山芋の栄養成分と効果~健康効果や注意点を詳しく解説~

当記事を監修した専門家:管理栄養士・調理師 前間弘美、編集長 宮田亘造(詳しいプロフィールはこちらをご覧ください)
調理方法によって様々な食感を楽しむことができる山芋。
生だとシャキシャキ、焼くとホクホク、そしてすりおろせばとろとろに。山芋は1年中販売されており使い勝手のよい野菜である上に、健康効果も高いのです。
そこで今回は、山芋の栄養や効能についてわかりやすくお伝えいたします。山芋の栄養を逃さない食べ方についても紹介いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
山芋の栄養成分
山芋は長芋や大和芋といった品種名の総称です。
山芋は消化酵素をはじめ、ビタミンB群、カリウム、食物繊維などの栄養成分を含みます。
消化を助けるアミラーゼ
アミラーゼは、ご飯やパンに含まれるでんぷんを分解する消化酵素です。
じゃがいもやさつまいもは山芋と同じ芋類ですが、生で食べるとお腹を壊してしまいます。しかし、山芋はアミラーゼのようにでんぷんを分解する消化酵素を多く含むため、生で食べることができるのです。
エネルギー産生にかかわるビタミンB群
山芋は、ビタミンB12以外のビタミンB群を含みます。
他の芋類に比べると少ないですが、山芋には糖質が入っています。私たちの体は糖質を摂取すると、ブドウ糖に分解しエネルギーに変換します。そして、ブドウ糖をエネルギーに変える際に必要なのがビタミンB1です。
山芋は糖質と、糖質をエネルギーに変換する際に必要なビタミンB1の両方を含みます。つまり、山芋の糖質を効率的にエネルギーとして利用できるのです。
むくみを予防するカリウム
カリウムは私たちの体の中の余分な塩分(ナトリウム)や水分を排出するため、むくみの解消や高血圧予防に効果的です。
むくみで悩まれている方や血圧が気になる方は積極的に摂りたい栄養素といえます。
なお、厚生労働省の日本人の食事摂取基準によると、成人男性のカリウム目標量は1日3000mgです。山芋は100gあたり430〜590gのカリウムを含むので、目標量の1/6〜1/7を摂取できますよ。
腸を整える食物繊維
食物繊維は水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」の2つにわかれます。
山芋にはどちらも含まれているので、水溶性の血糖値の上昇をゆるやかにする効果や、不溶性の便を増やしてお通じをよくする効果が得られるといえるでしょう。
ぬめり成分の健康効果
山芋のぬめり成分は、血糖値の急上昇の抑制効果が期待されています。
山芋・長芋・大和芋・自然薯はすべて同じもの?
山芋と自然薯は原産地が違います。山芋は中国で、自然薯は日本です。そして、長芋や大和芋は山芋の品種名です。
なお、山芋はイモの形により円筒形の「長芋」、扁平形の「いちょういも」、球形の「大和芋」の3つの品種群に分類されます。
栄養成分の違いはあるのか
山芋と自然薯は原産地が違う点以外は、同じヤマノイモ科・ヤマノイモ属に分類されるため、含まれている栄養素はほぼ同じです。
しかし、山芋の代表品種である長芋と比べると、水分量が自然薯よりも多いため、カロリー・糖質が低く、自然薯と比べると約半分になります。
山芋を食べるときの注意点
山芋は健康によい栄養成分が多く含まれるとわかりました。しかし、食べる際に注意すべきポイントがありますので、見ていきましょう。
山芋を生で食べると危険?
とろろとして食べられることからわかるように、生の山芋は決して危険ではありません。
その鍵を握るのが、先ほどお伝えしたアミラーゼです。くり返しになりますが、長芋にはでんぷんを分解するアミラーゼなどの消化酵素が多く含まれているため、芋類の中では珍しく生で食べることができます。
皮膚がかゆくなる原因と対策
山芋の調理時や食事中に、皮膚にかゆみを感じることがあります。
これは、山芋に含まれているシュウ酸カルシウムが原因です。シュウ酸カルシウムの針状結晶が皮膚を刺激することでかゆみを引き起こすのです。
調理時には、山芋を扱う際に手袋を着用することで防げます。また、食事中に口まわりなどにかゆみを感じた場合には、こすらず、ネバリ成分を温水などで洗い流すようにするとかゆみが和らぎますので、ぜひお試しください。
山芋は毎日食べても大丈夫?
もちろん山芋は毎日食べても大丈夫です。
山芋は他の芋類と比べてカロリー・糖質が低いので、ダイエット食品としても注目されています。
ただし毎日適量食べる分には問題ありませんが、食べ過ぎは肥満の原因になるので気をつけましょう。「1日100gまで」などの目安量を決めて食べるとよいですね。
参考記事:長芋のカロリーと糖質は低い~ダイエットに活用しやすい食品です~
山芋の効果的な食べ方
それでは山芋の栄養を逃さないための工夫を紹介します。
消化を助けたいときは加熱しない
山芋に含まれている消化酵素は熱に弱いため、疲れているときや内臓が弱っているときには生ですりおろして食べるのがオススメです。
また糖質の代謝に必要なビタミンB1は、熱に弱いだけでなく水にも溶けやすい特徴があります。生の状態であれば、山芋の栄養を余すことなく食べられますよ。
山芋の長持ちする保存方法
切ったりすりおろした山芋は、冷凍すると長持ちします。
自然解凍で戻してそのまま使用できるので、小分けにして冷凍しておくと便利です。ただし、長持ちするとはいえ品質が落ちるので、1ヶ月を目安に食べきるとよいでしょう。
また、山芋はまるごとの状態であれば新聞紙に包んで常温で保存できます。
なお、カットしてあるものは切り口から傷むのでペーパータオルやラップで切り口をしっかり覆い、ポリ袋に入れて冷蔵保存しましょう。
まとめ
山芋は消化酵素や食物繊維、ぬめり成分などの健康に役立つ栄養成分を豊富に含む食品です。
さらに、糖質の代謝に必要なビタミンB1やむくみや高血圧に役立つカリウムも含まれています。
一方で、消化酵素やビタミンB1は熱に弱いため、山芋の栄養を逃さず食べるには、加熱せずに生で食べることをオススメします。
それでは当記事を参考に、日々の食事に山芋を取り入れていただけるとうれしいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重・カロリー&糖質を含む、食事・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてください。
参考文献
文部科学省 食品成分データベース
alic独立行政法人農畜産業振興機構 やまいもの需要動向
J-STAGE ヤマノイモのシュウ酸カルシウムの針状結晶について
『野菜の保存&使いきりレシピ』(主婦の友社/主婦の友社/2008.11)
『野菜保存のアイデア帖』(島本美由紀/パイインターナショナル/2019.4)
飯田薫子、寺本あい「一生役立つ きちんとわかる栄養学」