糖尿病の方が「鍋料理」を食べるときに注意したいこと

当記事を監修した専門家:管理栄養士 大熊麻未、編集長 宮田亘造(詳しいプロフィールはこちらをご覧ください)
冬の定番料理「鍋」。
ドラマやアニメなどでも、冬の食卓シーンに鍋料理は欠かせないものとなっています。
さて鍋料理の歴史は意外にも浅く文明開化とともに始まり、現在のような皆で1つの鍋を囲む鍋料理のスタイルが確立したのは、ちゃぶ台が普及した明治後期のことです。
近年では和食ばなれが懸念されているものの、鍋料理は不動の地位を得ています。人気の理由はいくつもありますが、「ヘルシーだから」がぶっちぎりの第1位。
とはいえ、鍋料理は本当に糖尿病の方にとってヘルシーなのでしょうか。
そこで今回は糖尿病をお持ちの方が、鍋料理を食べるときに気を付けたいことをまとめましたので、最後までお付き合いください。
目次
鍋料理の敵は「おかわりし放題」と「〆(シメ)」にあり
ヘルシーな冬料理代表の鍋。
しかし食べ方によっては、
・高カロリー
・高糖質
・塩分過多
になりやすい料理でもあるのです。
理由は鍋料理の「好きな食材を好きなだけ」食べられる点です。
一見するとメリットですが、食事のコントロールが必要な人にとってはデメリットとなってしまうことも。
なぜなら、食べた量の把握が難しいからです。
定食のように1人前が揃って出てくる料理は摂取カロリーを把握しやすいですが、「おかわり自由」という環境はその場の空気に流されやすく、結果として食べすぎにつながります。
もうひとつ気を付けたい点は「鍋の〆(シメ)」です。
食材から出た旨みたっぷりのスープで作る雑炊やうどんを食べることが、鍋料理の醍醐味と語る人がいるほど、欠かせないものとなっています。
しかし「旨みたっぷり」のスープは、ラーメンのスープと同じく「塩分たっぷり」であることも忘れてはいけません。そのスープへご飯や麺などを入れると糖分もプラスされることに。
糖尿病の方は、体重・血糖値・血圧のコントロールが不可欠です。
末永く自分の体を維持するために、〆まで食べて満足したい気持ちをグッと抑えて味見程度にしておきましょう。
関連記事:鍋はダイエットに向いているのか~オススメの食べ方や具材を徹底解説~
コレ知って!要注意な鍋の種類と味付け
さきほどは、「食べる量」と「〆(シメ)」に注意点をお伝えしました。続いては注意が必要な種類と味付けについて説明します。
たとえば「ミルフィーユ鍋」みたいに具材の半量がお肉のような鍋だった場合、おのずとお肉を食べる量が増えカロリーオーバーへまっしぐら。
また「きりたんぽ鍋」は糖質過多、「〇〇チーズ鍋」は脂質過多の傾向があります。
さまざまな種類の鍋があるなかで、糖尿病の方には野菜・肉・魚がバランスよく入った、あっさり和風味の鍋がオススメ。具材の種類が多いと旨みがアップするので、薄めの味付けでも美味しくいただけます。
しかし中には、あっさり系の味わいだと飽きてしまう人もいらっしゃるでしょう。
そのような方にぜひ試してもらいたいのが、辛みや香りをプラスすること。七味唐辛子や柚子の皮をすりおろしたものなどはよいアクセントとなりますよ。ただし柚子胡椒は塩分が多いので使用は極々少なめに。
『しらたき』や『白菜』だけ食べる人の落とし穴
極力ヘルシーに!と思っている人の中には、カロリーの低いしらたきや野菜類だけを食べて、肉や魚を摂らない人がいます。
このような食べ方は、野菜によりビタミン・ミネラル・食物繊維などは摂取できますが、腹持ちが悪いため次の食事までに空腹となり、結果として間食や夜食を摂ることにつながります。
間食や夜食を食べると血糖値のコントロールが難しく、体調が悪化することも考えられるのでオススメできません。
また食事のときにたんぱく質食品を摂取すると、食後の血糖上昇がゆるやかになります。そのため、糖尿病の方は低カロリーな野菜やしらたきなどばかりではなく、たんぱく質を含んだバランスのよい食事を摂る必要があるのです。
鍋の具材となるたんぱく質食品としては、お肉よりもカロリーの低い白身魚や豆腐などがオススメですよ。
オススメは1人鍋
1つの鍋を皆でわいわい囲むのはとても楽しいけれど、糖尿病の人にとっては食事のコントロールが難しいメニューでもあります。
そこでオススメしたいのが1人鍋。
理由1▶食べた具材・量を把握できる
糖尿病の方にとって食事は治療の一環なので、「何をどれだけ食べたか」がとても重要です。
鍋を準備する段階で野菜・肉・魚などの量を確認できるため、「うっかり食べすぎてしまった」という結果にはなりにくいですよ。
理由2▶家族を気にせず薄味にできる
薄味がいいと知りながらも家族の好みを優先させた結果、濃い味を食べることになってしまったという経験はありませんか。
1人鍋は「自分専用」、気兼ねする必要はありませんよ。
ぜひ、出汁を効かせた旨みたっぷりの薄味鍋をご堪能ください。
理由3▶自分のペースで食べられる
食べ盛りの子どもと一緒に同じ鍋を囲むと、早いペースで食事が進んでしまいます。
その点、1人鍋の場合、自分のペースで食べられるのも大きな利点ですね。
まとめ
以上、糖尿病の人が鍋料理を食べるときの注意点についてお伝えしました。
糖尿病の方が鍋を楽しむときは、
・〆を食べるときは少しだけ
・野菜だけでなくたんぱく質(肉・魚・豆腐など)も食べる
・旨みを活かした薄味に仕上げる
それでは、糖尿病の方も鍋料理を美味しく食べていただけたらと思います。
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【参考文献】
文部科学省 食品成分データベース