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これだけは知っておきたい医療広告ガイドラインの注意事項とは

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執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。

*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください。

 

「いよいよクリニックを開業するんだけど、医療広告は難しいと聞いたことがある」

「この広告はガイドラインに引っかかるのだろうか」

クリニック開業を視野に入れ、クリニックのPRをしたいと考えた時、注意したいのが医療広告ガイドラインです。

具体的な禁止事項が、よくわからないという先生も多いでしょう。

そこで今回は医療広告ガイドラインについて解説します。

医療広告ガイドラインの概要と対象媒体、代表的な禁止事項をわかりやすく説明しますので、自身のクリニックのPRなどを考えている方は、ぜひ参考にしてください。

医療広告ガイドラインの概要

​​医療広告ガイドラインは、医療機関が行う広告に関する規制を明確に定めた指針です。このガイドラインは、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」として定義されています。

医療広告ガイドラインは、医療分野における広告内容の透明性を確保し、患者さんが正確な情報に基づいて受診を判断できる環境を整えることを目的としています。

医療機関が提供する情報は、患者さんの健康に大きな影響を与えるため、遵守が求められているのです。

医療広告ガイドラインとは

そもそも、医療広告は1948(昭和23)年に公布された医療法によってのみ制限されていました。

この医療法の規制対象は紙ベースの広告媒体で、ホームページなどのWeb媒体に関してはこれまで明確な規制がありませんでした。

しかしながら、美容医療(特に美容整形)に関するホームページなどでの広告トラブルが多発したため、医療広告のガイドラインが見直されることになったのです。

 

ホームページなどのWeb媒体においても他の広告媒体と同様に、誇大広告や虚偽広告が禁止され、違反した場合は罰則が科されるようになりました。

医療広告ガイドラインの対象媒体は?

2024(令和6)年9月13日に改正された「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」によれば、規制対象となる医療広告ガイドラインの対象媒体は以下の通りです。

 

・チラシ、パンフレットその他これらに類似する物によるもの
(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)

・ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、
ネオンサイン、アドバルーンその他これらに類似する物によるもの

・新聞、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備による放送を含む。)、
映写又は電光によるもの

・情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等)

・不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ、または口頭で行われる演述によるもの

 

これらの媒体は、広告の意思があるかどうかや、費用を書けたかどうかに関わらず、全て規制の対象となりますので注意しましょう。

医療広告ガイドラインの代表的な禁止事項とは

医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」では、医療機関が行う広告に関して、患者さんに誤解を与えないよう厳格な規制を設けています。禁止される広告には以下のような種類があります。

・虚偽広告

・比較優良広告

・誇大広告

・公序良俗に反する内容の広告

・広告可能事項以外の広告

・患者等の主観に基づく体験談

・患者等を誤認させるおそれがある写真等          

・その他禁止事項

それぞれの禁止事項に関して解説します。

虚偽広告

虚偽広告とは、広告内容が事実と完全に異なり、患者さんに誤解を与えるものを指します。

例えば、「絶対安全な手術」や、「厚生労働省によって認可された専門医」(専門医に認定する母体は、厚生労働省ではありません)

また、加工された術前・術後の写真や、根拠のない満足度を示すものも(調査方法などの具体的な根拠となるデータがないなど)虚偽広告に該当します。

比較優良広告

他の医療機関と比較し、自らの医療機関が優れていると示す広告は禁止されています。

例えば、「日本一」や「最高」などの最上級の表現は、誤解を招く可能性があるため広告ガイドラインの規制対象となります。

また、著名人との関係を強調することも、比較優良広告と判断される可能性があるためおすすめできません。

誇大広告

誇大広告とは、事実を過度に強調し、患者さんに誤認を与えるものです。

例えば、「知事の許可を得た特別な病院」と謳うこと(そもそも知事の許可がないと医療機関は開設できません)や、科学的根拠の乏しいリスクを強調し、患者さんの判断を乱すような広告も規制対象です。

また、実態と異なる人数や費用を表示することも誇大広告に含まれます。

公序良俗に反する広告

わいせつまたは残虐な内容、差別を助長する表現を含む広告は公序良俗に反し、許可されません。

広告可能事項以外の広告

法律で認められていない項目に関する広告は、患者さんの治療選択を誤らせる可能性があるため例外を除き禁止されています。

これは未承認医薬品に基づく治療や、患者体験談に基づく広告を含みます。

患者体験談の広告

患者さん自身やご家族の体験談に基づく広告は、患者さんの判断において誤解を招く可能性があり、禁止されています。

ただし、個人運営のウェブサイトやSNSでの体験談は広告に該当しません。

誤認の可能性がある写真

ビフォーアフター写真は、治療内容やリスク、費用についての詳細が記載されていない限り、誤解を招く恐れがあります。こうした場合、広告としての使用は認められません。

その他禁止事項

医療広告において品位を損ねる内容、また他法令と広告ガイドラインで禁止されている内容は認められません。

費用を強調し過ぎたり、医療とは無関係な情報で患者さんを誘引しようとする広告は控えるべきです。

 

医療機関は、これらのガイドラインを遵守し、患者さんが正しい判断をするために公平で正確な情報を提供することが求められます。

医療広告ガイドラインを遵守したPR活動をしよう

医療広告には厳しい規制があり、掲載できる情報は限定されているのが実情です。しかし、患者さんが適切な医療を選択しやすくするための例外規定として、医療広告ガイドラインでは「限定解除」制度を設けています。

この制度により、一定の条件を満たす広告は、規制の一部が緩和されるのです。ただし、限定解除が適用されるのは、「患者さんが自ら求めて入手する情報」に限られます。

この限定解除要件をうまく活用することで、クリニックのPR活動につなげることもできます。

医療広告ガイドラインの限定解除要件とは

医療広告ガイドラインにおける「限定解除」の具体的な要件は以下の4つです。

ただし、要件のうち3と4は、保険診療ではない「自由診療」に関する情報を提供する広告にのみ適用されます。

1.患者が自ら求める情報の提供

2.問い合わせ先の明示

3.自由診療の詳細情報提供

4.自由診療におけるリスクと副作用の説明       

それぞれの要件について解説します。

患者が自ら求める情報の提供

患者さんが自ら必要として探す医療に関する情報を提供するウェブサイトや、それに準ずる形であれば、患者さんが自らの意志で医療機関を探しているということになります。

つまり、情報が広告として見られない形であることが求められます。

問い合わせ先の明示

提供される情報の内容について、患者さんが容易に追加の質問や確認ができるように、問い合わせ先を明示する必要があります。これは、患者さんが情報の正確さを確認するための重要な手段となります。

自由診療の詳細情報提供

自由診療に関する広告では、通常必要とされる治療内容やその費用について詳しい情報を提供する必要があります。これにより、患者さんは自由診療に伴う具体的な経費をあらかじめ理解できます。

自由診療におけるリスクと副作用の説明

自由診療に関わる治療については、主なリスクや副作用に関する情報を患者さんに提供することが求められます。

これらの情報を提供することで、患者さんは治療を受ける際の潜在的なリスクを把握した上で意思決定が可能となるのです。

 

これらの要件を満たすことにより、医療広告の情報提供は規制の一部が解除され、患者さんにとって有益な情報をより自由に伝えることが可能となります。

厚生労働省が公開している「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第4版)」では、限定解除要件などを具体的な事例を踏まえ紹介しているので参考してみるとよいでしょう。

医療広告とはみなされない場合を知っておこう

医療機関が発行する媒体は広告性の有無に関わらず、医療広告ガイドラインの対象媒体となっています。

上記の限定解除要件を満たすことで、PR活動につなげることはできます。

ただし、広告を使って集患していると判断されてしまうと、その情報は患者さんが自ら探して得たものとはみなされません。

その結果、その広告は限定解除の対象から外れてしまいます。

 

限定解除要件に頼らずとも、以下のような事例では広告とみなされませんので、PR活動の一環として活用することもできます。

・医師又は歯科医師である旨、診療科名

・学術論文、学術発表等

・新聞や雑誌等での記事

・患者さんが自ら掲載する体験談、手記等

・院内掲示、院内で配布するパンフレット等     

・医療機関の職員募集に関する広告

それぞれの事例について解説します。

医師又は歯科医師である旨、診療科名

医師や歯科医師である旨や、診療科名又は当該診療に従事する医師が厚生労働大臣の許可を受けたものに関しては広告ガイドラインの規制にはなりません。

学術論文、学術発表など

学会や専門誌での学術論文や講演は、一般的に広告とはみなされません。これは通常、特定の医療機関の受診を促すものではないからです。

ただし、これらをダイレクトメールで多数に送るなどして、特定の医療機関への受診を増やす目的がある場合は、「誘引性」があると判断され、広告とみなされます。

新聞や雑誌の記事

新聞や雑誌の記事も通常は、広告には該当しません。ただし、費用を負担して記事を掲載し、患者さんを引き寄せようとする広告風の記事は、広告規制の対象となります。

患者の体験談や手記

個人が自分や家族の体験に基づいて、特定の病院を推薦する手記を作成して公表する場合は、広告とはみなされません。

ただし、病院から依頼を受けたり、金銭的な謝礼を受けている場合や、個人が病院の関係者である場合、医療機関のホームページに掲載する場合は広告に該当します。

院内掲示やパンフレット

院内での掲示や配布されるパンフレットは、通常すでに受診している患者さんに向けられたものであり、情報提供や広報とみなされるため、広告には含まれません。

医療機関の職員募集広告

職員募集を目的とした求人広告は、医療機関の受診を誘うものではないため、医療広告には該当しません。医院の名称や連絡先が記載されていても、その目的が受診誘引でない限り、広告の対象外となります。

まとめ

今回の記事では、医療広告ガイドラインについて解説しました。

クリニックを開業する上で集患目的でのPR活動は必須ですが、医療広告ガイドラインを遵守する必要があります。誇大広告や比較優良広告などの規制にかからないように配慮しましょう。

限定解除要件や、学会発表、新聞記事など、医療広告ガイドラインの規制対象外の事象をうまく使うことでクリニックのPRにつなげるようにしてください。

参考文献:

医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)|厚生労働省資料

医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第4版)|厚生労働省資料

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