【医師監修】糖尿病で空腹を感じやすいのはなぜ?〜原因・対策を分かりやすく解説〜

「血糖値が高めと言われてから、以前よりお腹がすく感じがするんだけど、気のせいかな…」
自覚症状がなく進行することが多い糖尿病。
そのため、疲労感や喉の渇きなどのご自身の変化に気がついた時にはかなり進んでいる可能性があるのですが、実は「空腹を感じる」のも糖尿病の症状のひとつです。
そこで今回は、糖尿病と空腹の関係について、お伝えすることにしました。
空腹時の対策もご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
*当記事は、医療法人 南昌江内科クリニック 糖尿病専門医、一般社団法人 南糖尿病臨床研究センター センター長の前田泰孝先生に監修をいただきました。
編集&執筆者情報:こちらをご覧ください
血糖値と空腹の関係
私たちの体は、食べ物からエネルギーを生み出して生命活動を維持しています。そのエネルギー源の一つが糖質です。
通常、糖質を含む食品を摂ると、糖質は消化吸収されてブドウ糖になり血液中に入ります。すると血液中の糖度が上がって血糖値(血液中のブドウ糖の量)は上昇します。
しかし、食事のタイミングが遅いなどの理由で食事時間の間隔が空きすぎると、血糖値は下がったままで上昇しません。
その結果、脳は体がエネルギー不足だと判断し、空腹感を感じさせて何かを食べるように指示を出すのです。
つまり、血糖値が低い状態を改善しようと脳から出される信号が空腹感で、これは生命活動の一環と言えます。
参考記事:イライラするのは糖尿病が原因?〜理由や対処法をシンプルに解説〜
なぜ糖尿病だと空腹を感じやすいのか
一般的に私たちの血糖値は空腹時が110mg/dl、食後でも140mg/dl未満におさまっていますが、糖尿病ですとこれより数値の高い状態が続くようになります。
なぜなら、血糖値の上昇を抑えるホルモンであるインスリンの分泌不足あるいは効きが悪いため、ブドウ糖が血液中に蓄積されるからです。
ところが、初期の糖尿病ではインスリンが過剰に分泌され、血糖が一時的に下がり過ぎてしまうことがあります。
そもそも、糖は私たちの体を動かすエネルギー源(栄養素)です。血糖値が下がるということは、エネルギー不足を意味します。
すると、体は身体機能を正常に保つために食事をとるよう働きかけ、これが空腹感として現れます。
空腹は我慢する方が良い?
必ず我慢が必要、ということはないでしょう。
なぜなら空腹感は上記でお伝えしておりますように、体のエネルギー不足の合図です。
しかも空腹を感じている時に、万一血糖値が下がりすぎてしまうと、一時的に低血糖になることもありますので注意が必要です。
参考記事:低血糖の症状とは〜原因・予防・対策までわかりやすく解説〜
糖尿病の空腹対策について
空腹感があるたびに何かを食べていては、体重増加(内臓脂肪の増加)につながる可能性も高く、血糖コントロールを乱す要因になりかねません。
しかし、適度にエネルギー不足を補う必要はあります。
そのため、ポイントは下記の2点です。
①カロリーを摂りすぎない
②血糖値を急上昇させない(※)
(※)血糖値の急上昇が繰り返されるような状態になると、細胞から活性酸素が過剰に発生し、動脈硬化のリスクが高まります。また、血糖値に反応してインスリンが過剰に分泌されることがあり、さらに低血糖を起こしてしまい悪循環につながります。
間食するならナッツ
間食でエネルギーを補うなら、ナッツ類が良いでしょう。
ナッツ類の糖質量は他の食べ物よりとても少なく、低糖質な食べ物です。しかしナッツ類のカロリーは高めですので、量を意識しながら食べることをお勧めします。
参考記事:ナッツ類と血糖値の関係〜見落としがちな点をシンプルに解説〜
食べていいお菓子はあるのか
どうしてもお菓子が食べたい場合、ハイカカオチョコレートの活用が良いです。商品にもよりますが、1枚(5g)あたりの糖質は2.0g以下と非常に低いです。
さらに、ハイカカオチョコレートには血糖値の上昇を抑えて過剰な糖を中性脂肪に変えるのを防ぐ働きも期待できますので、血糖値の改善にも役立つかもしれませんね。
まとめ
以上、糖尿病で血糖値が高い状態になると尿中に糖が出るようになると、体はエネルギー不足とならないよう食事をとるよう働きかけ、これが空腹感として現れることが分かりましたね。
そして空腹を感じたら、必ず我慢…いうことはありません。ナッツ類やハイカカオチョコレートを活用しながら、空腹と上手に付き合うと良いでしょう。
それでは当記事が、あなたの血糖コントロールに役立つことを願っています。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や体重・血圧の記録がカンタンにできます。食事の記録もできますので、日々の血糖コントロールにてぜひ活用してみてくださいね。
医療法人 南昌江内科クリニック糖尿病専門医・一般社団法人 南糖尿病臨床研究センター センター長
前田泰孝先生
【ご略歴】 九州大学医学部医学科博士課程終了、ハーバード大学医学部附属ジョスリン糖尿病センター客員研究員、九州大学レドックスナビ研究拠点 特任助教、九州大学病院内分泌代謝・糖尿病内科 助教を経て、2017年より南昌江内科クリニック糖尿病臨床研究センターセンター長を務める
【資格】 日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会糖尿病専門医
■参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット 血糖値
厚生労働省 e-ヘルスネット 抗酸化物質
The American Journal of Clinical Nutrition, Volume 81, Issue 3, March 2005, Pages 611–614
MSD 患者さんのための糖尿病ガイド 糖尿病とは