医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算改定のポイントとは?
執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。
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「医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算が10月から見直されるらしいけど、どのように変わるの?」
「マイナ保険証の利用率ってどういうこと?」
令和6年10月から医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算が見直されますが、まだよく把握していない先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は10月からの改定ポイントを詳しく解説していきます。
医療DX推進体制整備加算についてはマイナ保険証の利用率も関わってきます。
マイナ保険証についても説明しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
医療DX推進体制整備加算について
医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備したことを評価する加算です。
また、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するため医療DXに対応する体制を確保している場合に算定できます。
歯科や調剤薬局も加算対象ですが、算定点数が異なります。
ここでは医科について説明します。
医療DX推進体制整備加算の点数
令和6年の診療報酬改定で医療DX推進体制整備加算が新設されましたが、令和6年9月までは暫定的な点数設定となっています。
令和6年10月からは、マイナ保険証の利用率によって加算点数が変わり、本格的な運用が始まります。
令和6年6月~9月
令和6年10月以降
医療DX推進体制整備加算2 10点
医療DX推進体制整備加算3 8点
医療DX推進体制整備加算は、令和6年10月以降は、マイナ保険証利用率によって、算定できる点数が変わってきます。
※令和7年4月以降 のマイナ保険証利用率の実績要件は、附帯意見を踏まえ、本年末を目途に検討、設定する予定
厚生労働省の資料をもとにシンクヘルス株式会社が作成
① レセプト件数ベース利用率(2か月後に把握可能→実績を3か月後から反映可能)=マイナ保険証の利用者数の合計 ÷ レセプト枚数
② オンライン資格確認件数ベース利用率(1か月後に把握可能→実績を2か月後から反映可能)=マイナ保険証の利用件数 ÷ オンライン資格確認等システムの利用件数
マイナ保険率は、原則としては適用時期の3月前のレセプト件数ベースマイナ保険証利用率を用います。
ただし、令和6年10月~令和7年1月は、適用時期の2月前のオンライン資格確認件数ベースのマイナ保険証利用率を用いることもできます。
適用月の3月前のレセプト件数ベースのマイナ保険証利用率または2月前のオンライン資格確認件数ベースマイナ保険証利用率に代えて、その前月及び前々月のマイナ保険証利用率を用いることも可能です。
※月によってマイナ保険証利用率の状況に変動が出る可能性があるため、各医療機関で柔軟に自院にとって有利な形でマイナ保険証利用率の算定を可能とするための措置です。
医療DX推進体制整備加算の算定要件
医療DX推進に係る体制として、別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関を受診した患者に対して初診を行った場合は、月1回に限り所定の点数を加算します。
医療DX推進体制整備加算の施設要件
厚生労働省の資料をもとにシンクヘルス株式会社が作成
医療情報取得加算について
医療情報取得加算は、オンライン資格確認を導入している保険医療機関において、患者の薬剤情報や特定健診情報等の診療情報を活用して質の高い診療を実施する体制を評価する点数です。
医療DX推進体制整備加算はマイナ保険証利用率によって算定点数が変わってくるのに対し、医療情報取得加算は、オンライン資格確認システムが稼働している状態であれば、マイナ保険証利用に関わらず算定できる点数になります。
医療情報取得加算の点数について
令和6年12月からは、原則マイナ保険証の利用に一本化されます。
令和6年11月までは、オンライン資格確認利用する場合と利用しない場合で医療情報取得加算は違っています。
令和6年6月〜11月
医療情報取得加算1(現行の保険証の場合) 3点
医療情報取得加算2(マイナ保険証の場合) 1点
再診時(3月に1回に限り算定)
医療情報取得加算3(現行の保険証の場合) 2点
医療情報取得加算4(マイナ保険証の場合) 1点
令和6年12月以降
医療情報取得加算 1点
再診時(3月に1回に限り算定)
医療情報取得加算 1点
令和6年12月以降は、保険証の提示はマイナ保険証に原則一本化されるため、算定点数も全て1点となります。
医療情報取得加算の施設基準
厚生労働省の資料をもとにシンクヘルス株式会社が作成
マイナ保険証の利用率を上げるために必要なこと
オンライン資格確認を導入すれば医療情報取得加算は算定できますが、医療DX推進体制整備加算に関しては、マイナ保険証の利用率を上げなくてはなりません。
マイナ保険証の利用率を上げるためには以下の施策が効果的です。
・受付での声がけ
・カードリーダーの利用方法を図示
・マイナ保険証への一本化を周知
受付での声がけ
患者さんが受付で診察券と保険証を提示する際に、マイナカードを持参しているかどうか声がけをするようにしましょう。
すでにマイナカードを作っている人は免許証と同じように携帯している可能性があります。
声がけをしなければ、そもそも医療機関でマイナカードを使用できることを知らない方も多いです。
地道な方法ですが、効果的な方法です。
まずはぜひ声がけをするところから始めてください。
カードリーダーの利用方法を図示する
ご高齢の方は、マイナカードを持っていても、カードリーダーの利用方法がわからず、マイナカードの提示を躊躇する方もいらっしゃいます。
どのメーカーのカードリーダーも顔認証に対応しており、カードを入れる方向など間違えなければ、簡単な操作で読み込むことが可能です。
カードを入れる方向や操作方法をカードリーダーの横に図示するなどしておけばよいでしょう。
マイナ保険証への一本化を周知する
令和6年12月以降は、保険証はマイナカードに原則一本化されることが決まっています。
現在マイナカードを持っていない方や健康保険情報とマイナカードを紐付けしていない方には、でマイナ保険証への一本化されていくことを周知しましょう。
医療機関や薬局に設置されているカードリーダーでマイナカードに健康保険情報を紐づけることも可能なので、ぜひマイナ保険証の利用を促してください。
オンライン資格確認とPHRの併用は医療の可能性を広げる
医療DX推進体制加算や医療情報取得加算の目的は医療DXの推進によって質の高い医療を提供することです。
国の推進するオンライン資格確認とすでに医療機関や患者さん個人で導入が進んでいるPHRを併用することで、医療の可能性は広がっていきます。
PHRでは患者さんの血糖値や血圧、食事や運動など今までは見えにくかった情報がデータ化されます。患者さんの日々の状況がデータでよくわかるようになり、診察の質が上がることが期待できるのです。
PHRの導入がまだの先生は、この機会にぜひ検討してください。
最後に、実際にPHRを導入し診療の質が向上している事例を紹介します。
参考記事:デジタル活用で患者さんの体験価値向上とクリニックの経営効率向上を実現~メッセージ機能活用のコツとは~
まとめ
今回は医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算改定のポイントについて解説しました。
国が推進を進めている医療DXの施策の一つとして、オンライン資格確認、マイナ保険証の運用が本格的にスタートしました。
医療DX推進体制整備加算は、マイナ保険証の利用率に応じて点数が変わってくるので、患者さんへの積極的な声がけなどでマイナ保険証の利用を促していくとよいでしょう。
オンライン資格確認とPHRの併用で医療の質を向上させることが可能です。オンライン資格確認の普及に合わせてPHRの導入もぜひ検討してください。
参考文献:
厚生労働省保険局医療課資料「医療DX推進体制整備加算・ 医療情報取得加算の見直しについて」