【医師監修】これって糖尿病足病変?~初期症状から治療・予防法まで解説~
当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。執筆はライター 松原知香(管理栄養士)が担当しました。*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください
糖尿病の方に発症する足のトラブルを総称して糖尿病足病変といいます。
糖尿病のある方は、『水虫』や『タコ』など足のトラブルに要注意です。
それら初期症状をきっかけに、壊疽という組織が死んでしまった状態となる重症の糖尿病足病変が発生することがあるからです。
糖尿病の方は合併症により感覚が鈍くなり、痛みや痒みを感じにくくなるため、知らないうちに症状が進行していて、気づいたときには思っていた以上に悪化していたという話も珍しくありません。
さらに、糖尿病足病変は放置して悪化すると、足を切断しなくてはいけないことも。
今回は、糖尿病足病変のメカニズムと治療や予防についてお伝えしていきます。ぜひ最後までご覧ください。
目次
糖尿病足病変の原因とは
糖尿病足病変とは、糖尿病の方の足に起こるトラブルのことです。
その原因は、「免疫機能の低下」「動脈硬化による血流障害」「神経障害」の3点です。
高血糖の影響で白血球の機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。
また動脈硬化の進行で血管が狭くなり、血流障害が引き起こされ、傷や感染の治りが遅くなります。
さらに神経障害が加わると足の感覚が鈍くなり、傷や感染などがあっても、痛みを感じず発見が遅くなります。
①神経障害 | 血流障害や代謝機能の異常などが原因で起こる |
②血流障害 | 高血糖により動脈硬化が生じ、血管が細くなることで生じる |
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足のトラブルから糖尿病足病変に至るメカニズム
ここからは、糖尿病足病変のメカニズムについてお伝えしましょう。
まず運動神経の障害により筋肉の萎縮がおこるため、足裏のアーチが変形し足底圧が特定の部位にかかります。これにより靴擦れ・たこ・ケガなど足のトラブルが起こりやすくなるのです。
さらに、感覚神経障害により痛みや痒みを感じにくいので、足のトラブルに気づきにくく、ケガから細菌感染しやすい状況を生み出してしまいます。
そこに血流障害が起こっていると、酸素や栄養が足先まで届きにくくなるので傷が治りが遅くなり、潰瘍や壊疽といった重篤な症状に繋がります。
まず運動神経の障害により筋肉の萎縮がおこるため、足裏のアーチが変形し足底圧が特定の部位にかかります。これにより靴擦れ・たこ・ケガなど足のトラブルが起こりやすくなるのです。
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糖尿病足病変初期症状をチェック
糖尿病足病変の初期症状は多岐にわたりますが、代表的なものをまとめました。
▢足趾の変形
▢陥入爪(※)
▢爪白癬
▢足白癬
▢靴ずれ
▢乾燥・亀裂
▢うおのめ、たこ
※陥入爪:爪の周囲が皮膚に食い込む状態
これらの初期症状が進行していくと、以下のようなより治療に時間がかかる症状があらわれます。
▢蜂窩織炎(ほうかしきえん)※1
▢壊死性筋膜炎※2
▢足潰瘍(皮膚の欠損)
▢壊疽(組織の壊死)
※1蜂窩織炎:皮膚とその下部の組織に細菌が感染して炎症が起こる病気
※2筋膜(筋肉を覆う結合組織の表面)に沿う形で皮膚の深い箇所で壊死が広がる病気
ちなみに蜂窩織炎や壊死性筋膜炎は、糖尿病足病変によって小さな傷ができ、そこに細菌が感染することによって発生します。
一方、足潰瘍や壊疽は細菌感染をきっかけに、傷が悪化することで発生します。特に壊疽は、進行すると足を切断しなくてはいけないこともあるので、予防や速やかな治療が必要です。
糖尿病足病変のリスクが高い方の特徴
なお次の項目に当てはまる方は、糖尿病足病変になるリスクが高いといえるためご注意ください。
▢高齢
▢視力障害がある
▢腎機能障害がある
▢男性
▢心不全の既往がある
▢潰瘍の既往がある
▢足の変形がある
▢「歩いていると足が痛くなる」「足が冷たい」「足の色が悪い」など閉塞性動脈硬化症を疑う症状がある
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早めの受診が治療のポイント
糖尿病足病変の治療のポイントは、放置しないことが大事です。
「水虫がある」「足に傷ができた」「足が赤く腫れている」等の症状がある方は、糖尿病の先生に相談したり、皮膚科を受診したりしましょう。
ちなみに、糖尿病足病変は重症になると入院して治療をしたり、最悪の場合下肢切断をしたりしなくてはいけない場合もあるのです。
辛い思いをする前に、まずは小さな傷のうちから早期に治療を開始しましょう。
足の治療と良好な血糖管理はセット
足のトラブルを治療することはもちろん、血糖値が安定しない方は良好な血糖管理を目指すための改善も必要です。
基本的な食事療法や薬による管理はもちろん、無理のない範囲で運動も取り入れましょう。
ただし現時点で足病変がある場合には、運動療法がその悪化に繋がる恐れがあります。きちんと治療を行った後に、医師の指導のもと運動療法を始めるようにしてください。
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予防は適切なフットケアから
糖尿病足病変は、適切なフットケアによって予防することができます。
では、具体的なフットケアのポイントを6つご紹介しましょう。
①異常が出たらすぐに連絡
外傷や腫れ・痛みなどが出たら、すぐに受診をしてください。「次の外来の日まで様子を見よう…」と放置するのは禁物です。
②禁煙
喫煙は末梢の血流を低下させてしまいます。禁煙に努めましょう。
③毎日足をチェック
足を清潔に保ち、異常がないか毎日確認してください。見えにくい場合は鏡を使うと見やすくなります。
④足に合った靴を選択
かかとの高い靴は避け、履く前に異物が入っていないか確認することが大切です。
⑤爪を正しく丁寧に切る
深爪しないように注意することが必要になります。また、ストレートにカットするのが良いです。爪が厚くなって割れやすい状態や陥入などがあれば、医師に相談しましょう。
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⑥熱湯に注意
熱湯は皮膚を傷つけるので、お湯の温度を確かめてから入浴することが大切です。また、冬場のコタツや暖房器具は、体から離して低温やけどをしないように注意しましょう。
まとめ
以上糖尿病足病変について、理解は深まりましたでしょうか?
最後に今日の話を以下4点にまとめました。
・糖尿病の方は足病変が起こりやすく、気づかないうちに悪化しやすい
・足に異変が起きたら放置せず早めに医師へ相談
・予防にはフットケアが大事
あなたのこれからの生活が少しでも楽しいものになるように、足元には気を付けて毎日を過ごしてもらえると嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や食事の記録がカンタンにできます。記録がグラフになり状況が把握しやすいのでぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
学研メディカル秀潤社(2018),糖尿病・内分泌疾患ビジュアルブック 第2版,p125‐133
国立国際医療センター糖尿病センター フットケア
糖尿病診療ガイドライン 2024