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クラウド型の電子カルテとは?普及率やメリットも解説!

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執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。

*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください。

「クラウド型の電子カルテを導入したいんだけど、従来の電子カルテと何が違うのかな」

「セキュリティ面が心配なんだよね・・・。」

このように、クラウド型の電子カルテの導入を検討しているけれど、躊躇している先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回はクラウド型の電子カルテについて解説します。オンプレミス版との違いや、普及率、メリットについても説明しますので、電子カルテの更新を考えている先生はぜひ参考にしてください。

クラウド型電子カルテとは?

クラウド型電子カルテは、インターネットを通じて提供されるシステムを用いて、患者の診療記録や診断情報を電子的に管理するためのツールです。

従来のオンプレミス型電子カルテと比べると、クラウド型は物理的なインフラ整備が不要であり、初期投資や維持管理のコストを大幅に削減できる利点があります。

クラウド型電子カルテは、理論上インターネットさえあればどこからでもアクセス可能であるため、医療従事者が物理的な場所に縛られることなく、柔軟に患者情報を活用できるという利便性を提供します。

クラウド型電子カルテは、医療機関における業務の効率化や運用の柔軟性向上を支援するための革新的なソリューションとして注目されています。

クラウド型電子カルテの特徴

クラウド型の電子カルテは、物理的なサーバの購入や設置が不要であり、ソフトウェアの更新やシステムのメンテナンスはクラウドサービス提供会社が行うため、医療機関がこれらに労力を割く必要がありません。

また、インターネットに接続さえすればどこからでもアクセスが可能で、例えば在宅でも患者の診療情報にアクセスできるため、在宅勤務や訪問診療を効率的にサポートします。

ここからはクラウド型電子カルテを導入するメリットとデメリットを説明します。

クラウド型電子カルテのメリット

クラウド型電子カルテはサブスクリプション形式の料金体系を採用しており、これは初期投資を大幅に抑えることができるという利点があります。

従来のオンプレミス型システムでは、高額なサーバとそれに関連する設備の購入が不可欠でしたが、クラウド型ではこれらの物理的なハードウェアを自院で用意する必要がありません。そのため、医療機関は初期段階での大きな資金投入を避けることができ、経営資源を他の重要な分野に振り向けることが可能です。

 

次に、クラウド型電子カルテのもう一つの重要な利点は、インターネット接続さえあればどこからでもアクセス可能であるという点です。この特徴は、医療従事者が院外でも診療データにアクセスできるという柔軟性を提供します。例えば、緊急の診療要請があった場合でも、自宅や外出先から患者の詳細な診療記録にアクセスし、適切な対応を迅速に行うことができるでしょう。

 

さらに、クラウド型システムは自動更新とメンテナンス機能が完備されているため、医療機関がシステム運用に関する負担を大幅に軽減できます。システムのバックエンドはクラウドサービス提供会社によって管理されており、最新の診療報酬改定や医療ソフトウェアのバージョンアップなど、更新作業が自動化されています。このため、医療機関はITの専門家を置かずとも、常に最新の状態で電子カルテを利用することができるのです。

これにより、医療スタッフは本業である患者へのケアに専念することができ、システムメンテナンスの煩雑さから解放されます。

 

以上のように、クラウド型電子カルテは初期コストの削減、柔軟なアクセス性、システムの更新・メンテナンスの省力化といった多くのメリットを提供し、医療現場の効率的な運営を強力にサポートします。

クラウド型電子カルテのデメリット

クラウド型電子カルテには多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。

 

クラウド型電子カルテは、多くの医療機関で共通して利用できるように標準化されています。導入しやすさと運用の簡便さを提供する一方で、個々の医療機関の特別なニーズに応じたカスタマイズが難しいのが実情です。

クラウド型の大きな特徴であるインターネット経由のアクセスは、通信トラブルが発生した場合には弱点となります。インターネット接続が失われると、電子カルテにアクセスできなくなるため、診療業務が一時的に停止するリスクがあります。こうしたリスクを軽減するためには、予備のモバイルWi-Fiやスマートフォンのテザリング、PDFデータによるバックアップなど、オフライン時に備える対策が不可欠です。

また、クラウド型ではデータが外部のサーバに保存されるため、セキュリティ対策の強化が重要です。データ漏洩やサイバー攻撃のリスクが心配される中、クラウドサービス提供会社のセキュリティ対策を十分に信頼できるかどうかを確認することが必要でしょう。

また、データの管理権限が外部企業にあるため、プライバシー保護に関する懸念も生じることがあります。

 

これらのデメリットを理解し、リスクを適切に管理することで、クラウド型電子カルテを効果的に活用することができます。導入を検討する際は、各デメリットに対する適切な対策や見通しを持っておくことが重要です。

オンプレミス型電子カルテとの比較

オンプレミス型電子カルテとは、院内にサーバを設置して運用する電子カルテシステムです。ここからは、クラウド型電子カルテとオンプレミス型電子カルテを比較します。どの電子カルテを導入するか迷っている先生はぜひ参考にしてください。

電子カルテ選定の際には、各医療機関のニーズや運用方針に応じて、さまざまな要素を総合的に検討することが重要です。以下に、電子カルテの主要な比較ポイントを説明します。

コスト

電子カルテの導入に際しては、初期費用と維持費の観点からの評価が必要です。クラウド型の電子カルテは、初期費用を抑えることができ、物理的なサーバの購入やインフラ整備のコストを回避できる利点があります。

一方で、長期的には月額または年額の使用料がかかります。対照的に、院内にサーバを設置するオンプレミス型タイプは大規模な初期投資を必要としますが、毎月の利用料は抑えられます。

ただし、現実的には技術者の人件費やハードウェアのメンテナンス費用がランニングコストとして必要となるため、オンプレミス型じゃクラウド型よりも高額になる可能性が高いです。

カスタマイズ性

電子カルテの選択において、自院の特定のニーズにどれだけ対応できるかも重要です。クラウド型の場合、企業が管理するサーバ上で動く電子カルテシステムを使うため、医療機関はそのシステムを自由に変更することはできません。

柔軟なカスタマイズが制限されることがありますが、導入に際しての手間が少なく、早期に運用を開始できる利点があります。それに対し、自院内でのシステムを構築するオンプレミス型の場合には、細かなカスタマイズが可能ですが、開発や導入に時間とコストがかかることを考慮しなければなりません。

システムの更新とメンテナンス

システムの維持に関連する業務負担の違いも考慮しておきましょう。クラウド型はシステムアップデートやメンテナンスを自動でおこなえるため、医療機関側のIT管理の負担を軽減し、本来の医療業務に集中できる環境が整います。一方で、オンプレミス型はすべての更新やメンテナンスを院内で対応するため、技術的な人材とそれに伴うコストが必要であり、管理負担が増加する可能性があります。

データ管理とセキュリティ

データ管理においては、外部と内部それぞれの管理体制のメリットとデメリットを考えることが大切です。クラウド型は外部にデータを預けるため、サービス提供者が高度なセキュリティ対策を施していることが多く、データ管理の負担軽減が期待できます。ただし、データ管理権限が外部にあるため、その運用方針やセキュリティ体制を十分に確認する必要があるでしょう。

逆に、データを内部で管理するオンプレミス型の場合、セキュリティ規約を自院内で決定できる自由がありますが、セキュリティ対策には追加のコストとリソースが必要です。

 

このように、電子カルテの選択肢には複数の観点があり、それらを総合的に考慮することで、最も効率的で安全な運用が実現可能となります。医療機関はこれらのポイントを基に、最適なシステムを選定し、質の高い患者管理を目指すことが求められます。

 

クラウド型電子カルテの普及率と市場の現状

電子カルテの導入は年々増加しており、2020年には一般病院における電子カルテの普及率が57.2%に達したとの報告があります。

これは、約半数以上の病院で電子カルテが利用されていることを示しています。一方、一般診療所での普及率は49.9%で、過半数には達していないものの、多くの診療所でも導入が進んでいるのです。

特に、新たに開業するクリニックでは、クラウド型電子カルテの導入率が70.8%に達しており、クラウドシステムへの移行が急速に進行しています。この傾向は、特に運営予算に制約があり、コスト削減を重視している中小規模の診療所で顕著です。

 

クラウド型電子カルテの普及は今後さらに拡大すると予測されています。特に、コスト削減が重要な課題として認識されている中小規模の病院において、クラウド型の導入が加速する見込みです。同研究所の予測では、2026年までに中小病院向けの市場におけるクラウド型電子カルテのシェアが16.8%に達するとされています。これにより、クラウド型システムがより広範囲にわたって受け入れられるようになるでしょう。

まとめ

本記事では、クラウド型電子カルテの概要、オンプレミス型との比較、選び方、導入のメリット・デメリット、そして市場の未来について詳しく解説しました。電子カルテの導入を考えている医療機関が、これらの情報を参考に自院に最適な選択をする手助けとなれば幸いです。

  

参考文献

矢野経済研究所「中小規模一般病院向け電子カルテ市場規模推移・予測」

クラウド型の電子カルテの導入率などを調査した結果と、それをもとに市場規模の推移を予測したデータです。

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