開業医の年収をあげるポイントとは?〜儲からない開業医の特徴も徹底解説〜
執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。
*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください。
「クリニック開業すると、年収ってどれくらいになるのかな」
「失敗はしたくない・・・。儲かっていない開業医は何がダメなのかを知っておきたい」
将来的にクリニック開業を考えている、あるいは開業の準備をしている先生も多いのではないでしょうか。
しかし、診療科によって大小はありますが、借金を背負う場合がほとんどなので、開業には大きな不安がつきまといます。
そこで今回は、開業医の年収について深掘りします。
儲からない開業医の共通点も紹介しますので、開業を視野に入れている先生はぜひ参考にして下さい。
目次
開業医の年収相場は?
医師にとって大きなゴールの一つにクリニック開業があげられます。
ここでは、開業医の年収についてデータを用いて解説します。
ただし、開業場所や診療科によって大きく変動しますので、あくまでも目安としてお考え下さい。
開業医全体の平均年収は約2600万円
令和5年に実施された第24回医療経済実態調査の報告(厚生労働省)によれば、開業医の平均年収は26,313,306円となっています。
同調査での勤務医の平均年収は11,135,115円であることを考えると、開業医は大きな魅力といえるでしょう。
診療科別の開業医の平均年収は?
開業医の年収は診療科によって変わります。第24回医療経済実態調査の報告(厚生労働省)では、診療科別の開業医の年収は記載されていませんが、診療所や医院の損益差額から開業医の年収は推察することが可能です。
ただし、損益差額には開業医の年収だけでなく、内部留保なども含まれるため、目安としてお考えください。
第24回医療経済実態調査の報告(厚生労働省)をもとに、個人診療所の主たる診療科の1件当たりの損益差額を表にしてみました。データは令和4年度のデータとなります。
※第24回医療経済実態調査の報告(厚生労働省)をもとにシンクヘルス株式会社にて作成
どの診療科でも、開業して軌道に乗ると高収益が得られることがわかります。
失敗する開業医の特徴とは
クリニックを開業したら、必ず成功するわけではありません。
前述したデータはあくまでも平均値であり、残念ながら儲からない場合もあるのです。
ここからは、開業して失敗してしまう先生の共通点について解説します。
事前の診療圏調査が不十分
開業するにあたって、開業予定地や候補地での診療圏調査をしっかり行う必要があります。
診療圏調査とは、開業候補地周辺の状況を把握し、どの程度の患者数が見込めるかを予測する調査のことです。
診療圏調査が不十分な場合、地域特性や患者属性の把握ができず、性格な患者のニーズに対応できません。
診療圏調査で一般的な手法は、候補地を中心とした一定距離の同心円を商圏として設定し、その中で来院が見込める患者数を予測するという方法です。
診療圏の現状を正確に把握し、今後の需要見通しを立てることが重要です。
例えば、周辺住民の年齢層が高いところに小児科を開業しても、そもそも対象となる子どもがほとんどいないので、患者数は伸び悩むでしょう。
また近辺に同じ診療科のクリニックがある場合も、対象患者を取り合う形になってしまいますので、避けるのが定石です。
固定費用が高すぎる
クリニック開業における最大の懸念点は高額な固定費用です。
固定費用が高額な場合、開業後の経営を非常に厳しくさせる要因になっています。
クリニック開業にかかる主な固定費用には以下のようなものがあります。
・診療所の土地や建物の取得費用や賃料
・診療所の内装、電気・水道設備の工事費
・防災設備、バリアフリー化等への対応
・診察台、器具棚、待合室の家具など
・CT、MRI、超音波診断装置など高額な医療機器
・医師、看護師、事務スタッフなどの人件費
・保険料、リース料、アフターサービス費用など
都心部など地価、賃料が高いところでの開業は土地建物取得代が高いですし、賃貸契約にしても毎月の賃料が高額になり、医院経営を圧迫します。
また、CTやMRIなどの医療機器はかなり高額になります。
その他にも医院の内装や人件費などの固定費用に関しても、十分に精査する必要があります。
顧客満足度が低く、リピート率が上がらない
クリニックを開業した当初は順調に伸びていた患者数も、やがて伸び悩み患者数が頭打ちになり、リピート率が上がらないという悩みを抱える先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
患者さんがクリニックでの診察に満足していないことが原因と考えられます。
クリニックを店舗、患者さんを顧客と考えると、診察は店舗が提供するサービスといえます。
顧客満足度が低ければ、当然リピート率も上がりません。
クリニックにおける顧客満足度が上がらない原因は以下の理由が考えられます。
・待ち時間が長い、診療時間が短い
・医師や看護師の対応が冷たい、説明が不足している
・待合室の快適性が低い、プライバシーが確保されていない
・情報提供・コミュニケーションの不足
・疾患や治療方針についての説明が不十分
・患者の意見や要望が汲み取られていない
・他の医療機関や地域住民との連携が弱い
・地域のニーズに十分対応できていない
・人的・物的リソースの配分が最適ではない
・患者サービスの改善に対する意識が低い
まずは、医療もサービスと考え、質の良いサービスを提供するという意識を徹底することが必要になります。
開業を成功させるために必要なこととは
クリニックの開業に失敗してしまう共通点に関して紹介してきました。
これらの失敗点を補うことで、クリニック経営は安定化できるはずです。
ここからは、開業を成功させるために必要なことについて解説します。
事前調査、準備はしっかり行う
診療圏調査などの事前調査、準備を綿密に行うことがクリニック開業を成功させる上で重要になります。
事前調査、準備を充実させるためのポイントは以下のようなことが考えられます。
– 人口動態、年齢構成、世帯構成などの基礎データを把握する
– 地域の社会経済的特性や将来の動向も分析する
2.競合医療機関の把握
– 同じ診療科目を持つ近隣の医療機関を網羅的に調査する
– 競合の医療サービス内容、診療実績、患者動向などを分析する
3.潜在的患者ニーズの調査
– 地域住民へのアンケート調査やヒアリングを実施する
– 未充足の医療需要や要望を把握する
4.患者動向の分析
– 近隣の同診療科の患者データ(受診状況、地域分布など)を詳細に分析する
– 地域内での患者流出入の実態を把握する
5.医療資源の把握
– 地域の医療提供体制(病床数、医療従事者数など)を調査する
– 地域の医療ニーズと供給能力のバランスを確認する
6.交通アクセスの検討
– 対象エリアの交通手段や所要時間を分析する
– 患者の利便性を踏まえた適切な立地を検討する
これらの取り組みを通して、開業する際の自分達の強みや弱み、患者ニーズの特性を明確にすることができます。
その上で、医療サービスの差別化や新規患者の獲得などの戦略を立案することが可能になります。
診療圏調査を定期的に行い、継続的な改善につなげていくことが重要です。
診療圏調査を自分で行うことは難しいと思いますが、医療コンサルタント、医薬品卸会社の開業支援チーム、開業医を誘致したい調剤薬局などにお願いするという方法があります。
ただし、診療圏調査は地図上でのデータから算出されるもので、必ずしも正確な患者数を反映するものではありません。
実際に候補地に足を運び、交通アクセスや周辺施設の立地状況を確認しましょう。
可能であれば地域住民へのヒアリングも行いたいところです。
必要経費は十分に精査する
クリニックを開業する上で、必要経費を十分に精査し、固定費用を削減することが成功への第一歩です。
固定費用を抑制するために以下のような対策が考えられます。
・物件探しの工夫(中古物件、郊外立地など)
・設備投資の最小化(中古機器の活用、レンタルなど)
・人員配置の最適化(パートタイマー活用など)
・事業計画の精緻化と収支管理の強化
このように、固定費用の抑制に向けて総合的な対策を検討することが重要です。状況に合わせて、最適な方法を見出していくことが鍵となります。
顧客満足度を高める
クリニックの患者満足度を高める方法としては以下のようなことが考えられます。
・待ち時間の短縮
・説明の際は分かりやすい言葉遣いをすること
・患者の意見や要望を聞くこと
・サービス品質の向上
・受付や診療の流れの改善
・スタッフの接遇力向上
・笑顔と挨拶の励行
・丁寧な応対
・患者目線での対応
・患者ニーズの把握
・医療情報の提供
・フォローアップの徹底
いずれも患者さんを顧客と考え、医療というサービスの品質を高める努力が必要といえます。
これらの取り組みを組み合わせて実践することで、患者の満足度を効果的に高められるでしょう。
シンクヘルスは顧客満足度を高めるツールになる
クリニックの経営を安定化させるためには、顧客満足度を高め、患者さんのリピート率をあげなくてはなりません。
患者さんの待ち時間を短くしたり、受付や接遇の流れをスムーズにすることは患者さんの満足度を高める施策となります。
その施策の一つとして、有用なのがPHRの活用です。
PHR(Personal Health Record、生涯型電子カルテ)は、個人の健康・医療に関する情報を一元的に統合管理したデータです。スマートフォンやタブレット端末で、PHRを確認することができます。
利用するPHRによっては血糖測定器や血圧計のデータを同期させることも可能です。
PHRサービスの中には、患者さんがアプリで記録したデータを医療機関のPCやタブレット端末などにデータ連携できるクラウドサービスがあります。
このようなサービスをクリニックでも導入することで、患者さんと医療機関との間でデータ共有ができます。
診察前や診察時に、血糖値や血圧などの記録を確認することで、聞き取り時間を削減し、診療時間を短縮できます。
また、栄養指導や療養指導時に食事写真を含めた食事記録や運動記録などを見ながらひとりひとりに合わせたきめ細やかな医療サービスの提供することもできます。
患者さんのPHRアプリと医療機関側のPHRサービスとでメッセージなどによる双方向のコミュニケーションも可能となり、効果的な治療や栄養指導が期待できます。
弊社が運用するPHR「シンクヘルス」は、血糖値、血圧、食事、運動、服薬の記録が全て管理できるため、診療時のデータ確認や遠隔診療、栄養指導等もワンストップで行えます。
また、血糖自己測定器との連携数が業界最多である上、様々な血圧計や体重計、そしてインスリンコネクテッドデバイスとデータを同期できます。患者さんが家庭で血糖値や血圧などを測定しただけで、自動でアプリにデータが反映されるため、記録の手間を軽減できます。
アプリではCGMのデータも同期できます。アプリ上で、血糖変動と食事や運動などの関係が見える化されるため、患者さんの行動変容をサポートします。
※医療機関向け「シンクヘルスプラットフォーム」ではCGMデータは閲覧できません。
シンクヘルスのCGM連携機能に関しては以下の記事を参考にして下さい。
参考記事:シンクヘルスCGM連携機能の紹介
患者さんの顧客満足度を高める一助となるのではないでしょうか。
実際にシンクヘルスを導入することで、患者さんの治療に役立てている事例を紹介します。
参考記事:デジタル活用で患者さんの体験価値向上とクリニックの経営効率向上を実現~メッセージ機能活用のコツとは~ うるうクリニック港南台 院長 長田潤先生
まとめ
今回は開業医の年収を上げるポイントについて解説してきました。
開業医は事前の調査や準備、必要経費の精査などが大切です。
その中でも、顧客満足度を高めて患者さんのリピート率を上げることは医院の安定した経営に繋がります。
PHRを活用することで、診療時間の短縮や患者さんの顧客満足度を高めることができます。
患者さんのリピート率を上げたい先生は、ぜひPHRの導入を検討してください。
参考文献:
第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告(厚生労働省資料)