【2024年度最新】特定疾患療養管理料とは 〜算定点数・オンライン診療を踏まえわかりやすく解説〜
執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。
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「新型コロナウイルスの影響は落ち着いてきたものの、患者数が戻ってこない。一度医院の収支を見直したい」
「これからオンラインを使った新しい医療サービスを提供したい!」
と考える際に、気にしておかなければならないのが特定疾患療養管理料をはじめとした医学管理料になります。
医学管理料とは、医療的な処置や投薬などの医療技術の提供とは別に、医師による患者指導や医学的管理を行った際に算定される診療報酬項目です。この医学管理料、医院の重要な収入源となりますが、実は“算定ミスが非常に多い項目”であるとも言われています。
近年、通常の診察に加えてオンライン診療も増えてきていることを受けて、厚生労働省の改定法案でも医学管理料についての取り扱いが度々変更されています。
「当院は該当するのか?」「この場合は算定してもよいの?」など、ややこしくなってしまっている部分も多くあるのではないでしょうか。
ここでは、医学管理料の中でもとくに代表的な項目である「特定疾患療養管理料」について、最新の情報をもとに詳しく説明していきます。また、医療経営に少しでもお役立ていただけるよう、特定疾患療養管理料における注意点なども解説していますので、最後までお付き合いください。
目次
特定疾患療養管理料とは
特定疾患療養管理料とは、「生活習慣病等の厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とする患者について、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理を行った場合に、月2回まで算定可能な管理料」と定義されています。
簡単に述べると、国で定められた慢性疾患の患者さんへ、かかりつけ医が計画的に服薬、運動、栄養などに関して日常で注意することを説明し、わかりやすく指導を行った場合に算定することができる項目、ということになります。
2024年度の診療報酬改定によって、高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの慢性疾患が除外されました。
このことに伴い、生活習慣病に係る管理料として生活習慣管理料が新設され、注目が集まっています。従来、高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理として算定されていた管理料は、検査料などを包括しない生活習慣病管理料(II)に移行されます。
ここでのポイントは、
①厚生労働大臣が定める対象疾患が「主病である」こと(後ほど詳しくお伝えします)
②主病に対する治療が当該保険医療機関で行われていること
③200床以上の病院では算定できないこと(病床数によって点数が異なります)
④オンライン診療など、電話や情報通信機器を用いた場合でも算定されること
などが挙げられます。
また、やむを得ない場合であれば、医師の診療計画に基づいて当該患者さんの看護に当たっている家族等を通して療養上の管理を行った時でも、算定できます。
※詳細な算定規定は厚生労働省ホームページ参照
特定疾患療養管理料の点数
この特定患者療養管理料は一患者につき月に2回に限り算定することができます。
ただし、入院中の患者さんのケースでは、いかなる場合でも算定することができないため、初診料を算定した初診日、または退院の日から1ヶ月経過した日以降に算定することになります。
施設の大きさごとの点数の違い
特定疾患療養管理料は、どのような病院でも算定できるわけではありません。
地域のかかりつけ医が患者さんに、継続して療養に関する管理や指導の実施を目的としており、200床未満の施設において算定できます。そして施設の規模が小さくなるほど点数が高く設定されています。
施設規模と特定疾患療養管理料の点数
施設規模 | 特定疾患療養管理料 |
診療所 | 225点 |
許可病床数が100床未満の病院 | 147点 |
許可病床数が100床以上200床未満の病院 | 87点 |
許可病床数が200床以上の病院 | 算定できず |
※詳細な算定規定は厚生労働省ホームページより抜粋
情報通信機器を用いた場合の点数
オンライン診療などで情報通信機器を用いた場合、特定疾患療養管理料がどのように加算されるかはご存知でしょうか。
2年ごとの診療報酬改定により、少しずつ内容が変化しています。令和4年の診療報酬改定では、情報通信機器を用いた診療を組み合わせた診療計画を作成し、療養上必要な管理を行った場合に算定できる点数に変更がありました。対面診療の所定点数に代えて診療所 196点 100床未満病院 128点 100床以上200床未満病院 76点を「特定疾患療養管理料(情報通信機器を用いた場合)」として月2回まで算定できるとしています。
対象疾患であっても算定不可な場合
たとえば普段、定期的に受診されている糖尿病の治療中の患者さんから「風邪をひいて熱があるので薬を出して欲しい」と訴えがあり、解熱剤を処方しました。この場合は、特定疾患療養管理料を加算できるのでしょうか。
答えはノーです。
特定疾患療養管理料の対象疾患を有する患者さんであっても、診療計画を作成した上で療養上必要な管理を行っていないため管理料を算定することができません。
また、検査のみの場合や当該保険医療機関で診療が行われていない場合にも、特定疾患療養管理料を加算できませんので、注意が必要です。
オンライン診療でも加算できるか?
結論を申しますと、オンライン診療でも特定疾患療養管理料の加算ができます。
ここからはオンライン診療でも特定疾患療養管理料を算定するための条件を紹介していきます。
オンライン診療における特定疾患療養管理料算定の概要
令和4年度の診療報酬改定において、オンライン診療に関して抜本的な見直しがなされました。オンライン診療料の撤廃に伴い、情報通信機器を用いた場合の評価の見直しが行われたのです。
個別の医学管理料については、対面診療の約87%で算定可能となりました。
情報通信機器を用いた特定疾患療養管理料は以下の通りです。
施設規模 | 特定疾患療養管理料 (情報通信機器を用いた場合) |
診療所 | 196点 |
許可病床数が100床未満の病院 | 128点 |
許可病床数が100床以上200床未満の病院 | 76点 |
許可病床数が200床以上の病院 | 算定できず |
※詳細な算定規定は厚生労働省ホームページより抜粋
これらは、厚生労働省の発行している「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づいた診療計画を作成することが必須となります。
従来のように対面診療と組み合わせる必要はなくなり、初診からオンライン診療が可能となったことから、オンライン診療を導入しやすくなったといえるのではないでしょうか。
※その他変更点の詳細については、厚生労働省保険局医療課令和4年度診療報酬改定の概要参照してください。
外来栄養食事指導について
オンライン診療が初診から可能になったことで、外来栄養食事指導に関しても初診からオンラインで実施できるようになりました。
もともと、外来栄養指導に関しては初回は対面での指導が義務づけられていました。オンラインで実施できるのは2回目以降に限られていました。
以下が従来の外来栄養指導の点数となります。
外来栄養食事指導料 | |
イ 外来栄養食事指導料1 | |
回数 | 指導料 |
(1)初回 | 260点 |
(2)a)2回目以降(対面) | 200点 |
b)2回目以降(情報通信機器を用いた場合) | 180点 |
ロ 外来栄養食事指導料2 | |
回数 | 指導料 |
(1)初回 | 250点 |
(2)2回目以降 | 190点 |
※厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要個別改定事項Ⅱ(情報通信機器を用いた診療)」
より抜粋。細かい算定要件はそちらを参照してください。
しかし、令和4年の診療報酬改定で、外来栄養指導に関しても初回からオンラインでの指導が認められるようになりました。
以下が令和4年の診療報酬改定での外来栄養指導の点数となります。
外来栄養食事指導料 | |
イ 外来栄養食事指導料1 | |
回数 | 指導料 |
(1)a)初回(対面) | 260点 |
b)初回(情報通信機器を用いた場合) | 235点 |
(2)a)2回目以降(対面) | 200点 |
b)2回目以降(情報通信機器を用いた場合) | 180点 |
ロ 外来栄養食事指導料2 | |
回数 | 指導料 |
(1)a)初回(対面) | 250点 |
b)初回(情報通信機器を用いた場合) | 225点 |
(2)a)2回目以降(対面) | 190点 |
b)2回目以降(情報通信機器を用いた場合) | 170点 |
※厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要個別改定事項Ⅱ(情報通信機器を用いた診療)」
より抜粋。細かい算定要件はそちらを参照してください。
オンラインによる外来栄養食事指導が月1回のみしか算定できないというのは、従来と変わりありませんが、初回の指導を行った月に関しては月2回算定できるようになったことも大きな変化といえます。
外来栄養食事指導料2についても、算定要件を満たせば初回の指導を行った月にあっては月2回に限り、その他の月にあっては月1回に限り算定できるようになりました。
特定疾患療養管理料で患者とトラブルになるケース
特定疾患療養管理料は医療機関に正当に認められている診療報酬です。しかし、患者さんは診療報酬の詳細を知らない場合がほとんどなので、トラブルになるケースも報告されています。
ここでは、実際に特定疾患療養管理料で患者さんとトラブルになってしまうケースの具体例を二つ紹介します。
いずれもよくあるケースですので、参考にしてください。
指導を受けたつもりがないのに「指導管理料」が加算されている
「指導を受けた覚えがないのに「指導管理料」が不当に請求されている!!」とクレームがあった。
特定疾患療養管理料は、冒頭で「かかりつけ医が計画的に服薬、運動、栄養などに関して日常で注意することを説明し、わかりやすく指導を行った場合に算定できる項目」であると述べました。
しかし、実際の診察では“疾患や検査結果の説明”と“療養上の説明”が一緒に行われるため、区別が難しく、結果としてクレームに繋がってしまう場合があります。
わかりやすく丁寧な説明責任が求められている時代ですので、納得のいく説明ができるように日々研鑽していく必要があります。
いつもの薬を処方してもらっただけなのに費用がいつもより高い
いつも服用している内服を処方してもらったが、費用がいつもより高額であるとのこと。窓口で「今日は何も処置をしてもらっていないのに、いつもより高いのはおかしい!!」とクレームがあった。
特定疾患療養管理料は、医療的な処置や投薬などの医療技術の提供よりも高額になる場合があり、患者さんのイメージとの間でギャップが生じることがあります。
また、算定できる回数は月に2回までと決められているため、月の受診回数が多い場合などは診察内容が同じであっても料金が異なる場合があります。
お支払いの際などにクレームに繋がってしまうことがありますので、なぜ金額が異なるのかなど、きちんと説明ができるようにしておかなければなりません。
まとめ
昨今の医療情勢により、医療機関ではさまざまな変革が強いられていることかと思います。
このような状況下でも医師の皆様から適切な説明や指導を直接受けられるということは、慢性疾患を有する患者さんにとって非常にありがたく、心強いことであると思います。
高額となってしまいがちな特定疾患療養管理料ですが、患者さんのコスト意識を十分に理解することが重要です。その上で算定方法に変更や誤りがないかをしっかりと確認し、請求額に見合う納得すべき説明と指導を行うことが求められているのではないでしょうか。
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参考文献:令和4年度診療報酬改定の概要
厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要個別改定事項Ⅱ(情報通信機器を用いた診療)」