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クリニックの開業資金はどのくらい必要?調達方法についても解説!

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執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。

*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください。

「クリニックを開業するには資金はどれくらい必要なんだろう」

「自己資金だけでは無理だし、調達する方法はあるのかな」

このように、クリニック開業を考える上で、開業資金に悩んでいる先生も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、クリニックの開業資金について解説します。

自己資金はどのくらい必要なのか、どのように調達すれば良いのかなども説明しますので、開業を考えている先生はぜひ参考にしてください。

クリニック開業資金に必要な自己資金とは

クリニックの開業には、十分な資金計画が不可欠です。設備費や内装費、人件費など多岐にわたる初期投資が必要で、資金調達の方法を慎重に検討することが求められます。

自己資金だけでなく、融資や助成金の活用も視野に入れ、持続可能な経営を支える資金基盤を確立することが重要です。また、予期せぬ費用をカバーする予備資金の準備も忘れずに行い、安定したスタートを切るための資金管理を心がけましょう。

自己資金は1割は用意しておこう

クリニックを開業する際、総額の1割以上の自己資金を持っていることは非常に重要です。例えば、クリニックの開業に必要な総資金が8,000万円である場合、そのうち少なくとも800万円は自己資金として確保しておくことが推奨されます。この自己資金は、単に融資を受けるための基本条件を満たすだけでなく、開業計画の信頼性を高めることにもつながるでしょう。

自己資金の確保はまた、金融機関へのアピールにもなります。金融機関は自己資金の割合を重要視し、自己資金の割合が高いほど返済能力や経営手腕があると判断し、融資を提供する際の心強い根拠となります。

 

また、金融機関は自己資金を安定的な経営の指標と見なしています。自己資金がしっかり確保されていることは、経営者の資金管理能力や、事業を成功させるための事前準備がしっかりと行われていることを示します。金融機関にとっては、それがリスクの低い投資先であることを意味し、より高額な融資を行いやすい状況を作り出すのです。

このように、十分な自己資金を持つことは、クリニック開業の成功に向けた重要なステップであり、資金計画の基盤を固める要素として大きな役割を果たします。また、自己資金を持っていることで、開業当初の予期せぬ出費にも柔軟に対応できる安心材料となり、初期の経営安定にも寄与します。

運転資金に注意

クリニック開業後の運営を円滑に進めるためには、運転資金の確保が不可欠です。この運転資金とは、日常業務を継続するために必要な経費を指します。例えば、毎月の人件費、光熱費、医療材料費、賃料、雑費などです。これらの出費をカバーするためには、月間で500万円程度の運転資金を準備することが標準的と考えられます。

 

さらに、運転資金は開業初期に頻繁に発生する予期せぬ出費にも備える必要があるでしょう。したがって、3か月分の運転資金として1,500万円を初期費用に組み込み、予備の資金として用意しておくと安心です。この予備資金があることで、患者数が徐々に増えていき、クリニックが安定するまでの間の経営を支える保険的な役割を果たします。

 

新規患者の獲得や経営の安定までには、通常数か月から半年程度の時間を要することが多いです。したがって、この期間は運転資金がクリニックの生命線となります。収入が安定しない初期段階で運転資金を確保しておけば、診療サービスの質を維持しつつ、柔軟に応急的な対応が可能となり、事業の成功に向けた重要な土台となるのです。

クリニック開業に関する具体的な資金計画に関しての詳細は、地域や規模、診療科目によって大きく異なるため、一般的な数値を提供することは難しいです。しかし、多くの開業計画では以下のような構成が考えられます。一般的な範囲として以下のように考えることがありますが、これらはあくまで参考値であり、具体的な計画には地域の相場や個々の状況を考慮する必要があります。

クリニック開業資金の内訳

クリニックの開業資金の内訳としては、以下が一般的です。

・施設の取得費用:500万円〜1,000万円

・医療機器の購入費用:1,000万円〜3,000万円        

・施設の改装費用:500万円〜1,500万円

・人件費(初年度):1,000万円〜2,000万円

・広告宣伝費:100万円〜300万円

・その他(IT設備、備品など):200万円〜500万円

クリニック開業時に必要な資金は多岐にわたります。以下に、各費用項目について詳しく説明します。

施設の取得費用:500万円〜1,000万円

施設の取得費用には、土地の取得や賃貸契約の初期費用が含まれます。開業場所は立地条件が重要となり、適切な場所を選ぶためにはコストがかさむことがあります。駅近くや商業エリア内など、アクセスの良い立地を選ぶことで、患者の来院がしやすくなります。また賃貸でなく、購入する場合は更なる費用が必要です。

医療機器の購入費用:1,000万円〜3,000万円

医療機器の購入費用は診療科目によって異なります。例えば、内科では基本的な検査機器、整形外科ではX線機器やリハビリ用機器が必要となります。最新の医療機器は高額ですが、診断や治療の精度を高めるために必要な投資です。

施設の改装費用:500万円〜1,500万円

施設の改装費用は、クリニックの内装や設備の整備に使われます。快適で機能的な待合室、診察室、診療スペースの設計は、来院者の満足度に直結します。患者がリラックスできる環境を提供するためにも、改装には十分な予算を計上することが重要です。

人件費(初年度):1,000万円〜2,000万円

人件費は、医師、看護師、受付スタッフなど、クリニックを運営するために欠かせない人員の給与、社会保険などのコストです。クリニックの規模や診療内容に応じて必要なスタッフ数が異なるため、予算計画には注意が必要です。

広告宣伝費:100万円〜300万円

新規開業のクリニックの存在を地元に認知してもらうためには広告宣伝が必要です。広告宣伝費には、チラシの配布、新聞広告、インターネット広告、看板制作、ホームページの作成などが含まれます。効果を最大化するためには、ターゲットとなる患者層に合わせた宣伝活動が求められます。

その他(IT設備、備品など):200万円〜500万円

IT設備や備品の購入費用も必要です。電子カルテシステムや予約管理ソフト、パソコン、電話、コピー機などの事務設備、医療用の家具備品などが含まれます。これらの設備投資は、クリニックの運営効率を高めるために欠かせません。

 

これらの費用項目を踏まえ、適切な資金計画を立てましょう。円滑な開業と安定した経営が可能になります。各項目のバランスを見極めながら無駄を省き、必要な投資を行うことが求められます。

診療科別開業資金の目安

クリニックを開業する際に必要な資金は、選ぶ診療科によって大きく変わります。以下では、各診療科の特徴とそのために必要とされる一般的な開業資金の目安について詳しく説明します。土地や建物についてはあくまでも貸借を想定しており、購入資金については含まれておりませんのでご注意ください。

内科

一般内科

特徴:幅広い疾患に対応できる柔軟性が必要。

設備:血液検査機器、心電図、胸部レントゲン、電子カルテシステム。

資金目安:2,000万円〜3,500万円。この資金は医薬品の在庫管理や基本的な診断機器の導入に充てられます。

循環器内科

特徴:心臓や血管の詳細な観察と診断が求められます。

設備:心電図、心エコー、ストレステスト装置、血管撮影装置。

資金目安:3,000万円〜5,000万円。高度な診断機器の購入や、専門スタッフの採用費用を含みます。

内分泌・糖尿病内科

特徴:糖尿病や内分泌疾患の専門的な管理。

設備:血糖値測定器、インスリンポンプ、ホルモン検査装置。

資金目安:約2,500万円。栄養指導施設の設置費用も含めた予算。

消化器内科

特徴:消化器系疾患の早期発見と詳細な診断。

設備:上部消化管内視鏡、大腸内視鏡、超音波検査機器。

資金目安:最低3,000万円以上。この資金は高額な内視鏡機器と関連設備に充てられます。

呼吸器内科

特徴:呼吸器疾患の専門的な診断と治療。

設備:スパイロメトリー、胸部レントゲン、酸素療法機器。

資金目安:2,500万円〜3,000万円。機器導入とともに、設備のメンテナンス費用も考慮されます。

整形外科

特徴:骨、関節、筋肉の専門的な診断と治療。

設備:X線機器、MRI、リハビリ設備。

資金目安:4,000万円以上。高額な画像診断装置の導入とリハビリ施設への投資が含まれます。

脳神経内科・外科

特徴:脳や神経疾患に対する高度な診断と治療。

設備:CTスキャン、MRI、手術機器。

資金目安:5,000万〜8,000万円。画像診断機器や手術設備のコストが大きく、人的資源の確保も必要です。

泌尿器科

特徴:泌尿器系の診断と治療、男性特有の健康問題対応。

設備:超音波装置、尿流測定器、内視鏡。

資金目安:約3,000万円。診断装置や手術室設備の導入を含めた予算です。

精神科・心療内科

特徴:精神疾患や心身症に対する診療。

設備:カウンセリングルーム、医療用ソフトウェア。

資金目安:1,500万〜2,000万円。低コストながらも、プライバシーへの配慮が必要です。

小児科

特徴:子供の健康管理と予防接種。

設備:小児用診療台、予防接種設備。

資金目安:2,500万〜3,500万円。子供向けの安全な施設設計に予算を振り分けます。

皮膚科

特徴:皮膚疾患の診断と美容皮膚科。

設備:レーザー機器、ダーモスコピー。

資金目安:約3,000万円。また、美容治療機器の導入が費用に影響します。

耳鼻咽喉科

特徴:耳、鼻、のどの専門診療。

設備:聴力検査機器、内視鏡。

資金目安:2,500万〜3,000万円。設備の多様性が資金に影響します。

産科・婦人科

特徴:母子の健康管理と分娩対応。

設備:超音波装置、分娩室。

資金目安:5,000万〜8,000万円。分娩施設や緊急対応設備の設置費用です。

眼科

特徴:眼の健康管理と視力矯正。

設備:視力検査機器、眼底カメラ、手術用顕微鏡。

資金目安:3,000万〜4,000万円。精密機器の導入が資金計画の主な項目です。

 

このように、診療科によって必要となる理解し、計画を立てることがクリニック開業の成功につながります。それぞれの診療科が持つ特殊な要求にもとづき、予算を適切に配分することが肝要です。また、十分な資金計画は、開業後のスムーズな運営と成功へ向けた第一歩となります。

クリニック開業資金の調達方法とは?

クリニックを開業する際には、自己資金だけでなく、多様な資金調達方法を活用する必要があります。以下に、さまざまな資金調達の方法と、開業資金を抑えるための方法を詳しく説明します。

民間金融機関

クリニック開業にあたっては、銀行や信用金庫といった民間金融機関からの融資を考慮することが一般的です。各金融機関によって条件や上限額が異なるため、自分のクリニックに最適な金融機関を選ぶことが重要です。特に、地方での開業を検討している場合は、地元に根ざした地方銀行の利用も価値があります。これらの金融機関は、単に融資を提供するだけでなく、ビジネスサポートや業務研修も行っていることがあります。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は政府支援の金融機関で、クリニックの「新規開業資金」として最大7,200万円までの融資が可能です。その中で運転資金として4,800万円を利用できます。返済期間は設備資金が最大20年、運転資金が最大7年と長期的で、金利も比較的低めに設定されています。

独立行政法人福祉医療機構

福祉医療機構からの融資は、新築クリニックの開設時に特に有用です。有床クリニックの建設費用で最大5億円、無床クリニックや歯科の場合は最大3億円が利用することができます。土地取得のための資金としても3億円以内の融資が受けられ、新築時には機械購入資金として2,500万円以内の追加融資も可能です。

リース会社

医療機器のリースを検討する際に、そのリース会社から融資を受けることができます。この方法の主な利点は、迅速な審査と資金調達のスピードですが、金利が他の方法より高めである点に注意が必要です。

補助金など

クリニックを開業する際、国家や地方自治体から提供される補助金や助成金を活用することも重要な資金調達方法です。たとえば、創業補助金、事業承継補助金、IT導入補助金などがこれに該当します。これらの制度を利用するためには特定の条件を満たす必要があるため、事前にクリニックが適用可能かどうかを確認することが大切です。

開業資金を節約するポイントとは

クリニック開業時における資金を節約するためには、いくつかの工夫が必要です。以下に、それぞれの方法を詳しく説明します。

クリニックの継承

既存のクリニックを「居抜き」で継承する方法は、初期投資を大幅に削減できる非常に有効な手段です。すでに存在する建物や医療設備、器具などをそのまま利用することで、新たに購入する必要がなくなります。また、既存のクリニックには常連の患者がいることが多く、その患者基盤を継承できるため、新規の患者を集めるための広告費用も節約できます。

設備投資の見直し

新品の医療機器は高価なため、良質な中古機器を導入することで費用を抑えられます。信頼できる業者から購入することで、機能や品質も十分に確保できるでしょう。

また、医療機器を購入せずにリースを活用する方法もあります。リースを利用すれば、初期費用を大幅に下げることができ、経営が安定した段階で必要に応じて購入を検討することができます。

人件費の最適化

開業初年度は、最小限のスタッフで運営することで、固定の人件費を抑えることができます。業務の効率化を図りつつ、必要に応じて人員を増やしていくことが、無駄を省くポイントです。

広告戦略の工夫

広告宣伝費を抑えながら効果的に集患するには、SNSを活用した低コストの広告が効果的です。FacebookやInstagram、Xなどを利用して、ターゲットとなる地域の人々にアプローチすることができます。

Webでの露出を高めることで、初期費用を抑えながらも広い範囲の潜在的な患者に訴求できるでしょう。

固定費の削減

クリニックを開業する場所は、賃料が低いながらもアクセスが良い場所を選ぶことが理想です。例えば、調剤薬局やドラッグストアの確保した物件やビルの2階などは比較的安価に契約を結ぶことも可能です。余計なスペースを確保せず、面積を狭く抑えることで賃貸コストを下げられます。

また、省エネの機器を導入し、電力使用を最適化することで、毎月の光熱費を削減できます。これにはLED照明の利用や、空調の効率的運用が含まれます。

 

これらのポイントを組み合わせることで、クリニック開業時の資金を効率的に節約し、経済的な運営を開始することができるのです。バランスよく各項目を見直すことが、開業成功への鍵となります。

まとめ

クリニック開業にはしっかりとした資金計画が不可欠です。自己資金と融資を上手に組み合わせ、無理のない計画を立てることで、スムーズな開業を目指せます。診療科目による必要資金や調達方法を理解し、適切な資金管理と節約策を活用しましょう。

 

参考文献:

東京都保健医療局HP「個人で診療所を開設する方」

関東信越厚生局HP「保険医療機関・保険薬局の指定等に関する申請・届出」

東京都でクリニックを開業する際に必要な手続きが記載されています。

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