糖尿病予備群を正しく知ろう 〜症状・血糖値の仕組み・予防をわかりやすく解説〜
当記事の執筆は、管理栄養士 松原知香が担当しました。
*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
糖尿病予備群は、2型糖尿病の一歩手前の状態のことを言います。
「予備軍」という言葉から、まだ自分は糖尿病ではないと安心する方もいらっしゃいますが、実は糖尿病予備群の人は、数年以内に糖尿病になりやすいと言われているのです。
しかし、糖尿病予備軍について知って今の生活習慣を変える工夫をすれば、糖尿病にならずに済むかもしれません。
今回は、糖尿病予備群についてわかりやすくお伝えしていきます。
症状や検査方法だけではなく、「糖尿病予備群を遠ざける方法」までご紹介していますので、最後までお読みいただければと思います。
それでは、まいりましょう。
目次
糖尿病予備群は病気ではない
糖尿病予備群とは、「血糖値が正常より少し高いものの、糖尿病と診断される値よりは低い状態」のことを言います。
つまり、糖尿病になりかけている状態ですが、糖尿病予備群の段階ではまだ病気ではありません。
参考記事:糖尿病とはどんな病気?〜症状・原因・治療などをわかりやすく解説〜
糖尿病予備群と境界型糖尿病は同じ意味なの?
境界型糖尿病は診断で付けられる名称、糖尿病予備群は通称(一般的に通用している言葉)で、両方とも同じ状態を意味します。
糖尿病は、血糖値によって「正常型」 「境界型」 「糖尿病型」 の3つに分けられます。
○境界型:正常型と糖尿病型のさかい目で、正常でもなく糖尿病でもない状態
○糖尿病型:検査項目のいずれかが、基準値を超えている状態
要するに、糖尿病予備群が境界型糖尿病です。
原因は甘いものなのか
糖尿病予備群になる理由は、血液の中のブドウ糖(血糖)が多くなり、血糖値が正常より高くなるからです。甘いものも原因の一つと考えられますが、他の要因もあります。
私たちの体は、インスリンという膵臓から出ているホルモンにより、血糖値が一定の範囲内になるよう調整されています。
ところが食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足、肥満などに体質や年齢が重なると、インスリンの働きは悪くなってしまいます(インスリン抵抗性)。すると血液中のブドウ糖をうまく体内に取り込めず、血液中にブドウ糖が多く存在する状態となってしまい、血糖値は高くなるのです。
つまり糖尿病予備群となる要因は、遺伝的な体質や年齢+慢性的な食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足、肥満が考えられます。
甘いもの意外にも食事全体を見直したり運動習慣をつけるなど、総合的に見直すことが血糖値改善には大切なのです。
症状はあるの?
糖尿病予備群では、自覚症状はありません。
痛みもかゆみもないため、糖尿病予備群と言われても「糖尿病になりかけている」という意識が薄くなりがちです。
しかし放っておくと、糖尿病になるリスクが非常に高い状態ですので注意しましょう。
糖尿病予備群の検査方法と診断基準
血糖値を確認する代表的な検査には、HbA1c、空腹時血糖値、75g経口ブドウ糖負荷試験(※)の3つがあります。
(※)75g経口ブドウ糖負荷試験とは75gのブドウ糖液を飲み、30分後、1時間後、2時間後に採血を行い、血糖値を測定するもの
糖尿病予備群は 「HbA1cが6.5%未満かつ空腹時血糖値110-125mg/dlまたは75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間後の血糖値140-199mg/dl」 に当てはまる場合に、境界型として診断されます。
健康診断などで行う通常の血液検査で、HbA1cと空腹時血糖値は測定できます。つまりわざわざ病院に行って75g経口ブドウ糖負荷試験を行わなくても、この2つの結果のみで診断されるケースもあるのです。
しかし血糖値は常に変動しています。そのため時間や条件を合わせた上で、血糖値の変化を詳しく見る必要があり、75g経口ブドウ糖負荷試験の実施が推奨されるのです。
75g経口ブドウ糖負荷試験は、10時間以上の絶食後に75gのブドウ糖液を飲み、意図的に高血糖状態を作りだす検査方法です。
ブドウ糖液を飲むと、ブドウ糖が体内で吸収されて血液の中に入り、血糖値が上がります。
健康(正常)であればすぐにインスリンが分泌されて、血糖値は下がっていきますが、インスリンの働きが悪くなっている(インスリン抵抗性)状態では血糖値は下がらず、2時間後も140mg/dl以上となってしまうのです。
正常型なのか、糖尿病か境界型なのかは75gブドウ糖負荷試験の結果ではっきり分かります。
なお、血液検査の結果で血糖値が高かったり尿検査で(+)だったりした場合、糖尿病もしくは境界型糖尿病が疑われますので、一度診察を受けることをおすすめします。
参考記事:脳の栄養「ブドウ糖」とは〜効果から食べ物まで幅広く紹介〜
糖尿病予備群の治し方〜糖尿病にならないための予防方法〜
糖尿病予備群から糖尿病にならないために大切なことは、インスリンの働きを悪くする要因を取り除くことです。つまり、食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足、肥満を解消することで、糖尿病を遠ざけることができます。
それでは今日から簡単に出来る、食事や運動のポイントをお教えしましょう。
食事編ーポイントは摂取カロリーを抑えることー
摂取カロリーを減らすと内臓脂肪や体重が減り、インスリンの効きを正常な状態に戻すことができます。
食べ過ぎや飲み過ぎでお腹周りを中心に内臓脂肪が貯まると、インスリンの働きを低下させるホルモンが分泌され、血糖値が上昇します。
腹八分目の食事量を心がけ、清涼飲料水やジュースよりお茶や水を飲むようにしましょう。
食べてはいけないものはあるのか
糖尿病予備群だからといって、食べてはいけないものはありません。しかし体内への吸収が早い果物の飲み物には注意が必要です。
糖質には種類がありますが、果物に多く含まれる果糖はブドウ糖と同じ単糖類です。ブドウ糖は体へ吸収されるスピードが速く血糖値が急に上がりやすい傾向にあるため、果糖も同様に血糖値が上がりやすいといえます。
また、ミキサーにかけることで果物の食物繊維や果肉がつぶれ、一気に吸収されやすくなってしまいます。
しかしながら、果物にはビタミンやミネラル、食物繊維など、私たちの体の調子を整える栄養素が含まれおり、1日80kcalを目安に取り入れて欲しい食材です。
なのでスムージーやジュースは控え、果物そのままの味を楽しむことをおすすめします。
参考記事:糖尿病に果物は良い悪い?血糖値をあげにくいフルーツの食べ方を紹介
サプリや健康食品はどう?
血糖値が気になる方に向けた、サプリメントや健康食品も多く見かけますよね。
血糖値を下げるために、サプリメントを取り入れたほうが良いのでは..そう思う方もいらっしゃると思います。しかし予備軍から糖尿病にならないためには、食生活の改善(食事)や体を動かすこと(運動)が基本の柱です。
サプリメントや健康食品は、足りない栄養素を補助的に取り入れる目的なら良いでしょう。
とはいえ、どうしても使用したい場合は医師や薬剤師に相談してみてください。
運動編ー1日10分から始めようー
インスリンの働きを低下させる内臓脂肪は、運動することで減らすことができます。
運動もまずは続けることが大事なので、いきなり無理しないように。そこでなのですが日常生活の中で、今より10分多く体を動かしてみませんか?
出勤前にラジオ体操をしたり、オフィスで階段を利用したりするだけでもOKです。
1年継続すると、1.5-2.0kgの減量効果が期待できることがわかっています。たった10分、されど10分。忙しくても1日10分、体を動かしましょう。
参考記事:糖尿病に運動が良いのはなぜ?~効果や方法を知って血糖値を改善しよう~
運動するなら何が良い?
糖尿病にならないためには、インスリンの効きが良くなる体つくりが大切です。
インスリンの効きは内臓脂肪が原因で悪くなっていますので、脂肪をしっかり燃やすトレーニング、つまり無酸素運動(=筋肉トレーニング)が効果的と言えます。
そこで、どこでも簡単にできるスクワットはいかがでしょう。ゆっくりの膝の曲げ伸ばしをすることで、太ももの筋肉である大腿四頭筋が鍛えられます。
大腿四頭筋は私たちの筋肉の中で最も大きな筋肉です。鍛えることで代謝が上がり、効率的に脂肪を燃焼することができます。
①肩幅に開いた足を八の字に開く。背筋を伸ばして両腕を前に伸ばす。
②つま先と膝が同じ方向に曲がることを確認しながら、3秒間、空中の椅子に座るよう膝を曲げ、1秒間キープ。
③3秒間で元の姿勢に戻す。
まず10回から始めてみませんか?慣れてきたら1日30回を目安に行ってみましょう。
参考記事:【糖尿病の人必見】筋トレは血糖値の改善に有効〜オススメの筋トレを紹介〜
まとめ
糖尿病予備群は糖尿病になりかけている状態で、血糖値が正常より高くなっていることがわかりましたね。
そのままにしておくと、糖尿病になるリスクが非常に高いのが糖尿病予備群です。糖尿病にならないために、食事では腹八分を心がけ、1日10分体を動かすことをお勧めします。
また果物のスムージーやジュースは控えめにし、スクワットを取り入れてみるのも良いでしょう。
今回は、糖尿病予備群についてご紹介しました。
当記事を参考に、糖尿病の予防に役立てていただければ嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や食事の記録がカンタンにできます。記録がグラフになり状況が把握しやすいのでぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット 平成30年国民健康・栄養調査
一般社団法人日本臨床内科医会 わかりやすい病気のおはなしシリーズ14 糖尿病予備群〜血糖値が気になり始めたら〜 2010年5月発行
日本糖尿病療養指導士認定機構編・著 糖尿病療養指導ガイドブック2018 P22〜P24 3.診断