野村医院は板橋区役所前の内科クリニックで、糖尿病内科だけでなく老年病内科、認知症、循環器、脳神経外科外来なども診療されています。
オンライン診療やPHR(Personal Health Record)など、治療の精度向上のため新しいツールを積極的に取り入れている野村先生にシンクヘルスについて伺いました。
オンライン診療や電話再診は毎日行っています
現在平均してオンライン診療は1日約5件、電話再診は3件ほど行っています。新型コロナウイルスの流行以前からオンライン診療を導入していますが、コロナ渦ということもあり希望される患者さんも増えています。
患者さんは来院せずに、診療や栄養指導を受けることが可能
当院ではオンライン診療ツールを活用して、診療だけでなく栄養指導も受けることができます。
オンライン診療ツールとシンクヘルスのようなPHRを併用すれば、来院しなくても患者さんの血糖変動の状況や食事の写真を院内のPCで閲覧できるので、そのデータを参考にしながら診療や栄養指導を行うことができる。今の時代にとてもあっていると思っています。
患者さんの血糖変動の流れを把握し、診療に反映させる
現状、糖尿病診療では状況が落ち着いている患者さんは平均して1カ月半に一度来院していただき、ピンポイントで診察(少し細かく状況を把握したい人は2週間に一度の診察)を行っています。
ですが、その1カ月半の間、毎日同じ生活をしている患者さんはいません。毎日違うものを食べ、運動の習慣も日によって異なります。
本来、糖尿病治療というのは「毎日のライフスタイルに合わせた疾患管理」を行っていく必要がありますから、患者さんの行動習慣や血糖の流れを把握した上で、適切な診療を行うことが大事だと考えています。
アメリカで活用が進むアプリでの疾患管理が日本でも
そういった中で、アメリカなどではかなり普及している糖尿病用のアプリが今後はより重要になってくると思います。
最近ではAppleWatchやFitbitなどのウェアラブル端末で、患者さんの情報を自動で吸い上げてくれますから、このあたりの技術は糖尿病診療にかなり役立つと考えています。なぜかというと、細かい情報を診療中に聞き取りを行うとしたら、膨大な時間がかかりますので。
そして患者さん側も、過去1カ月の自分のライフスタイルを事細かに覚えているわけありませんから、情報が正確でなくなってくるわけです。
患者さん自身が血糖コントロールの原因を理解するためにもPHRは有効
HbA1Cが前回の測定値よりも上がってしまった患者さんは、上がった原因をきちんと本人が理解する必要があります。「前回の測定以降、血糖値が上がる原因として思い当たることはないですか?」と聞き取りをしても、なかなか原因がわからないということがあります。
ある患者さんは、乳酸菌健康飲料を毎日健康のために飲んでいたことが原因でした。患者さん自身は健康のためにやっていると思っていますから、それが血糖値をあげる原因になっているとは思わない。
そこでPHRが役に立ちます。食事の内容を一定期間アプリに記録をしてもらうことで、血糖変動の原因を医師が見つけてあげることが可能になります。
歩数の管理なども同様で、今はスマホの中にデータが記録されていますし、シンクヘルスはAppleの「ヘルスケア」やAndroidの「Google Fit」のデータも読み取ることができるので一覧で表示でき、簡単に把握が可能です。
今後は糖尿病以外の疾患にも広げていきたい
当院ではシンクヘルスは主に自己血糖測定を行っている糖尿病患者さんが主に活用しています。現状、糖尿病の患者さん中心にアプリをご案内していますが将来的には糖尿病以外の疾患にも広げて活用していきたい。
例えば体重管理などにも有効ではないかと考えています。
シンクヘルスはオンライン栄養指導にも有効
患者さんがアプリに記録した食事写真を院内のPCで共覧できるので、オンライン診療での栄養指導を行う際に活用しています。離れていても食事写真を介して具体的に指導できるので、シンクヘルスはオンライン栄養指導においてもメリットを感じます。
患者さんとの食事調整の指導では、お互いに頭の中で描いている食事の量が違ってしまうと指導にならないので、お互いに同じ食事の写真を見ながら「ごはんを少し減らしましょう」とか「この食品が足りていないですね」といったやりとりをしています。
また、食事療法をしている患者さんだけでなく、食事を準備されるご家族も一緒にお話を聞いてもらえるので今後の改善につながっていく印象があります。