薬の飲み忘れによる影響とは?~対処法や飲み忘れ防止アイディアも~
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当記事の執筆は、臨床心理士・公認心理師 石倉美希が担当しました。
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治療のために薬をもらったのに、つい飲み忘れてしまったという経験はありませんか?症状が辛いときは忘れずに飲めていても、少し症状が改善してきたり、そもそも自覚症状があまりない場合は忘れがちですよね。
今回は「薬を飲み忘れるとどうなるの?」「飲み忘れたらどうしたらいい?」という疑問にお答えします。薬の飲み忘れ防止のアイディアもご提案します。
ぜひ最後までお付き合いください。
目次
薬の飲み忘れによる影響
薬は決められた時間や回数を守って服用することで、最大の効果を発揮します。飲み忘れると、効果を十分に得られないだけでなく、薬の副作用が生じる場合もあるのです。
薬の効果を十分に得られない
薬の効果が十分に得られないということは、病気の症状が改善されない可能性があります。さらに、病状をこれ以上悪化させないために処方されている薬を飲み忘れると、病状が改善しないばかりか、進行しさらに悪くなってしまうことも。
ちなみに2型糖尿病のある方では、内服や注射を95%以上達成しているとHbA1cを良好に維持できているという研究結果があります。
また、抗生物質のように決められた量を飲み切らないと、体に耐性ができてしまい効きにくくなってしまうものもあり、注意が必要です。
副作用のリスクがある
薬を飲み忘れた後に、焦って一度に多くの量を服用すると、体内に薬の成分が必要以上の量になり、副作用が発生しやすくなります。また、薬によっては急に飲み方を変えると、体調に影響する場合があります。
薬は治療に役立つものですが、正しく服用しないとかえって体の負担になるのです。
飲み忘れが起きる理由
薬を飲み忘れてしまうのには、状況的な理由のほかに薬に対する思いが背景にある場合もあります。薬の飲み忘れが頻繁に起きる背景を整理してみると、飲み忘れを防ぐ方法を考える際にも役に立ちますよ。
多忙や外出によるうっかり
「薬を飲まなければ」と思いつつも、食事の時間が不規則だったり、外出先に薬を持っていくのを忘れてしまうという場合はありますよね。こうした場合は、薬のことを思い出すタイミングの調整や服用方法を調整し、ご自身の生活スタイルに合った方法を取り入れると、飲み忘れを防ぎやすくなります。
薬への不安や懸念点
「この薬は本当に自分に必要だろうか?」「副作用が出そうで不安だ」というように、処方された薬に対して不安や気になることがあると、薬を飲み忘れるだけでなく、薬を意図的に飲まないという選択にもつながりやすくなります。なぜ薬が必要なのか、どんな効果があるのかなどを知り、納得して薬を服用するのが大切ですね。
飲み忘れたときはすぐ飲むべき?
どんなに気を付けていても、うっかり忘れてしまったという場合もありますよね。一般的な対応についてまとめました。なお、病状や薬によって特別な指示がある場合もありますので、医師や薬剤師からの指示を必ず確認してくださいね。
次の服用まで時間がある場合
飲み忘れに気づいたとき、次の服用時間までまだ十分な時間がある場合は、すぐに飲んでも問題ないことが多いです。ただし、薬によっては一定の間隔を空ける必要があるため、医師や薬剤師に確認するのが安全です。
次の服用まで時間が近い場合
次に薬を飲む時間が近い場合、無理に飲まずに1回分は飛ばして次回の服用を優先するのが良いこともあります。無理に飲んでしまうと、体内の薬の濃度が急激に上昇し、副作用のリスクが高まる可能性があります。また、1回飛ばしてしまったからと次に2回分飲むのはやめましょう。
タイミングが決められている薬の場合
食前や食後、就寝前など、服用のタイミングが厳密に決まっている薬は、飲み忘れたからといって決められたタイミング以外に飲んでしまうと、期待しているのと逆効果になってしまう場合があります。飲み忘れた場合は、自己判断せず、医師や薬剤師に指示されている通りの方法で対処しましょう。
飲み忘れ防止のアイディア6選
よく薬を飲み忘れてしまうという方は、飲み忘れを防ぐアイディアを生活に取り入れてみてください。ちょっとした工夫で、飲み忘れを減らすことができますよ。
①服薬ルーティン
決まったタイミングで薬を飲む習慣をつけると、忘れにくくなります。
たとえば、朝食後に必ず薬を飲む、歯を磨いた後に服用するなど、日常の動作と結びつけることで自然に思い出せるようになります。
また、食後の薬は食事の前に目の前に並べておくなど、できるだけ目に入るようにしておくのも大切です。
②服薬カレンダー
カレンダーや手帳に服薬スケジュールを記入すると、飲み忘れを防ぎやすくなります。
専用の服薬管理シートを活用するのも良いでしょう。薬局や100円ショップにも薬を保管するカレンダーが売っているので、ぜひ試してみてください。
薬を飲んだかどうかを視覚的に確認できると、「今日の分の薬を飲んだかどうか忘れてしまった」という不安も解消できますね。
③薬の一包化
複数の種類の薬を飲んでいる場合、薬局で一包化をお願いすると、1回分の薬を1つの袋にまとめてもらえます。(※)これにより、どの薬をいつ飲むのかを簡単に把握できるようになり、飲み忘れを防ぐ効果があります。
薬局によっては薬の袋に日付を印字してくれる場合もありますよ。
(※)薬の種類によっては一包化できないものもありますので、薬局でご相談してみてください。
④医師との相談
服薬が負担になっている場合は、医師に相談することで、服用する薬剤の数や回数を減らせる可能性があります。ある研究では1日あたりの薬剤の数や服薬回数が増加するほど、飲み忘れも多くなるといわれています。
薬剤を変更したり、1日3回の薬を1日1回の薬に変更できる可能性がないか、まずは薬の負担感について医師と話してみませんか。無理なく継続できる方法を模索するのもよいですね。
⑤病気や薬の正しい理解
ご自身の病気の症状や経過について、正しく知ると薬の捉え方も変わるかもしれません。今飲んでいる薬がどういう効果をもたらしてくれるのか、お薬手帳などにじっくり目を通してみることから始めてみましょう。疑問点があれば、薬剤師に質問をしてみるのもオススメです。
⑥アプリのリマインダー
服薬を管理するスマートフォンアプリが多数登場しています。アラーム機能を使って通知を受け取り、飲み忘れを防ぐのもよいですね。とくに、忙しい方や外出が多い方には便利な方法です。
シンクヘルスアプリにも服薬の記録をしたり、リマインダーを通知する機能があります。
ぜひ活用してみてくださいね。
関連記事
シンクへルスアプリの紹介記事①(前編)
まとめ
薬の飲み忘れを防ぐことは、治療効果を最大限に引き出すために重要です。飲み忘れが続くと、症状の悪化や副作用のリスクが高まるため、日常的に飲み忘れを防ぐ工夫を取り入れましょう。
もし薬を飲み忘れてしまったときは、次に薬を飲む時間までどれくらいあるかを基準に、すぐ飲むか、次回まで待つかを判断しましょう。決まったタイミングで飲むことが指定されている薬もありますので、医師や薬剤師の指示を優先してくださいね。
薬を飲み忘れてしまうことが多い方は、飲み忘れ防止アイディアを活用しましょう。
②服薬カレンダー
③薬の一包化
④医師との相談
⑤病気や薬の正しい理解
⑥アプリのリマインダー
毎日の服薬は辛いと感じる方もいらっしゃるでしょう。日々体調と向き合っている努力をご自身で褒めてあげてくださいね。
本記事が日々の薬との付き合い方のヒントになりますと幸いです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重・カロリー&糖質を含む、食事・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてください。
参考文献
黒岡他(2020). 2 型糖尿病患者を対象とした服薬アドヒアランス 〜良好な血糖管理に必要な服薬遵守度・遵守 糖尿病 63(9). 609-617.
櫻井他(2021). 服用薬に対する態度とヘルスリテラシーがノンアドヒアランスへ 及ぼす影響に関する実証研究 ファーマシューティカルコミュニケーション研究会会誌 19(2). 18-30.
櫻井 (2022). アドヒアランス研究の意義と現状 薬局薬学 14 (2). 83-90.