糖尿病に効果のある飲み物はあるの?トクホ飲料やコーヒーの効果も解説
当記事の執筆は、管理栄養士 白石香代子が担当しました。
*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
「ジュースばかり飲んでいたから、糖尿病になっちゃったのかな…」
果汁入りのジュースや炭酸飲料は、つい飲みたくなる飲み物ですよね。特に仕事で疲れた時や暑くて喉が渇いた時、ゴクゴクと飲みたくなる気持ちはよく分かります。
しかし、一般的に甘いと感じる飲み物には糖分がたっぷり含まれています。糖尿病の方が飲んでも大丈夫なのでしょうか。
そこで今回は飲み物が血糖値に与える影響から身近な飲み物まで、わかりやすくお教えしていきます。
「やっぱりジュースが飲みたい」
そんなあなたの声にお答えする内容も盛り込んでいますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
糖尿病を改善する飲み物は「ない」
残念ながら、特定の飲み物によって糖尿病が改善したという報告は現段階ではありません。
一方で、血糖値にアプローチをする飲み物は存在します。
お茶は血糖値を改善する?
お茶が血糖値を改善すると断言はできませんが、緑茶の摂取量が多いほど糖尿病の発症リスクが低いという報告があります。
そのため、糖尿病の予防にお茶の活用は良いと思われますが、お茶さえ飲んでいたらあなたの糖尿病が防げるわけではありません。
なお緑茶に含まれるポリフェノールのカテキンには、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。
血糖コントロールの一つの材料として、カテキンの入ったお茶を取り入れるのは良いことでしょう。
参考記事:糖尿病に青汁は効果があるの?〜おすすめもランキング形式で紹介〜
トクホ飲料やコーヒーは糖尿病に効果があるのか
コンビニなどでもよく見かけるトクホ飲料には、血糖値に働きかける効果が期待できる商品もあります。また、「コーヒーには糖尿病を予防する効果がある」といった情報を耳にした方もいらっしゃるでしょう。
これら2つは本当に効果があるのか、解説していきます。
トクホは予防効果があるのか
残念ながら、トクホ(特定保健用食品)に糖尿病を予防する効果はありません。
トクホとは、私たちの体の機能に影響を与える成分を含んでいて、血糖値や血圧などを正常に保つサポートをする食品のことです。
血糖値に関しては「食後の血糖値の上昇を穏やかにする」と記載されており、一見すると糖尿病の予防にもよさそうに思えます。
しかし、トクホ飲料は食後の血糖値が気になる人が対象で、糖尿病患者さんに向けた商品ではないです。
また、血糖値の上がりやすい人が糖質を含む食品を摂る際に、トクホ飲料を一緒に飲むと効果的という結果がありますが、トクホ飲料だけでは血糖値の上昇を完全に抑えることは出来ないという報告が出ています。
トクホの飲料に頼り過ぎず、食べ過ぎに気をつけ、食物繊維を多く取り入れた食生活を心がけてください。
コーヒーは糖尿病に良いのか
たしかに、コーヒーが糖尿病の予防に効果的との論文があります。
対象は40〜60歳の日本人男女、約5万6,000人で10年間追跡調査したところ、コーヒーを飲む人はほとんど飲まない人に比べて、2型糖尿病の発症リスクが低下すると報告されたのです。糖尿病を発症する要因の一つであるストレスが、コーヒーを飲むことで緩和したからだと考えられています。
しかし糖尿病患者さんがコーヒーを飲むと、コーヒーに含まれるカフェインの影響で血糖コントロールが乱れる可能性があり、必ずしも糖尿病に良いとは言い切れません。
1日2杯程度で無糖のコーヒーなら、安心して楽しんでいただけます。
参考記事:コーヒーが糖尿病を予防するってホント?~目安量や注意点を解説~
糖分の多い飲み物が糖尿病に与える影響
糖尿病は血糖値を下げるインスリンがうまく働かず(インスリン抵抗性)、血糖値のコントロールがうまくいかなくなる病気です。そのため、糖分の多い飲み物によって血糖コントロールは乱れやすくなり、高血糖が続いてしまいます。
血糖値が高い状態が続くと、動脈の内側に様々な物質(プラーク)が溜まって血流が悪くなり、血管が傷ついて動脈硬化の進行にもつながる可能性もあります。
つまり、市販のジュースや清涼飲料水を飲むことが、糖尿病の合併症の一つである動脈硬化のリスクをあげることになるといえます。
さらに甘い飲み物をよく飲んでいると、高血糖だけではなく糖尿病の急性合併症である「ペットボトル症候群(ソフトドリンクケトーシス)」(※)の発症リスクも生じますので、注意が必要です。
(※)ペットボトル症候群は、糖を含む清涼飲料水を大量に飲むことで高血糖状態になっているにもかかわらず、さらに飲むという行為を繰り返すことで起こります。吐き気や腹痛がみられますが、進行すると意識障害や昏睡に繋がることもあります。
血糖変動を飲み物ごとに検証
では、糖分のおおい飲み物がどれくらい血糖に影響を与えるのか、実際に検証してみました。
今回検証するのは、以下の身近なジュース類です。
ちなみに、500mlのコーラ1本の糖質量は、ご飯お茶碗1膳分(約160g)に匹敵します。
そして、これらを飲んだ際の血糖変動は以下の通りです。
※H2社内でテスト的に実験したデータを元に作成
何も飲んでいない状態では、血糖値に変化はありません。
しかしジュースを飲むと、糖質の多い飲み物から順に高い血糖上昇を示していることがおわかりいただけると思います。
一般的に市販のジュースや清涼飲料水には糖質が多く、その糖質は体内に吸収されやすい性質をもっています。
そのため、ジュースなどの清涼飲料水を飲むと血糖値は跳ね上がってしまうのです。
参考記事:コーラのカロリー&糖質は高い?〜コーラゼロやダイエット中の飲み方も紹介〜
糖尿病と飲み物にまつわるQ&A
どうしてもジュースが飲みたい…そんな時もありますよね。
ここからは、ゼロカロリー飲料やスポーツドリンクなど、糖尿病の方が飲み物を選ぶ際に気になる点についてQ&Aにまとめました。
Q.ゼロカロリーなら問題ない?
A.ゼロカロリーの飲み物は、砂糖入りの飲み物と比べて血糖値に影響しにくいといえます。
下の図は、普通のコーラとゼロカロリーのコーラが血糖値に与える影響を比較したものです。
※H2社内でテスト的に実験したデータを元に作成
普通のコーラでは30分後には血糖値が急上昇していますが、コーラゼロは血糖値に全く影響していないことがおわかりいただけますね。
ただしゼロと表示されているにもかかわらず、糖質が含まれているものもあります。
なぜなら、100mlあたり糖質が0.5g以下であればゼロ表示ができるようになっているからです。
そのため糖質ゼロと思って飲んでいても、実際には500ml1本で糖質を2gほど摂っていることも。
ゼロと表記されている飲み物も、成分表記を見てから購入すると安心です。
Q.コーラゼロは糖尿病に悪い飲み物なのか
A.コーラゼロは、糖尿病の方にとって必ずしも「悪い」とは言い切れません。
コーラゼロの「血糖値への影響が少ない」点は、糖尿病患者さんにとってメリットのある飲み物です。一方で、コーラゼロにはカフェインが含まれており、インスリンを効きにくくして血糖値を上がりやすくしてしまうデメリットもあります。
コーラゼロのカフェイン量は、レギュラーコーヒーの約1/6、紅茶の約1/3、煎茶の約1/2と、一般的にカフェインを含む飲み物より少なめです。
しかし、血糖値に影響しないから…という理由でコーラゼロをたくさん飲むと、カフェインも多く摂ることになってしまいます。
コーラゼロは、1日1本(500ml)ほどにしておくと良いでしょう。
Q.熱中症対策にスポーツドリンクは飲んでもいいの?
A.糖尿病の方の場合、熱中症対策の水分補給はスポーツドリンクではなく水やお茶にしましょう。
なぜなら、市販のスポーツドリンクにも糖分がしっかり含まれているからです。そのため、血糖コントロールを乱す大きな原因となるリスクが高く、オススメ出来ません。
暑さで汗をかいた場合の水分補給は、普通の水やお茶で大丈夫です。
もし大量の汗をかくような運動をする時は、糖分なしの自家製スポーツドリンクを作ってみませんか?
・水:500ml
・レモン果汁:大さじ1〜1.5
・塩:0.5g (指でひとつまみ)
ペットボトルに水を入れ、レモン果汁と塩を溶かすだけで簡単にできます。自家製スポーツドリンクで、血糖値の跳ね上がりを防ぎましょう。
参考記事:糖尿病の人は熱中症にご注意!~正しい対処法や水分補給法を覚えましょう~
Q.牛乳は飲んでもいいの?
A.毎日コップ1杯程度であれば糖尿病の方にも牛乳はオススメです。
しかし、水分補給の目的で大量に飲むことは避ける必要があります。
牛乳に含まれるカルシウムは、不足すると血糖値を下げる働きのインスリンが十分に分泌されなくなります。また、牛乳のカルシウムは体への吸収率が良いのも特徴であり、糖尿病の方でも1日コップ1杯(150ml)程度は飲むとよいでしょう。
一方、牛乳には乳糖という糖質が含まれており、その量は牛乳の種類に関係なく100mlあたり、約5〜5.5gにもなります。そのため、水のかわりに1日800ml〜1L近く飲んでいると、牛乳からとる糖質量のせいでごはんやおかずなどの量を減らす必要があるのです。
ちなみに糖質50gは、6枚切りの食パン2枚に含まれる糖質量と同じです。牛乳の飲み過ぎには気をつけてください。
【結論】糖尿病の方は水やお茶がよい
ここまでさまざまな飲み物についてお話してきましたが、結局のところ糖尿病の方には 水やお茶、麦茶いった無糖の飲み物がオススメです。
そもそも、飲み物は水分を補給するためのものです。
そして水分は、私たちの体の中で栄養素を運んだり老廃物を排出したりと、生きるために大切な働きをしています。
要するに、「飲み物を飲む=生命活動」とも言えるでしょう。
しかし、糖尿病の方が糖分の多いジュースなどを水分補給として飲むことは、糖尿病の状態を悪化させる可能性もあり、本末転倒の行動です。
基本的には、水やお茶を中心に無糖の飲み物を飲むようにしましょう。
水は糖尿病に効果あり?
水が糖尿病に良い効果があるかどうかについては何とも言えない、というのが現状です。
水には、体液が持つ性質と状態を一定に保つ働きがあります。血糖値における重要な体液は、血液です。
血糖値が高い状態(=血液の中のブドウ糖が多い状態)を改善しようと水が働きかけるとも考えられますが、正確な根拠について示すものがありません。
水に糖尿病の治療効果を求めるのではなく、食事や運動、生活習慣で血糖値を改善していきましょう。
まとめ
以上、糖尿病の方には無糖の飲み物が適していることがわかりましたね。
トクホ飲料やコーヒーの効果も魅力的でしたが、糖尿病そのものを改善するわけではないため、生活習慣の改善を行ったうえでの「おまけ」としてとらえましょう。
また、飲み物の糖分は血糖値を急激にあげる原因になりますので、糖尿病の方はジュースや甘い清涼飲料水は控えるようにしましょう。
ゼロカロリーの飲み物は、基本的に血糖値に影響を与えません。しかしゼロカロリーの中にも、糖質が入っている飲み物もあります。
どうしてもコーラが飲みたい時は、ゼロカロリーを1日500ml1本程度にしておくとよいでしょう。
そして牛乳ならコップ1杯(150ml)、コーヒーなら1日2杯で無糖を目安に飲んでいただければと思います。
今回の内容を参考に、飲み物を美味しく楽しんでいただけると幸いです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や食事の記録がカンタンにできます。飲み物など日々の食事管理でぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
Nutrients. 2020 Feb 21;12(2); pii: E565. Masaki Takahashi, Effects of Timing of Acute and Consecutive Catechin Ingestion on Postprandial Glucose Metabolism in Mice and Humans.
国立研究開発法人 「健康食品」の安全性・有効性情報
厚生労働省 e-ヘルスネット