黒にんにくの栄養と効果がスゴイ!~生にんにくとの違いも徹底解説~
当記事の執筆は、管理栄養士 高木万智が担当しました。
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読んで字のごとく、果実が黒い「黒にんにく」。
2006年にメディアで取り上げられたことを発端に、2008年に良質なにんにくの産地である青森県にて「青森黒にんにく協会」が設立され、全国に広まりました。現在は世界各地でも売られているそうです。
黒にんにくは白い生のにんにくを高温、高湿の環境に3~4週間という長い時間おき、熟成・発酵させて作られたものです。熟成する過程で化学変化が起きて果実が黒くなります。
では黒にんにくにはどのような栄養成分が含まれ、どのような効果があるのでしょうか?
実際に行われた研究をもとにご紹介していきますので、どうぞ最後までお付き合ください。
目次
黒にんにくの栄養と効能
「黒にんにくを食べると元気が出る」といった話はよく耳にしますが、実際にどのような栄養素による働きなのでしょうか。
特徴的な栄養素をご紹介しましょう。
体をつくるために必要な必須アミノ酸が多い
黒にんにくには、にんにくに比べて必須アミノ酸であるフェニルアラニン、イソロイシン、ロイシンが多く含まれています。
アミノ酸の中でも、自分では作り出せないアミノ酸、つまり摂取しなければいけないアミノ酸を必須アミノ酸と呼びます。
必須アミノ酸が補充されることにより、健康な皮膚や髪が保たれたり、体の機能を調整するホルモンが正常に作られるのです。
老化から体を守るS-アリルシステイン
S‐アリルシステインはアミノ酸の一種で、強力な抗酸化作用を持つとされています。
抗酸化作用とは、私たちの体を老化から守ってくれる作用です。体の中で酸化された物質は老廃物として蓄積されてしまいますが、S-アリルシステインは体の中の物質が酸化するのを防ぐことで、その老廃物を減少させる働きがあります。
そのため、アンチエイジングに役立つ栄養素といえるでしょう。
生活習慣病予防で注目されるポリフェノール
ポリフェノールもS-アリルシステイン同様、抗酸化作用の力がとても強いといわれている物質で、動脈硬化など生活習慣病の予防に効果的であることがわかっています。
ポリフェノールの種類により独自の働きがありますが、種類までは未測定のようです。
にんにくと黒にんにくの栄養に違いはあるの?
にんにくから黒にんにくに変化すると、栄養成分はどのように変わるのでしょうか。
先ほどご紹介した栄養素について比較してみましょう。
黒にんにく | にんにく | |
フェニルアラニン | 2.7mg | 0.4mg |
イソロイシン | 15.03mg | 1.51mg |
ロイシン | 18.20mg | 1.82mg |
S-アリルシステイン | 16mg | 1mg |
ポリフェノール | 215mg | 34mg |
アリシン | ND | 17mg |
アリイン | 68mg | 518mg |
※100gあたり 青森県産純黒にんにく 食品医薬品安全評価分析センター
※ND:データなし
にんにくから黒にんにくへ加工すると、抗酸化作用が期待されるS- アリルシステインやポリフェノールが増加します。
さらに、必須アミノ酸のフェニルアラニン、イソロイシン、ロイシンも5~10倍に増加していることがわかりますね。
どちらを食べるほうがよいのか
にんにくも黒にんにくも、どちらも効果を実感されている方がいますので、一概にどちらを食べるほうが健康にいい、といえるわけではありません。
しかし、にんにくは生で食べると胃腸への刺激が強くお腹をこわしてしまうなどのケースがあります。
その点、黒にんにくではその心配がありませんので、手軽さをとるのであれば黒にんにくのほうが心配なく美味しく召し上がれます。
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気になる黒にんにくの味とにおい
にんにくの気になるにおいはアリシンという物質によるものですが、黒にんにくに加工されるとにおいは消えます。
また、黒にんにくに変化していく過程で甘味を感じる糖度が増し、甘酸っぱい味になります。
しかし味に関しては、黒にんにくの作り方や元のにんにくの種類によっても変わるようです。酸味と甘味のバランスや旨味などが大きく変わるという報告もあるので、味は一概には言えないようですが、多くは生のにんにくとはかけ離れた「ドライフルーツのような味」と称されることが多いです。
黒にんにくは血圧に良いのか
たしかに、黒にんにくには血管の老化を防ぐポリフェノールやS-アリルシステイン、降圧作用があるGABAが含まれてはいます。
しかし、実際に人を対象にした研究報告はあるものの、血圧へ効果があるかはわかっていません。
黒にんにくはあくまでも「食品」です。薬のように効果が保証されているわけはないので、日々の健康を保つ際のサポート役として捉えるとよいでしょう。
食べないほうがいい人は?
厚生労働省の報告では高血圧の薬を飲んでいる方で黒にんにくの影響とする薬害の報告もあります。
お薬を服用されている方は食べる前に主治医の先生に相談をしたり、何か影響が出た場合は黒にんにくを食べている旨を伝えましょう。
関連記事
【医師監修】降圧剤の副作用を種類ごとに解説~対処法や効果が出るまでの期間も~
黒にんにくを食べることに意味はないのか
いいえ、そうとは言い切れません。
というのも、黒にんにくを食べた人が何らかの効果を実感しているからです。それが日本を飛び出して、世界にまで黒にんにくが広まった最たる理由ではないでしょうか。
黒にんにくの効果は、疲れにくくなった、よく眠れるようになった、便秘が改善した、などさまざまです。
「なぜ良い健康効果があるのか」がまだ解明されていないだけで、実際に食べると体調の変化を感じている方が多いわけです。そのため、「なんとなく体調が優れないなぁ」というときには何か効果が期待できるかもしれません。
毎日黒にんにくを食べてもいいの?
黒にんにくに関する人での研究は2週間毎日、黒にんにく一片を摂取するというものですが、健康な人が2週間続けて摂取する間には、とくに健康被害の報告は無かったとのことです。
また、2週間の摂取で体調の変化を自覚されている報告もありますので、まずは2週間試しに続けてみるのが良いかもしれません。
実は家でも簡単に作れる
なんとこの黒にんにく、自宅でも簡単に作れるのです。
炊飯器を使う
正式な作り方があるわけではありませんが、自宅で作られているレシピをまとめました。
【作り方】
①においを和らげるために、一日にんにくを酢に漬ける
②にんにくを取り出し一度乾燥させる
③炊飯器ににんにくを並べて乾燥しないように上に布巾をかぶせて保温モードにする
④2週間ほど熟成させたら完成
【ポイント】
・底面が焦げやすいので毎日1回上下を返す
・保温モードを切らさないようにする
【注意点】
・炊飯器ににおいが付くのでもし作るなら、黒にんにく専用の炊飯器を用意したほうがよい
・自宅で黒にんにくを作ると、売られている商品に表示されている栄養成分が期待できるかは不明。初めての方は市販での購入がおススメ
まとめ
黒にんにくはにんにくを熟成・発酵したものであり、その過程で、S‐アリルシステインやポリフェノール、必須アミノ酸などの栄養成分が増えていました。
また、それらの成分が体にとっていい影響を与えている可能性があり、効果を感じている人が多くいます。
しかし、それらの科学的な根拠はいまだ乏しく、これからの研究に期待されるところです。すでに疾患をお持ちの方は、良くも悪くも体調の変化がありましたら主治医にご相談を。
それでは、今回の内容をこれからの皆さんの生活にお役立ていただければ幸いです。
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参考文献
国立研究開発法人医薬基盤健康栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報、ニンニク 「健康食品」の素材情報データベース
市丸雄平他、「第6次産業開発健康食品「黒ニンニク」が生体に及ぼす影響(1)」東京家政大学生活科学研究所研究報告
市丸雄平他、「第6次産業開発健康食品「黒ニンニク」が生体に及ぼす影響(2)」東京家政大学生活科学研究所研究報告
青森県黒にんにく協会
にんにく加工品の品質評価
日本栄養・食糧学会誌黒にんにく含有サプリメント摂取による肝機能保護作用
食品医薬品安全評価分析センターにんにくの成分とその働き
社団法人 日本栄養士会GABAと血圧