脂質異常症は朝ごはんが大事!~簡単に準備できる時短メニューもご紹介~
当記事の執筆は、管理栄養士 松原知香が担当しました。
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健康診断で「脂質異常症」と診断された方、朝ごはん食べていますか?
忙しいとつい抜いてしまいがちな朝ごはんですが、脂質異常症の方が抜いてしまうと今よりも状態が悪くなることもあるようです。
そこで今回は、脂質異常症と朝ごはんについて詳しく解説いたします。
食事内容のポイントを踏まえたうえで、忙しい朝でもサッと準備できる組み合わせをご提案します。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
脂質異常症と食事
脂質異常症とは、血液中の悪玉(LDL)コレステロール、善玉(HDL)コレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)の値に異常が見られる状態を指します。
脂質異常症の怖いところは、自覚症状がないため日常生活にすぐ支障をきたすことはない点です。
症状がないからといって放置してしまうと、動脈硬化が進行してその先には虚血性心疾患や脳梗塞など命に関わる疾患が待っています。そのため、診断された時点で改善の一手を打つ必要があるのです。
ところで、脂質の値が異常なら脂質の摂取量だけ気を付ければよい、と考える方も多いのではないでしょうか。
実は、脂質異常症の改善に必要なのは食事内容だけでなく食習慣の改善への取り組みもあわせて必要です。
その一つとして、「朝ごはんを食べる」ことは誰でもすぐに始められる最も簡単な食習慣の改善ですよ。
参考記事:脂質異常症と動脈硬化の関係~メカニズムや予防方法についても解説~
なぜ朝ごはんが大切なのか
では、どうして脂質異常症の人が朝ごはんを食べるとよいのでしょうか。ポイントは2つあります。
①昼食のカロリーオーバーを防ぐ
仮に前日の夕食を20時に食べたとして、朝食を抜いてしまうと12時の昼食まで約20時間絶食の状態が続きます。お腹もすくのでお昼に食べ過ぎてしまい、カロリーオーバーになりがちです。
②急な血糖上昇を防ぐ
長時間の絶食状態からたくさん食べると、急に血糖値が上がります。すると血糖値を下げるためにインスリンというホルモンが大量に分泌されますが、インスリンには脂肪をため込む作用もあるのです。
実際、朝食を抜くと高LDLコレステロール血症のリスクが上がるという報告もあり、これ以上状態を悪化させないためにも朝食を食べることは重要なのです。
参考記事:血糖値を上げない食べ方について管理栄養士が解説~順番や糖質量も~
脂質異常症の人が食べてもよい朝食メニューとは?
脂質異常症にとって、朝食をとることが重要だとおわかりいただけたところで、実際に朝食を準備するときに気を付けるべき点を4つご紹介します。
①適切なカロリーにおさめる
ただ朝食を食べるといっても、高カロリーなものばかりでは食事改善の意味がありません。自分に必要なカロリーを把握して、オーバーしないよう注意しましょう。
まず、カロリーを知るためには身長から割り出す標準体重を知る必要があります。
標準体重の算出方法は以下の通りです。
さらにここから1日の適正エネルギー量を算出します。
1日の適正エネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×25~30(kcal/標準体重kg)
例えば身長158㎝女性の場合、
標準体重は1.58×1.58×22=54.92kg
1日の適正エネルギー量(kcal)は54.92×30=1647kcal
以上から、1食分の適切なカロリーは1647÷3≒549kcalとなります。
朝食を買ったもので済ませる場合には、パッケージの裏にある栄養成分表示からカロリー(エネルギー)をみて、1食あたりのカロリー以内に収まるかどうかを確認するとよいでしょう。
②脂質の量と質に気を付ける
脂質異常症の食事は、脂質の量はもちろん質にもこだわるのがポイントです。
まず量ですが、摂取エネルギーの20~25%が望ましいといわれています。
例として適正エネルギー量の際に使った1647kcalを引用し、脂質からのエネルギーを摂取エネルギーの20%とすると、
1674kcal×20÷100=334.8kcal
脂質は1g=9kcalなので334.8÷9=37.2g/日
つまり1食あたりは37.2g÷3=12.4gとなります。
さらに脂質の質ですが、肉の脂身やバターに多く含まれる飽和脂肪酸は避けたほうがよいでしょう。飽和脂肪酸は、血中の悪玉コレステロールを増加させます。
オススメなのは、青魚に多く含まれるDHA・EPAです。DHA・EPAは善玉コレステロールを増やす働きをするので、朝食に鯖などの焼き魚はいかがでしょうか。
ところで、脂質異常症の場合はヨーグルトを避けるべきかという声が聞かれますが、量に気を付ければ食べても問題はありません。できれば低脂肪や無脂肪のものを選ぶとよいでしょう。
一方、良質な脂質を含み脂質異常症にはよいと噂されるアボカドですが、体によいからといってたくさん食べてしまうと、脂質のとりすぎになります。こちらもヨーグルト同様、食べる量に注意しましょう。
参考記事:【医師監修】脂質異常症とヨーグルトの関係をコレステロール値ごとに解説
参考記事:アボカドのカロリーは高い?~糖質量やダイエット中の食べ方も紹介~
③食物繊維を含んだ食材を使う
カロリー、脂質の次に重要なのは食物繊維です。
食物繊維は、悪玉コレステロールを吸着して体の外に排出する働きがあります。
食物繊維豊富な海藻やきのこ類を使ったメニューがオススメですよ。
参考記事:【意外に知らない】わかめの栄養成分~健康効果を詳しく解説~
参考記事:きのこの栄養成分で健康をサポート~必見のダイエット効果や食べ方も大公開~
④糖質をとりすぎない(中性脂肪が高い場合)
脂質異常症には以下の3タイプがあります。
・HDLコレステロールが低い場合
・中性脂肪が高い場合
とくに中性脂肪が高い方は糖質のとりすぎに注意が必要です。
「脂質」異常症なのになぜ「糖質」に注意が必要なのか、と疑問をもたれる方もいらっしゃると思います。
実は、糖質を過剰にとってしまうとエネルギーに使われず余った糖質は中性脂肪となり、体に溜まってしまうのです。
健康診断で中性脂肪が高いといわれた方は、ごはんやパンといった糖質を多く含む食品を食べ過ぎないことが大切です。
また、パンを食べる際にジャムやはちみつをつけたいという方も多いでしょうが、これらには糖質が大変多く含まれます。中性脂肪が高い場合には、避けたほうがよいでしょう。
参考記事:はちみつのカロリー&糖質はどれくらい?~砂糖との比較や注意点を解説~
朝ごはんにピッタリ!簡単メニューをご紹介
脂質異常症が食べてもよい朝食のポイントについておわかりいただけたところで、ここからは実際にどのようなメニューがオススメなのかをご紹介します。
忙しい朝でも食べていただきたいので、簡単に準備ができるものばかりですよ。
ごはんの場合
白米は糖質を多く含むため、量を少なめにし具だくさんの汁物などで満足感を得られるようにするとよいですよ。
【野菜たっぷり!豆乳味噌汁】
(1人前の栄養成分※白米150gとあわせた場合)
カロリー 294kcal
脂質 2.1g
炭水化物 64.7g
・キャベツ 30g
・人参 20g
・長ネギ 20g
・しめじ 20g
・豆乳 100ml
・だし汁 200ml
・味噌 小さじ2
(作り方)
①キャベツは一口大、人参はいちょう切り、長ネギは斜め切りにする
②だし汁をなべにいれて野菜、しめじを煮込む
③火を止めて豆乳を加えて味噌を溶かす
④再び火をつけ、沸騰直前で火を止めて完成
(ポイント)
・豆乳を加えてコレステロール対策(※)
(※)大豆イソフラボンには悪玉コレステロールと中性脂肪を減らす働きがある
・野菜たっぷりで食べ応え抜群!食物繊維も補える
・DHA・EPAが豊富なサバ缶を加えてもよいですよ
参考記事:脂質異常症の食事改善ポイントとは?~管理栄養士がわかりやすく解説~
パンの場合
パンはバターなど油を使って作るため、脂質異常症の方は避けたほうがよいといわれています。さらにパンに合うオムレツなども、作る際に油を多く使いますが、パンが食べたい日もありますよね。そんなときは、パン以外の汁物やおかずを工夫するとよいですよ。
【レンジでカンタン温野菜~カレーディップ~】
(1人前の栄養成分※フランスパンスライス2枚とあわせた場合)
カロリー 181kcal
脂質 1.6g
炭水化物 34.7g
・冷凍洋風野菜ミックス 1袋(300g)
・無脂肪ヨーグルト 大さじ2
・カレー粉 小さじ1
・粒マスタード 小さじ1
・ケチャップ 小さじ1
・塩こしょう 少々
(作り方)
①洋風野菜ミックスを皿にだして500W5分加熱する
②ヨーグルト、カレー粉、マスタード、塩こしょうをいれてよく混ぜる
(ポイント)
・食パンより油を使わずに作るフランスパンを選ぶ
・レンジで加熱するだけで手軽に野菜を食べられ、食物繊維も補える
・ヨーグルトを使ったカレー風味のディップで、あっさりしているけど満足感も◎
参考記事:冷凍野菜に栄養はあるの?~オススメレシピとともに管理栄養士が解説~
まとめ
脂質異常症の方は、食事の内容はもちろんですが生活習慣の改善が大切です。朝食を食べることは、誰でも簡単に始められる食習慣の改善なので、ぜひ実践してみてください。
それでは、当記事が健康な体へ一歩近づくお手伝いになれば幸いです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重・カロリー&糖質を含む、食事・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてください。
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット
文部科学省 食品成分データベース 朝食欠食と生活習慣病
一般社団法人 日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン
産総研 魚油による脂質代謝改善効果が摂取時刻によって異なることをマウスで発見
日本内科学会雑誌第106巻第4号 食事・運動療法の可能性と限界