鶏むね肉の栄養と効能~筋トレ民に大人気の理由やアンチエイジングにも言及~
当記事の執筆は、管理栄養士 前間弘美が担当しました。
*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
サラダチキンの爆発的な人気と筋トレ民の台頭で、一気に主役食材の座を勝ち取った鶏むね肉。
ひと昔前まで鶏むね肉には「パサパサで美味しくない」とか、「節約のためにしょうがなく使う食材」といったイメージがありましたが、ここ数年でガラリと変わりました。
そのような背景もあり、好きな食べ物ランキングの常連となった鶏むね肉ですが、どのような栄養素が含まれているのでしょうか。
今回は鶏むね肉の栄養と効能について詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
鶏むね肉の栄養と効果効能
それでは、鶏むね肉に含まれる栄養成分について見ていきましょう。
体を作るもとになる「たんぱく質」
鶏むね肉(100g)に含まれるたんぱく質は23.3gととても豊富です。
ほかのたんぱく質食品と比べてみましょう。
たんぱく質 | |
豚もも肉 | 21.3g |
牛赤身肉 | 22.1g |
牛乳 | 3.3g |
ゆで卵 | 12.5g |
木綿豆腐 | 7.0g |
納豆 | 16.5g |
*100gあたり
上の表のとおり、ほかの肉類とは同等でそれ以外の食品より、はるかに多く含まれていることがおわかりいただけると思います。
さて、たんぱく質は体の素となる筋肉・臓器・血液・髪をつくり、体の調子を整えるホルモンの材料となる重要な成分です。
そのためたんぱく質が不足すると、筋肉の減少や貧血、髪のトラブルなどを起こす可能性があります。一方でたんぱく質を意識して摂りすぎるあまり、カロリーオーバーにつながるケースもあるため、過不足のない摂取を心がけましょう。
日本人の食事摂取基準によると、18~64歳のたんぱく質摂取量(1日あたりの推奨量)は男性で65g、女性で50gとされています。食事1回あたりのたんぱく質量は17~22g、鶏むね肉(※)に置き換えると1/4~1/2枚程度(73g~94g)になりますので参考にしてくださいね。
※鶏胸肉1枚はおおよそ300g
関連記事
豚肉のカロリー・糖質を部位別に解説~ゆでるとヘルシーになる?〜
牛肉のカロリーは高く糖質量は少なめ〜ダイエットを考慮し部位別に紹介〜
エネルギー代謝を円滑に回す「ビタミンB群」
鶏むね肉には、エネルギー代謝(※)に必要なビタミンB群がバランスよく含まれています。
(※)食べたものを体を動かすエネルギーへ作り変えること
体の中で実際にエネルギー源となるのは糖質・脂質・たんぱく質ですが、ビタミンB群のサポート無しでは代謝が円滑に進みません。つまりビタミンB群はいわば円滑材です。
ビタミンB群は全部で8種類ありますが、それぞれが単体で動いているのではなく、互いに助け合ってエネルギー代謝をサポートしています。鶏むね肉には8種類すべて揃っているため、エネルギー作りを効率的に行えますね。
現代人は消費過多「パントテン酸」
パントテン酸は、エネルギー代謝が行われるときに要となる補酵素の成分です。
ゆえに、不足するとエネルギー代謝がうまく進まないため、疲労感や食欲不振などの症状が表れます。
一般的にはパントテン酸は不足しにくい栄養素と言われていますが、コーヒーなどのカフェインやアルコールを含む飲み物を多く摂取する人は、パントテン酸の消費が増えます。
またパントテン酸には善玉コレステロールを増やす働きもあるため、鶏むね肉は食べ過ぎない程度にうまく取り入れたい食品です。
関連記事
疲労回復に効く食べ物について解説~元気が出るコンビニメニューも~
疲労回復を促進「イミダペプチド」
イミダペプチドは、活性酸素の発生やその働きを抑える抗酸化物質です。
活性酸素は微量であれば体にとって有用に働きますが、大量に作り出されると動脈硬化が進んだり免疫機能の低下などを引き起こすことも。
抗酸化物質はほかにもありますが(ブルーベリーに含まれるアントシアニンなど)、イミダペプチドは疲労発生の抑制や、疲労回復を促進する働きが認められた成分です。
このことからも、鶏むね肉は習慣的に筋トレしている方にとくにオススメしたい食品といえるでしょう。
関連記事
【医師監修】脂質異常症と動脈硬化の関係~メカニズムや予防方法についても解説~
鶏むね肉(皮なし)のカロリー
皮なしの鶏むね肉(100g)のカロリーは105kcalです。
参考までに、皮なしの鶏もも肉(100g)は113kcalですので、カロリーを気にされる方は鶏もも肉ではなく鶏むね肉を選ぶとよいでしょう。
関連記事
鶏肉のカロリーと糖質は低い?〜もも肉・胸肉・ささみなど部位別に解説〜
皮のカロリーはどうか
鶏皮(生)のカロリーは100gあたり513kcal、1枚あたり(約40g)約200kcalととても高カロリーです。
調理の過程で脂肪分はいくらか落ちますが、鶏むね料理をヘルシーに仕上げたい場合は皮を取り除くことをオススメします。
関連記事
糖質の少ない&多い食べ物ランキング~手軽な市販の低糖質食品もご紹介~
鶏むね肉を加熱するとたんぱく質は減るの?
答えはNOです。
加熱することでたんぱく質の絶対量は増えませんが、加熱し水分が抜けることで重量あたりのたんぱく質が占める割合は増えます。
栄養を逃がさない調理法
栄養素を無駄にしない調理法はズバリ「蒸し」です。
その理由は鶏むね肉に含まれる水溶性の栄養成分(ビタミンB1やパントテン酸など)にあります。「水溶性」は文字通り水に溶ける成分なので、茹でることで栄養成分が溶けだし減ってしまうからです。
また、口当たりの面から見ても蒸すことをオススメします。
鶏むね肉は脂肪分が少ないため茹でたり焼いたりする調理法の場合、どうしてもパサパサになってしまいますが、蒸すことでしっとりとした食感に仕上がりますよ。
関連記事
脂質の少ない食べ物ランキング~意外に脂質の多い食べ物も紹介~
【疑問解決】鶏むね肉が疲労回復に効果的なのは本当か
鶏むね肉には疲労回復効果が期待できます。
それは鶏むね肉が、エネルギー代謝に必要なビタミンB群やパントテン酸、疲労発生を抑制するイミダペプチドなどが含まれた食品だからです。
なかでもイミダペプチドは、疲労の原因となる乳酸の分解を促進する働きがあり、疲労を軽減させる効果が認められた成分です。
渡り鳥が長時間飛び続けられるのはイミダペプチドのおかげと言われていることからも、鶏むね肉の疲労回復効果は大きいといえるでしょう。
関連記事
疲労回復に効く食べ物について解説~元気が出るコンビニメニューも~
アンチエイジングには効果あり?
鶏むね肉はアンチエイジングに期待できる食品です。
なぜなら、鶏むね肉には老化を食い止める抗酸化物質が含まれているからです。
そもそも老化は細胞が酸化したり傷ついたりすることで進行しますが、抗酸化作用のある食品を摂ることで細胞の酸化を食い止められます。
ゆえに、アンチエイジングと聞くと見た目の若返りだけをイメージする方が多いですが、細胞そのものの老化を抑えるため健康寿命を伸ばす手段の1つとして考えられています。
関連記事
【医師監修】肌の老化は糖化が原因?〜4つの対策を徹底解説〜
鶏むね肉を毎日食べるメリット・デメリット
鶏むね肉に魅力的な栄養素が含まれているのはご説明した通りですが、連日食べ続けるのはお勧めできません。
なぜなら鶏むね肉以外にも、食べていただきたいたんぱく質食品があるからです。
牛肉や豚肉、魚や大豆製品には、それぞれ鶏むね肉には入っていない栄養素が入っておりどれも体にとっては重要な成分です。
鶏むね肉だけに限りませんが、特定の食品に偏った食事を続けていると栄養素の過不足が出てきますので、偏りなく多品種を食べるようにしたいですね。
関連記事
おすすめプロテインをホエイとソイそれぞれ紹介~選び方や活用術も~
痛風があっても食べてもいい?
食べすぎなければ問題ありません。
痛風の直接的な原因となる成分は尿酸です。
尿酸はプリン体という成分が分解されてできるものですが、プリン体は食事から摂取する以外に体内で作り出されるものがあります。そのため、食事から摂るプリン体を極端に控えても痛風発作を避けられないことは多いです。
それゆえ一般的には、痛風をお持ちの方であっても鶏肉を食べなくする必要はありません。
ただし、肉類にはプリン体が比較的多く含まれているため、食べ過ぎには注意しましょう。
ちなみに痛風とは病名ではなく、血液中の尿酸濃度が基準値以上になる「高尿酸血症」と呼ばれる病態の症状の1つです。
関連記事
明太子の栄養と健康効果~塩分やプリン体についてもわかりやすく解説~
まとめ
以上、鶏むね肉の栄養と効果効能についてお届けしました。
鶏むね肉には、たんぱく質やビタミンB群がバランスよく含まれているため、筋トレに励む方にオススメの食品だとわかりましたね。
またアンチエイジングに役立つ成分も含まれているため、健康に気を使うすべての人に食べてもらいたい食品です。
それでは、当記事を参考に健康的な毎日をお過ごしください。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重・カロリー&糖質を含む、食事・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてください。
参考文献
文部科学省 食品成分データベース
厚生労働省 e-ヘルスネット
J-STAGE イミダペプチド
独立行政法人農畜産業振興機構 【まめ知識】鶏むね肉ってすごい!
公益財団法人日本食肉消費総合センター トップページ
大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座 イミダペプチド成分について