糖尿病の治療を中断したい理由とは?~理由に応じた解決法もご紹介~
当記事の執筆は、臨床心理士・公認心理師 石倉美希が担当しました。
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糖尿病の治療は長く続くマラソンのようなものといわれています。糖尿病の治療を常に意識する毎日に疲れてしまい「治療をもうやめたい」と感じる方もいるのではないでしょうか?
実際に治療を中断してしまったことがある方は、仕事の忙しさや治療費の負担など、さまざまな事情があったことでしょう。
今回は、シンクヘルスアプリユーザーの皆様のご協力のもと、糖尿病治療に関するアンケート(※)にご回答いただきました。すると、治療を中断したいと考える背景や治療を中断したものの再開することになったきっかけが見えてきました。
日々糖尿病と向き合っているアプリユーザーの皆様のリアルな声に共感できることがあるかもしれません。
ぜひ最後までお付き合いください。
目次
治療を中断しやすいのはどんな人?
糖尿病の治療を中断しやすいのは若い方、仕事が忙しい中年層の男性の方に多いようです。
糖尿病の治療を実際に中断してしまう人は推定で、年間約8%といわれています。
今回のシンクヘルスアンケートにおいても、「現在治療を中断している」「過去に中断したことがあるが現在は再開している」と回答した割合は約16%でした。
さらに、実際に治療を中断したことはないものの、24%の方は「治療を中断したいと思ったことがある」と回答しています。
長く続く治療の中で、一度は治療をやめたいと思う方は一定数いらっしゃるといえます。
また、治療を続けている方でも約5人に1人は治療の中断を考えたことがあるのは、いかに糖尿病治療を続けていく負担が大きいかを示していますね。
働き盛りの若者・中年層の方
年齢が若いこと、仕事を持っていることは治療中断のリスクが高い傾向にあるようです。働き盛りの世代の方にとっては糖尿病の治療よりも、仕事やプライベートを優先しがちなのが理由の1つと考えられています。
関連記事:糖尿病と仕事の両立は大変?~周りの人にお願いしたいサポートも解説~
血糖値が安定している人も要注意!
意外なことに、血糖値が安定している人の中にも治療を中断してしまう人がいます。状態が安定し、治療の必要性が感じにくくなると、治療のモチベーションが低下してしまうようです。
治療を中断したい理由~シンクヘルスアンケートより~
2型糖尿病で登録しているシンクヘルスユーザーの皆様の中断したい・してしまった理由をみていきましょう。
治療中断の経験がない場合
過去に治療を中断したことはないものの、治療を中断したいと考えた理由の内訳は以下の通りです。
トップ3は
2位 治療費が高かったから
3位 治療の効果を感じられなかったから
でした。
糖尿病の治療は、食事や運動など生活に深く関係してきますが、長年の習慣を変えるのはとても大変なことです。頑張って治療に取り組んでいても、治療の効果が見えないとモチベーションを保つのが難しいのも無理もないですよね。治療が長く続くことから治療費の負担も、治療を中断したいという気持ちに関係しているようです。
過去に治療中断の経験がある場合
過去に治療を中断したことがある方の中断した理由の内訳は以下の通りです。
トップ3は
2位 治療が大変だったから(食事療法・運動療法・内服・インスリン注射を含む)
3位 治療費が高かったから
でした。
仕事が忙しいと通院する時間を確保するのが難しくなるだけでなく、食事に気をつかったり、薬を飲み忘れてしまったり、自分の体のケアがつい後回しになってしまうのかもしれませんね。また、中断経験がない方と同様に、治療が大変なのと経済的負担が大きいのは治療の継続に大きな影響がありそうです。
治療内容による中断への影響
治療中断に関わる要因として「治療が大変」という声がありましたが、治療の内容による違いはあるのでしょうか?
シンクヘルスアプリユーザーの皆様のアンケートをさらに深堀しました。
どんな治療が大変?~治療別に集計~
治療の内容別に集計したデータがこちらです。
治療を中断した経験がない方にとっては、インスリン注射や食事療法の負担がとくに大きいと感じられるようです。
一方、過去に中断したことがある方は食事療法や内服の大変さが中断につながったと回答しています。
インスリン注射による治療は負担も大きいものの、その必要性や効果から実際の中断にはつながりにくいのかもしれません。一方で食事療法や内服は、日々の忙しさなどから優先度が下がりやすく、継続しにくい方が多いと考えられます。
治療の内容は個人差もありますが、少しでも治療の負担感を減らし、継続しやすい工夫をするのが大切ですね。
治療を中断するとどうなる?
実際に治療を中断してしまうと、どんな影響があるでしょうか。治療を中断した経験があるシンクヘルスアプリユーザーの皆様の声もあわせてご紹介していきます。
合併症のリスクが高まる
治療を中断してしまった後も、今までと変わらない生活を続けていくと血糖値の高い状態が続き、HbA1cなどの数値が悪化していきます。その結果、糖尿病の合併症を発症してしまう可能性が高まります。
関連記事:【医師監修】糖尿病の合併症についてまとめました〜発症の順番や予防法も紹介〜
治療の再開ってできるの?
一度糖尿病の治療を中断してしまっても、再開は可能です。まずは通院を再開し、現在の体の状態について医師の診察を受けましょう。治療を中断する前と体の状態が変わっている場合もありますので、手元にある薬を自己判断で飲むのは避けましょう。
治療中断から再開したきっかけ~シンクヘルスアンケートより~
実際に治療を中断していたものの、再開したきっかけをシンクヘルスアプリユーザーの皆様にお聞きしました。
治療再開のきっかけの内訳は以下の通りです。
「合併症などの自覚症状が出てきた」「健康診断の数値で受診を勧められた」の声が圧倒的でした。やはり治療を中断すると、糖尿病が進行してしまうようです。
治療の必要性を感じたときが、治療を再開しようと決意するタイミングなのですね。
しかし、糖尿病は自覚症状が出にくい病気です。症状が出てからの治療よりも、早めの対処が進行を抑えるコツとなります。
関連記事:【医師監修】糖尿病の前兆とは〜初期症状やサインを把握し早めに対応しよう〜
治療を続けるためのポイント
糖尿病の進行や合併症の発症を防ぐためには、やはり治療の継続が不可欠です。
糖尿病の治療を続けていくためのポイントをまとめました。
栄養指導や療養指導を受けてみる
食事療法や運動療法の正しいやり方を知らないと、思ったような結果が出ずに治療のモチベーションも下がってしまう場合があります。指導というと怒られたり注意されたりするのではと身構えてしまうかもしれませんが、ご自身の生活スタイルを踏まえた無理のない方法を一緒に考えてくれますよ。
まだ一度も受けたことがない場合は、ぜひ主治医に相談してみてください。
通いやすい医療機関を選ぶ
仕事などで忙しく、通院を負担に感じている方は、できるだけ受診時間がご自身の生活スタイルに合っている病院を検討してみましょう。
平日の遅い時間や休日に開院しているクリニックを選ぶことで、通院しにくさを改善できる場合もあります。
医療費の負担感を主治医に伝える
医療費が経済的に負担と感じている方は、まずは主治医に伝えてみましょう。薬を変更したり、後発医薬品(ジェネリック医薬品)が使える場合もあります。
医療費の負担感は、自分から伝えないとなかなか主治医には伝わりにくい情報です。「こんなこと言っていいのかな」と考えがちですが、治療を続けていくには大切な情報ですので、ぜひ伝えてくださいね。
まとめ
今回は糖尿病の治療を中断したい理由について、シンクヘルスアプリユーザーの皆様の声も参考にまとめました。共感できる考えや、意外な気づきはありましたか?
治療を中断してしまう理由としては
・仕事の忙しさ
・治療の効果が感じられない
・治療費が高い
などが大きな要因となっていました。
治療を中断すると、糖尿病が進行し合併症のリスクが高まります。
・通院しやすい医療機関を選ぶ
・医療費の負担感を主治医に伝える
といった取り組みで、少しでも治療に伴う負担感を軽減していきましょう。
「糖尿病の治療を中断したい」と思っている方にとって、本記事が少しでも治療の負担感を軽減するのに役に立ちますと幸いです。
(※)アンケート概要
対象者:2型糖尿病と登録しているシンクヘルスアプリユーザー
回答者数:678名
より詳しいアンケートの結果はこちらをご参照ください。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や血圧の記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
国立国際医療センター糖尿病情報センター 糖尿病とお金のはなし
増田(2022). 2型糖尿病患者における治療中断の予測因子としての治療満足度とセルフモニタリング力の関連性 日本糖尿病教育・看護学会誌 26 (1). 49-57.
日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会 糖尿病受診中断対策マニュアル
田中他(2022). 治療中断歴を有する 2 型糖尿病患者における再中断の検討 糖尿病 65(8). 435-443