【医師監修】血糖値とダイエットの関係~急上昇を防ぐ食べ方で太りにくい食生活に~
当記事は、そのだ内科糖尿病・甲状腺クリニック 渋谷駅道玄坂院 院長 薗田 憲司先生にご監修いただきました。
執筆はライター 前間弘美(管理栄養士)が担当しました。
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・血糖値を上げなければ太らない
・糖質を制限すれば痩せる
このような話を聞いたことはありませんか?
摂取カロリーよりも消費カロリーが上回れば痩せる、ということはご存じの方も多いでしょう。ところが実は、血糖値の変動とダイエットにも深い関係があるといわれています。
そこで、今回は血糖値とダイエットの関係についてお伝えします。血糖値を上げにくい方法もまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
なぜ血糖値とダイエットが関係あるのか
血糖値を下げるホルモンのインスリンには、血液中に余ったブドウ糖を中性脂肪として体に蓄える働きがあるからです。
血糖値の急上昇が続き中性脂肪が増え過ぎると体重増加や肥満につながることから、血糖値はダイエットと関係があるといえます。
さらに、血糖値が下がりすぎて空腹を感じることもダイエットと関係します。
血糖値の急上昇で太る仕組み
私たちがご飯やパンなど糖質の多い食事を摂取すると、糖質が分解されてブドウ糖となり血液中に取り込まれて血糖値が急上昇します。そして急激に上がった血糖値を下げるために、インスリンが分泌されます。
ブドウ糖はインスリンの働きで血液中から肝臓や筋肉などの細胞内に取り込まれ、エネルギーとして使えるようになるのです。ところが血液中のブドウ糖が多すぎると細胞に取り込みきれず、ブドウ糖が血液中に余ります。
すると、インスリンが血液中に余ったブドウ糖を中性脂肪に変えて調整します。中性脂肪が増えると肥満を招く可能性があるので、血糖値の急上昇は太る原因になるといえるでしょう。
血糖値が下がりすぎてしまう
甘いものやパンなどの糖質が多い食べ物を摂った後、2~3時間経つと空腹を感じたことはありませんか?
これは食後に急上昇した血糖値が下がりすぎた結果起こった、反応性低血糖という状態です。私たちの体は血糖値が下がると空腹を感じ、食事や間食を行う行動につながります。
下記は、弊社の健康管理アプリ「シンクヘルス」で健康な女性スタッフ(20代)の血糖変動を記録したグラフです。
グラフを見ると、20時ごろに食事を摂ったのち急上昇した血糖値が、22時半ごろに食事前よりも低下していることがわかります。
つまり、血糖値が急上昇する食事の摂り方だと、2~3時間後にまた空腹を感じて食事や間食を摂りたくなる可能性があるのです。食後2~3時間経つごとに間食をしていたら、摂取カロリーが消費カロリーを上回ってしまうでしょう。
血糖値を上げない食べ物はあるの?
糖質がゼロの食べ物であれば、血糖値を上げません。ただし健康増進法では、食品100g中(または飲料100ml中)の糖質量が0.5g未満であれば、糖質ゼロと表示してよいことになっています。
つまり市販の糖質ゼロと表示された食べ物は、必ずしも糖質量が0gではないのです。とはいえ、血糖値への影響は少ないと考えられます。
また、糖質の少ない食べ物や食物繊維を多く含む食べ物は血糖値を上げにくいといわれています。たとえば、肉や魚、卵は糖質が少なく、野菜や海藻、きのこは食物繊維が多いので血糖値を上げにくい食べ物です。
関連記事:糖質の少ない&多い食べ物ランキング~手軽な市販の低糖質食品もご紹介~
関連記事:血糖値を下げる食べ物&飲み物ランキング〜注目の食材とは?〜
血糖値の急上昇を防ぐ食べ方
血糖値の急上昇を防ぐ食べ方のポイントは
②低GI食品を選ぶ
③よく噛む
④糖質を摂りすぎない
の4つです。
それでは、1つずつ解説いたしますね。
参考記事:血糖値を上げない食べ方について管理栄養士が解説~順番や糖質量も~
①食べる順番
野菜→主菜(たんぱく質)→主食(炭水化物)の順に食べると、血糖値の上昇が緩やかになります。
2型糖尿病の方と健康な方を対象に行った試験によると、主食から食べた場合と比べて、血糖変動が30%以上減少したそうです。
具体的には、まずサラダなど野菜のおかずを食べ、次に肉や魚、卵などのメイン料理を食べます。最後に、ご飯やパンなど糖質の多い主食を食べます。
とはいえ外食などメニューによっては、毎食サラダを用意するのが難しいこともあるでしょう。そのような時は、主食の前に野菜や肉、魚などのおかずを食べるだけでも血糖値の急上昇を抑えられます。主食の前におかずを食べることを意識してみてくださいね。
関連記事:五大栄養素の働きとは?管理栄養士がわかりやすく解説~主な役割も紹介~
②よく噛む
ヒトを対象とした研究で、よく噛むとインスリンの分泌が促されるため血糖値の急激な上昇も抑えられるとわかっています。
糖尿病の検査の1つである75gブドウ糖負荷試験は、75gのブドウ糖が含まれた液体を飲んだ後、決められた時間に血液検査を行う検査です。この検査では、ブドウ糖を摂取した後の血糖変動や血中インスリン値がわかります。
研究では、香料や甘味料の含まれないガムを15分間噛んだのちに、75gブドウ糖負荷試験を行いました。すると、ガムを嚙まないで75gブドウ糖負荷試験を受けた人たちと比べて、ガム噛んだ人たちは血糖値の上昇が緩やかだったのです。
さらに、ガムを噛んだ人たちの血中インスリン値はガムを噛まない人たちと比べて、明らかに速く上昇し、すみやかに下降しました。
上記の結果から、よく噛むことがインスリンの分泌を早くし血糖値の急上昇を抑える、とわかります。
①の食べる順番を守りつつ、しっかりと食材を噛んで食べると、より血糖変動が緩やかになりますね。
③低GI食品を選ぶ
低GI食品とは、血糖値を上昇させにくい食品のことです。低GI食品を積極的に食べると、血糖値の上昇が緩やかになるといえます。
そもそもGIとはGlycemic index(グリセミック インデックス)の略で、食べ物の血糖上昇度を数値化したものです。
GI値は、食物繊維が血糖値の上昇を抑える働きに着目しています。そのため、食物繊維の多い玄米や全粒粉のパンは、白米や普通のパンと比べてGIが低いとされています。
ただし、一般的に食事はさまざまな食品を組み合わせることがほとんどです。GI値は食品それぞれのデータである上に、GI値の低い食品であっても多く食べると血糖値は大きく上昇するといわれています。たとえ低GI食品であっても、適量食べるようにしましょうね。
④糖質を摂りすぎない
食べる順番や噛む回数に気を配り、低GI食品を選んで食事をしても、糖質を摂りすぎると血糖値は急上昇します。
適度な糖質量は、健康な方で1日の摂取エネルギーの50~65%とされています。なお糖尿病の方は医師の指示によって、摂取エネルギー量と糖質量が決まるでしょう。基本的に糖質量は摂取エネルギーの50~60%となることが多いようです。
日本人の食事摂取基準による身体活動量がふつうに分類される男女の糖質量を、下記の表にまとめました。
【身体活動量ふつう(基礎疾患なし)】
年齢 | 糖質量 | |
男性 | 30~49歳 | 338~439g |
50~64歳 | 325~423g | |
女性 | 30~49歳 | 256~333g |
50~64歳 | 244~317g |
参考までに、ご飯普通盛り1杯の糖質量が52.7g、6枚切りの食パンの糖質量が28.9gです。なお、スーパーやコンビニで買える食品は、成分表示に炭水化物量または糖質量が記載されています。
血糖変動を緩やかにするためには、普段食べている食事の糖質量を把握し適量摂取できるようにしましょう。
関連記事:ご飯の糖質量やカロリーを知ろう!糖質制限での活用を踏まえシンプルに解説
関連記事:食パンの糖質は?〜糖質オフや糖質制限におすすめのパンも紹介〜
食後に運動をするのも効果的
食後に運動すると血液中のブドウ糖が筋肉で消費されます。そのため、食後の運動は血糖変動を緩やかにするのです。
さらに、運動を日々の習慣にすることで筋肉が増えると、インスリンの効果が高まります。インスリンが効きやすい体は、血糖値の上昇も緩やかになります。
関連記事:食後の運動は血糖値の改善につながる〜オススメの運動を動画で紹介〜
血糖値とダイエットが関係ないといわれるのはなんで?
体重の増減に関係するのはカロリーだから、血糖値はダイエットとは関係ないといわれているようです。
たしかに私たちの体は、摂取カロリーが消費カロリーを下回ると体重や脂肪が減ります。
しかし、血糖値が急上昇することで大量に分泌されたインスリンが、余った糖質を中性脂肪に変えるのも事実です。
つまり、私たちの体は単純にカロリーだけ、糖質だけ、気を付ければ痩せるわけではないのです。大切なのは、適切なカロリーや糖質を摂取しつつ、血糖値の急上昇を防ぐことといえます。
血糖をコントロールすれば太らないわけではない
血糖をコントロールすることはダイエットと関係ありますが、血糖値を管理できれば必ずしも太らないわけではありません。
私たちの体は、カロリー・糖質・運動量など、さまざまな要因で体重や脂肪が増減します。これだけやれば太らない、というダイエット法は存在しませんので、バランスのよい食事と適度な運動をコツコツやることが大切です。
まとめ
以上、血糖値の急上昇を防ぐと
・余分な糖質が中性脂肪に変わらない
・反応性低血糖を起こさない
ので、ダイエットにつながるとわかりました。
血糖値の上昇を緩やかにすると、糖尿病の悪化だけでなく肥満も防ぎます。糖尿病や肥満は動脈硬化を進行させるため、心筋梗塞などを引き起こす原因となります。
健康な生活のためにも、血糖変動が穏やかな食生活を送りたいですね。
それでは当記事があなたの血糖値を安定させる手助けになれば、うれしいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスではカロリー&糖質を含む食事・体重・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてくださいね。
【参考文献】
厚生労働省 e-ヘルスネット
日本糖尿病学会 糖尿病食事療法のための食品交換表
消費者庁 食品表示法に基づく 栄養成分表示のための ガイドライン
日本農芸化学会 化学と生物 食べ方と食べる時間が血糖変動に影響を与える
J-STAGE 咀嚼とインスリン分泌に関する研究ーガム咀嚼後の経口ブドウ糖負荷試験ー 咀嚼とインスリン分泌に関する研究―ガムベース咀嚼ー