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チーム医療で大切なこととは

執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。

*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください。

 

「チーム医療が大事なのはなんとなく分かるんだけど、どうやってチーム医療を実現すればいいんだろう」

「チーム医療で大切なことってなんなんだろう」

このように、チーム医療が必要であることはなんとなく分かっていても、実際どうやって実践していけばいいか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

 

そこで今回はチーム医療について深掘りします。特に、糖尿病などの慢性疾患の治療においては、医師だけでなく、看護師や管理栄養士、薬剤師などの医療従事者で結束していかなければなりません。

チーム医療の仕組みや、大切なことについて解説しますので、慢性疾患のチーム医療に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

チーム医療の概要

チーム医療とは、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士などの多職種が連携して患者さんを支える医療の形態です。

各医療従事者がその知識と技術を活かし、患者さんに最適なケアを提供することを目的としています。チームで連携して患者さんの治療を行うことで、患者さんの治療効果を上げるだけでなく、患者満足度を高めることができます。

チーム医療とは

チーム医療は、異なる専門分野の医療従事者が協力して患者さんの治療を行うアプローチです。

医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士などがチームを組み、それぞれの専門知識や技能を活かして総合的に患者さんをサポートします。

 

チーム医療の最大の利点は、複雑で多様な患者さんのニーズに対して、より包括的で効果的な治療を提供できることです。

各専門職が互いに意見を交換し合うことで、より正確な診断や治療計画が可能となり、結果的に患者さんの健康状態の改善を目指します。

さらに、チーム内のコミュニケーションが円滑で、相互に補完しあうことから、治療段階での人為的なミスを減らすことにつながるでしょう。患者さんにとっても、複数の視点からのサポートを受けることができるため、自分に合った治療やケアを受けやすくなります。

チーム医療を構成する職種

医療従事者の多職種連携によるチーム医療で、医療の質を高めることができることは分かりました。

ここからは、チーム医療における各職種の役割について解説していきます。

医師

医師は患者さんの診断から治療計画の策定、処方薬の決定などを行います。診断の際には、患者さんの病歴や症状、検査結果を総合的に評価します。

その後、必要な検査や治療を指示し、病状に応じて継続的に治療方針を見直すのです。

また、他の医療従事者との情報共有を通じて、患者さんに最適な治療結果を追求します。

看護師

看護師は、患者さんに対する直接的なケアを提供し、日常的な健康管理を行います。例えば、血圧、脈拍、体温などのバイタルサインの測定や、注射などの薬剤投与、患者さんの観察など、診察する医師のサポートが主な仕事です。

加えて、患者さんやその家族からの相談にのったり、精神的なサポートを行ったりします。患者さんの日常生活の中で感じる不安や疑問に対し、適切なアドバイスを提供します。

薬剤師

薬の専門家として、患者さんに対する薬剤治療の中心的役割を担っているのが薬剤師です。

医師の処方に基づいて調剤し、適正な服薬方法を指導します。

また、副作用や薬の相互作用を監視し、問題があれば医師と連携して対応策を講じます。医師の処方に疑問がある場合は、医師に疑義照会し、適切な投薬治療をサポートするのです。

薬の効果を最大限に引き出すため、患者さんに服薬指導を行います。

管理栄養士

管理栄養士の役割は、患者さんの栄養管理に特化し、その状態を評価した上で個々に合った栄養プランを提供することです。

特定の病状に応じた栄養制限やバランスの取れた食事計画を提案し、患者さんの健康促進や疾病管理をサポートします。

特に糖尿病などの慢性疾患では血糖マネジメントが重要視されることから、日々の食事に関する教育やアドバイスを行うことで血糖値の乱高下を防ぐことが期待されます。

理学療法士

理学療法士は、患者さんの身体機能の改善を目指し、個別に作成したリハビリテーションプログラムを提供します。

医師の策定する治療計画を円滑に進めることができるよう、筋力強化や関節可動域の改善、バランス訓練などを通じて、患者さんの運動機能を向上させることが目的です。

糖尿病では血糖値の過度の上昇を防ぐため適度な運動が必要であり、理学療法士の役割は重要です。

また、日常生活動作の訓練を支援し、患者さんの自立した生活をサポートします。改善が難しい場合でも、最大限の運動機能を維持するための支援を行います。

その他の職種

チーム医療には、他にも作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、臨床心理士、社会福祉士などの多様な職種が参加するのです。

作業療法士は、日常生活動作の改善や仕事復帰を支援し、言語聴覚士は、言語や嚥下機能の改善をサポートします。

精神保健福祉士や臨床心理士は、メンタルヘルスのケアを担当し、患者さんの心理的安定を促します。また、社会福祉士は、社会的な支援や施設の利用に関する相談を提供することが役割です。

 

これら多様な専門職が一つのチームとして連携することで、患者さんに対して包括的で質の高い医療とケアを提供することが可能になります。各専門職がその専門性を活かし、協力し合うことがチーム医療が成立するのです。

糖尿病のチーム医療で大切な6つのこと

糖尿病などの慢性疾患において、チーム医療で患者さんの治療を行うことがとても大切です。

患者さんを中心にした包括的なケアを提供することで、治療効果と患者満足度を高めることが狙いです。

チーム医療で特に大切な6つのこと.                                         

・多職種連携

・患者教育と啓発

・個別化された治療計画

・継続的なモニタリング

・円滑なコミュニケーション

・家族や地域社会のサポート

ここからは、この6つの大切なことについて解説します。

多職種連携

多職種連携とは、医療チームにおけるさまざまな専門職が一体となって患者さんのケアを行うことを指します。

それぞれが個別に活動するのではなく、医師、看護師などの職種間で連携し、患者さんの身体的、精神的、社会的ニーズを包括的にサポートし、全体的な健康の向上を目指します。

患者教育と啓発

患者さんへの教育は、糖尿病管理の基盤です。患者さんが糖尿病について正しい知識を得ることで、日々の治療が行いやすくなるのです。

医師が診察時に指導するだけでなく、看護師や管理栄養士が食事面などの日々の生活でできる取り組みを指導します。

また、薬剤師は患者さんがきちんと服薬できているかどうかなどの確認を行った上で、糖尿病治療薬の意義を説明します。理学療法士は、運動面で血糖マネジメントの良好な維持をサポートするのです。

このように、患者さんが無理なく糖尿病の治療を継続できるように、糖尿病の治療だけでなく栄養面、運動面など日々の生活面もサポートしていきます。

個別化された治療計画

患者さんの健康状態や治療に対する考え方はさまざまです。そのため、治療計画は個々のニーズに応じてカスタマイズされるべきです。

同じような症状にみえても患者さんごとのライフスタイルによって治療計画は変わってくるでしょう。

医師が最も効果的だと思う治療法であっても、患者さんが納得しない限りは治療にたいするモチベーションも上がりません。

患者さんの希望や生活環境を尊重しつつ、その中で最も効果的で持続可能な治療手段を選びます。患者さんの生活の質を向上させつつ、合併症の予防と健康維持を実現するのです。

継続的なモニタリング

糖尿病の治療では、血糖値の定期的なチェックが欠かせません。患者さんの血糖値を定期的にチェックし、必要に応じて治療プランを調整することで、状態の悪化を未然に防ぐことができます。

さらに、合併症の早期発見と管理によって、患者さんの健康リスクを減らすこともできます。これらは、定期的な医療機関の受診と患者さんの血糖モニタリングによって支えられているのです。

円滑なコミュニケーション

治療の効果を最大限に引き出すためには、患者さんと医療チームとの間の円滑なコミュニケーションが重要です。

医療従事者は、患者さんの疑問や不安に耳を傾け、理解しやすい言葉で説明を行います。こうすることで患者さんは安心して治療に参加でき、信頼関係が構築されます。

患者さんが自己管理を続ける上で、大きな動機付けとなるでしょう。

また、医療従事者間のコミュニケーションも大切です。患者さんの治療に関して、医療従事者間で意思疎通がしっかりできていれば、効率的に治療を進められます。

家族や地域社会のサポート

患者さんの治療を支えるには、家族や地域社会の協力が重要です。家族が理解し支えてくれることで、患者さんの精神的な負担が軽減されます。地域資源を活用することも、患者の生活を支える大きな力となります。例えば、地域で開催されている健康教室や運動グループに参加することで、患者さんは社会的なつながりを保ちつつ健康維持を図ることができます。

健康教室などの地域活動に医療チームで参加することで、患者さんの治療への環境作りに活かすことができるのです。

 

これらの要素を組み合わせることで、糖尿病の管理はより包括的で効果的なものになります。患者さんの生活の質を向上させることが、すべての医療従事者にとっての目標といえるでしょう。

チーム医療ではPHRが活用できる

チーム医療において、職種間の円滑なコミュニケーションや、継続的なモニタリングにPHRを活用することができます。

 

チーム全員で同じデータを見ながら一貫したケアができますし、患者さんが希望すれば日々の食事写真も共有することができるため、栄養指導に活かすことも可能です。

実際に糖尿病の治療におけるチーム医療でPHRを活用している事例を紹介します。

参考事例:チーム医療による糖尿病療養支援に活用しています〜岡山済生会総合病院 内科・糖尿病センター副センター長 利根淳仁先生

まとめ

今回はチーム医療で大切なことについて解説してきました。多職種で連携し、コミュニケーションをとりながらそれぞれの職能を活かすことで、患者さんを包括的にサポートできます。

特に糖尿病などの慢性疾患では、各職種で連携して治療にあたることで、治療効果だけでなく、患者さんのモチベーションや満足度を上げることにもつながるのです。

PHRを活用することで、職種間のコミュニケーションや、継続的なモニタリングを円滑に進めることができます。

参考文献

チーム医療の推進について(チーム医療の推進に関する検討会 報告書)
厚生労働省がまとめたチーム医療に関する資料です。

令和6年度診療報酬改定に向けた基本認識、基本的視点、具体的方向性について(厚生労働省資料)
タスク・シェアリング/タスク・シフティングやチーム医療の推進等に言及しています。

 

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