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クリニック経営を成功させるポイントとは

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執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。
*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください。

「クリニック経営を軌道に乗せるにはどうしたらよいのだろう」
「医療法人化は絶対にするべきなのかな」

このように、クリニックを開業した後も、経営の悩みは尽きません。
とはいえ、目の前の患者さんへの対応に忙しく、クリニック経営を深く考えることもできないのではないでしょうか。

 
そこで、今回はクリニック経営を成功させるポイントを解説します。
医療法人化についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

クリニック経営を成功させるポイント

クリニック経営を成功させる上で、意識しておきたいポイントは以下の通りです。

 

・経営理念を明確にする
・地域のニーズに合わせた医療を提供する
・患者さんの信頼を得る
・経費の選択と集中を明確にする
・スタッフが働きやすい環境を作る
・独自性を出す
・IT化を進める

 

これらのポイントについてより具体的に説明していきましょう。

経営理念を明確にする

クリニック経営を成功させるには「経営理念」を明確に定めることが重要です。

経営理念とは、クリニックを運営する上での使命、信念、目的などを明文化したものです。

クリニックには、それぞれ医業の方針や患者さんへの思い、信念、地域医療貢献への使命感などさまざまな方向性の違いがあります。

また、理念を明確にすることは、スタッフへの指針にもなりえます。

クリニックの方向性を定めることで、スタッフはどのような意識で仕事をし、院長をサポートすべきかが明確になります。

しっかりと指針が定まっていないと、スタッフが自信を持って働くことができず、患者さんに適切な医療を提供できなくなる可能性があるのです。

 

スタッフに迷いがあると、患者さんの満足度や安心感を得られることはできません。患者さんのリピート率が低下し、集患数の低下に繋がってしまいます。

このようなことにならないよう、経営理念はしっかりと定める必要があります。

地域のニーズに合わせた医療を提供する

経営理念が定まっていても、その理念が患者さんに刺さらなければ意味がありません。

地域の住民のニーズを分析し、ニーズに合致した医療サービスを提供することが集患につながります。

 

例えば、患者さんの年齢層が高齢化し、一人で来院するのが難しい地域であれば、送迎サービスや医師による往診なども効果的でしょう。

オフィス街にあるクリニックなどでは、残業後に来るサラリーマンをターゲットとして、あえて開院時間を夜まで延長するという施策もよいでしょう。

このように、地域の特性を活かし、患者さんのニーズに合わせた戦略を策定することも必要です。

患者さんの信頼を得る

クリニック経営を成功させるには、集患だけでは不十分です。

来院してくれた患者さんのリピート率を高めることが大切ではないでしょうか。

 

医師による丁寧な診察はもちろん、受付スタッフの丁寧な対応などを徹底することによって、患者さんの信頼を得て、満足度を高めることが重要です。

経費の選択と集中を明確にする

クリニックを運営する上で、コストパフォーマンスはしっかりと検討する必要があります。

治療上必要な医療機器はある程度の出費は必要ですが、削減できる経費をおさえることで運営経費の適正化を図りましょう。

 

例えば、集患対策のPR費用は常に費用対効果を確認しましょう。不要なPR施策は廃止します。またスタッフの配置見直しなどで人件費の削減も検討しましょう。

ただし、過度な経費削減はスタッフのモチベーションの低下や、医療サービスの質の低下を招きます。患者満足度も低下する恐れがありますので注意しましょう。

スタッフが働きやすい環境を作る

クリニック経営を成功させるためには、スタッフが定着しやすいクリニックを目指すことが大切です。

定着率を上げるためには、有給休暇取得率の向上、長期休暇制度の導入、残業時間の削減など、労働環境を整えることが重要です。

 

人材が定着しないクリニックは、常に採用活動や人材教育を行わなければならず、コストがかさんでしまいます。

また、常に練度の低いスタッフが患者さんの対応にあたるため、患者満足度も上がらず、クリニックの経営が安定しないでしょう。

スタッフをクリニックの一員として尊重し、一人ひとりに気を配るようにしてください。

場合によっては個人面談の場を設けるなどの機会を設けることで、不満点や改善点を吸い上げるようにするとよいでしょう。

独自性を出す

経営の安定したクリニックには、そのクリニックにしかない「独自性」があります。

例えば、「お腹の痛みであれば、〇〇クリニック」というような明確な「独自性」を打ち出しアピールすることで、競合するクリニックと差別化を図ることができるはずです。

 

上記のように、患者さんの心に残るキャッチコピーを打ち出すのも一つの方法ですし、「駅から一番近いクリニック」や「日曜日も開院」など利便性や快適性に訴えることもできるでしょう。

「競合するクリニックがあまり打ち出しておらず、かつ自らの強みはなにか?」を考えることで、独自性を見つけることができるはずです。

IT化を進める

クリニックのIT化を進めることも、患者満足度を高める方法の一つです。

受付、会計の機械化、電子カルテの導入で患者さんの待ち時間、診察時間を短くしたり、受付や接遇の流れをスムーズにすることができるのです。

また、PHR(Personal Health Record、生涯型電子カルテ)を導入することで、患者さんの健康・医療に関する情報をスマートフォンやタブレット端末で確認することができます。

PHRを使用すれば患者さんがアプリで記録したデータを医療機関のPCやタブレット端末などにデータ連携できます。

 

このようなサービスをクリニックでも導入することで、患者さんと医療機関との間でデータ共有ができるのです。

診察時だけでなく、栄養指導時に食事の写真を含めた食事記録や運動の記録などを参照しながら、患者さん一人ひとりに合わせたきめ細やかな医療サービスの提供することもできるでしょう。

PHRを活用したクリニックの運営についてはこちらの記事をご覧ください。

参考記事:デジタル活用で患者さんの体験価値向上とクリニックの経営効率向上を実現~メッセージ機能活用のコツとは~ うるうクリニック港南台 院長 長田潤先生

医療法人化のメリットとデメリットとは?

クリニック経営が安定し、今後の展開を見据えた時に、医療法人化という施策があげられます。

ここからは、医療法人について解説し、メリットとデメリットを考察してみましょう。

医療法人とは

医療法人化とは、医療法で定められた手続きに従い、都道府県知事の許可を得て、病院の事業主を「個人」から「法人」に変更することをいいます。

 

個人病院が医療法人に変わることで、節税できたり、診療所・病院以外の関連施設を開設できるなど、事業拡大する上では必要な手続きと考えることができます。

医療法人化のメリット

医療法人化すると、以下のようなメリットがあります。

 

・節税効果が高い
・グループや医院以外の事業所も設立できる
・社会的な信用性が向上する
・将来への備えがしやすくなる

 

医療法人化でもたらされるメリットは、主に経済面です。 節税やだけでなく、老人介護施設などの多角経営などもできるようになります。

節税効果が高い

医療法人化での最大のメリットは節税といえるでしょう。

個人事業医院の場合、売上から固定費を引いた医院の収入は個人事業所得とみなされます。

個人事業への所得税率は以下の通りになります。

表:国税庁のHPを元に、シンクヘルス株式会社で作成

 

日本は累進課税国家で、所得金額が高くなればなるほど所得税率も上昇します。

所得税以外に住民税も、課税所得に対して10%かかります。

 

1,800万円以上の所得で税率50%、4,000万円以上なら税率55%となり所得の半分は税金として支払わねばなりません。

医療法人化すると、医院の収入は医療法人の事業所得とみなされます。

法人税は以下のように計算されます。

表:国税庁のHPを元に、シンクヘルス株式会社で作成

 

このように、適用される税率が大幅に変わってくるため、医療法人化することで節税効果が高くなることがわかります。

また、クリニック開業時に導入した医療機器は開業6年間は償却が認められていますが、7年目以降は減価償却費として計上することは認められなくなります。

開業7年目以降は、課税対象額も増加するため医療法人化に踏み切る一つのタイミングとなるでしょう。

グループや医院以外の事業所も設立できる

医療法人化することで、二つ目の診療所や分院、介護老人保健施設などの介護事業所、看護学校、医療研究所などの他の事業所を設立できるようになります。

 

医療法人化して、いろいろな事業所を設立し多角経営を行うことで、売上の増加や患者数の安定した増加が見込めるようになるでしょう。

社会的な信用性が向上する

医療法人化することで、個人事業主の時よりも社会的信用が高まります。

その結果、銀行からの融資が受けやすくなり、さらなる事業拡大も見込めます。

個人病院時代よりも社会的認知度も高まり、優秀な人材を集めやすくなるでしょう。

将来への備えがしやすくなる

医療法人化すると、月々の給与にあたる役員報酬だけでなく、退職金も制度化することができます。

例えば、医療法人化で自身の最終の月額役員報酬が200万円だったとし、役員としての在任期間が25年だった場合、退職慰労金(功績倍率3倍とする)と、特別慰労金は以下のようになります。

・退職慰労金 200万円(最終月額役員報酬)×25年×3(功績倍率)=1億5000万円
・特別功労金 4000万円程度(退職慰労金の30%を超えない範囲で設定可能)

退職金は一般的な給与所得よりも税率が優遇されるため、将来の備えにすることもできるでしょう。

また退職金を支払う法人側も経費として計上できるため、さらなる節税効果が見込めます。 さらに、医療法人化すると、自らが引退する場合、理事長の変更のみで事業承継をすることができます。

 

これに対し、個人病院を経営する開業医の場合、事業承継する際は事業の規模やクリニックの収益に応じて、莫大な相続税や贈与税が課されます。

将来的にクリニックを子供に後継させる予定がある先生は、医療法人化を視野に入れておきましょう。 医療法人について詳しく知りたい方は、厚生労働省のHPを参考にしてください。

参考記事:厚生労働省HP「医療法人・医業経営のホームページ」

医療法人化のデメリット

医療法人化のメリットは多いですが、もちろんデメリットもあります。

・手続きが煩雑
・社会保険への加入義務      

 

医療法人化のデメリットは、手続きが煩雑ということです。 法人化の時だけでなく、その後も定期的に煩雑な手続きをこなしていく必要があります。

手続きが煩雑

医療法人化のデメリットかつ最大の障壁は必要な手続きが多く、複雑だということです。

必要書類を関係各所に提出するだけでなく、医療法人化説明会への参加や法人定款の作成、自治体による面談や保健所の実地審査など多くの事務手続きが日常業務に加えて発生します。  

 

さらに、法務局での法人登記手続きや、保健所への提出書類作成などもあります。

医療法人化に興味はあるものの、手続きの煩雑さに断念している開業医の先生も多いのはないでしょうか。

 

医療法人化を達成した後も、煩雑な手続きは終わりません。

法人化することで自治体による監督も強化されるため、以下のような手続きが必要です。

 

・毎年決算終了後3ヶ月以内に事業報告書など必要書類を監督自治体に提出する
・役員変更等、役員一覧を2年ごとに法務局に提出する
・事業報告書や監査報告書の閲覧請求があればその都度対応する

 

このように、医療法人化は多くのメリットがあるものの、法人化する際だけでなく、法人になった後も煩雑な手続きが必要になります。

社会保険への加入義務

医療法人化すると、社会保険に加入させる義務が生じます。

社会保険には、健康保険、介護保険、厚生年金保険、労災保険 、雇用保険があり、これら全ての社会保険料の掛け金は給与の30%で、その半分を法人が負担しなければなりません。

 

医療法人としてはスタッフの社会保険料の負担が増えることになります。

ただし、節税効果などのメリットを考えれば、社会保険料の負担が増えたとしても大きなデメリットにはならないでしょう。

まとめ

クリニック経営を成功させるためには、経営理念を明確にしなければなりません。

その上で、地域のニーズに合わせ患者満足度を高めていく必要があります。

スタッフの働きやすい環境を整え、PHR導入などのIT化を進めることで患者さんのリピート率を高めていくとよいでしょう。

 

クリニックの収益が大きくなれば、次は医療法人化を考えましょう。節税面や事業展開などで医療法人化はクリニックに大きなメリットをもたらします。

参考文献

厚生労働省HP「医療法人・医業経営のホームページ」

国税庁HP「所得税の税率」

国税庁HP「法人税の税率」

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