【医師監修】糖尿病の合併症についてまとめました〜発症の順番や予防法も紹介〜
当記事は、医療法人社団ライフスタイル ともながクリニック 糖尿病・生活習慣病センター 院長 朝長 修先生にご監修いただきました。
執筆はライター前間弘美(管理栄養士)が担当しました。
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「糖尿病には合併症がたくさんあるって聞いたけど、多すぎてよくわからない」
今回はそのようなあなたのために、糖尿病の合併症について簡単にまとめていきたいと思います。
合併症を網羅的に理解いただくことで今後の備え、つまり予防に役立ててもらえると嬉しいです。
目次
糖尿病の合併症は寿命に関わる病気
合併症とは、「ある病気が原因となって起こる別の病気」もしくは「手術や検査が元になって起こることがある病気」のことです。
糖尿病の合併症の場合は、『糖尿病が原因となって起こる別の病気のこと』と考えていただければ大丈夫です。
合併症には急性と慢性がある
糖尿病の合併症には、急に高血糖になることによって起こる急性合併症と、年単位でゆっくり進んでいく慢性合併症があります。
いずれも命に関わりますが、急性合併症は治療の中断や感染症、脱水などによって起こる異常な高血糖で、すぐに点滴などの治療が行われます。
一方の慢性合併症は、血糖値が高い状態が長期間続くことで体が徐々にむしばまれて起こる、恐ろしい病気です。慢性合併症の種類は多いので、今から詳しく説明していきますね。
なぜ起こるのか
糖尿病が進行すると合併症が起こる理由として、血液中のブドウ糖が増えすぎて全身の血管が傷つくことが考えられます。
私たちの血管はいくつかの層が重なってできていて、一番内側の直接血液に触れる場所にあるのが内皮細胞です。増えすぎたブドウ糖は内皮細胞に入り込み、活性酵素が発生します。
活性酵素は元々、ウイルスなどを分解する働きを持っているのですが、私たち自身の細胞も傷つけてしまうことがあります。つまり、血管を傷つけてしまう可能性があるのです。
以上のことから、高血糖状態が続くと全身の血管が傷つき様々な合併症が起こると考えられています。
三大合併症について
糖尿病には、三大合併症があります。
覚え方はしめじ
糖尿病の三大合併症は、『糖尿病神経障害』『糖尿病網膜症』『糖尿病腎症』です。
『しんけい』『め』『じんぞう』というそれぞれの頭文字をとって『しめじ』と覚えます。そして三大合併症が起こる順番も、『し』→『め』→『じ』であることが多いです。
ただし糖尿病の合併症は、必ず起こるものではありません。また正しく治療すれば、発症を遅らせることができる場合もあります。
糖尿病神経障害の症状は全身に及ぶ
糖尿病神経障害は、足のしびれ・痛み・感覚の低下・低血圧・下痢や便秘といった全身に及ぶ症状になります。
三大合併症の中でも最も早く現れますし頻度も高いといわれていますが、重く受けとめなかったために発見が遅れることも多いので注意が必要です。
少しでも当てはまる症状が出てきたら、すぐに主治医の先生に相談してください。
参考記事:その痛みは糖尿病性神経障害の可能性 ~治療から予防までわかりやすく解説~
糖尿病網膜症は放置すると失明リスクも
糖尿病網膜症は糖尿病の約35%で起こり、糖尿病と言われてから数年~20年くらいで発症するといわれています。
最初のうちは自覚症状がほとんどありません。ただし、症状が現れる頃には網膜症が進行していることが多く、最悪の場合は失明してしまう可能性もあります。
定期的に眼科を受診して、早期発見・早期治療をすることが大切です。
参考記事:【医師監修】目がかすむのは糖尿病網膜症が原因かも?~症状や治療まで解説~
人工透析の原因1位は糖尿病腎症
糖尿病腎症になる人は、糖尿病になって5年以上で神経障害や網膜症などの他の合併症を起こしていることが多いです。
最初のうちは自覚症状はありませんが、放っておくと腎臓が全く働かなくなる腎不全を起こし、人工透析が必要になることがあります。
人工透析をしている人の最も多い原因は糖尿病腎症と言われているので、他人事だと思わず注意が必要です。
参考記事:糖尿病性腎症とは〜検査・治療・予防を分かりやすく解説〜
そのほかの主な合併症を紹介
糖尿病には三大合併症以外にもさまざまな合併症があります。
心筋梗塞・脳梗塞は動脈硬化から生じる
動脈硬化とは、「動脈の壁が厚くなったり硬くなったりすることで、働きが悪くなってしまうこと」です。糖尿病の人は、動脈硬化が起こりやすいと言われています。
動脈硬化によって血管が詰まってしまうと、心筋梗塞や脳梗塞が起こってしまうのです。また、動脈硬化によって血管が細くなることで狭心症が起こることもあります。
参考記事:糖尿病は心筋梗塞・脳梗塞に要注意〜リスクと予防のポイントをシンプルに解説〜
認知症の発症リスクも高い
糖尿病の方は、アルツハイマー型認知症に約1.5倍なりやすく、脳血管性認知症には約2.5倍なりやすいといわれています。
脳血管性認知症になりやすい理由は、糖尿病の人が脳梗塞や脳出血を起こしやすいからです。
またアルツハイマー型認知症は、アミロイドβというたんぱく質が体の中に溜まることによって起こりますが、糖尿病の方はアミロイドβが溜まりやすいといわれているのです。
参考記事:高齢者に多い糖尿病と認知症の関係〜日々の生活で血糖値に気をつけよう〜
歯周病に注意
糖尿病の方は、細菌と戦う力が低下することによって感染を起こしやすくなります。そのため、歯と歯肉のすき間から細菌が入り込むことによって歯周病になることがあります。
糖尿病を持つ人は歯周病になることが多いといわれているので、定期的な歯科健診が必要です。
参考記事:糖尿病と歯周病には関係があるの? 対応法をまじえてポイントを解説
合併症を予防するために
合併症を予防するために大切なのは、糖尿病の治療をしっかり行うことです。
血糖値をコントロールすることで、合併症を予防したり進行を遅らせたりするだけではなく、糖尿病自体の進行も遅らせることができます。
しっかり受診をして、医師の指示の元で食事療法や運動療法、お薬を使って、治療を行いましょう。
失明をすると身の回りの生活が不便になります。人工透析が必要になると週に3回は人工透析に通い、食生活にも更に制限がかかります。
あなたが少しでも快適な毎日を過ごすためには、合併症予防は必要不可欠です。
まとめ
それでは本日のまとめです。
・高血糖状態が続くと全身の血管が傷ついてしまい、様々な合併症が起こる
・糖尿病の三大合併症は『糖尿病神経障害』『糖尿病網膜症』『糖尿病腎症』
・三大合併症の覚え方は、『しめじ』
・心筋梗塞・脳梗塞・認知症・歯周病にも注意が必要
・合併症を予防するために大切なのは、糖尿病の治療をしっかり行うこと
当記事を参考に、合併症のない生活を送れるきっかけになれば嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値やお薬の記録がカンタンにできます。日々の血糖コントロールにてぜひ活用してみてくださいね。
医療法人社団ライフスタイル ともながクリニック 糖尿病・生活習慣病センター
院長 朝長 修先生
【HP】https://tomonaga-clinic.com/doctor.html
詳細プロフィールはこちら
参考文献
・医療情報科学研究所編(2019):病気がみえるvol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第5版
・国立国際医療研究センター(2015):合併症
・j-stage 西川武志(2008)糖尿病および糖尿病合併症の新規発症機構の解明―ミトコンドリア由来活性酸素の関与― ,糖尿病51巻11号