ぶどうの栄養と効能を解説~皮に含まれるポリフェノールについても~
当記事の執筆は、管理栄養士 前間弘美が担当しました。
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ぶどうの歴史はとても古く、古代エジプトの壁画にも栽培風景が描かれていたとか。時は経ち、奈良時代にシルクロードを通って日本にやってきたと言われています。
本来、日本のような雨の多い気候は、ぶどうの栽培には向いていないと言われています。しかし、研究者が品種改良を重ねたおかげで、日本でも高品質のぶどうが続々と登場しているのです。
今回はそんなぶどうの栄養成分と効能について解説します。ポリフェノールについてもお伝えするので、どうぞ最後までお付き合いください。
目次
ぶどうの栄養と効果効能
ぶどうには糖質やカリウム、ポリフェノールが豊富に含まれます。
それでは詳しく解説いたしますね。
体のエネルギー源「糖質」
ぶどうにはエネルギー源である糖質が豊富です。
糖質は摂取量に比べてエネルギー消費量が少ないと、中性脂肪として蓄えられて肥満の原因となります。一方で糖質が不足すると、疲れやすく集中力が低下することも。
糖質に限ったことではありませんが、適量が大切です。
なお、食べ物から摂取した糖質は、体内で消化吸収されて最終的にブドウ糖(糖質の最小単位)になります。特別な場合を除いて、脳が利用できる唯一の物質がブドウ糖です。日本ではぶどうから初めて発見されたことから、ブドウ糖と呼ばれるようになりました。
参考記事:脳の栄養「ブドウ糖」とは〜効果から食べ物まで幅広く紹介〜
高血圧を予防する「カリウム」
ぶどうには血圧を正常に保つ働きのあるカリウムも豊富です。
カリウムには高血圧の原因となるナトリウム(塩分)を排出する効果があります。またカリウムには血圧を正常に保つほかに、筋肉や神経の働きをサポートする役目があります。そのためカリウムが不足すると、けいれん、筋力低下や不整脈などが起こることも。
したがって、足がつったときは100%のぶどうジュースが活用できますよ。
一方で、カリウムを大量に摂った場合でも、体内で調節機構が働くため過剰のリスクはほとんどありません。ただし腎臓が機能しなくなった場合は、カリウムを尿中に排出できなくなるため、カリウム制限が必要です。
関連記事:足がつる人必見!原因とその予防法を栄養素の面から解説します
動脈硬化を予防する「ポリフェノール」
ぶどうには、抗酸化作用の強いポリフェノールが豊富です。
ポリフェノールは、物に含まれている苦味や色素の成分で、動脈硬化の進行を遅らせるなど生活習慣病の予防効果が期待できます。
なおぶどうに含まれるポリフェノールは、約30%が皮、残りの約70%が種にあるといわれています。つまりぶどうの実を食べただけではポリフェノールは、ほとんど摂取できないのです。
さらに皮や種ごと食べたとしても、ぶどうのポリフェノールは水に溶けにくいためそのまま排出され、大きな効果は期待できません。
そこでぶどうのポリフェノール効果を活かすには、赤ワインを料理に使うことをオススメします。というのも、ワインは発酵・熟成の工程があるため、その期間中に皮や種からポリフェノールが溶けだすのです。
赤ワインを煮込み料理などに使うと、ぶどうのポリフェノールを摂取できるだけではなく、味に深みが出てとても美味しくなりますよ。
ポリフェノールの効果が得られるのは赤ワインからだけで、白ワインからは得られません。その理由はワインの製造方法の違いにあります。赤ワインは皮ごと発酵したものを使いますが、一般的な白ワインは果汁だけを発酵して作られるからです。
ちなみに、赤ワインの底に沈殿している黒っぽいものは「おり」と呼ばれていて、ポリフェノールやたんぱく質が固まったものです。
舌触りはよくないですが、ぶどうの成分ですので飲んでも差し支えないですよ。
参考記事:ワインは高カロリーだけど低糖質〜栄養素や手軽なおつまみも紹介〜
干しぶどう(レーズン)の栄養価
干しぶどうはぶどうを干すため、栄養成分がギュッと凝縮されています。以下は、生のぶどうと干しぶどうの栄養価を比べたものです。
ぶどう(皮なし) | 干しぶどう | |
カロリー | 58kcal | 324kcal |
糖質 | 14.4g | 60.3g |
カリウム | 130mg | 740mg |
食物繊維 | 0.5g | 4.1g |
*100gあたり
上の表の通り、干しぶどうは水分が抜けて成分が凝縮しているため、おのずと重量あたりの栄養価が上がります。さて注目すべきは食物繊維の量です。
干しぶどうは皮つきのまま乾燥させてあるため、皮に含まれる食物繊維が摂取できます。生のぶどうを皮ごと食べるのは口当たりなどの面から難しいですが、干しぶどうになると違和感なく食べられるので良いですね。
ただし干しぶどうは、油が添加されている商品が多いです。油が付いていると、おのずとカロリーが増えます。カロリーの気になる方は、油で加工されていないものを選ぶことをオススメいたします。
なお油で加工していないものであっても、干しぶどうはカロリーが高めです。栄養が摂れるからとたくさん食べると体重増加や肥満につながる可能性があるため、間食として1日30g程度までにしましょう。
参考記事:レーズンの栄養と効能~健康効果から女性に嬉しい美容効果まで~
ぶどうの皮には栄養がない?
ぶどうの皮には食物繊維が含まれているので、栄養があるといえます。なお、実の部分には食物繊維がほとんど含まれません。
しかし、巨峰やデラウエアのように皮が硬い品種の場合は、食べるのが難しいです。
近年は皮ごと食べられる品種が続々と登場しています。皮が硬いものを頑張って食べるよりも、皮ごと食べられるタイプのほうが食感もよいのでオススメですよ。
便秘に効果的な食べ方をご紹介
便秘解消には、干しぶどうと水分を一緒に摂るとよいでしょう。
便秘解消のためには食物繊維の摂取が効果的です。
食物繊維には水に溶けない不溶性と水に溶けやすい水溶性がありますが、ぶどうにはどちらも含まれています。
不溶性食物繊維には腸内で水分を吸収することで便のカサを増やし、腸を刺激し便通を促す働きがあります。
一方で、水溶性食物繊維の働きは腸内をゆっくり移動することで、糖質の吸収をおだやかにし食後の血糖値の急上昇を抑えるのです。
そこで効率的に食物繊維を摂るため、干しぶどうを活用することをオススメします
さて、厚生労働省の「食事バランスガイド」によると、1日の間食は200kcal程度とされています。干しぶどう60g(100粒程度)がおおよそ200kcalとなり、含まれる食物繊維は2.5gです。
しかしながら干しぶどうには糖質が多いので30g程度(100kcal)に抑え、残りをぶどうに不足しているたんぱく質やカルシウムが補える牛乳などにすると理想的です。
100kcal分の牛乳(コップ1杯弱、170ml)を飲むことで、
・日本人が不足しがちなカルシウムを190mg摂取できる(30~74歳の1日あたりのカルシウム推奨量は男性750mg、女性650mg)
となります。
ぜひ参考にしてくださいね。
参考記事:牛乳の栄養を徹底解説~メリット・デメリットまで詳しくお伝えします~
ぶどうを食べ過ぎると糖尿病になるの?
ぶどうを一度にたくさん食べ過ぎると、血糖変動を乱す原因となる可能性はあります。
なぜなら、ぶどうには吸収スピードの速い糖(グルコースや果糖)が多く、血糖値が急上昇しやすいからです。とはいえ、ぶどうには血糖値の急上昇を抑える食物繊維も含まれます。
適量を間食として食べるのであれば、ビタミンやミネラルの摂れる果物は最適です。
関連記事:ブドウのカロリーと糖質は高い?~美味しいけど食べ過ぎは程々に~
ダイエット中に食べても大丈夫なのか
もちろん大丈夫です。
しかしぶどうには糖質が多いので、食べる量と時間には注意しましょう。
くり返しになりますが、1日の果物摂取目標量は200gです。小粒のぶどう(デラウェアなど)は1房がおおよそ200g、大粒のぶどう(巨峰など)は1粒がおおよそ10gですので、覚えておくと役に立ちますよ。
さらにダイエット中は食べる時間にも気を付けましょう。夕方以降は活動量が少なくなるため、食事で摂ったエネルギーが使われずに中性脂肪として貯蔵されてしまいます。よって活動量の多い朝や昼間に食べることがオススメです。
参考記事:【医師監修】血糖値とダイエットの関係~急上昇を防ぐ食べ方で太りにくい食生活に~
毎日食べると体に悪いって本当?
答えは、毎日食べても大丈夫です。
しかしすでにお伝えしました通り、ぶどうは糖質が多いため1日に食べる量には気を付けましょう。ところで、ぶどうは輸入品も多いので1年中店頭に並んでいますが、日本のぶどうの旬は品種にもよりますが8月から10月頃です。
ぶどうを毎日食べるのもよいですが、その季節にしか食べられない旬の果物も栄養価が高いのでオススメですよ。
参考記事:五大栄養素の働きとは?管理栄養士がわかりやすく解説~主な役割も紹介~
まとめ
ぶどうにはエネルギー源となる糖質や、血圧や筋肉を正常に保つカリウムが豊富だとわかりましたね。
そして皮や種に豊富に含まれるポリフェノールを摂取するためには、赤ワインを活用するとよいでしょう。便秘が気になる方は、食物繊維の豊富な干しぶどうを間食として取り入れるのがオススメです。
それでは当記事が参考となり、日々の生活にぶどうを取り入れていただけたら嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料の人気アプリ・シンクヘルスでは食事、体重、運動、血糖値の記録がとてもカンタンにできます。日々の健康管理・維持にぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
文部科学省 食品成分データベース
厚生労働省 e-ヘルスネット
実教出版 オールガイド食品成分表2023
農林水産省 奥深いぶどうの世界
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター ブドウとワインに含まれるポリフェノール類の健康効果