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脂質異常症の食事改善ポイントとは?~管理栄養士がわかりやすく解説~

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【管理栄養士解説】脂質異常症の食事で気を付けたいポイント~脂質代謝改善に期待できるレシピ紹介~

当記事の執筆は、管理栄養士  松原知香が担当しました。
*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください

「脂質異常症と言われたから、美味しいものはもう食べられないのかもしれない」などの思いから、この記事にたどり着かれたことでしょう。

悲観に暮れるのはまだ早いです!

脂質異常症の特徴や食べたものが体内でどのように変化するのかを知ると、病気に対するネガティブな感情が和らぎますよ。

記事の後半に、脂質代謝の改善が期待できるレシピの紹介がありますので最後までお付き合いください。

自分にとって適正なエネルギー量を知ろう

自分にとって適正なエネルギー量を知ろう

食事内容を見直す際、必ずやることは「適切なエネルギー量の把握」です。脂質異常症の方にとって、ご自身の適正なエネルギー量を把握することはとても大切になります。

その理由は、肥満(BMI25以上)と診断された人の中で合併症の危険が予測される場合、肥満も治療が必要な疾患の一つとして扱う、と決められているからです。

BMIは身長に対して体重が軽いか重いかを示している指標にすぎませんが、BMI25以上を肥満と扱っていることとBMI22を標準としていることには科学的根拠が存在します。

つまり、肥満が引き金となって発症する病気がいくつもあるため、肥満解消に取り組む必要があるのです。

肥満の方の減量目標は数字で示されますが、減量の目的はただ体重を軽くするだけではなく、内臓脂肪を減らし合併症のリスクを下げるところにあります。

「肥満症治療ガイドライン」によると、3~6か月間に体重を3%減量させるだけで内臓脂肪が減少し、合併症のリスクが改善されると報告されています。

とはいうものの、減量だけに注目すると目的を見失いやすいのでお忘れないように。

参考記事:効果的なダイエット方法とは〜続けられる食事・ルールなどカンタン解説〜

1日のエネルギー量の求め方

1日に必要なエネルギー量は、現在の体重ではなく標準体重から求めます。

標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
1日の適正エネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×25~30(kcal/標準体重kg)

【例:身長160cmの人の標準体重】
 →標準体重は1.6×1.6×22=56.3kgとなります。
  この人の1日の適正エネルギー量は、56.3×30=1,689≒1,690kcalです。

つまり1食あたりのカロリーは563Kcalとなります。

ご参考までに牛丼チェーンの牛丼並盛りは635~733kcalほどあるため、食べきってしまうとカロリーオーバーということです。

1食当たりのカロリー量を把握しておくと食事療法に取り組みやすくなるので計算してみてくださいね。

脂質異常症改善に向けた食事のポイント

ここからは、脂質異常症の改善に向けた食事のポイントを6つご紹介します。

①3食規則正しく食べる

脂質異常症改善に向けた食事の基本

食事は1日3食を基本として、毎日同じ時間帯に食べるのが理想的です。食事時間が不規則だったり、欠食の習慣があると体にとっては負担となるからです。

特に朝食の欠食は、昼食の過食や昼食後の血糖値の急上昇につながり肥満の原因となりますので注意しましょう。

②脂質の量と質に注意する

②脂質の量と質に注意しましょう

脂質は1gあたりのカロリーが高いため量には注意が必要です。さらに「質」の違いによって体への影響も異なるので、質にもこだわるとよいです。

物性脂肪やバターなどに含まれている「飽和脂肪酸」の摂取は、血中の悪玉コレステロールを増加させるため過剰摂取は控えましょう。

一方で、青魚などに含まれるDHAやEPAなどは善玉コレステロールを増やすため、積極的に摂りたい脂質です。

近年では「アボカドが脂質異常症に良い」との評判が広がり、好んで食べる方が増えています。実際にアボカドに含まれる脂質は悪玉コレステロールを減らす働きがあるため、積極的に摂りたい食品と言えますね。

ただし、アボカドはカロリーが高いため食べる量には注意しましょう。

参考記事:アボカドのカロリーは高い?~糖質量やダイエット中の食べ方も紹介~

コレステロールの量の注意

わたしたちの体の中にあるコレステロールには、食事から摂るものと体内で作られるものがありますが、圧倒的に多いのは体内で作られる分です。

そのためコレステロール摂取量の上限量はありませんが、悪玉コレステロール値が高い人は、重症化予防の観点から食事からのコレステロール量には注意しましょう。

参考記事:脂質異常症とコレステロールの関係性~診断基準や注意する食品をシンプルに解説~

③食物繊維を十分に摂る

食物繊維は悪玉コレステロールを体外へ排除する働きがあります。

そのため、野菜・きのこ・大豆製品など食物繊維が豊富な料理を摂りましょう。

④節度ある飲酒を心がける

④節度ある飲酒を心がける

アルコールは血中の中性脂肪を増やすため、できることなら飲酒は控えたいところです。

さらに、お酒の席では揚げ物など脂質の多いメニューが並びます。アルコールの影響により食欲が増して、食事改善のポイントを守れなくなる可能性もあります。

仕事や交友関係のお付き合いでお酒を飲む際は、飲みすぎと食べ過ぎに要注意ですよ。

アルコールの適正量

アルコール摂取の適正量は、1日あたり純アルコール量で20gです。

つまり、飲むお酒の液体量ではなくアルコール量に換算して考える必要があります。

実は脂質異常症の方も健康な方も、1日あたりのアルコール適正量は同じです。そのため「脂質異常症になったからこれだけしか飲めないんだ」とは思わないでくださいね。

それでは、「節度ある適度な飲酒量」を具体的に見ていきましょう。

純アルコール20gに相当する酒量
ビール(5%)ロング缶1本(500ml)
チューハイ(7%)缶1本(350ml)
ワイン(14%)グラス2杯弱(200ml)
日本酒(15度)1合(180ml)
焼酎(25度)グラス1/2杯(100ml)
ウイスキーダブル1杯(60ml)


表の下に向かうにつれてアルコール度数の高いお酒です。

「純アルコール20gに相当する酒量」の欄を見ていただくとわかる通り、アルコール度数が上がるとそれに伴い飲める酒量が減っていきます。

つまり、アルコール度数と酒量は反比例の関係というわけです。

この表には代表的なお酒しか載せていないのですが、アルコール度数から飲める酒量を求められる計算式がありますよ。

飲める酒量(ml)=20g ÷(アルコール度数×0.8)
※式中に出てくる0.8はアルコールの比重のこと


【例:アルコール度数9%のチューハイは何ml飲めるの?】
 →20÷(0.09×0.8)=277.77≒277ml

350ml容量の缶1本を飲み切ってしまうとオーバーしてしまいますので、グラスに移して飲む習慣を付けることをオススメします。

計算式は簡単なのでぜひ覚えてくださいね。

⑤食塩を摂り過ぎない

⑤食塩を摂り過ぎない

食塩の摂りすぎは血圧を上げる要因となり、高血圧症を合併すると動脈硬化に拍車がかかります。

そのため日本高血圧学会では、血圧が正常な方であっても1日あたりの塩分量は6g未満を推奨しています。

とくに夏場に熱中症を危惧して水分とともに塩分を積極的に摂る方が多いですが、日本人の食塩摂取量は必要量をはるかに超えている現状です。よって、夏場であっても大量に汗をかく場合以外は積極的な塩分摂取は必要ないでしょう。

調理・食事のポイント

塩分控えめに作る調理のポイントをお伝えします。

・うまみを効かせる
・香辛料を使う
・酸味を効かせる
・薬味を使う

以上のように、塩味以外の部分を際立たせると薄い味付けでもあったも物足りなさを感じません。

うっかり完食してしまいがちな、

・定食やお弁当の少量付いてくるお漬物
・ラーメンのスープ

は残すように心がけましょう。

⑥抗酸化作用のある食品を取り入れる

⑥抗酸化作用のある食品を取り入れる

血中に悪玉コレステロールが多いと血液がドロドロになり動脈硬化を進行させますが、一番問題になるのは悪玉コレステロールが酸化されて生じた物質(酸化LDL)です。

そのため、悪玉コレステロールの摂取量に気を配るのと同時に、抗酸化作用のある食品を摂って体内にある脂質の酸化を防ぎましょう。

抗酸化作用のある成分には以下のようなものがあります。

・ビタミンC
・ビタミンE
・β-カロテン
・ポリフェノール
・アスタキサンチン

つづいて、実際にこれらの成分が含まれている代表的な食品をご紹介します。

【ビタミンC】いちご、キウイ、ブロッコリー、キャベツ、パセリ、じゃがいも
【ビタミンE】鮭、かぼちゃ、ゴマ、アボカド、アーモンド
【β-カロテン】にんじん、かぼちゃ、大葉
【ポリフェノール】ぶどう、ブルーベリー
【アスタキサンチン】えび、かに、鮭 など


とくに
緑黄色野菜には抗酸化作用のある成分が多く含まれているため、毎食摂り入れるようにしましょう。

脂質異常症の方におけるおやつの摂り方

脂質異常症の人のおやつの摂り方

おやつを食べるときに気を付けたいポイントは、種類・量・時間帯の3つです。

一概には言えませんが、洋菓子はカロリーが高く脂質や糖質がたくさん含まれているものが多く、また清涼飲料水は糖質が多いためオススメできません。

そこでもし間食をしたいときは、カロリー計算がしやすくて食べ過ぎる心配の少ない小袋入りのお菓子がオススメですよ。ファミリーパックのような大袋入りのものをそのまま食べるのは、「気づいたら食べきってしまった」という事態になりかねません。

そのため、ひと手間かけてお皿に移してから食べるようにしましょう。

さらに、間食する時間にも気を付けたいところ。

「おやつは3時」というのは定説ですが、意外にも理に適っています。体の代謝の仕組みによると、食べたものが脂質になりにくいのが午後3時ぐらいの時間帯だからです。

「ながら食い」は食べ過ぎにつながりますので、短時間で切り上げましょう。

活用しやすいお菓子の種類

オススメは幼児用のお菓子です。

スナック菓子(小袋タイプ)であっても、カロリー・塩分・脂質共に控えめに作られているものが多く活用しやすいですよ。

とはいえ、間食は習慣化しないのが一番です。

悪玉コレステロール改善にオススメのレシピ

包丁不要で作れる、悪玉コレステロール値改善に効果が期待できるイチオシのレシピをご紹介します!

【朝ごはんに食べたい!サバと豆腐の中華スープ】
サバと豆腐の中華スープ

【材料 ~2人前~】
サバ缶(汁ごと)   1缶
まいたけ                 1/2パック
豆腐                         100g
水                             300cc
鶏ガラスープの素 小さじ1
白ごま                     小さじ1
小ねぎ                   適量

【作り方】
1.鍋に分量の水を入れて沸かし、舞茸ほぐしながら入れる
2.舞茸を少し煮たら、サバ缶を崩しながら(汁ごと)入れて、豆腐はスプーンですくい入れて煮立つまで火にかける
3.鶏がらスープとこしょうで味を整えて、白ごま、小ねぎを入れて出来上がり

【ポイント】
・小ねぎをキッチンばさみでカットするorカットされたものを購入すれば包丁不要で作れます
・白ごまは指の腹同士で「捻りごま」にしてから使うと栄養素の吸収がしやすく、香りもよくなります!

ちなみに当レシピに含まれる栄養と効果は以下の通りです。

サバ:DHAやEPAが豊富。朝食に食べると脂質代謝が改善されるという研究結果あり
豆腐:大豆たんぱくが悪玉コレステロールを減らし、イソフラボンは悪玉コレステロールと中性脂肪を減らす働きがある
まいたけ:悪玉コレステロールを下げる働きがある
ごま:抗酸化作用

参考記事:脂質異常症には豆腐がいいってホント?~種類による違いからレシピまで管理栄養士が徹底解説!~

まとめ

以上、脂質異常症の食事についてお伝えしました。

まず自分にとっての適正体重と摂取エネルギー量を把握した上で、その後食事内容を考えるという順で取り組むことがわかりましたね。食事療法を頑張った結果は血液検査に現れますので、焦らずコツコツと頑張りましょう。

なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重・カロリー&糖質を含む、食事・血糖値などの記録がカンタンにできます。日々の健康管理でぜひ活用してみてください。

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参考文献
東京都病院経営本部 脂質異常症の食事
国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 減塩食について
J-STAGE 肥満症治療ガイドライン2016 時間栄養学による生活習慣病の予防 生体リズム障害と肥満症
国立研究開発法人産業技術総合研究所 魚油による脂質代謝改善効果が摂取時刻によって異なることをマウスで発見

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