梨の栄養成分と効能~健康や美容との関係、妊婦さんへの影響も詳しく解説します~
当記事の執筆は、管理栄養士 前間弘美が担当しました。
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シャキッとした食感とみずみずしさが特徴の梨。さっぱりとしていて飽きの来ないおいしさは、子どもから大人まで幅広く愛されています。
さて、人気のある梨ですがどのような栄養が含まれているのでしょうか。
そこで当記事では、梨の栄養素や健康、美容との関係についてお伝えいたします。妊婦さんへの影響も解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
*ここでいう「梨」は日本梨を意味します。
目次
梨の栄養と効果
ここでは梨に含まれる主な栄養素とその効能について紹介します。
梨のカロリーは他の果物と比べて低めで100gあたり38kcalです。1個分の可食部(食べられる部分)の重さは255gなので、1個当たりで換算すると約97kcalとなります。
腸内環境を整え、血糖値の急上昇を抑える食物繊維
食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があります。
梨は不溶性食物繊維が多く含まれ、便秘を解消し腸内環境を整えてくれます。
また水溶性食物繊維の役割は血糖値の上昇を緩やかにしたり、血中コレステロールの値を下げたりすることです。
摂り過ぎた塩分の調整をするカリウム
カリウムは果物や野菜に豊富な栄養素で、梨には100gあたり140mg含まれています。
カリウムの主な役割は、高血圧やむくみの原因の一つであるナトリウム(食塩)を身体の外に出すことです。
またカリウムは、筋肉の収縮や神経の伝達にも関わっています。
エネルギーを作りだすのに必要なアスパラギン酸
アスパラギン酸はアミノ酸の一種で、アミノ酸はタンパク質を構成を構成しています。
アスパラギン酸の役割は、エネルギーを作り出すのを手助けし、疲労回復に関わることです。
梨に栄養がないと言われる理由
ここまで梨に含まれる栄養素ごとの解説をしてきました。次に梨全体で見ていきましょう。
一般的に梨には栄養がないと言われていますが、なぜでしょうか。
それはズバリ「水分の多さ」です。
梨の水分量は全体の88%を占めており、ほとんどが水分です。梨のみずみずしさを思い浮かべると、水分の多さは簡単に想像できるでしょう。
また他の果物と比較すると、梨はビタミンを始めとして、含まれる栄養素が少ないです。
しかし少ないながらも含まれる栄養素は身体にとって嬉しい作用をするので、「栄養がない」わけではありません。
参考記事:水を飲むのはダイエットに良い?〜効果・やり方・おすすめを分かりやすく紹介〜
梨には薬膳としての効果がある?
梨には、以下のような薬膳効果が期待できます。
・秋は身体の乾燥を予防する
そもそも薬膳とは、季節の変化による体調の崩れを食物を食べることによって予防しようという考えに基づいて、食事と養生を併せたものです。
梨の薬膳効果は2つとも「うるおい」が共通点ですが、この要因は先ほども紹介した梨の水分の多さです。水分が多いのは栄養が少なくなるというマイナスなことだけではなく、プラスな側面もあるのです。
参考記事:漢方薬のダイエットは効果的?〜市販薬や注意点を含め分かりやすく解説〜
梨は美容に良いのか
梨だけでなく、果物を食べることは美容に良い影響を与えます。
お菓子の代わりに間食として果物を食べると、食物繊維やビタミン、ミネラルを補えます。
ニキビの原因である便秘は、食物繊維を摂ることによって改善されやすくなります。
また、果物に多く含まれるビタミンCは強い抗酸化作用をもち、活性酸素を取り除く効果が期待できます。活性酸素は微量であれば私たちの体に有用ですが、大量につくられると動脈硬化や老化を進行させる原因となる物質です。
さらにミネラルは私たちの体の調子を整えるために必要な栄養素です。
そこで果物である梨を食べると肌荒れを防ぎ、美容によい影響を与えることになるでしょう。
梨はダイエット中に食べるべきか
ダイエット中の方は間食として果物を食べることをオススメします。
梨はカロリー・糖質共に低いので、甘いものが食べたくなった時や小腹がすいた時でも安心して食べられます。
ただし、食べる時間帯は朝や昼の活動が多い時が良いでしょう。
なぜなら夜は活動が少なくなると共に、エネルギー消費も減るので余分なカロリーが脂肪として体に蓄積されるからです。
参考記事:効果的なダイエット方法とは〜続けられる食事・ルールなどカンタン解説〜
実は太りにくい?梨の糖質
梨に限らず、果物は甘いので「梨は糖質がたっぷりで太りやすい」と考える方もいらっしゃるかと思います。
しかし、実はそのようなことはありません。
梨の糖質は100gあたり9.0gです。参考までにご飯の糖質は100gあたり38.1gですので、梨の糖質がそう多くないことがお分かりいただけると思います。
さらに果物に含まれる主な糖は、私たちの体や脳のエネルギー源である「ブドウ糖」とは異なる「果糖」です。果糖自体は、血糖値を急上昇させません。
ただし体の中に入った果糖の10~20%は、ブドウ糖と中性脂肪に作り替えられるので果物の食べ過ぎには注意が必要です。
参考記事:脳の栄養「ブドウ糖」とは〜効果から食べ物まで幅広く紹介〜
梨の食べ過ぎによるデメリット
梨を食べ過ぎることによるデメリットは栄養の偏りが生じることです。
梨を食べるだけでは、たんぱく質や脂質を始めとして色々な栄養素が不足します。健康に重要なのはバランスの良い食事です。
厚生労働省が推進する「健康日本21」では果物の摂取量の目標は1日あたり200gだと示しています。梨でしたら、1日2/3個程度が目安なります。
梨だけでなく、他の食材もバランスよく食べることで、健康な体をつくりましょう。
参考記事:五大栄養素の働きとは?管理栄養士がわかりやすく解説~主な役割も紹介~
妊婦さんは梨を食べて良いのか
妊婦さんは梨を食べても良いのでしょうか。
その答えは、「食べても良いが、食べ過ぎには注意」となります。
では、なぜそう言えるのでしょうか。
まず、妊娠中は匂いの強いものが吐き気の原因となることがあります。
一方、梨は匂いが少なくさっぱりとしているため、吐き気に悩まされている方にも比較的食べやすい食べ物です。
しかし、梨ばかりを食べると別の影響があります。
厚生労働省が示している「妊産婦のための食生活指針」によると妊産婦の食事は、主食を中心にエネルギーを取り、主菜でたんぱく質を、副菜でビタミン・ミネラルを摂ることが理想です。要するに、バランスのよい食事が重要とされています。
また、妊娠中特に不足しやすい栄養素は鉄分、葉酸、カルシウムです。
梨は水分が多く栄養素が少なめなので、梨だけではこれら3つの栄養素が不足してしまいます。
よって、梨の食べ過ぎは栄養不足となる可能性があるので、食べ過ぎには注意しましょう。
参考記事:妊娠中に発覚した糖尿病~境界型糖尿病をアプリでサポート~【シンクヘルスユーザーインタビュー⑤】
洋梨と梨との栄養成分の違い
ねっとりとした洋梨にシャキッとした梨。食感の異なる2つですが、栄養素に大きな差はありません。
ただし洋梨の方が梨と比べて食物繊維が多く、約2倍となっています。
下の表が主に含まれる主な栄養素とその量になります。
カロリー | 糖質 | 食物繊維 | カリウム | |
日本梨 | 38kcal | 8.3g | 0.9g | 140mg |
洋梨 | 48kcal | 9.2g | 1.9g | 140mg |
*100gあたり
また、表に示されているもの以外の栄養素も大きな差はありません。
りんごと比較した栄養成分
次にりんごと比較してみましょう。
カロリー | 糖質 | 食物繊維 | カリウム | |
梨 (日本梨) | 38kcal | 8.3g | 0.9g | 140mg |
りんご (皮なし) | 53kcal | 12.4g | 1.4g | 120mg |
*100gあたり
見た目は似ているけれど味は大きく異なる梨とりんご。この2つを比べてみるとカロリーや糖質、食物繊維はりんごの方が少し多いですが、カリウムは梨の方が多いです。しかし大きな差はありません。
洋梨と同様に、他の栄養素も大きな差はないので、好きなものを食べると良いでしょう。
参考記事:りんごの栄養成分と効能効果〜健康によいは本当なのか徹底的に検証!〜
まとめ
以上、梨についてまとめると
・美容が気になる方やダイエット中の方にもオススメな食べ物である
・妊婦さんは食べ過ぎなければOK
・1日に食べる量の目安は200gで、梨2/3個に相当する
・洋梨と比べると、食物繊維の量は少ないものの含まれる栄養素に大きな差はない
となります。
それでは当記事が、あなたの食生活のお役に立てれば幸いです。
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参考文献
・厚生労働省 e-ヘルスネット 妊産婦の食事指針
・農林水産省 FACT BOOK 果物と健康
・東海農政局 旬の食材を利用した予防医学(薬膳)の 観点からのメニュー開発 ~地産地消の取り組みによる東海三県で 生産されている旬の食材を利用~
・厚生労働省 健やかなからだづくりと食生活BOOK