糖尿病でも甘酒を飲んでいいの?~血糖値の急上昇を防ぐ飲み方も紹介~
当記事の執筆は、管理栄養士 松原知香が担当しました。
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米からつくる優しい甘さの甘酒、お正月に飲むという方も多いですよね。
最近では美容や健康に関心の高い方からも注目されていますが、甘いものを控えている糖尿病の人が飲んでもよいかは、悩ましいところ。
そこで今回は、糖尿病の方が甘酒とどう付き合っていくのかについてお伝えします。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
糖尿病になったら甘酒を飲んではいけないのか
糖尿病だからといって「食べてはいけないもの」はないので、糖尿病の方でも甘酒は飲めます。ただし、際限なく飲んでいいわけではありません。
糖尿病の食事管理をする際に活用したい「糖尿病食事療法のための食品交換表」によると、甘酒はお菓子などと同じ「し好食品」に分類されます。
糖尿病の方は、食事から摂るカロリーや糖質量をコントロールする必要があるため、1日3食バランスの良い食事を心がけたい一方、お菓子などのし好食品は避けたほうがよいとされています。
甘酒のように甘いものがどうしても食べたいときは、かかりつけ医や食事指導を受けている管理栄養士に相談をしてから食べるようにしましょう。
米こうじの甘酒が砂糖不使用なのに甘いワケ
米こうじから作る甘酒は、発酵の段階で米に含まれるでんぷんを分解してブドウ糖を作るため、砂糖を加えなくとも甘いです。
ちなみに、甘酒には酒かすから作るものと米こうじから作るものの2種類があります。酒かすは砂糖を加えて作りますが、米こうじから作る甘酒は砂糖を使わず、米とこうじと水だけで作るのです。
米こうじの甘酒に含まれるブドウ糖は脳で使われる唯一の栄養で、体にとっては必要不可欠。
砂糖たっぷりのジュースを飲むより、甘酒のほうが体にはよさそうですね。
参考記事:脳の栄養「ブドウ糖」とは〜効果から食べ物まで幅広く紹介〜
「飲む点滴」甘酒に含まれる栄養とは
甘酒が「飲む点滴」と表現されるのを目にする機会も多いのではないでしょうか。これは、点滴と同様に甘酒にもブドウ糖が含まれるから、という説が有力なようです。
さらに、デンプンを分解することでオリゴ糖を作り出します。オリゴ糖はビフィズス菌など善玉菌のエサになり、善玉菌が増えて腸内環境の改善に役立つのです。
甘酒は、私たちの健康をサポートする栄養が補える、昔から親しまれてきた発酵食品だといえますね。
飲みすぎには注意
体によい甘酒も、飲みすぎてしまえば血糖コントロールに影響します。
とくに糖尿病の方は血糖値が上がりやすいうえに、一度上がった血糖値が下がりにくい傾向にあります。
血糖変動を最小限に抑えるためにも、「適量」を心がけましょう。
1日の目安量
甘酒を飲むなら、1日80gまでとしましょう。
先ほど、「糖尿病食事療法のための食品交換表(以下、食品交換表)」で甘酒はし好食品に含まれるというお話をしました。
食品交換表では80kcalを1単位と計算し、ご飯やパン、野菜、肉など7つのグループそれぞれに目安の摂取量を分配します。
甘酒のようなし好食品はこの7つのグループに含まれず、もし飲むならご飯やパンなどの炭水化物の摂取量を減らす必要があるのです。
しかし、糖尿病の食事はバランスよく食べることが基本であるので、甘酒を飲みすぎてごはんやパンなど主食を抜くのは本末転倒です。
食品交換表によると甘酒1単位は80gであり、1日1単位までに留めるのが適切でしょう。
飲むスピードはゆっくりと
甘酒を飲むときは、ゆっくり飲むと良いです。
というのも、甘酒に含まれるブドウ糖は砂糖であるショ糖などに比べて体への吸収スピードが早いのです。
甘酒はホットで飲む方が多いと思うので一気飲みなどはされないでしょうが、家族や友人とのお話を楽しんだり、ひとりでリラックスしたいときなどに、味わいながら飲むことをオススメします。
【酒かすと米こうじ】糖尿病にオススメはどちら?
先ほども触れたように、甘酒には酒かすから作るものと米こうじから作るもの、2種類があります。
では、糖尿病の方にはどちらがオススメなのでしょうか。
答えは「どちらでもない」です。
酒かすは食物繊維を多く含むため、血糖値の上昇を緩やかにする働きが期待できる一方、酒かすで作る甘酒には砂糖を加えています。
また、米こうじから作る甘酒は先ほどお話したようにブドウ糖やオリゴ糖を補えますが、こちらも血糖値への影響は少なからずあります。
まとめると酒かす、米こうじどちらの甘酒も「一長一短」があるため、どちらがよいと断言はできないのです。
その時の気分によって選んでいただければと思います。
ただし、飲む際はどちらかを1日1杯とし、両方を1杯ずつなどとしないようご注意ください。
まとめ
古くから日本人に親しまれてきた甘酒は、工夫することで糖尿病の方でも飲んでいただけます。ただし、甘酒はお菓子と同じ「し好食品」に分類されるため、かかりつけ医や管理栄養士に相談してから飲みましょう。
大まかな目安は1日1杯(約80g)として、甘酒を飲む代わりに3食いずれかの主食を減らすなど調整するとよいですよ。
これから寒さがいっそう厳しくなる季節、甘酒を上手に取り入れて温かくお過ごしください。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や体重、運動や食事の記録がカンタンにできます。日々の血糖コントロールにてぜひ活用してみてくださいね。
【参考文献】
文部科学省 食品成分データベース
農林水産省 「甘酒には2種類の作り方があるとのことですが、ノンアルコールのものはどちらですか。2種類の違いも教えてください。」
日本糖尿病学会編・著 糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版