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患者さんとのコミュニケーションにおける課題と大切なポイントとは

執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。

*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください。

 

「患者さんとのコミュニケーションをもう少しスムーズにしたいんだけど」

「コミュニケーションを取る上で便利なツールはないかなあ」

このように、患者さんとのコミュニケーションに、課題をかかえている医療機関の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

そこで今回は、患者さんとのコミュニケーションにおける課題と、コミュニケーションを円滑に進めるためのポイントを解説します。

PHRなど、患者さんとのコミュニケーションに有用なツールも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

患者さんとのコミュニケーションにおける課題とは

患者さんとのコミュニケーションは、治療をおこなう上で非常に重要な要素です。

患者さんとの意思疎通がしっかりできていないと、治療を思うように進められず、患者さんの治療に対するモチベーションも下がってしまいます。

 

医療機関側も、患者さんとのコミュニケーションが重要であることは理解していると思いますが、実際には円滑にコミュニケーションを取りづらいのが実情でしょう。

まずは患者さんとのコミュニケーションにおける課題についてみていきましょう。

 

<患者さんとのコミュニケーションにおける課題>

・医療従事者側と患者さん側における情報の非対称性
・医療従事者と患者さんの治療に対する価値観の違い
・医療現場の慢性的な時間不足

医療従事者と患者さん側における情報の非対称性

医療の分野では、医療機関側と患者さんとの間に「情報の非対称性」が存在します。

これは、医療従事者が専門的な知識や経験を持っているのに対して、患者さんにはそのような知識や経験を持っていないために生じるギャップです。

このため、コミュニケーションがうまくいかず、患者さんが医療従事者の説明を完全に理解していない場合が多いのです。

 

患者さんが医師の説明を理解しているように見えても、実際には理解できていないことがよくあります。

このような場合、次回の診察時に再び同じ説明を受けなければならなくなることがあります。

この状況は、患者さんにとっても医療従事者にとっても効率が悪く、時間と手間が無駄になってしまうのです。

医療従事者と患者さんの治療に対する価値観の違い

昔は、医療の情報が限られていて、患者さんは医師のすすめに従うことが一般的でした。そのため、患者さんは治療についてあまり悩むことはありませんでした。

しかし、インターネットなどを通して患者さんが治療の選択肢やケアの方法についての情報を収集できるようになり、患者さんから提案や質問を受けたりすることが増えてきました。

さらに、さまざまな検査や治療法、ケアの選択肢が増えてきたことで、患者さんそれぞれの価値観や治療に対する考え方も多様化しています。

例えば、ある患者さんは治療の内容を重視する一方で、別の患者さんは治療後のケアや生活の質を大切にすることがあり、患者さんそれぞれの治療に対する価値観は千差万別です。

 

患者さんが自分で情報を取れるようになり、治療に対する価値観も多様化していく中で、医療従事者と患者さんとのコミュニケーションが従来とは変わってきているのです。

医療現場の慢性的な時間不足

患者さん一人当たりの診察時間が限られているため、医療従事者は十分な時間を割いて患者さんの話を聞くことができないことがよくあります。

特に多くの患者さんが来院することで、待ち時間も長くなってしまうような場合、ひとりひとりの診察に時間をかけることが難しくなるでしょう。

 

その結果、患者さんが本来伝えたいことが言えずに終わってしまったり、重要な情報が抜け落ちてしまうことがあります。このような状態では、患者さんとのコミュニケーションは十分とはいえません。

コミュニケーションにおける課題を克服するポイントとは

医療機関での日々の業務に忙殺され、患者さんとのコミュニケーションがうまくいかないことを感じつつもなかなか課題を克服できないと感じる医療従事者の方も多いのではないでしょうか。

しかし実際には、患者さんとのコミュニケーションにおける問題点は上述した3つの課題に集約されます。この3つの課題を切り離して一つひとつ克服することで、患者さんとのコミュニケーションを円滑に進めることができるはずです。

 

<患者さんとのコミュニケーションの課題を克服するポイント>

・医療従事者と患者さん側の情報を対称化する
・医療従事者と患者さんの価値観の違いをすりあわせる
・時間的制約を解消する

医療従事者と患者さん側の情報を対称化する

医療従事者と患者さんの「情報の対称化」を目指しましょう。医療従事者が専門的な内容をわかりやすく説明することが非常に重要です。

医療従事者が専門用語を使いすぎたり、説明が難しすぎたりすると、患者さんは混乱し、自分が理解できているかどうかすらわからなくなります。

 

そのため、医療現場では、医療従事者が患者さんの立場を考え、わかりやすい言葉で説明する努力が求められます。

患者さんからも、疑問を感じたときには遠慮せずに質問してもらえるように、話を聞く姿勢を見せること大切です。

医療従事者と患者さんの価値観の違いをすりあわせる

両者の治療に対する価値観の違いをすり合わせ、より良い治療を選んでいくことが重要です。

多くの治療法から自分に合った治療法を選ぶ必要性から、患者さんは自分で情報を集めたり、医療従事者に提案や質問をすることが増えてきています。

そのため、患者さんの持つ価値観も尊重しながら、患者さんと医療従事者の間で「話し合う医療」が重要になってきました。

 

つまり、患者さんが自分の考えや希望を医療従事者に伝え、医療従事者も患者さんにわかりやすく説明することで、お互いが理解を深めることが大切だということです。

時間的制約を解消する

医療現場において、診療のスピードアップを図ることで、医師の時間的制約を解消することもまた、重要です。

ただし、単に診察や検査の時間を短縮するだけでは、かえって患者さんの満足度を下げてしまう可能性があります。

では、どのように診療全体のスピードアップを実現すればよいのでしょうか。ポイントは「つなぎ」の部分、特に「問診」や「予診」の工夫にあります。

 

問診や予診を事前におこなうことで、診療のスムーズな流れを実現できます。

事前に患者さんの症状や既往歴などの情報を把握できるため、診察をスムーズに進めることができるからです。

つまり、「診察や検査の時間を短縮する」のではなく、「診察前の情報収集を効率化する」ことが、診療全体のスピードアップにつながるのです。

 

このように、診療のスピードアップには、問診や予診の工夫が重要な役割を果たします。診療の各工程を無理に短縮するのではなく、これらの「つなぎ」の部分に注目し、情報収集の質と効率を高めることが、診察のスピードアップにつながるのです。

PHRをコミュニケーションツールとして活用しよう

上述したコミュニケーションの課題を克服するポイント全てに通じる方法として、PHRの導入が効果的です。

PHRを導入することで、以下のようなメリットが期待できます。

<PHRを導入するメリット>
 
・日々の血圧や体重、血糖データを知ることができる
・栄養指導などにも活用できる
・診療時間の短縮につながる

 

PHRについての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。

参考記事:PHRとは?選び方のポイントを徹底解説!

日々の血圧や体重、血糖データを知ることができる

PHR(Personal Health Record)は、個人の健康・医療に関する情報を一元的に統合管理したデータです。

PHRで患者さんの日々の血糖値や血圧、体重などの家庭測定の記録や食事や運動などの生活習慣をデータとして確認できるため、認識の齟齬を防ぐことができます。

栄養指導などにも活用できる

PHRアプリによっては、血糖データや血圧データだけでなく、日々の食事の写真なども医療機関側と共有できるため、栄養指導にも活用できます。

患者さん自身が日頃の食生活を可視化でき、医療スタッフとも共有することができます。

この情報は、栄養指導や食事療法の立案において非常に有効活用できるのです。

 

例えば、糖尿病の患者さんの場合、食事内容の詳細な把握は治療上重要です。従来は、患者さんの記録や記憶に頼らざるを得ませんでしたが、写真データを共有することで、より正確な情報が得られるようになります。医師や管理栄養士が、その写真をもとに栄養指導をおこなうことで、きめ細やかな食事療法につなげることができるのです。

診療時間の短縮につながる

PHRアプリには患者さん自身が日々の健康データを記録・蓄積する機能があります。これらのデータは医療機関側と共有できるため、医療従事者が事前にデータを把握できるようになり、患者さんとのコミュニケーションも円滑に進むでしょう。

 

例えば、血糖値や血圧の推移を可視化したグラフを見れば、患者さんの病状の概要をすぐに把握できます。また、食事の写真データがあれば、食事指導をより効果的に行えます。

このように、PHRを活用することで、診察時の情報収集がスムーズになり、診療時間の短縮につながるのです。

 

さらに、PHRアプリには過去の検査結果や処方履歴なども蓄積されているため、医師や医療スタッフは患者さんの病歴を瞬時に確認できます。これにより、検査の重複を回避したり、適切な治療方針の立案が容易になります。

このように、PHRアプリの活用は、医療現場における情報共有の改善に寄与し、結果として診療時間の短縮に貢献できるのです。

診療前にデータを共有できることで、患者さんとの会話に割く時間を増やすこともできるはずです。

実際にPHRを導入することで、患者さんとのコミュニケーションを円滑におこなう事例を紹介します。

参考記事:

デジタル活用で患者さんの体験価値向上とクリニックの経営効率向上を実現~メッセージ機能活用のコツとは~うるうクリニック港南台 院長 長田潤先生

効率的なフォローアップを実現~少ないスタッフでやりくりしているクリニックの取り組みとは~ましたに内科クリニック 院長 増谷剛先生

まとめ

今回は医療機関における患者さんとのコミュニケーションのポイントについて解説しました。

患者さんとのコミュニケーションでは、医師と患者さんとの情報の非対称性や治療に対する価値観の違い、診療時間の制約の3つの課題が問題となります。

患者さんにわかりやすく説明し、治療に対する患者さんの希望を確認することでこれらの課題を克服していきましょう。

また、診療時間や待ち時間を短縮するために事前に患者さんに関する情報を取得しておくと効果的です。

PHRを活用することで、患者さんの健康情報を共有することができ、診療時間の短縮につなげることができるのです。

参考文献:

厚生労働省「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』ホームページ医療者と患者のコミュニケーション:ヘルスリテラシーを手がかりにして

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