【医師監修】降圧剤の副作用を種類ごとに解説~対処法や効果が出るまでの期間も~
当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。
執筆はライター 前間弘美(管理栄養士)が担当しました。
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医師から高血圧の薬を飲むようにいわれたものの、副作用が気になるあなた。
血圧を下げる薬である降圧剤は10種類あり、副作用が異なります。
そこで今回は主な降圧剤6種類の副作用について、種類ごとにわかりやすく解説いたします。副作用の対処方法についてもお伝えするので、最後までご覧ください。
目次
【種類別】降圧剤の副作用一覧
降圧剤の主な副作用は、動悸・頭痛・ほてりなどが挙げられます。
下表に、主な降圧剤の種類別副作用をまとめました。
ただし、カルシウム拮抗薬や利尿薬などは何種類もあり、それぞれ特徴や副作用は異なります。それぞれの薬の副作用については医師や薬剤師に相談してください。
薬の種類 | 副作用 |
カルシウム拮抗薬 (ニフェジピンなど) | 動悸・頭痛・ほてり・浮腫・便秘 (いずれも頻度は5%以下) |
ARB (カンデサルタンなど) | 血管浮腫(頻度不明)・腎機能の低下(頻度不明。ただし腎不全の場合は0.1-5%未満) |
ACE阻害薬 (エナラプリルなど) | 空咳(頻度20-30%)・血管浮腫(頻度不明)・腎機能の低下(頻度5%以下) |
利尿剤 (スピロノラクトなど) | 電解質異常(低K血症・低Na血症・低Mg血症など) 代謝系への影響(高尿酸血症・耐糖能低下・高TG血症など) |
α1遮断薬 (ドキサゾシンなど) | 起立性低血圧による目まい・同期・失神・頭痛・眠気・動悸(いずれも頻度0.1-1%未満)・尿漏れ(頻度0.1%未満) |
β遮断薬 (アテノロールなど) | 気管支喘息の増悪(頻度0.1-)・徐脈 |
対処方法
副作用が出た場合、かかりつけの医師に相談しましょう。
重大な副作用であれば、降圧薬の中止・変更が必要となります。
ただし、降圧薬による副作用のほとんどは発症頻度の低いものであり、α1遮断薬による頭痛やめまいなど内服を継続することで症状が落ち着いてくるものもあります。
降圧剤は血圧を下げるために必要な薬です。副作用が出たからといって、勝手に内服を中断してはいけません。
副作用で太るの?
降圧剤の副作用で太ることは、考えにくいです。
しかし副作用で浮腫が出た場合、太ったと感じる可能性はあります。
副作用で認知症になるのか
現時点で、降圧剤の副作用で認知症になるという確証はありません。
一方で、高血圧は血管性認知症やアルツハイマー型認知症のリスクとなるため降圧薬治療で血圧を正常値にすることで、認知症発症が13%減少することが報告されています。
ただし、アルツハイマー型認知症の発症に先行して血圧が低下することも示されており、脳動脈硬化に血圧低下が加わることで認知症発症の引き金となる可能性はあります。
降圧剤の効果
くり返しになりますが、降圧剤を飲むことで血圧を下げる効果が期待できます。
高血圧は動脈硬化を進行させ、脳出血や心筋梗塞などの命にかかわる病気のリスクを高めます。そのため降圧剤で血圧を下げて、動脈硬化の進行を遅らせるのです。
効果が出るまでの期間は?
降圧剤を飲み始めて血圧が下がり、正常値になるまでの期間は薬剤差や個人差があります。
なかなか血圧が上がったという実感がなくても、医師の処方したとおりに薬の内服を続けることが大切です。
降圧剤を飲む基準はあるのか
基本的には、食事や運動といった生活習慣の改善を行っても血圧の下がりが不十分だった場合に、降圧剤が処方されます。
ただし、高血圧の原因や程度、合併症によってはすぐに降圧剤が処方される場合もあるため、個人差が大きいです。
参考記事:高血圧とは~症状や生活習慣での改善ポイントなど分かりやすく解説~
参考記事:【医師監修】血圧の平均を知ろう〜年代別にまとめました〜
血圧の薬は飲まない方がよいといわれるのはなぜ?
一般的に、降圧剤は飲み始めると一生飲み続けなくてはならない、と思われているため躊躇する方が多いようです。
中には医師の判断によって、薬の量を減らしたり飲まなくてよくなったりする方もいらっしゃいます。
なにより降圧剤の服用は、動脈硬化の進行リスクを減らすことにつながります。降圧剤は健康に過ごすために、必要な薬なのです。
勝手にやめるとどうなるのか
血圧が正常値になったからと自己判断で降圧剤をやめた場合、時間が経つにつれて再び血圧が上がります。1年以上降圧薬治療により血圧が正常化していても、減量もしくは中止すると通常6カ月以内に血圧が高血圧レベルまで再上昇することが多いとされています。
またβ遮断薬を急に中止すると狭心症や高血圧発作を来すこともあるなど、降圧薬内服中止により重大な疾患を生じる可能性もあります。
そして高くなった血圧をもう1度下げるためには、時間がかかります。処方されている降圧剤は、必ず医師の指示通りに服用を続けましょう。
まとめ
以上、主な降圧剤の副作用は、動悸・頭痛・ほてりなどが挙げられるとわかりました。
副作用のある降圧剤を飲むのは不安だ、と感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、高血圧は動脈硬化の進行リスクを高める要因の1つです。降圧剤で血圧を正常値にすることで、健康に過ごせる可能性が高まると考えると不安も少しはやわらぐのではないでしょうか。
それでは当記事を参考に、降圧剤と副作用について理解を深めることであなたのお役に立てば嬉しいです。
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参考文献
・医療情報科学研究所(2017):病気がみえる vol.2 循環器 第4版,メディックメディア,322-327
・浦部昌夫,島田和幸,川合眞一(2018):今日の治療薬(2018年版),南江堂,586-626
・日本老年医学会雑誌(2007)44巻4号 武地一 1.高齢者高血圧治療と認知機能
・高血圧治療ガイドライン2019
・高血圧管理と認知症予防 (日老医誌2011;48:111―113)