久美が担当しました。
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近年の健康ブームにより注目されている、もち麦。
みなさんは、もち麦にどのような効果があるのかご存知ですか?
実のところ、もち麦には現代人の健康をサポートする「β-グルカン」が含まれます。
そこで今回は、β-グルカンを中心にもち麦の栄養と健康効果について詳しく解説していきます。
もち麦をダイエットに活用する方法についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
もち麦の栄養と健康効果
もち麦の代表的な栄養素といえば「食物繊維」です。
食物繊維には水に溶けやすい水溶性のものと、水に溶けにくい不溶性のものがあります。
・不溶性食物繊維:保水性が高いため便量を増やし、スムーズな排便を促す
もち麦にはどちらの食物繊維も含まれますが、特筆すべきは水溶性食物繊維の「β‐グルカン」です。
β-グルカンには健康に役立つ働きがあり、その機能性は世界中で認められています。
ここからは、β‐グルカンにどのような機能性があるのか詳しく見ていきましょう。
食後血糖値を穏やかにする
もち麦を食べると、β‐グルカンがでんぷん(※)を包み込むため消化が抑制され、糖の吸収が穏やかになります。
(※)でんぷんとは、炭水化物の1種
そのため、食後の血糖値が上がりにくくなるのです。
食後の血糖値は誰でも上がるものですが、急激な上昇は体に負担がかかります。
たとえば血糖値の高い状態が続くことで、血管が傷んだり、糖尿病の発症リスクが高まったりします。
また血管が傷むと、血管の壁に厚みがでたり、血管が硬くなったりして動脈硬化の進行につながる可能性もあるのです。
ほかにも、血糖値が急激に上がることでインスリン(血糖値を下げるホルモン)が過剰に分泌されます。
インスリンには余分な糖を中性脂肪に変え、体に蓄える働きもあるので太りやすくなるでしょう。
つまりβ‐グルカンを含むもち麦は、肥満や糖尿病、動脈硬化の進行予防に役立つ食べ物と期待されているのです。
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血中コレステロールを正常にする働き
β-グルカンは、血液中のコレステロール値を正常にする働きがあると報告されています。
主にLDLコレステロールが高めの方を対象とした研究で、β-グルカンを一定期間摂取すると血中コレステロール値が改善されるというものです。
なおコレステロール値の改善には、2つのメカニズムが関係していると考えられています。
1つ目は、β-グルカンが胆汁酸(※)の排出を促すことです。
(※)胆汁酸とは、脂質の消化・吸収を促進させる物質
β-グルカンの作用で胆汁酸の排出量が増えると、肝臓で新たな胆汁酸が合成されます。
コレステロールは胆汁酸の材料であるため、血液中のコレステロールが胆汁酸合成に使用され、血液中のコレステロールは減少するというわけです。
2つ目は、β-グルカンが体内でのコレステロールの合成そのものを抑制することです。
血液中にLDLコレステロールが多いと、動脈硬化が進行しやすくなります。
動脈硬化は自覚症状のないまま進行し、心筋梗塞や脳梗塞の引き金となりますので早めの対策が重要です。
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その他
β-グルカンの多いもち麦を長期摂取した場合に、さまざまな結果が報告されています。
・内臓脂肪が多い方の内臓脂肪面積が減少
またβ‐グルカンは食物繊維の1種ですから、積極的に摂ることで腸内環境の改善や肥満、高血圧の予防などが期待できます。
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そもそも「もち麦」って?
もち麦は、大麦の1種です。
米にも「もち米」と「うるち米」があるように、大麦にも「もち麦(もち性大麦)」と「うるち性大麦」があります。
なおもち性とうるち性では、でんぷんの構造が異なります。
そして一般的には、うるち性大麦よりももち麦に1.5倍多くβ‐グルカンが含まれるのです。
ちなみに、麦といえばビールや焼酎をイメージする方もいらっしゃるでしょう。
麦ごはんとして利用される大麦は、ビールや焼酎に使われるものとは別の品種です。
白米・玄米・オートミールとの比較
もち麦と同じく主食として食べることの多い「白米・玄米・オートミール」の栄養価と比べてみました。
なお、もち麦、白米、玄米は炊飯前の栄養価で比較しています。
カロリー | 糖質 | 水溶性食物繊維 | 不溶性食物繊維 | 食物繊維総量 | |
もち麦 | 329kcal | 72.4g | 4.3g | 3.6g | 7.9g |
白米 | 342kcal | 83.1g | 微量 | 0.5g | 0.5g |
玄米 | 346kcal | 78.4g | 0.7g | 2.3g | 3.0g |
オートミール | 350kcal | 63.1g | 3.2g | 6.2g | 9.4g |
※100gあたり |
※もち麦の栄養価は押麦の値を記載 |
このように、100gあたりのカロリーはもち麦とその他の穀類で大差ありません。
一方、もち麦には水溶性食物繊維が多く含まれているとわかります。
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ダイエットへの活用方法
もち麦をダイエットに活用するには、継続的な摂取が必要です。
たとえば、ある研究では12週間のもち麦摂取で、体重や内臓脂肪の減少が見られています。
もち麦は白米と一緒に炊くと食べやすくなるため、ダイエットにも活用しやすくなるでしょう。
混ぜる目安は、主食全体の3〜5割をもち麦にするのがオススメです。
ただし、もち麦を炊くときは白米より多くの水が必要になるため、注意が必要です。
たとえば、白米2合ともち麦1合を合わせて炊飯器で調理する場合、水は4合の目盛りまで入れるとよいでしょう。
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もち麦を食べ続けた結果はどうなる?
もち麦を継続的に食べることで、すでに紹介しているβ-グルカンの機能性が発揮されやすくなります。
ただし、食べる量が多すぎると体質によっては下痢を起こす可能性もあるでしょう。
またもち麦の食べすぎは、白米と同様にカロリーの過剰摂取へとつながります。
もち麦の機能性を期待する場合は、1度にたくさん食べるのではなく、適量を継続して摂るとよいですね。
まとめ
今回は、もち麦の栄養について解説しました。
もち麦の特筆すべき栄養素は、水溶性食物繊維の1種である「β-グルカン」です。
そして、β-グルカンの健康に役立つ機能性は下記のとおりです。
・動脈硬化の進行予防
・コレステロール値の改善
・便通の改善
・内臓脂肪の減少
これらの機能性は、もち麦を継続して食べること(β‐グルカンを長期的に摂取すること)で得られます。
もち麦は白米と一緒に炊くと食べやすくなりますので、ぜひお試しください。
それでは当記事を参考に、日々の健康管理にもち麦を活用いただけたら幸いです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重・カロリー&糖質を含む、食事・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてください。
参考文献
農林水産省 もち麦にはどのような特徴がありますか 大麦の機能性と活用・利用拡大について
農研機構 もち性大麦品種「キラリモチ」の魅力!
J-Stage 大麦由来β- グルカンの肥満関連指標改善効果とその作用機序
厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2025 年版)」 策定検討会報告書