糖尿病と仕事の両立は大変?~周りの人にお願いしたいサポートも解説~
当記事の執筆は、臨床心理士・公認心理師 石倉美希が担当しました。
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糖尿病と診断されたとき、「これからどうなるんだろう」と今後の生活に不安を感じるのは無理もありません。とくに、仕事をしている方は「今までのように働けるだろうか」と気になりますよね。
糖尿病はすぐに命に関わる場合は少なく、仕事をはじめとした日常生活を送りながら、糖尿病の治療を同時進行で進めることになります。
また、近年日本における糖尿病患者の数は年々増加しており、身近に糖尿病を患っている方は増えています。
もし、同僚から糖尿病の治療をしていると聞いたら「どんな病気なのだろう」「何をサポートすればよいのだろう」という疑問が浮かぶでしょう。
今回は治療をしているご本人と一緒に働く方が、糖尿病の治療と両立をしながら仕事をしていく上でのポイントをまとめました。
ぜひ最後までお読みください。
目次
糖尿病になっても仕事は続けられる?
糖尿病と診断されても仕事は続けられます。糖尿病の治療を続けながら、プロスポーツ選手として活躍されている方もいらっしゃいます。
治療の継続は必要ですが、仕事と両立しながら生活するのは十分に可能です。
ただし、合併症などで自立神経障害が進行している場合や、長時間にわたって血糖測定や補食ができない場合は避けた方がよい業務もあります。
・高所での作業
・車の運転や機械の操縦
これらの業務を担当しているときは、安全に従事できるよう、職場と十分に話し合いましょう。
糖尿病を職場に伝えるべきか
結論からすると、糖尿病であることを職場に報告する義務はありません。病気については、プライベートな内容ですので、職場に伝えるのをためらう方も多いでしょう。
しかし、職場が健康診断を実施し、従業員の健康状態を把握することは法律で義務づけられています。
健康診断の結果から、病院の受診を促される場合もありますので、あらかじめ治療中であると伝えておくと、職場とのやり取りはスムーズになるでしょう。
必須ではないが、伝えるメリットはあり
糖尿病であることを報告する義務はありませんが、伝えておくと以下のようなメリットがあります。
・体調が悪い場合に理解が得られやすい
・低血糖時の対応をあらかじめ伝えておける
・インスリンの自己注射がある場合、注射をする場所の相談ができる
・就業上の配慮が必要となった場合、すぐに相談できる
伝えにくいというご自身の気持ちと伝えるメリットをよく検討し、誰に話しておくかやいつ話そうかというタイミングも検討してみるとよいでしょう。
産業医や産業保健師とは相談を
誰に伝えてよいかわからない、むやみに多くの人に伝えたくないという場合には、産業医や産業保健師と相談するのもオススメです。
産業医や産業保健師は、労働者が健康で安全に働けるようにアドバイスをする役目があります。
業務上の配慮が必要かどうかも含めて相談に乗ってくれますので、ぜひ一度相談してみてください。
また、職場と主治医が情報を共有するための糖尿病両立支援手帳もあります。
これは主治医が治療の状況を記載し、必要な配慮を職場に伝え、職場は病状を主治医に質問したり、業務上の配慮を検討するのに活用されています。いわば主治医と職場の交換日記のようなものです。
自分では説明が難しい内容を適切に伝えるのにも役立ちますよ。
仕事を続ける上でのポイント
糖尿病と仕事を両立していくには、病状を安定させ、急な体調の変化や糖尿病の進行を防ぐのがポイントです。
治療を継続する
糖尿病の治療をやめないのが最も大切です。仕事が忙しいと、薬の飲み忘れや通院予約をキャンセルすることもあるでしょう。
しかし、治療をやめてしまうとせっかく安定していた血糖値が再び高血糖となり、入院治療が必要になる場合もあります。
また、自覚症状がないからと高血糖状態をそのままにしておくと、糖尿病が進行し、視力の低下や腎機能の低下といった合併症を併発する可能性も高まります。
長く仕事を続けていくためにも、治療も続けていきましょう。
参考記事:【医師監修】糖尿病の合併症についてまとめました〜発症の順番や予防法も紹介〜
会食は工夫次第で参加できる
仕事をしていると、コミュニケーションの1つとして会食はつきものですよね。
糖尿病の治療中でも工夫しながら会食に参加できます。
社内のメンバーでの会食であれば、治療中であると伝えてメニューを調整したり、開催頻度を相談してみるのもよいでしょう。
接待の場は食事を調整するのがより難しいと思いますが、野菜から食べるベジファーストや早食いに気をつけることから始めてみるのがオススメです。
また、お酒は血糖コントロールに影響しやすいため、断り方を考えておきましょう。
たとえば、翌朝早くから予定がある、車で来ている、まだ仕事が残っているというようにやむを得ない事情と伝えるとよいでしょう。
参考記事:
糖尿病の方が外食する際の注意点は?食事のコツやポイントを伝授
糖尿病とアルコールの付き合い方~適量や飲み過ぎ対策を紹介~
一緒に働く方にお願いしたいこと
職場に糖尿病を治療中の方がいる方に知っておいていただきたいこと、お願いしたいことをまとめました。
糖尿病を正しく理解する
糖尿病と聞いても「実はどんな病気かよく知らない」という感覚も当然です。
糖尿病は不摂生からなるぜいたく病、太っている人がなるものという誤ったイメージを持たれがちです。
糖尿病はインスリンの分泌が足りない(もしくは分泌されていない)、作用が低下してしまうというホルモン分泌の病気です。遺伝的要因のほか、生活習慣や妊娠などのライフイベント、ストレスなどさまざまな要因が関連して発症します。
また、1型糖尿病と2型糖尿病では病気のメカニズムが異なり、必要とする治療も違うのです。
以下の参考記事に、糖尿病についてわかりやすくまとめていますので、ぜひ一読してみてください。
参考記事:
糖尿病とはどんな病気?症状・原因・治療などをわかりやすく解説
1型糖尿病とは〜原因・症状から治療と生活の注意点をわかりやすく解説〜
2型糖尿病とは〜原因・予防・治療のポイントを初心者向けに解説〜
関わりのポイント
糖尿病の治療中と知ると、「食事に誘ってはいけないのかな」と気をつかってしまいますよね。
糖尿病の治療中はメニューや量、食べ方に気をつける必要はありますが、工夫をすれば外食も可能です。
揚げ物など脂質の多いものが中心なお店は控え、野菜を取り入れたメニューがあるお店を選ぶとみんなで楽しめますよ。
また、軽い運動をするだけでも、血糖値の上昇を抑えられます。
・飲み会後に1駅分歩いて帰る
・長時間座って仕事をしていたら、立ち上がるようにお互い声をかける
仕事に集中していると忙しく、運動の機会は減りがちですよね。気分転換のついでに、血糖値を抑える工夫も意識できると良いですね。
気を遣い過ぎず、ご本人が必要とするサポートや配慮について話し合ってみてください。
低血糖時の対応方法
糖尿病の治療をしている中で、気をつけたいのが低血糖です。
インスリン注射で治療をしていると、体調や薬の量、食事の間隔が開きすぎるといった要因で、血糖値が下がりすぎて低血糖状態となる場合があります。
以下のような症状があるとき、低血糖の可能性がありますので、本人に体調を尋ねるときに参考にしてみてください。
・動悸
・強い倦怠感
・手足の震え
低血糖の症状がある場合、砂糖やブドウ糖の摂取が有効です。清涼飲料水などが手軽に摂取できてよいでしょう。
また、低血糖の予防には食事時間が開きすぎないのも重要です。ご本人の仕事が忙しそうなときも、休憩し食事や補食がとれるようにご協力をお願いします。
まれに重度の低血糖が起きると意識を失ってしまう場合があり、早急に治療が必要です。その場合はただちに救急車を呼んでください。
普段から患者であるご本人と低血糖時の対応について話し合っておくと安心ですね。
参考記事:低血糖とはどのような症状?~原因や高血糖についてもわかりやすく解説~
まとめ
今回は糖尿病と仕事を両立していくためのポイントをまとめました。
糖尿病について話すのに抵抗がある方もいると思いますが、職場での配慮が得られるなど、伝えるメリットもたくさんあります。
産業医や産業保健師など、伝えやすい方を見つけて相談してみましょう。
糖尿病と仕事を両立するには治療の継続、会食参加時の工夫が大切です。
治療にはストレスも多いですが、周囲のサポートを得ながら無理なく続けていきましょう。
糖尿病を治療している方と一緒に働いている方は、まずは糖尿病を正しく知っていただけますと幸いです。
低血糖など気をつけるべき症状はありますが、ちょっとした工夫で治療と仕事の両立ができます。
ご本人が必要とするサポートについてぜひ一度相談してみてください。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重・カロリー&糖質を含む、食事・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてください。
【参考文献】
独立行政法人 労働者健康安全機構 糖尿病に罹患した労働者に対する治療と就労の両立支援マニュアル
厚生労働省 治療と仕事の両立について
国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター